ジロ・デ・イタリア・ウィメンの最難関ステージで22歳の新星が逃げ切り。3秒差で臨んだマリアローザ争いに決着はつかず、エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、リドル・トレック)のリードは僅か1秒に減少して最終日に臨むこととなった。



ランチャーノの街をスタートするプロトン photo:RCS Sport

ジロ・デ・イタリア・ウィメン2024第7ステージ photo:RCS Sport
開幕前から話題を振りまくジロ・デ・イタリア・ウィメン(UCIウィメンズワールドツアー)の最難関ステージが登場。1級山岳ランチャーノ峠(距離11.2km/平均8.6%)を2度登坂し、2度目のランチャーノ峠から1級山岳ブロックハウス(距離16.5km/平均7.9%)に登り詰めてフィニッシュする。獲得標高3800mオーバーを誇る正真正銘のクイーンステージだ。

ここまでマリアローザを着る総合首位エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、リドル・トレック)と、総合2位ロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム)のタイム差は僅か3秒。スプリント力に勝る世界女王コペッキーがボーナスタイムを稼いで差を詰めており、この日どこまでクライマーのロンゴボルギーニに食らい付けるかが注目されていた。

気温35度、獲得標高3800mオーバーの過酷な戦い photo:RCS Sport

エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、リドル・トレック)を完全マークするロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) photo:RCS Sport

登坂でアタックを繰り返すエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、リドル・トレック) photo:CorVos

最高気温35度まで上がったこの日は強力な逃げグループが生まれないまま進行し、1度目のランチャーノ峠手前のタイミングでクララ・エモンド(カナダ、EFオートリー・キャノンデール)が熱中症のためチームメイト2人と共にリタイアしてしまう。マリアアッズーラを欠いたプロトンはリドル・トレックの牽引でランチャーノ峠を登り、エモンドに代わって山岳賞ランキング2位につけていたジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル)が1度目のKOM先頭通過で20ポイント獲得&首位浮上に成功している。

各チームのエースやクライマー、最終アシストなど20名程度まで絞られたメイン集団がダウンヒルをこなし、続けざまに2度目のランチャーノ峠(ブロックハウス)へ。リドルの若手クライマーであるガイア・レアリーニ(イタリア)のペーシングで集団は縮小の一途を辿ったものの、レース前に「ノープレッシャーで臨む」と話していたコペッキーは千切れない。すると「私ともう一人のチームメイトでステージ優勝を狙っていた」と言う22歳のニーヴ・ブラッドバリー(オーストラリア、キャニオン・スラムレーシング)がアタックした。

総合首位ロンゴボルギーニと2位コペッキー、総合5位アントニア・ニーダーマイヤー(ドイツ、キャニオン・スラムレーシング)、総合9位パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)だけに絞られたメイン集団はペースを落としたことでブラッドバリーのリードは見る間に拡大。「何度もレッドゾーンに入りながら踏み続けた」と言うブラッドバリーは1分までリードを広げ、ステージ優勝を確実なものにしていった。

一方メイン集団では、登坂で抜け出したいロンゴボルギーニが度重なるアタックを仕掛けたものの、苦しそうな表情のコペッキーは千切れない。ランチャーノ峠からブロックハウスに入ってもなお状況は変わらず、コペッキーは自分有利のスプリントでのボーナスタイム獲得に向けて駒を進めてみせる。

独走勝利を挙げたニーヴ・ブラッドバリー(オーストラリア、キャニオン・スラムレーシング) photo:RCS Sport

ステージ2位に入り-4秒を獲得したロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

淡々と踏み続けたブラッドバリーが歓喜のクイーンステージ制覇を遂げた44秒後、コペッキーがロンゴボルギーニを抑え込みながら2位フィニッシュする。コペッキーはボーナスタイム6秒、ロンゴボルギーニは4秒をそれぞれ獲得したことで2人のタイム差は3秒から-2秒の1秒差に減少。クイーンステージを経て勝負の行方が見えるどころか、より緊迫した状況で最終日を迎えることとなった。

翌最終日は117kmで2300mオーバーの中級山岳ステージ。中盤に1級山岳を越えるものの、後半はアップダウン区間を経て登りフィニッシュするコペッキー向きのレイアウトだ。前半区間の中間スプリントも含め、いかにリドル・トレックがボーナスタイムを潰すかが最大の焦点となるだろう。

辛くもマリアローザを守ったエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、リドル・トレック) photo:CorVos

「たった1秒という小さな差だけど、アドバンテージであることには変わらない。今日リードを重ねることはできなかったけれど、必要とあらばレース外でもマリアローザを守るためにあらゆる努力をしたいと思うほど。私たちには経験豊富な監督陣やチームメイトがいて、完璧な作戦を立てて実行してくれる。あと一日、ローザを守るために努力したい」とロンゴボルギーニ。対するコペッキーは「今日は本当にエリザが強かった。ここまで厳しい戦いを続けてきたけれど、明日も当然タフで、緊張感のあるレースになるはず。リドルは全力でボーナスタイムを潰しにくるはず。ここまでいい走りをできているし、マリアローザを獲るために最大限努力する」と意気込んでいる。
ジロ・デ・イタリア・ウィメン2024第7ステージ結果
1位 ニーヴ・ブラッドバリー(オーストラリア、キャニオン・スラムレーシング) 4:17:34
2位 ロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) +0:44
3位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、リドル・トレック)
4位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +1:07
5位 アントニア・ニーダーマイヤー(ドイツ、キャニオン・スラムレーシング) +2:02
6位 ジュリエット・ラブース(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
7位 ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス・プロタイム) 2:05
8位 ガイア・レアリーニ(イタリア、リドル・トレック) 2:15
9位 マライレ・メイエリング(オランダ、モビスター) +4:20
10位 マビ・ガルシア(スペイン、リブ・アルウラー・ジェイコ)
個人総合成績(マリアローザ)
1位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、リドル・トレック) 20:42:43
2位 ロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム) +0:01
3位 ニーヴ・ブラッドバリー(オーストラリア、キャニオン・スラムレーシング) +1:12
4位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +2:01
5位 ジュリエット・ラブース(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +2:11
6位 アントニア・ニーダーマイヤー(ドイツ、キャニオン・スラムレーシング) +2:28
7位 ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス・プロタイム) +2:54
8位 ガイア・レアリーニ(イタリア、リドル・トレック) +3:19
9位 セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJスエズ) +4:18
10位 マビ・ガルシア(スペイン、リブ・アルウラー・ジェイコ) +5:13
その他の特別賞
ポイント賞 キアラ・コンソンニ(イタリア、UAEチームADQ)
山岳賞 ジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル)
ヤングライダー賞 ニーヴ・ブラッドバリー(オーストラリア、キャニオン・スラムレーシング)
チーム総合成績 キャニオン・スラムレーシング
text:So Isobe