2024/07/04(木) - 08:25
白熱のスプリントで決着したツール・ド・フランス第5ステージ。巧みなライン取りからマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)がライバルたちを退け、単独最多記録となる通算35勝目を掴み取った。
7月3日(水)第5ステージ
サンジャン・ド・モーリエンヌ〜サン・ヴルバ 177.4km(平坦)
スプリントから総合を争う山岳ステージを経て、ツール・ド・フランス第5ステージは再びスプリンターの出番となる。総獲得標高差1,000mのコースは2つの4級山岳が設定された平坦ステージで、サヴォワ地方の名物であるぶどう畑の間を縫うように駆ける、風光明媚な景色が魅力の177.4kmだ。
レース後半はローヌ川に沿いながら北上し、ラスト25kmの平坦路でスピードを上げた集団がサン・ヴルバの市街地になだれ込む。最終ストレートは急コーナーもなく、2車線のコースがフィニッシュまで続く正真正銘のスプリントステージだ。
フィニッシュ時に雨予報がされたレースは午後1時半にスタート。フアン・アユソ(UAEチームエミレーツ)が同じスペイン出身のオイエル・ラスカノ(モビスター)と共に飛び出すシーンもありながら、バーレーン・ヴィクトリアスのチームカーが「最初10分の平均出力は7Wだ」と伝えるほど集団は穏やかでペースで進む。30kmを過ぎた辺りでようやくクレマン・リュソ(フランス、グルパマFDJ)が飛び出し、合流したマッテオ・ヴェルシェ(フランス、トタルエネルジー)と共に2名の逃げグループを作った。
共にサン・ヴルバに近いリヨン出身のリュソとヴェルシェに対し、第3ステージと同じくメイン集団はティム・デクレルク(ベルギー、リドル・トレック)とシルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・ドゥクーニンク)が中心にペースを作る。そのため逃げのリードは4分半以上拡がることはなく、一つ目の4級山岳(残り72.8km地点)をリュソが先頭通過。その後雨が降るなか訪れた中間スプリントでは、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)がサム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアル)やビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)を退け、3位通過の最大15ポイントを得た。
残り60km地点を過ぎ、逃げを2分15秒まで追い詰めたプロトンで落車が発生する。直線路の中央分離帯をマイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が直前で交わし、背後を走行していたマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)とペリョ・ビルバオ(スペイン)が接触。その影響を受けたネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)など6名が落車した。
しかし幸い深刻な怪我を負う選手はなく、一つの塊に戻ったメイン集団は雨脚が強まるなか残り36km地点で逃げの2名を吸収。直後の4級山岳ではヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が山岳ポイントを加算し、チームメイトでエーススプリンターであるアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)が落車するシーンも。また直後にクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)も単独落車に見舞われたものの、2人は無事集団復帰を果たしている。
落車の影響のなかったラポルトはチームの総合エースであるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)を守るため、落車時の救済措置が取られる残り5km地点を先頭通過する。続いてジェイコ・アルウラーからアンテルマルシェ・ワンティ、ロット・デスティニーと目まぐるしく先頭が入れ替わり、マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を纏ったアブラハムセンが先頭でフラムルージュ(残り1kmバナー)をクリア。幸いドライコンディションのなか、いよいよ集団スプリントが始まった。
DSMフィルメニッヒ・ポストNLが先頭に立ったものの、肝心のファビオ・ヤコブセン(オランダ)は集団の中に埋もれてしまう。最終ストレートに入り、アルカンシエルを着るマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)もヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を引き上げるなか、その背後をマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)が取る。右側をフェンスで閉めたパスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック)の踏み込みからスプリントの火蓋が切られ、カヴェンディッシュはフィリプセンを追い抜きアッカーマンの背後につく。
残り70mでカヴェンディッシュはコース左側へと大きく進路を変え、フィリプセンがそれに続く。更にクリストフも迫るなか、フィリプセンに並ばせることすら許さなかったカヴェンディッシュが勝利。人さし指を突き上げ、雄叫びを上げた。
急遽出場した2021年大会に区間4勝を挙げ、エディ・メルクス(ベルギー)のステージ通算34勝という記録に並んだカヴェンディッシュ。しかし翌年は選考外となり、アスタナに移籍して臨んだ昨年は落車により負傷リタイア。そして今年はミケル・モルコフ(デンマーク)の加入など体制をより万全に整えて臨み、ついに単独記録となる35勝目を掴み取った。
「ちょっと信じられないよ。アスタナは今年、ツール・ド・フランスで結果を残すために大きな賭けに出た。少なくとも1つは勝つつもりで、僕らはアレクサンドル・ヴィノクロフと共に賭けに出た。元選手である彼は”全てを賭けなければツールでは勝てない”と知っていた。ここでの勝利にはUCIランキングでトップになるよりも価値がある。なぜならツールは自転車競技よりも大きいものなのだからね」と、現役最後のツールで大記録を打ち立てたカヴェンディッシュは語った。
2位にフィリプセン、3位にはクリストフが入り、9位だったギルマイがマイヨヴェールを獲得。また終盤にフェンスに接触し、単独落車したピーダスンに骨折はなく、チームは「第6ステージの出走は当日の朝の状態で判断する」と伝えている。
7月3日(水)第5ステージ
サンジャン・ド・モーリエンヌ〜サン・ヴルバ 177.4km(平坦)
スプリントから総合を争う山岳ステージを経て、ツール・ド・フランス第5ステージは再びスプリンターの出番となる。総獲得標高差1,000mのコースは2つの4級山岳が設定された平坦ステージで、サヴォワ地方の名物であるぶどう畑の間を縫うように駆ける、風光明媚な景色が魅力の177.4kmだ。
レース後半はローヌ川に沿いながら北上し、ラスト25kmの平坦路でスピードを上げた集団がサン・ヴルバの市街地になだれ込む。最終ストレートは急コーナーもなく、2車線のコースがフィニッシュまで続く正真正銘のスプリントステージだ。
フィニッシュ時に雨予報がされたレースは午後1時半にスタート。フアン・アユソ(UAEチームエミレーツ)が同じスペイン出身のオイエル・ラスカノ(モビスター)と共に飛び出すシーンもありながら、バーレーン・ヴィクトリアスのチームカーが「最初10分の平均出力は7Wだ」と伝えるほど集団は穏やかでペースで進む。30kmを過ぎた辺りでようやくクレマン・リュソ(フランス、グルパマFDJ)が飛び出し、合流したマッテオ・ヴェルシェ(フランス、トタルエネルジー)と共に2名の逃げグループを作った。
共にサン・ヴルバに近いリヨン出身のリュソとヴェルシェに対し、第3ステージと同じくメイン集団はティム・デクレルク(ベルギー、リドル・トレック)とシルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・ドゥクーニンク)が中心にペースを作る。そのため逃げのリードは4分半以上拡がることはなく、一つ目の4級山岳(残り72.8km地点)をリュソが先頭通過。その後雨が降るなか訪れた中間スプリントでは、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)がサム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアル)やビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)を退け、3位通過の最大15ポイントを得た。
残り60km地点を過ぎ、逃げを2分15秒まで追い詰めたプロトンで落車が発生する。直線路の中央分離帯をマイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が直前で交わし、背後を走行していたマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)とペリョ・ビルバオ(スペイン)が接触。その影響を受けたネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)など6名が落車した。
しかし幸い深刻な怪我を負う選手はなく、一つの塊に戻ったメイン集団は雨脚が強まるなか残り36km地点で逃げの2名を吸収。直後の4級山岳ではヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が山岳ポイントを加算し、チームメイトでエーススプリンターであるアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)が落車するシーンも。また直後にクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)も単独落車に見舞われたものの、2人は無事集団復帰を果たしている。
落車の影響のなかったラポルトはチームの総合エースであるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)を守るため、落車時の救済措置が取られる残り5km地点を先頭通過する。続いてジェイコ・アルウラーからアンテルマルシェ・ワンティ、ロット・デスティニーと目まぐるしく先頭が入れ替わり、マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を纏ったアブラハムセンが先頭でフラムルージュ(残り1kmバナー)をクリア。幸いドライコンディションのなか、いよいよ集団スプリントが始まった。
DSMフィルメニッヒ・ポストNLが先頭に立ったものの、肝心のファビオ・ヤコブセン(オランダ)は集団の中に埋もれてしまう。最終ストレートに入り、アルカンシエルを着るマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)もヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を引き上げるなか、その背後をマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)が取る。右側をフェンスで閉めたパスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック)の踏み込みからスプリントの火蓋が切られ、カヴェンディッシュはフィリプセンを追い抜きアッカーマンの背後につく。
残り70mでカヴェンディッシュはコース左側へと大きく進路を変え、フィリプセンがそれに続く。更にクリストフも迫るなか、フィリプセンに並ばせることすら許さなかったカヴェンディッシュが勝利。人さし指を突き上げ、雄叫びを上げた。
急遽出場した2021年大会に区間4勝を挙げ、エディ・メルクス(ベルギー)のステージ通算34勝という記録に並んだカヴェンディッシュ。しかし翌年は選考外となり、アスタナに移籍して臨んだ昨年は落車により負傷リタイア。そして今年はミケル・モルコフ(デンマーク)の加入など体制をより万全に整えて臨み、ついに単独記録となる35勝目を掴み取った。
「ちょっと信じられないよ。アスタナは今年、ツール・ド・フランスで結果を残すために大きな賭けに出た。少なくとも1つは勝つつもりで、僕らはアレクサンドル・ヴィノクロフと共に賭けに出た。元選手である彼は”全てを賭けなければツールでは勝てない”と知っていた。ここでの勝利にはUCIランキングでトップになるよりも価値がある。なぜならツールは自転車競技よりも大きいものなのだからね」と、現役最後のツールで大記録を打ち立てたカヴェンディッシュは語った。
2位にフィリプセン、3位にはクリストフが入り、9位だったギルマイがマイヨヴェールを獲得。また終盤にフェンスに接触し、単独落車したピーダスンに骨折はなく、チームは「第6ステージの出走は当日の朝の状態で判断する」と伝えている。
ツール・ド・フランス2024第5ステージ
1位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) | 4:08:46 |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
3位 | アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | |
4位 | アルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット・デスティニー) | |
5位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | |
6位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック) | |
7位 | アルノー・デマール(フランス、アルケアB&Bホテルズ) | |
8位 | ヘルベン・テイッセン(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ) | |
9位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | |
10位 | マライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 23:15:24 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:45 |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:50 |
4位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +1:10 |
5位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +1:14 |
6位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +1:16 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +1:32 |
8位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +3:20 |
10位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | +3:21 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 102pts |
2位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 94pts |
3位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 87pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 25pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 20pts |
3位 | ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) | 16pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 23:16:09 |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +0:25 |
3位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +0:31 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 69:49:16 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +4:54 |
3位 | スーダル・クイックステップ | +5:02 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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