ポルトガルのリスボンで開幕した第79回ブエルタ・ア・エスパーニャ。初日は12kmの個人タイムトライアルで争われ、TTアメリカ王者のブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツ)がトップタイムを叩き出した。



8月17日(土) 第1ステージ
リスボン〜オエイラス 12km(個人TT)


第79回ブエルタ・ア・エスパーニャがポルトガル・リスボンで開幕 photo:Unipublic

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第1ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

パリ2024年オリンピックが閉幕して1週間後の8月17日(土)、2024年のグランツールを締めくくるブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)が開幕した。その舞台となったのは1997年に大会初のスペイン国外スタートとなったポルトガルの首都リスボン。ラース・ミカエルセン(デンマーク)が勝利したロードレースではなく、今回は12kmの個人タイムトライアルで幕を開けた。

リスボンを走り出した選手たちは、海岸線を沿って西のオエイラスを一直線に目指す。コーナーはスタート直後に登場するのみで、警戒するほどの丘もないため純粋なパワー勝負となるレイアウトだ。

現地時間午後4時23分、176名が走る第1出走者となったのはルイス・マテ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)。今年限りで現役を引退する40歳のスタートから1分間隔で続々と選手たちが走り出すなか、13番手スタートのヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)が13分8秒の暫定トップタイムをマークする。しかし22番手スタートのエドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク)が、早くもそれを上回る12分43秒でフィニッシュした。

序盤にトップタイムをマークしたヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー) photo:CorVos

圧巻の走りを披露し、その後1時間半近くホットシートに座ったエドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

パリ五輪のリベンジは叶わなかったジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:INEOS Grenadiers

平均速度を56km/hに乗せたアッフィニは暫くホットシートに座り続け、その後スタートしたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)やティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)など総合勢がタイムをまとめる。横風が徐々に強まっていった130番目に、現TTヨーロッパ王者である20歳のジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がスタートした。

パリ五輪ではパンクの不運がありながらも4位とメダルに迫ったターリングは、7.3km地点に設定された中間計測地点でアッフィニのタイムを3秒更新する。しかし終盤に失速してアッフィニからわずか0.28秒遅れでフィニッシュ。トップタイムを更新することはできなかった。

総合争いを繰り広げるであろうアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)やキアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)、カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)などが続々とフィニッシュする。母国ポルトガル出身のジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)が大歓声の中走り出す。そして1時間半近くホットシートに座り続けたアッフィニのタイムを上回ったのは、アルメイダではなく、その3分前にスタートしたマティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック)だった。

ステージ49位(45秒遅れ)だったカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) photo:Unipublic

17秒遅れのステージ8位に入ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

チェコのTT王者である22歳のヴァチェクは、平均速度を57km/h台に乗せてアッフィニのタイムを6秒更新する。アルメイダが最終的にステージ10位でレースを終え、2連覇を目指すセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)は62位でフィニッシュ。TTスペシャリストのシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)はアッフィニを上回りながらも暫定トップから5秒遅れでレースを終え、最終出走者であるワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が走り出した。

パリ五輪で披露したディスクホイールの前輪ではなく、ディープリムのノーマルホイールを使用したファンアールトは、ヴァチェクがマークした中間計測でのタイムを0.62秒更新する。しかしこの日のトップタイムをマークしたのは、ファンアールトの一つ前にスタートしたブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)だった。

一定のペースで踏み続けたアメリカTT王者のマクナルティは、ヴァチェクのタイムを2秒更新する快走を披露。直後にフィニッシュしたファンアールトはヴァチェクのタイムも上回ることができずステージ3位で終えたため、マクナルティのステージ初優勝が決まった。

トップタイムでフィニッシュしたブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

最終出走者でコースに飛び出し、ステージ3位だったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

「勝利を予想していたかは自分でも分からない。だが何かクレイジーなことが起きれば勝てると思っていた。そして今日、そのクレイジーが起きたみたいだ。信じられない結果だよ。今日はトレーニングから感じていた良い脚の感覚を、今日のレースでも感じていた。オリンピックに標準を合わせ、その好調がここまで続いているんだ」と、マクナルティは勝因を語った。

総合を争う選手のなかでトップタイムをマークしたのは、17秒遅れのステージ8位に入ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)。レース前に「いま腰には痛みを抱えている」と語ったものの、7月のツールで負った腰骨骨折から驚異的な回復ぶりを見せた。

マイヨロホを獲得したブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

ステージ2位でマイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)を着用した マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) photo:CorVos

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第1ステージ
1位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) 12:35.28
2位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) 0:02.17
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 0:02.80
4位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) 0:06.57
5位 エドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) 0:07.92
6位 ジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 0:08.20
7位 マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) 0:16.51
8位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) 0:16.93
9位 ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) 0:18.44
10位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) 0:19.66
62位 セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) 0:53.40
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) 12:35
2位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) 0:02
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 0:03
4位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) 0:06
5位 エドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) 0:08
6位 ジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
7位 マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) 0:16
8位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) 0:17
9位 ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) 0:18
10位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) 0:19
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) 20pts
2位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) 17pts
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 15pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) 0:12:37
2位 ジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 0:06
3位 マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) 0:14
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ 0:38:28
2位 リドル・トレック +0:12
3位 ヴィスマ・リースアバイク +0:13
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos

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