2024/07/18(木) - 09:28
3級山岳にフィニッシュしたツール・ド・フランス第17ステージで、リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)が逃げ切り。東京五輪金メダリストが全グランツール区間優勝を叶え、アタックしたポガチャルがヴィンゲゴーから2秒を奪った。
7月17日(水)第17ステージ
サン・ポール・トロワ・シャトー〜シュペルデヴォリュイ 177.8km(山岳)
第111回ツール・ド・フランスは逃げに適したステージが少なく、ここまで逃げ切り勝利はわずか3つ。そんな逃げ屋たちの数少ないチャンスとなったのが、アルプス山脈を舞台にしたサン・ポール・トロワ・シャトーからシュペルデヴォリュイに向かう177.8kmだ。
スタートから134.4kmまでは緩やかに標高を上げていく平坦路。一度下ってから2級山岳とボーナスタイムの設定された1級山岳ノワイエ峠(距離7.5km/平均8.1%)を連続で登坂し、フィニッシュ地点は一度下り、ツール初登場の3級山岳シュペルデヴォリュイ(距離3.8km/平均5.9%)の頂上にある。
この日は前日の集団スプリントで2位に入ったフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)が未出走。また最終日ニースまでもう平坦ステージが登場しないため、サム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアル)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)などスプリンターたちもレース途中でバイクを降りた。
アクチュアルスタートを切った集団には強い横風が吹きつけ、ワウト・ファンアールトやティシュ・ベノート(共にベルギー)などヴィスマ・リースアバイクの選手たちが集団分断を試みる。また逃げ切りを狙うEFエデュケーション・イージーポストやDSMフィルメニッヒ・ポストNLも積極的に仕掛けたため、最初の50kmは平均速度47km/hに達するハイペースで進行した。
エシュロン(横風分断)は不発に終わったものの、残り121km地点でベノートとボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)、マグナス・コルト(デンマーク、ウノエックス・モビリティ)という強力な逃げ集団が形成される。しかし逃げ切りを諦めない選手たちが機会を伺い、先頭4名は暫く1分からタイム差を拡大することができなかった。
カテゴリーのつかない登り区間ではリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)とサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)がプロトンを飛び出し、追走を試みるシーンも。しかしこれは成功せず、残り63km地点の中間スプリントは争うことなくコルトが先頭通過。54秒後方のメイン集団では前日の落車で負傷したビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)がヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)を退け、マイヨヴェール・ランキングのリードを1ポイント拡大させた。
ベノートを追いかけるプロトンでは依然としてアタックと吸収が繰り返され、残り53km地点で約40名の追走集団が誕生する。その中にカラパスやイェーツ、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)など強力クライマーたちが入った一方で、総合上位勢を脅かす選手はいなかったためUAEチームエミレーツは静観。残り38.9kmから始まる2級山岳に先頭4名が達する頃に、追走とは1分42秒、プロトンとは4分20秒まで差が拡がった。
2級山岳の頂上もコルトがトップ通過し、追走集団からはマルタンとヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)が飛び出して前を追う。1級山岳ノワイエ峠(距離7.5km/平均8.1%)の登りではマルタンとマドゥアスが先頭4名に追いつき、人数の絞られていく追走集団からサイモン・イェーツが加速。軽やかなダンシングで先頭6名に合流し、そのまま踏み続けたイェーツは単独先頭に立った。
その背後からカラパスがスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)と共に迫る。カラパスはウィリアムズを振り落とすハイスピードでイェーツにジョインし、1級山岳の頂上手前1.8km(残り13.3km)地点でアタックした。
粘るイェーツを引き離し、頂上を先頭通過したカラパスは差を拡げながらフィニッシュラインの引かれた3級山岳シュペルデヴォリュイ(距離3.8km/平均5.9%)に突入する。その8分47秒後方、1級山岳を登るプロトンではタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がアタック。「なぜ仕掛けたのか自分にも分からない」とレース後振り返ったマイヨジョーヌには、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が反応した。
一度離されたエヴェネプールがマイペースで徐々にポガチャルとの差を縮める一方で、ヴィンゲゴーが遅れていく。ポガチャルはエヴェネプールに13秒差、ヴィンゲゴーに19差をつけ1級山岳を通過。しかしピンチに陥ったヴィンゲゴーには逃げていたクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)が合流し、勾配のある下りで前を牽いた。
下りで攻めることをしなかったポガチャルにはエヴェネプールが追いつき、ラポルトの手を借りたヴィンゲゴーもジョイン。総合争いがひとまず落ち着くなか、最後までイェーツとのリードを保ったカラパスが逃げ切り勝利を決めた。
残り3.8km地点ではエヴェネプールがアタックし、ポガチャルとヴィンゲゴーはこれを見送る。マイヨブランには前で待っていたヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ)が牽引し、ヴィンゲゴーにはファンアールトとベノート、ポガチャルにはパヴェル・シヴァコフ(ロシア、UAEチームエミレーツ)が合流。エヴェネプールは先頭から7分13秒遅れでフィニッシュし、最後にスプリントしたポガチャルはヴィンゲゴーを引き離し、2秒を奪うことに成功している。
ツールで初勝利を飾ったカラパスは「開幕からずっと勝利を狙っていた。ステージ終盤のコースは監督と共に予習しており、一生忘れられない勝利となった。アメリカ大陸を代表する最高の走りができた」と喜ぶ。また「既にジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャでは勝利していたが、世界最高峰のツールでの勝利はまだだった」と語ったカラパスは、これで全グランツールでの区間優勝を叶えた。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)などスプリンターたちが制限時間内にフィニッシュした一方で、同じチームのアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)は膝の負傷が悪化したため途中でリタイアしている。
7月17日(水)第17ステージ
サン・ポール・トロワ・シャトー〜シュペルデヴォリュイ 177.8km(山岳)
第111回ツール・ド・フランスは逃げに適したステージが少なく、ここまで逃げ切り勝利はわずか3つ。そんな逃げ屋たちの数少ないチャンスとなったのが、アルプス山脈を舞台にしたサン・ポール・トロワ・シャトーからシュペルデヴォリュイに向かう177.8kmだ。
スタートから134.4kmまでは緩やかに標高を上げていく平坦路。一度下ってから2級山岳とボーナスタイムの設定された1級山岳ノワイエ峠(距離7.5km/平均8.1%)を連続で登坂し、フィニッシュ地点は一度下り、ツール初登場の3級山岳シュペルデヴォリュイ(距離3.8km/平均5.9%)の頂上にある。
この日は前日の集団スプリントで2位に入ったフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)が未出走。また最終日ニースまでもう平坦ステージが登場しないため、サム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアル)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)などスプリンターたちもレース途中でバイクを降りた。
アクチュアルスタートを切った集団には強い横風が吹きつけ、ワウト・ファンアールトやティシュ・ベノート(共にベルギー)などヴィスマ・リースアバイクの選手たちが集団分断を試みる。また逃げ切りを狙うEFエデュケーション・イージーポストやDSMフィルメニッヒ・ポストNLも積極的に仕掛けたため、最初の50kmは平均速度47km/hに達するハイペースで進行した。
エシュロン(横風分断)は不発に終わったものの、残り121km地点でベノートとボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)、マグナス・コルト(デンマーク、ウノエックス・モビリティ)という強力な逃げ集団が形成される。しかし逃げ切りを諦めない選手たちが機会を伺い、先頭4名は暫く1分からタイム差を拡大することができなかった。
カテゴリーのつかない登り区間ではリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)とサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)がプロトンを飛び出し、追走を試みるシーンも。しかしこれは成功せず、残り63km地点の中間スプリントは争うことなくコルトが先頭通過。54秒後方のメイン集団では前日の落車で負傷したビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)がヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)を退け、マイヨヴェール・ランキングのリードを1ポイント拡大させた。
ベノートを追いかけるプロトンでは依然としてアタックと吸収が繰り返され、残り53km地点で約40名の追走集団が誕生する。その中にカラパスやイェーツ、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)など強力クライマーたちが入った一方で、総合上位勢を脅かす選手はいなかったためUAEチームエミレーツは静観。残り38.9kmから始まる2級山岳に先頭4名が達する頃に、追走とは1分42秒、プロトンとは4分20秒まで差が拡がった。
2級山岳の頂上もコルトがトップ通過し、追走集団からはマルタンとヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)が飛び出して前を追う。1級山岳ノワイエ峠(距離7.5km/平均8.1%)の登りではマルタンとマドゥアスが先頭4名に追いつき、人数の絞られていく追走集団からサイモン・イェーツが加速。軽やかなダンシングで先頭6名に合流し、そのまま踏み続けたイェーツは単独先頭に立った。
その背後からカラパスがスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)と共に迫る。カラパスはウィリアムズを振り落とすハイスピードでイェーツにジョインし、1級山岳の頂上手前1.8km(残り13.3km)地点でアタックした。
粘るイェーツを引き離し、頂上を先頭通過したカラパスは差を拡げながらフィニッシュラインの引かれた3級山岳シュペルデヴォリュイ(距離3.8km/平均5.9%)に突入する。その8分47秒後方、1級山岳を登るプロトンではタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がアタック。「なぜ仕掛けたのか自分にも分からない」とレース後振り返ったマイヨジョーヌには、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が反応した。
一度離されたエヴェネプールがマイペースで徐々にポガチャルとの差を縮める一方で、ヴィンゲゴーが遅れていく。ポガチャルはエヴェネプールに13秒差、ヴィンゲゴーに19差をつけ1級山岳を通過。しかしピンチに陥ったヴィンゲゴーには逃げていたクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)が合流し、勾配のある下りで前を牽いた。
下りで攻めることをしなかったポガチャルにはエヴェネプールが追いつき、ラポルトの手を借りたヴィンゲゴーもジョイン。総合争いがひとまず落ち着くなか、最後までイェーツとのリードを保ったカラパスが逃げ切り勝利を決めた。
残り3.8km地点ではエヴェネプールがアタックし、ポガチャルとヴィンゲゴーはこれを見送る。マイヨブランには前で待っていたヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ)が牽引し、ヴィンゲゴーにはファンアールトとベノート、ポガチャルにはパヴェル・シヴァコフ(ロシア、UAEチームエミレーツ)が合流。エヴェネプールは先頭から7分13秒遅れでフィニッシュし、最後にスプリントしたポガチャルはヴィンゲゴーを引き離し、2秒を奪うことに成功している。
ツールで初勝利を飾ったカラパスは「開幕からずっと勝利を狙っていた。ステージ終盤のコースは監督と共に予習しており、一生忘れられない勝利となった。アメリカ大陸を代表する最高の走りができた」と喜ぶ。また「既にジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャでは勝利していたが、世界最高峰のツールでの勝利はまだだった」と語ったカラパスは、これで全グランツールでの区間優勝を叶えた。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)などスプリンターたちが制限時間内にフィニッシュした一方で、同じチームのアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)は膝の負傷が悪化したため途中でリタイアしている。
ツール・ド・フランス2024第17ステージ
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | 4:06:13 |
2位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | +0:37 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +0:57 |
4位 | ローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ) | +1:44 |
5位 | オスカー・オンリー(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | |
6位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | +2:36 |
7位 | マグナス・コルト(デンマーク、ウノエックス・モビリティ) | +2:38 |
8位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス) | +2:39 |
9位 | ジョルダン・ジュガット(フランス、トタルエネルジー) | |
10位 | アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター) | |
26位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +7:13 |
27位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +7:23 |
28位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +7:25 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 70:21:27 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +3:11 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +5:09 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +12:57 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +13:24 |
6位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +13:30 |
7位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +15:41 |
8位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +17:51 |
9位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +18:15 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +18:35 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 387pts |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 354pts |
3位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 188pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 77pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 58pts |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 42pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 70:26:36 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +8:21 |
3位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +13:26 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 211:29:24 |
2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +54:18 |
3位 | スーダル・クイックステップ | +59:21 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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