ツール・ド・フランス・ファム第4ステージは雨の丘陵ステージで争われ、パリ五輪のMTBで4位だったプック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)が勝利。写真判定の僅差で敗れたフォレリングは総合首位をキープしている。



8月15日(木)第4ステージ
ファルケンブルフ〜リエージュ 122.7km(丘陵)


スタート前に恒例となったセルフィーを撮る4賞ジャージ photo:CorVos

ツール・ド・フランス・ファム2024第4ステージ コースプロフィール image:A.S.O.
ツール・ド・フランス・ファム・アヴェク・ズイフト(UCIワールドツアー)は第4ステージにしてようやくオランダを離れる。この日はアムステルゴールドレースでお馴染みのファルケンブルフを出発し、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの舞台ベルギー・リエージュにフィニッシュする122.7kmだ。

コースもまるでアムステルとリエージュを繋げたような、無数の丘が登場する丘陵ステージ。特にコート・デ・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(距離1.3km/平均11%)を含む終盤3つの丘は厳しく、またベルギーらしい雨がよりレースをタフなものにした。

序盤から逃げは生まれず、オランダに設定されたベメレルベルク(距離1.3km/平均4.9%)を含む4つのカテゴリー山岳を全てシルヴィア・ペルシコ(イタリア、UAEチームADQ)がトップ通過する。ベルギーに入国する直前にサラ・マルティン(スペイン、モビスター)が集団を飛び出し、ようやく逃げが決まる。遅れて連日逃げに選手を送るラボラル・クチャ・ファンダシオン・エウスカディからラウラ・トマージ(イタリア)がマルティンを目指したものの、合流には至らなかった。

序盤は逃げが生まれない静かな展開となった photo:CorVos

踏切でレースが中断され、再び走り出すプロトン photo:CorVos

レースはベルギーに入り、マルティンが中間スプリント(残り55.2km)を通過した時点でプロトンとの差は51秒。後続ではマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を着るシャーロッテ・コール(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)がロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス・プロタイム)を退け、最大20ポイントをゲット(ウィーベスは17ポイント)。残り51km地点では踏切によってレースは一時中断され、その後マルティンのタイムがそのままに再スタートが切られた。

この中断によって落車で遅れていたキャニオン・スラムのクロエ・ダイガート(アメリカ)とニーヴ・ブラッドバリー(オーストラリア)が集団に復帰。直後に突入した3級山岳モントテュー(距離2.8km/平均5.6%)ではフェニックス・ドゥクーニンクがペースを上げ、頂上手前(残り48km)でマルティンを吸収。頂上ではヤラ・カステレイン(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)がジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル)を退け、トップ通過で山岳ポイントを加算した。

集団先頭ではリドル・トレックやキャニオン・スラムなど総合チームが人数を固め、続く2級コート・ド・ラ・ルドゥット(距離1.6km/平均9.4%)はヴィスマ・リースアバイクを先頭に突入する。頂上手前でプック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)が前を牽き、カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)とデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム)を抑えて先頭通過。この急勾配な登りによってプロトンは約30名に絞られた。

丘を越える度に人数が絞られていくプロトン photo:A.S.O.

雨が強まるなか3級コート・デ・フォルジュ(距離1.3km/平均7.8%)ではジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル)が飛び出し、頂上をトップ通過した後も単独で踏み続ける。リドルが先導するメイン集団ではセシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJスエズ)が落車し、すぐに走り出したもののバイク交換を強いられる。結果的にルドヴィグは3分9秒遅れで総合争いから脱落した。

最後の2級コート・デ・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(距離1.3km/平均11%)に入った時点でヘキエーレのリードは19秒。ペースが一気に上がったプロトンが頂上手前300mで捉える一方で、リーアンヌ・マルクス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)など総合優勝候補たちが遅れていく。そして先頭ではニエウィアドマとフォレリングに加え、フェニックスのピーテルセとパウリーナ・ローイヤッカース(オランダ)ら4名の先頭集団が形成された。

先頭はフォレリングとニエウィアドマ、ピーテルセの3名に絞られた photo:A.S.O.

EFオータリー・キャノンデールが先導する追走集団が先頭を視界に捉えたものの、ローイヤッカースが遅れ3名になった先頭はスピードを上げる。ローテーションをスムーズに回した3名は後続との差を拡げていき、31秒差でフラムルージュ(残り1km)を通過。勝負は3名によるスプリント勝負に持ち込まれた。

スプリントでは2名に劣るニエウィアドマが先に仕掛け、フォレリングがすかさずチェックする。その後ろで脚を溜めたピーテルセがフォレリングよりも先にスプリントを開始。遅れを取ったフォレリングが追いかけ、並んだ両者がフィニッシュラインにハンドルを投げた。

そして写真判定の結果、車輪半分の差で上回ったピーテルセに勝利が告げられた。

ハンドルを投げる プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)とデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

ツール初勝利を喜ぶプック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) photo:CorVos

総合2連覇を目指すフォレリングとのオランダ人対決を制したピーテルセ。「本当に信じられない勝利。ここ数日間は調子が良く、更に徐々にコンディションが上がっていった。この舞台でデミ(フォレリング)を相手に勝てたなんて夢のよう。2人が総合を争うなか、(レース間隔が空き)フレッシュな私はステージ優勝を狙っていた」と、ピーテルセはレースを振り返った。

シクロクロスとマウンテンバイクも走るピーテルセは22歳。ロード本格参戦となった今年は3月のクラシックレースに参戦後、ロードを離れMTBで出場したパリ五輪では4位とメダルに迫った。そして約4ヶ月振りに臨んだ初出場のツールで、新たな才能を見せつけるステージ勝利を掴み取った。

ピーテルセは総合2位にジャンプアップしてマイヨブラン(ヤングライダー賞ジャージ)を着用。区間2位のフォレリングはマイヨジョーヌを保持し、区間3位のニエウィアドマも総合3位に上がっている。

マイヨブラン(ヤングライダー賞ジャージ)も獲得したプック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) photo:CorVos

マイヨジョーヌを守ったデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

ツール・ド・フランス・ファム2024第4ステージ
1位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 3:12:28
2位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム)
3位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)
4位 キンバリー・ルコート(モーリシャス、AGインシュランス・スーダル) +0:29
5位 ノエミ・リュエッグ(スイス、EFオータリー・キャノンデール)
6位 タリタ・デヨンフ(オランダ、ロット・デスティニー)
7位 エヴィータ・ムジック(フランス、FDJスエズ)
8位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、リドル・トレック)
9位 ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス・プロタイム)
10位 マライレ・メイエリング(オランダ、モビスター)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) 7:40:10
2位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:22
3位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) +0:34
4位 クリステン・フォークナー(アメリカ、EFオータリー・キャノンデール) +0:47
5位 ジュリエット・ラブース(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +0:56
6位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +1:03
7位 キンバリー・ルコート(モーリシャス、AGインシュランス・スーダル)
8位 タリタ・デヨンフ(オランダ、ロット・デスティニー) +1:04
9位 セドリーヌ・ケルバオル(フランス、セラティツィット・WNTプロサイクリング)
10位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、リドル・トレック) +1:07
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 シャーロッテ・コール(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) 120pts
2位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) 76pts
3位 ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス・プロタイム) 56pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 10pts
2位 シルヴィア・ペルシコ(イタリア、UAEチームADQ) 9pts
3位 ヤラ・カステレイン(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 8pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 7:40:32
2位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、リドル・トレック) +0:45
3位 マリオン・ビュネル(フランス、サンミッシェル・マヴィック・オーベル93) +3:00
チーム総合成績
1位 EFオータリー・キャノンデール 23:03:46
2位 リドル・トレック +0:35
3位 モビスター +1:37
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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