2024/08/04(日) - 09:51
距離273km、6時間19分34秒に及んだパリでの戦いはレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が勝利。残り38kmでプロトンを飛び出し、15kmの独走を決めた現TT世界王者が、個人タイムトライアルに続き金メダルを獲得した。また新城幸也は56位で自身4度目の五輪を終えている。
南仏ニースで閉幕したツール・ド・フランスから2週間後の8月3日(土)、パリ2024オリンピック男子ロードレースの金メダリストを決める戦いが行われた。1チーム最大4名、52カ国から集った90名選手たちを迎えたのは、夏らしいパリの青空だった。
スタート時刻である現地時間午前11時10分の気温は20度。今年のツールで訪れることのなかったパリを象徴するエッフェル塔の眼前、トロカデロ広場から始まるコースは273kmで、アルデンヌクラシックのように詰め込まれた13箇所の丘は獲得標高差2,800mに達する。最後は石畳坂のモンマルトル(距離1km/平均6.5%)を含む18.4kmコースを2周し、再びトロカデロ広場に戻ってくる。
2023年限りでロードレースでの本格活動を終了し、五輪の開幕直前にマウンテンバイクの引退を発表したペテル・サガン(スロバキア)によるセレモニーもありながら、選手たちはパリの街に走り出す。アクチュアルスタートの直後からエリック・マニザバヨ(ルワンダ)がアタックし、それにタナカン・チャイヤソンバット(タイ)などが追従。チャールズ・カギム(ウガンダ)やクリストファー・ルジェラガーヌ(モーリシャス)など単騎で出場するメンバーによる5名の逃げ集団が形成された。
マッズ・ピーダスンをエースに据えるデンマークがメイン集団に蓋をし、1つ目の丘であるコート・デ・ガルデ(距離1.9km/勾配6%)に達する頃に逃げ集団は4分のタイム差を得る。その後10分までリードを許したプロトンからは、8月6日(火)から始まるトラックにも出場予定のエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)ら4名がアタック。昨年まで日本のマトリックスパワータグに所属し、ブルゴスBHに移籍したゲオルギオス・バグラス(ギリシャ)やグレブ・シリツァ(個人資格の中立選手)、ライアン・マレン(アイルランド)など強力なメンバーが先頭集団への合流を目指した。
コンチネンタルチームやクラブチームに所属する選手たちで構成された逃げはリードを最大15分まで拡げ、プロトンはティシュ・ベノート(ベルギー)やダーン・ホーレ(オランダ)、ミッケル・ビョーグ(デンマーク)が先導する。するとタイム差は徐々に縮まり、3分差を切った残り122km地点で先頭にヴィヴィアーニたちが合流。左腕に「プランA」と記したヴィヴィアーニを中心にハイペースを維持したため、先頭集団は5名(ヴィヴィアーニ、マレン、ルジェラガーヌ、バグラス、カギム)に絞られた。
その後逃げはヴィヴィアーニとマレンの2名となり、残り90kmを切る頃にプロトンが動き出す。8つ目の丘(距離0.9km/平均5.7%)でこの日27歳の誕生日を迎えたデレク・ジー(カナダ)からアタックが始まり、下りで飛び出したアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)にベン・ヒーリー(アイルランド)が追従。先頭からは太ももの痙攣に見舞われたヴィヴィアーニが遅れ、単独先頭に立ったマレンに残り76km地点でチームメイトのヒーリーとルツェンコが合流した。
一気にペースアップする集団からは、自身4度目の五輪に臨んだ新城幸也がプロトンから遅れるシーンも。しかし無事集団に復帰し、ペースを作るベノートの背後に優勝候補筆頭であるレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が位置を取る。そしてパリ市街地の周回コースに入る直前の丘(距離1.3km/平均6.5%)を越え、スピードが緩む補給地点でエヴェネプールがアタックした。
1週間前に個人タイムトライアルで金メダルを獲得したエヴェネプールの動きは、マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)が引き戻す。一度落ち着いたペースからダニエル・マルティネス(コロンビア)やブルゴスBH所属のジャムバルジャムツ・サインバヤル(モンゴル)などがアタック。しかしいずれも決まらず、慌ただしいプロトンからニルス・ポリッツ(ドイツ)が飛び出した。
残り60kmで飛び出したポリッツにはヴァランタン・マドゥアス(フランス)とマイケル・ウッズ(カナダ)が反応し、24秒先をいくヒーリーとルツェンコを追いかける。更にポリッツ・グループにはフレッド・ライト(イギリス)やサインバヤル、シュテファン・キュング(スイス)もジョインし、選手たちはパリの市街地に帰還。先頭のヒーリーたちと追走集団は17秒差、ベノートが牽引するプロトンと1分13秒差でレースは残り50kmを切った。
合計3度登坂する石畳坂のモンマルトル(距離1km/平均6.5%)に入り、大観衆のなかヒーリーがルツェンコを引き離す。52秒差で登りに突入したプロトンではマチュー・ファンデルプール(オランダ)が仕掛け、それをライバルのワウト・ファンアールト(ベルギー)がマーク。遅れてジュリアン・アラフィリップ(フランス)なども合流し、5名による第2追走集団を形成した。
しかし脚を止めたファンデルプールたちはプロトンに戻り、残り38km地点からエヴェネプールが矢のようなアタックを見せた。
エヴェネプールは難なくポリッツ・グループに合流すると、そこから先頭固定でペースを一気に引き上げる。ヒーリーを捉えてからもエヴェネプールはスピードを緩めることなく、2度目のモンマルトルでヒーリーとマドゥアス以外を振り落とす。一方のプロトンではディラン・ファンバーレ(オランダ)の高速牽引から、ファンデルプールがこの日2度目のアタックを見せた。
現ロード世界王者であるファンデルプールの飛び出しはここもファンアールトが潰し、プロトンに戻る。先頭ではエヴェネプールの作るペースにヒーリーが遅れ、マドゥアスは後方から迫るクリストフ・ラポルト(フランス)を待つため先頭交代を拒否。構わず踏み続けるエヴェネプールは第1追走集団(ヒーリー、キュング、ハラー)との差を拡げ、アラフィリップが飛び出すなど動きの激しいプロトンとのリードも拡大していった。
残り15km地点で追走集団とは1分差、プロトンとは1分24秒差を築いたエヴェネプール。3度目のモンマルトルの手前に設定された短い登りでエヴェネプールは加速。ついにマドゥアスを引き離し、2022年のロード世界選手権でも見せた得意の独走に持ち込んだ。
ここまで260km以上を走った疲れを一切見せず、軽快に脚を回すエヴェネプールはマドゥアスや後続との差を拡げていく。しかし残り4km地点でエヴェネプールは後輪のパンクに見舞われ、素早いバイク交換で難を逃れる。無線がないため必死の形相で駆けるエヴェネプールはチームカーから勝利に十分なタイム差であることを伝えられると、カメラに向かって笑顔を作った。
そしてエヴェネプールはイエナ橋を通過し、エッフェル塔を背後にするトロカデロ広場の最終ストレートに到着。フィニッシュラインを越えバイクを降り、両手を拡げ天を仰いだエヴェネプールが男子では五輪史上初となるタイムトライアルとロードの2冠を達成した。
フィニッシュ後、エヴェネプールはエッフェル塔を指さし「あれを見てよ。なんて場所で勝ったんだ。史上初のダブルを達成したことを誇りに思う。だって歴史的に価値あることなのだから」とコメント。「正直、力を出しすぎていまは気持ちが悪い。かなりタフなレースで、特に残り4km地点でパンクした時は緊張が走った。バイク交換が必要だったのにチームカーはその準備ができていなかったんだ。だけど十分なタイム差があった。なんて日だよ」と語り、エッフェル塔を背景にした表彰式で、2つ目のメダルを首に掛けた。
エヴェネプールに引き離された後も懸命に踏み続けたマドゥアスが、母国フランスで銀メダルを獲得。また追走集団によるスプリントはラポルトが先着したため、フランスは表彰台に2名を送ることに成功した。
単騎という厳しい状況の中でもプロトンに食らいついた新城は、トップから8分57秒遅れの56位でフィニッシュ。「日の丸を背負って、何回も走らせてもらって、恐らく最後のオリンピックになるであろう今回は準備できることは全てやりましたし、2003年にパリに来て、21年経ってこうして日本代表としてパリでのオリンピックを走るなんて思ってもいなかったので、今日は感慨深く良い 1日になりました」とコメントを残している。
6時間を超える激闘を終えた選手たちのコメントは、別記事にて紹介します。
南仏ニースで閉幕したツール・ド・フランスから2週間後の8月3日(土)、パリ2024オリンピック男子ロードレースの金メダリストを決める戦いが行われた。1チーム最大4名、52カ国から集った90名選手たちを迎えたのは、夏らしいパリの青空だった。
スタート時刻である現地時間午前11時10分の気温は20度。今年のツールで訪れることのなかったパリを象徴するエッフェル塔の眼前、トロカデロ広場から始まるコースは273kmで、アルデンヌクラシックのように詰め込まれた13箇所の丘は獲得標高差2,800mに達する。最後は石畳坂のモンマルトル(距離1km/平均6.5%)を含む18.4kmコースを2周し、再びトロカデロ広場に戻ってくる。
2023年限りでロードレースでの本格活動を終了し、五輪の開幕直前にマウンテンバイクの引退を発表したペテル・サガン(スロバキア)によるセレモニーもありながら、選手たちはパリの街に走り出す。アクチュアルスタートの直後からエリック・マニザバヨ(ルワンダ)がアタックし、それにタナカン・チャイヤソンバット(タイ)などが追従。チャールズ・カギム(ウガンダ)やクリストファー・ルジェラガーヌ(モーリシャス)など単騎で出場するメンバーによる5名の逃げ集団が形成された。
マッズ・ピーダスンをエースに据えるデンマークがメイン集団に蓋をし、1つ目の丘であるコート・デ・ガルデ(距離1.9km/勾配6%)に達する頃に逃げ集団は4分のタイム差を得る。その後10分までリードを許したプロトンからは、8月6日(火)から始まるトラックにも出場予定のエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)ら4名がアタック。昨年まで日本のマトリックスパワータグに所属し、ブルゴスBHに移籍したゲオルギオス・バグラス(ギリシャ)やグレブ・シリツァ(個人資格の中立選手)、ライアン・マレン(アイルランド)など強力なメンバーが先頭集団への合流を目指した。
コンチネンタルチームやクラブチームに所属する選手たちで構成された逃げはリードを最大15分まで拡げ、プロトンはティシュ・ベノート(ベルギー)やダーン・ホーレ(オランダ)、ミッケル・ビョーグ(デンマーク)が先導する。するとタイム差は徐々に縮まり、3分差を切った残り122km地点で先頭にヴィヴィアーニたちが合流。左腕に「プランA」と記したヴィヴィアーニを中心にハイペースを維持したため、先頭集団は5名(ヴィヴィアーニ、マレン、ルジェラガーヌ、バグラス、カギム)に絞られた。
その後逃げはヴィヴィアーニとマレンの2名となり、残り90kmを切る頃にプロトンが動き出す。8つ目の丘(距離0.9km/平均5.7%)でこの日27歳の誕生日を迎えたデレク・ジー(カナダ)からアタックが始まり、下りで飛び出したアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)にベン・ヒーリー(アイルランド)が追従。先頭からは太ももの痙攣に見舞われたヴィヴィアーニが遅れ、単独先頭に立ったマレンに残り76km地点でチームメイトのヒーリーとルツェンコが合流した。
一気にペースアップする集団からは、自身4度目の五輪に臨んだ新城幸也がプロトンから遅れるシーンも。しかし無事集団に復帰し、ペースを作るベノートの背後に優勝候補筆頭であるレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が位置を取る。そしてパリ市街地の周回コースに入る直前の丘(距離1.3km/平均6.5%)を越え、スピードが緩む補給地点でエヴェネプールがアタックした。
1週間前に個人タイムトライアルで金メダルを獲得したエヴェネプールの動きは、マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)が引き戻す。一度落ち着いたペースからダニエル・マルティネス(コロンビア)やブルゴスBH所属のジャムバルジャムツ・サインバヤル(モンゴル)などがアタック。しかしいずれも決まらず、慌ただしいプロトンからニルス・ポリッツ(ドイツ)が飛び出した。
残り60kmで飛び出したポリッツにはヴァランタン・マドゥアス(フランス)とマイケル・ウッズ(カナダ)が反応し、24秒先をいくヒーリーとルツェンコを追いかける。更にポリッツ・グループにはフレッド・ライト(イギリス)やサインバヤル、シュテファン・キュング(スイス)もジョインし、選手たちはパリの市街地に帰還。先頭のヒーリーたちと追走集団は17秒差、ベノートが牽引するプロトンと1分13秒差でレースは残り50kmを切った。
合計3度登坂する石畳坂のモンマルトル(距離1km/平均6.5%)に入り、大観衆のなかヒーリーがルツェンコを引き離す。52秒差で登りに突入したプロトンではマチュー・ファンデルプール(オランダ)が仕掛け、それをライバルのワウト・ファンアールト(ベルギー)がマーク。遅れてジュリアン・アラフィリップ(フランス)なども合流し、5名による第2追走集団を形成した。
しかし脚を止めたファンデルプールたちはプロトンに戻り、残り38km地点からエヴェネプールが矢のようなアタックを見せた。
エヴェネプールは難なくポリッツ・グループに合流すると、そこから先頭固定でペースを一気に引き上げる。ヒーリーを捉えてからもエヴェネプールはスピードを緩めることなく、2度目のモンマルトルでヒーリーとマドゥアス以外を振り落とす。一方のプロトンではディラン・ファンバーレ(オランダ)の高速牽引から、ファンデルプールがこの日2度目のアタックを見せた。
現ロード世界王者であるファンデルプールの飛び出しはここもファンアールトが潰し、プロトンに戻る。先頭ではエヴェネプールの作るペースにヒーリーが遅れ、マドゥアスは後方から迫るクリストフ・ラポルト(フランス)を待つため先頭交代を拒否。構わず踏み続けるエヴェネプールは第1追走集団(ヒーリー、キュング、ハラー)との差を拡げ、アラフィリップが飛び出すなど動きの激しいプロトンとのリードも拡大していった。
残り15km地点で追走集団とは1分差、プロトンとは1分24秒差を築いたエヴェネプール。3度目のモンマルトルの手前に設定された短い登りでエヴェネプールは加速。ついにマドゥアスを引き離し、2022年のロード世界選手権でも見せた得意の独走に持ち込んだ。
ここまで260km以上を走った疲れを一切見せず、軽快に脚を回すエヴェネプールはマドゥアスや後続との差を拡げていく。しかし残り4km地点でエヴェネプールは後輪のパンクに見舞われ、素早いバイク交換で難を逃れる。無線がないため必死の形相で駆けるエヴェネプールはチームカーから勝利に十分なタイム差であることを伝えられると、カメラに向かって笑顔を作った。
そしてエヴェネプールはイエナ橋を通過し、エッフェル塔を背後にするトロカデロ広場の最終ストレートに到着。フィニッシュラインを越えバイクを降り、両手を拡げ天を仰いだエヴェネプールが男子では五輪史上初となるタイムトライアルとロードの2冠を達成した。
フィニッシュ後、エヴェネプールはエッフェル塔を指さし「あれを見てよ。なんて場所で勝ったんだ。史上初のダブルを達成したことを誇りに思う。だって歴史的に価値あることなのだから」とコメント。「正直、力を出しすぎていまは気持ちが悪い。かなりタフなレースで、特に残り4km地点でパンクした時は緊張が走った。バイク交換が必要だったのにチームカーはその準備ができていなかったんだ。だけど十分なタイム差があった。なんて日だよ」と語り、エッフェル塔を背景にした表彰式で、2つ目のメダルを首に掛けた。
エヴェネプールに引き離された後も懸命に踏み続けたマドゥアスが、母国フランスで銀メダルを獲得。また追走集団によるスプリントはラポルトが先着したため、フランスは表彰台に2名を送ることに成功した。
単騎という厳しい状況の中でもプロトンに食らいついた新城は、トップから8分57秒遅れの56位でフィニッシュ。「日の丸を背負って、何回も走らせてもらって、恐らく最後のオリンピックになるであろう今回は準備できることは全てやりましたし、2003年にパリに来て、21年経ってこうして日本代表としてパリでのオリンピックを走るなんて思ってもいなかったので、今日は感慨深く良い 1日になりました」とコメントを残している。
6時間を超える激闘を終えた選手たちのコメントは、別記事にて紹介します。
パリ2024オリンピック ロードレース男子結果
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー) | 6:19:34 |
2位 | ヴァランタン・マドゥアス(フランス) | +1:11 |
3位 | クリストフ・ラポルト(フランス) | +1:16 |
4位 | アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー) | |
5位 | トムス・スクインシュ(ラトビア) | |
6位 | マルコ・ハラー(オーストリア) | |
7位 | シュテファン・キュング(スイス) | |
8位 | ヤン・トラトニク(スロベニア) | |
9位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ) | |
10位 | ベン・ヒーリー(アイルランド) | +1:20 |
11位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス) | +1:25 |
12位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ) | +1:49 |
13位 | トーマス・ピドコック(イギリス) | +1:50 |
37位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー) | +3:47 |
56位 | 新城幸也 | +8:57 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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