2024/07/31(水) - 18:15
3回めの開催を迎えた木曽おんたけグランフォンドを実体験レポート。ルート上には信号が2つしかないという大自然のなか、開田高原と日和田高原をつなぎ御嶽山の麓をぐるりと巡る獲得標高約2,000mの山岳ライドは涼しさと自然の魅力にあふれている。
たった50人で試走的に走った初回イベントを除けば2回目の開催となる木曽おんたけグランフォンド(KOGF)に、昨年に続き参加してきた。今回は前入りして前日受付を行い、木曽福島市街に宿泊することに。
小規模なのでまだ長野県内や近隣の参加者が大半を占めるこのイベント。しかし見知らぬ木曽の良さを味わえるという意味では県外の人にこそ魅力が大きいと思っている。そして筆者の住む首都圏エリアは連日の熱中症警戒アラートが出る酷暑で、とても屋外を走れたもんじゃない。昨年に感じた木曽の冷涼感を求めて今年も取材参加を決めたのだった。
スタート/フィニッシュ地点のあるメイン会場はセルフディスカバリーアドベンチャー王滝の会場としてもおなじみの王滝村・松原スポーツ公園だ。前日の夕方までに受付を済ませた参加者は、王滝村の民宿か、20km弱下った木曽福島に宿をとる人が多いようだ。前日受付はエントリーフィーが1,000円安くなるのも嬉しい。
東京からならクルマで約4時間。高速のインターから一般道で約50km以上あるアクセス不便な立地だが、少し時間の余裕があるなら寄り道観光がおすすめだ。筆者は中央高速道の塩尻インターで降りて国道19号で木曽に向かったが、途中で奈良井宿(ならいじゅく)を観光した。ここはかつて中山道沿道で最も栄えた宿場町のひとつで、古き良き状態で残る町並みは風情たっぷり。徒歩も良いが、自転車を使っての散策なら効率よく脚も疲れず回れるのでおすすめだ。
夕方には国道19号線沿いの桟(かけはし)温泉を堪能(日帰り入浴700円)。木曽川の寝覚めの床に近い秘湯の雰囲気を満喫したら、夜は前泊のため木曽福島へ。宿場町として有名な街で、こちらも風情たっぷり。日暮れの街ぶらを楽しんだ。
木曽福島は「崖家づくり」という川沿いの崖にびっしりと建つ古い家並みがユニーク。夜は古民家ゲストハウスmatari houseに泊まり、同じくイベントに参加予定だという自転車仲間と楽しくおしゃべりを楽しんだ。木曽福島は素敵な温泉旅館が充実した街だが、この宿はドミトリーなのでお手軽な宿泊料がお財布に優しかった。標高の高さのおかげでエアコン無しでも涼しい夜を過ごせた。
そして今年から松原スポーツ公園での前夜キャンププランがスタート。会場裏の芝の広場はテントスペースとして広大。直火でなければ火を使うこともできるのでBBQや調理なども可能だ。前泊した人に聞けば夜は天の川が見える美しい星空が楽しめ、静かで涼しくて最高だったとのこと。ちなみにシャワー、トイレ、水場もあるので、快適に過ごすことができる。キャンプ&ライドでの参加もかなり楽しめそうだ。
昨年の第2回大会は200人だった参加者は、今年300人を集めた。じつに1.5倍の伸びで、始まったばかりのまだまだ小規模なイベントだが、朝の会場はずいぶん賑やかになったと感じた。イベントのスタートは早朝6時30分。下界は35℃を超える猛暑予報だが、朝の松原スポーツ公園は肌寒いほど。御岳湖から立ち上る朝霧が神秘的だった。
参加人数が少し増えたことでウェーブスタートが採用され、6:30から10分間隔で100人ずつ3ウェーブに分けてスタートしていく。湖畔道路はクルマも皆無で、下り基調で走り出せるからお目覚めウォームアップには都合がいい。「最近暑いから全然走れていないんだよね」と話す人も多いが、無理なく走り出せる。
下りきったら交通量の無い裏道で木曽福島へ。風情ある旧中山道の町並みが続く先に、地酒「中乗さん」で有名な中善酒造のエイドに到着。ここでの最初の補給メニューはノンアルコールの乳酸あま酒。中善酒造の社員の皆さんが振る舞ってくれるのが嬉しい。
中山道は東海道に並ぶ京都〜江戸を結ぶ昔の幹線道路だが、新国道(19号線)ができた際には街中をあえて通さなかったことで古き良き宿場の町並みがそのまま残っているのだ。イベントの走行ルートは川の対岸であり、そんな意味でも前夜に福島宿の旧市街に泊まって散策できたのは良かった。
福島宿を後にしたら、次のエイドまでは平坦&緩い登り基調だ。第2エイドではねぎ味噌おにぎりときゅうりの浅漬けをいただく。時間的にもちょうど良い「2度目の軽い朝食」になり、汗をかいた身体に塩っ気が嬉しい。
補給をすませたら地蔵峠への距離8km・獲得標高485mのヒルクライムが始まる。ここからの旧飛騨街道はクルマはまったくといっていいほど通ることはない。急坂だけど、周囲を深い森に囲まれているため日陰で涼しく走れるのもいい。檜(ひのき)、椹(さわら)、翌檜(あすなろ)といった木曽の銘木の森が目を楽しませてくれる。
昔からサイクリストに愛されてきた風情のある峠道を登り詰めたら、赤い毛糸の帽子を被ったお地蔵さんが道路脇にたたずむ地蔵峠(1,335m)だ。
シンプルな木造りの展望デッキ、そして峠から少し下った先に御嶽山が見渡せる展望スポットがある。昨年は雲一つ無い御嶽山の神々しい山容が眺められたが、今年は残念ながら山頂付近に雲がかかってしまっていた。
峠から少し下った道路脇に御嶽山のパノラマが開ける有名なコーナーがあり、皆さんそこで停まって記念写真タイム。標高3,067mの御嶽山は独立峰では富士山に次ぐ高さで、神々しいその山容は古くから山岳信仰の対象とされてきた。2014年の噴火は大災害となったが、今は登山もできるほどに落ち着いている。
峠から下り切ると開田高原の広々とした風景が広がる。クルマもほとんど通らず、空に向かって開けるような道がなんとも気持ち良い。第3エイドの彩菜館では開田高原名物の蕎麦と採れたてブルーベリーをいただいて小腹を満たす。
高原のなだらかなアップダウンをこなし、距離約3.5km・標高差170mの緩い勾配をたんたんと登れば長峰峠だ。峠頂上が長野県と岐阜県の県境にあり、その先は高山市だ。
峠を越えて下った先にはこのイベント唯一の関門がまっている。メカニックサポートブースと給水所、そして水浴びができるバケツの用意があるが、この日は涼しくて水を浴びること無く次の上りへ。
この場所の標高は1,300m近くあるが、ここから往復となる最難関の登りは約9km・470mアップ。疲れ切っていたり、時間切れで脚に余裕が無い場合はここで折り返すことになるが、この日はすべての参加者が山頂へと向かった。
日和田高原から柳蘭峠を経て、標高約1,790m地点の第4エイドまで木陰の無い広い道の登坂が続く。道の両側に白樺林が広がる美しい道で、クルマが来ないためランナーがジョグ練習をしたり、ローラースキーで滑走している子どもたちを見かける。勾配は(富士ヒルクライムのように)緩やかで一定で、淡々と走れる。登るにつれ空気が薄くなっていくのを感じる。
旧チャオ御岳スキー場前の広場が頂上エイドになっていて、つづら折れの先の広場に設置されたテントで休むことができる。この最高標高地点で仲間の到着を待ち、しばし大休止だ。ここで供されるのは五平餅と糀味噌きゅうり。郷土色あふれるおもてなしと、タンクローリーで給水してくれる名水をいただく。
この視界が開けた山岳ポイントからは晴れていれば向かいに乗鞍岳、背後に御嶽山の頂上が眺められるはずが、あいにく両方ともに雲がかかっていたのは残念だ。
頂上付近には「飛騨御嶽尚子ボルダーロード」の石碑がある。岐阜県出身の金メダリスト、高橋尚子さんにちなんで名付けられたこの地は高地トレーニングのメッカとして整備されており、頂上にはスポーツ合宿施設もあってアスリートで賑わっている。自転車の日本代表選手たちもこの地でトレーニングしているという。
頂上付近は晴れても涼しいのに、曇り空では肌寒いぐらい。ウィンドブレイカーを着込んで、登って来た道をダウンヒル。ここからの後半45kmは長峰峠への少しの登り返しを除いてほぼ下りだ。
長い長いダウンヒルはスピードが出るため着込んでも寒さを感じていたが、標高が下がるにつれて気温も上がり、暑くなってきた。グランピング施設もある木曽温泉「黄金の湯」に設置された第5エイドで休憩。ここではソフトドリンクと塩ようかんが供された。炭酸飲料、スポーツドリンク、お茶から選べるのも嬉しい配慮。お昼を過ぎてちょうど眠気が出てくる頃、こうしたドリンクはいい目覚ましになる。
ちなみにエイドでの補給食は郷土の味が楽しめるものの、どれもカロリーは低いのでエナジージェルなどを持って走るのがおすすめだ。ルート上にコンビニや商店は無いので、とくに走行時間が長くなる初心者ほど念のための補給食を持っておくと良いでしょう。
エイドを出て、下り切る前に立ち寄りたい名所スポット「天然炭酸水」がある(約98km地点)。スピードを出して下っている途中の反対車線沿いの民家の前にある小さな湧き水なので見逃す確率は極めて高いが、今年もこの土地を知り尽くした鈴木雷太プロデューサーと一緒に走っていたおかげで見過ごさなかった。
世にも珍しい発泡した天然の湧き水は冷たくて爽やかな味。ボトルにも汲んで帰路に飲むのを楽しむことに。次回参加する人は素通りしてしまわないようにしよう。ただし一般民家の所有なので水汲みの際はマナーに気をつけたい。
午後2時になり、気温がもっとも高くなる時間帯に。雷太さんの案内で辻浦圭一さんと一緒に川に降りることに。秘密の水浴びポイントで川に浸かって身体を冷やした。「来年以降イベント内で参加者にお勧めするには安全上や河川管理者からの許可を得る等のハードルがあるが、熱中症対策として冷たい川の水をかぶることができないか、真面目に検討している」とのことだ。それにしても冷たくて気持ちよかった。
下りきった後にある信号は2段階右折が必要だけど、現状ではやや安全上の問題がある。このため以前より検討していた新しいルートについて抜け道を開拓してきた。やや細い道になるのでこれから確認が必要だが、その道が採用されればさらに走りやすくなる。
木曽福島からはなだらかな登り基調の湖畔道路を走り、フィニッシュ地点の王滝村へ。例年、ラスト10kmは暑さを感じてきたが、川に「ドボン」した後だったので涼しく快調に走ることができた。フィニッシュには13時半の到着だったが、15時までにはすべての参加者が走り終えた。
サイコンでの実測データで約115km、獲得標高1,932m、走行タイムは5時間ちょうどだった。獲得標高が約2,000mあるので走りごたえはバッチリだが、距離はグランフォンドとしては短めなので、走り込み不足だった身体にはとても助かった。
思えば今夏にロードでしっかり屋外を走り込めたのは久しぶり。何より酷暑の首都圏から来た身にとっては、早朝スタートで標高を上げていき、ちょうど暑くなる時間帯を涼しい高地で過ごせるように組まれた走行スケジュールが絶妙で、早朝からフィニッシュするまでずっと涼しく過ごせた。避暑ライドとしも本当に満足感が高いロングライドだった。
アルプスあづみのセンチュリーライドも手掛ける大会プロデューサーの鈴木雷太さんはじめ、長野で各種サイクリングイベントを開催するチームが運営するKOGF。長野在住のスタッフさん皆が称賛するほどに走りやすい自転車環境が木曽にはある。涼しさもこの時期最大の魅力で、過酷な暑さを感じること無く走れたことが何より最高だと感じた。
「参加者500人が当面の目標 キャンプ&ライドでいつもと違う夏の遠征にしてほしい」
大会プロデューサー 鈴木雷太さん
涼しくて走りやすい一日で、事故もなく、運営もお手伝いしてくれる地元の方たちも慣れてきたので大会としては無事成功でしたが、しいて言えば御岳山も乗鞍岳も雲がかかって見えなかったので、それだけが心残りです。クリアに晴れれば本当に素晴らしい眺めなので、またぜひ見に来てください。
でも涼しさという木曽の魅力は参加者の皆さんに十分に伝わったと思います。
昨年は200人が参加。今年は300人と、まだまだこじんまりしたミニイベントですが、だからこその良さもありますね。主催者としては1,000人を目標にしていますが、500人ぐらいまでならアットホームで目が行き届きます。今年から前日キャンプが可能になって、Camp and Ride で参加できるようになりました。私もキャンプで過ごしたんですが、夜は満天の星が輝き、天の川がクリアに見えたのには感動しました。テントで寝るのも涼しいし、おすすめです。
今回は個人的にキャンプをめちゃめちゃ楽しみにしていたんです。実は去年も夜間警備の予算が無かったので会場でキャンプしたんです(笑)が、涼しくて気持ちよかった。星のきれいなところは他にもあると思うけど、木曽でのキャンプは本当に素晴らしいです。焚き火台やコンロを使っていただければ料理もBBQもできますし。
この周辺は宿に泊まるにしてもネット予約サイトに載っていない民宿や旅館が多くて、観光協会に電話して探す必要があるなど「ひと手間」かかるんですが、そのぶん素朴な宿にも巡り会えます。ビジネスホテルだと約55km離れた伊那になるので、木曽福島の宿や、このキャンプサイトもぜひ利用してください。いつもと違う仲間との遠征になると思いますよ。
text&photo:Makoto.AYANO
たった50人で試走的に走った初回イベントを除けば2回目の開催となる木曽おんたけグランフォンド(KOGF)に、昨年に続き参加してきた。今回は前入りして前日受付を行い、木曽福島市街に宿泊することに。
小規模なのでまだ長野県内や近隣の参加者が大半を占めるこのイベント。しかし見知らぬ木曽の良さを味わえるという意味では県外の人にこそ魅力が大きいと思っている。そして筆者の住む首都圏エリアは連日の熱中症警戒アラートが出る酷暑で、とても屋外を走れたもんじゃない。昨年に感じた木曽の冷涼感を求めて今年も取材参加を決めたのだった。
スタート/フィニッシュ地点のあるメイン会場はセルフディスカバリーアドベンチャー王滝の会場としてもおなじみの王滝村・松原スポーツ公園だ。前日の夕方までに受付を済ませた参加者は、王滝村の民宿か、20km弱下った木曽福島に宿をとる人が多いようだ。前日受付はエントリーフィーが1,000円安くなるのも嬉しい。
東京からならクルマで約4時間。高速のインターから一般道で約50km以上あるアクセス不便な立地だが、少し時間の余裕があるなら寄り道観光がおすすめだ。筆者は中央高速道の塩尻インターで降りて国道19号で木曽に向かったが、途中で奈良井宿(ならいじゅく)を観光した。ここはかつて中山道沿道で最も栄えた宿場町のひとつで、古き良き状態で残る町並みは風情たっぷり。徒歩も良いが、自転車を使っての散策なら効率よく脚も疲れず回れるのでおすすめだ。
夕方には国道19号線沿いの桟(かけはし)温泉を堪能(日帰り入浴700円)。木曽川の寝覚めの床に近い秘湯の雰囲気を満喫したら、夜は前泊のため木曽福島へ。宿場町として有名な街で、こちらも風情たっぷり。日暮れの街ぶらを楽しんだ。
木曽福島は「崖家づくり」という川沿いの崖にびっしりと建つ古い家並みがユニーク。夜は古民家ゲストハウスmatari houseに泊まり、同じくイベントに参加予定だという自転車仲間と楽しくおしゃべりを楽しんだ。木曽福島は素敵な温泉旅館が充実した街だが、この宿はドミトリーなのでお手軽な宿泊料がお財布に優しかった。標高の高さのおかげでエアコン無しでも涼しい夜を過ごせた。
そして今年から松原スポーツ公園での前夜キャンププランがスタート。会場裏の芝の広場はテントスペースとして広大。直火でなければ火を使うこともできるのでBBQや調理なども可能だ。前泊した人に聞けば夜は天の川が見える美しい星空が楽しめ、静かで涼しくて最高だったとのこと。ちなみにシャワー、トイレ、水場もあるので、快適に過ごすことができる。キャンプ&ライドでの参加もかなり楽しめそうだ。
昨年の第2回大会は200人だった参加者は、今年300人を集めた。じつに1.5倍の伸びで、始まったばかりのまだまだ小規模なイベントだが、朝の会場はずいぶん賑やかになったと感じた。イベントのスタートは早朝6時30分。下界は35℃を超える猛暑予報だが、朝の松原スポーツ公園は肌寒いほど。御岳湖から立ち上る朝霧が神秘的だった。
参加人数が少し増えたことでウェーブスタートが採用され、6:30から10分間隔で100人ずつ3ウェーブに分けてスタートしていく。湖畔道路はクルマも皆無で、下り基調で走り出せるからお目覚めウォームアップには都合がいい。「最近暑いから全然走れていないんだよね」と話す人も多いが、無理なく走り出せる。
下りきったら交通量の無い裏道で木曽福島へ。風情ある旧中山道の町並みが続く先に、地酒「中乗さん」で有名な中善酒造のエイドに到着。ここでの最初の補給メニューはノンアルコールの乳酸あま酒。中善酒造の社員の皆さんが振る舞ってくれるのが嬉しい。
中山道は東海道に並ぶ京都〜江戸を結ぶ昔の幹線道路だが、新国道(19号線)ができた際には街中をあえて通さなかったことで古き良き宿場の町並みがそのまま残っているのだ。イベントの走行ルートは川の対岸であり、そんな意味でも前夜に福島宿の旧市街に泊まって散策できたのは良かった。
福島宿を後にしたら、次のエイドまでは平坦&緩い登り基調だ。第2エイドではねぎ味噌おにぎりときゅうりの浅漬けをいただく。時間的にもちょうど良い「2度目の軽い朝食」になり、汗をかいた身体に塩っ気が嬉しい。
補給をすませたら地蔵峠への距離8km・獲得標高485mのヒルクライムが始まる。ここからの旧飛騨街道はクルマはまったくといっていいほど通ることはない。急坂だけど、周囲を深い森に囲まれているため日陰で涼しく走れるのもいい。檜(ひのき)、椹(さわら)、翌檜(あすなろ)といった木曽の銘木の森が目を楽しませてくれる。
昔からサイクリストに愛されてきた風情のある峠道を登り詰めたら、赤い毛糸の帽子を被ったお地蔵さんが道路脇にたたずむ地蔵峠(1,335m)だ。
シンプルな木造りの展望デッキ、そして峠から少し下った先に御嶽山が見渡せる展望スポットがある。昨年は雲一つ無い御嶽山の神々しい山容が眺められたが、今年は残念ながら山頂付近に雲がかかってしまっていた。
峠から少し下った道路脇に御嶽山のパノラマが開ける有名なコーナーがあり、皆さんそこで停まって記念写真タイム。標高3,067mの御嶽山は独立峰では富士山に次ぐ高さで、神々しいその山容は古くから山岳信仰の対象とされてきた。2014年の噴火は大災害となったが、今は登山もできるほどに落ち着いている。
峠から下り切ると開田高原の広々とした風景が広がる。クルマもほとんど通らず、空に向かって開けるような道がなんとも気持ち良い。第3エイドの彩菜館では開田高原名物の蕎麦と採れたてブルーベリーをいただいて小腹を満たす。
高原のなだらかなアップダウンをこなし、距離約3.5km・標高差170mの緩い勾配をたんたんと登れば長峰峠だ。峠頂上が長野県と岐阜県の県境にあり、その先は高山市だ。
峠を越えて下った先にはこのイベント唯一の関門がまっている。メカニックサポートブースと給水所、そして水浴びができるバケツの用意があるが、この日は涼しくて水を浴びること無く次の上りへ。
この場所の標高は1,300m近くあるが、ここから往復となる最難関の登りは約9km・470mアップ。疲れ切っていたり、時間切れで脚に余裕が無い場合はここで折り返すことになるが、この日はすべての参加者が山頂へと向かった。
日和田高原から柳蘭峠を経て、標高約1,790m地点の第4エイドまで木陰の無い広い道の登坂が続く。道の両側に白樺林が広がる美しい道で、クルマが来ないためランナーがジョグ練習をしたり、ローラースキーで滑走している子どもたちを見かける。勾配は(富士ヒルクライムのように)緩やかで一定で、淡々と走れる。登るにつれ空気が薄くなっていくのを感じる。
旧チャオ御岳スキー場前の広場が頂上エイドになっていて、つづら折れの先の広場に設置されたテントで休むことができる。この最高標高地点で仲間の到着を待ち、しばし大休止だ。ここで供されるのは五平餅と糀味噌きゅうり。郷土色あふれるおもてなしと、タンクローリーで給水してくれる名水をいただく。
この視界が開けた山岳ポイントからは晴れていれば向かいに乗鞍岳、背後に御嶽山の頂上が眺められるはずが、あいにく両方ともに雲がかかっていたのは残念だ。
頂上付近には「飛騨御嶽尚子ボルダーロード」の石碑がある。岐阜県出身の金メダリスト、高橋尚子さんにちなんで名付けられたこの地は高地トレーニングのメッカとして整備されており、頂上にはスポーツ合宿施設もあってアスリートで賑わっている。自転車の日本代表選手たちもこの地でトレーニングしているという。
頂上付近は晴れても涼しいのに、曇り空では肌寒いぐらい。ウィンドブレイカーを着込んで、登って来た道をダウンヒル。ここからの後半45kmは長峰峠への少しの登り返しを除いてほぼ下りだ。
長い長いダウンヒルはスピードが出るため着込んでも寒さを感じていたが、標高が下がるにつれて気温も上がり、暑くなってきた。グランピング施設もある木曽温泉「黄金の湯」に設置された第5エイドで休憩。ここではソフトドリンクと塩ようかんが供された。炭酸飲料、スポーツドリンク、お茶から選べるのも嬉しい配慮。お昼を過ぎてちょうど眠気が出てくる頃、こうしたドリンクはいい目覚ましになる。
ちなみにエイドでの補給食は郷土の味が楽しめるものの、どれもカロリーは低いのでエナジージェルなどを持って走るのがおすすめだ。ルート上にコンビニや商店は無いので、とくに走行時間が長くなる初心者ほど念のための補給食を持っておくと良いでしょう。
エイドを出て、下り切る前に立ち寄りたい名所スポット「天然炭酸水」がある(約98km地点)。スピードを出して下っている途中の反対車線沿いの民家の前にある小さな湧き水なので見逃す確率は極めて高いが、今年もこの土地を知り尽くした鈴木雷太プロデューサーと一緒に走っていたおかげで見過ごさなかった。
世にも珍しい発泡した天然の湧き水は冷たくて爽やかな味。ボトルにも汲んで帰路に飲むのを楽しむことに。次回参加する人は素通りしてしまわないようにしよう。ただし一般民家の所有なので水汲みの際はマナーに気をつけたい。
午後2時になり、気温がもっとも高くなる時間帯に。雷太さんの案内で辻浦圭一さんと一緒に川に降りることに。秘密の水浴びポイントで川に浸かって身体を冷やした。「来年以降イベント内で参加者にお勧めするには安全上や河川管理者からの許可を得る等のハードルがあるが、熱中症対策として冷たい川の水をかぶることができないか、真面目に検討している」とのことだ。それにしても冷たくて気持ちよかった。
下りきった後にある信号は2段階右折が必要だけど、現状ではやや安全上の問題がある。このため以前より検討していた新しいルートについて抜け道を開拓してきた。やや細い道になるのでこれから確認が必要だが、その道が採用されればさらに走りやすくなる。
木曽福島からはなだらかな登り基調の湖畔道路を走り、フィニッシュ地点の王滝村へ。例年、ラスト10kmは暑さを感じてきたが、川に「ドボン」した後だったので涼しく快調に走ることができた。フィニッシュには13時半の到着だったが、15時までにはすべての参加者が走り終えた。
サイコンでの実測データで約115km、獲得標高1,932m、走行タイムは5時間ちょうどだった。獲得標高が約2,000mあるので走りごたえはバッチリだが、距離はグランフォンドとしては短めなので、走り込み不足だった身体にはとても助かった。
思えば今夏にロードでしっかり屋外を走り込めたのは久しぶり。何より酷暑の首都圏から来た身にとっては、早朝スタートで標高を上げていき、ちょうど暑くなる時間帯を涼しい高地で過ごせるように組まれた走行スケジュールが絶妙で、早朝からフィニッシュするまでずっと涼しく過ごせた。避暑ライドとしも本当に満足感が高いロングライドだった。
アルプスあづみのセンチュリーライドも手掛ける大会プロデューサーの鈴木雷太さんはじめ、長野で各種サイクリングイベントを開催するチームが運営するKOGF。長野在住のスタッフさん皆が称賛するほどに走りやすい自転車環境が木曽にはある。涼しさもこの時期最大の魅力で、過酷な暑さを感じること無く走れたことが何より最高だと感じた。
「参加者500人が当面の目標 キャンプ&ライドでいつもと違う夏の遠征にしてほしい」
大会プロデューサー 鈴木雷太さん
涼しくて走りやすい一日で、事故もなく、運営もお手伝いしてくれる地元の方たちも慣れてきたので大会としては無事成功でしたが、しいて言えば御岳山も乗鞍岳も雲がかかって見えなかったので、それだけが心残りです。クリアに晴れれば本当に素晴らしい眺めなので、またぜひ見に来てください。
でも涼しさという木曽の魅力は参加者の皆さんに十分に伝わったと思います。
昨年は200人が参加。今年は300人と、まだまだこじんまりしたミニイベントですが、だからこその良さもありますね。主催者としては1,000人を目標にしていますが、500人ぐらいまでならアットホームで目が行き届きます。今年から前日キャンプが可能になって、Camp and Ride で参加できるようになりました。私もキャンプで過ごしたんですが、夜は満天の星が輝き、天の川がクリアに見えたのには感動しました。テントで寝るのも涼しいし、おすすめです。
今回は個人的にキャンプをめちゃめちゃ楽しみにしていたんです。実は去年も夜間警備の予算が無かったので会場でキャンプしたんです(笑)が、涼しくて気持ちよかった。星のきれいなところは他にもあると思うけど、木曽でのキャンプは本当に素晴らしいです。焚き火台やコンロを使っていただければ料理もBBQもできますし。
この周辺は宿に泊まるにしてもネット予約サイトに載っていない民宿や旅館が多くて、観光協会に電話して探す必要があるなど「ひと手間」かかるんですが、そのぶん素朴な宿にも巡り会えます。ビジネスホテルだと約55km離れた伊那になるので、木曽福島の宿や、このキャンプサイトもぜひ利用してください。いつもと違う仲間との遠征になると思いますよ。
text&photo:Makoto.AYANO
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