今年も熱い戦いが繰り広げられたMt.富士ヒルクライム。ヒルクライムに打ち込む女子サイクリストが鎬を削る主催者選抜女子で、自身初となる優勝を果たした三島雅世のバイクを筆頭に、入賞者の走りを支えたバイクを紹介していこう。



三島雅世(Cycling-gym)ボーマ SAI2

三島雅世(Cycling-gym)ボーマ SAI2

昨年の主催者選抜女子で3位に入り、今年悲願の初優勝を果たした三島雅世。「最終局面まで2人でランデブーすることになり、ラスト1kmで仕掛けました。今年はスプリント練習も取り入れており、その成果を発揮できたのが嬉しいです。追い込みすぎて最高心拍数を更新していました(笑)」とレースを振り返る。

昨年大会ではLIVのエアロロードであるENVIEを愛車としていた三島だが、今年はボーマへとスイッチ。軽量クライミングバイクであるSAI2へと乗り換えた。「やはりヒルクライムでは重量が重要だと思い、あえてリムブレーキバイクを選びました」と、このチョイスの理由を教えてくれた。そして「このカラーが最高に気に入ったんです」とも。

シンプルなフレームワークが逆に新鮮味すら感じさせる

機械式変速のULTEGRAを使用する
サドルはスぺシャライズドのPOWER ARC



パーツチョイスも軽量性を重視しているとのことで、ハンドルはTNIのステム一体型モデルを使用。中でも強いこだわりが詰まっているのがホイールで、カンパニョーロのBORA ONE 35を持ち込んだ。こちらはチューブラー仕様で、タイヤはヴィットリアのCORSA SPEED 25C。空気圧は6.5気圧でセッティングしているという。

今までなかなかシックリくるホイールが無く、これまでのレースでは、全部違うホイールを履いてきたという三島だが、このホイールには特別な思い入れがあるという。師匠と仰ぐ、大阪の自転車専門ジム「CYCLING-GYM」の木村トレーナーから譲り受けたホイールであり、「どうしてもこのホイールで勝ちたかった」のだという。

ホイールはカンパニョーロのBORA ONE35チューブラー。タイヤはCORSA SPEED TUだ。

TNIのステム一体型ハンドルを使用する
パワーメーターはファヴェロのASSIOMA SHIを使用



コンポーネントはメカニカルのシマノULTEGRA。DI2ではない理由については、トラブルリスクを回避するため、そして「充電とか忘れるタイプ(木村トレーナー談)」とのこと。ギア構成は50-34×11-28T。

「このままの勢いで乗鞍にも臨みます!」と次なる目標に向けて、気炎を上げる三島。今シーズン、その動向には要注目だ。



河田朱里(Infinity Style)サーヴェロ S5

河田朱里(Infinity Style)サーヴェロ S5

なんと富士ヒルクライム初出場だという河田朱里が主催者選抜女子の2位に。更に驚くべきことに、8か月前に出産を終えたばかりというコンディションで、好成績を掴み取った。ローラーをメインに、週末は土曜が夫、日曜が妻という具合に夫婦交代で実走トレーニングを積んできたという。

そんな河田の愛車は、サーヴェロのエアロロードであるS5。しかも、昨年グランツールを全制覇したユンボ・ヴィスマの偉業を記念した限定カラーの希少な一台だ。しかも、夫婦揃って当選し、お揃いで乗っているのだという。かなりエアロに特化したバイクだが、実はトライアスロンの三重県国体代表選手という経歴を持つ生粋のトライアスリートだけあって、「平坦を速く走れるバイクが欲しかった」のだとか。

ホイールはちくわ輪業のCHRホイール。タイヤはコンチネンタル GP5000 TT TR

シートステーにはネームステッカーが貼られている
スラム REDのクランクにDURA-ACEのチェーンリングを組み合わせる



一方で組み合わせるパーツを厳選することで、軽量化にも余念は無い。メインコンポーネントはR9100系DURA-ACEとするが、クランクは軽量なRED AXSに。

クオークのパワーメーターを使用しつつ、チェーンリング自体はDURA-ACEを用いることで、変速性能は純正レベルを保っている。ギア構成は52-36×11-30T。

バーテープも各グランツールのリーダージャージカラーで合わせられた

ガーミンのサイクルコンピューターを愛用。ステッカーがチャームポイントだ
快適な乗り心地がお気に入りだというスペシャライズドのPOWER MIMIC



そしてホイールはちくわ輪業のCHR55ホイールをアセンブル。スポークは前後ともカーボンスポークとし、軽量性と反応性にこだわった。

こちらはもともとちくわ輪業を愛用しており、その良さを知悉していた旦那さんによるチョイスだという。男子の1位と2位、そして女子の2位と入賞者の半数が使用しているCHRホイールは、今後更に注目が集まりそうだ。タイヤはコンチネンタルのGP5000TT TRで空気圧は3.5気圧という低めの設定だ。



人部香(EMU SPEED CLUB)スペシャライズド S-WORKS TARMAC SL7

人部香(EMU SPEED CLUB)スペシャライズド S-WORKS TARMAC SL7

3位に入ったのは、4年連続で富士ヒルクライムへと参加している人部香。1年目はシルバートレインから1合目で千切れた、と語る人部だが、その口惜しさをばねにタイムを更新、昨年は71分をマークしてきた。そして、「今年は選抜で戦う!絶対に表彰台に上がる!と公言して臨みました」と、宣言通りの結果を残すことに成功した。

二児の母でもある人部は「好きなことしてる母ちゃんだと思われてると思うんです。でもその分、結果を持って帰りたかった。努力が結果になると示したかったんです」と、今回のレースへのモチベーションを教えてくれた。そんな情熱的な人部を支えたのはスぺシャライズドのS-WORKS TARMAC SL7。

もともと金色だったロゴをピンクにステッカーチューンしたのだとか

年季の入ったS-WORKS ROMIN EVO CARBON
DURA-ACEのパワーメータークランクを使用。ペダルはルック派だ。



以前はSL6のノーマルモデルに乗っていてS-WORKSに憧れていた、という人部。愛車のこだわりポイントはロゴだという。「実はもともとゴールドなんですが、カッティングシートでピンクにカスタムしたんです」という言葉通り、ダウンチューブのS-WORKSロゴをはじめ、あらゆるロゴがピンクに。教えてもらうまでは純正カラーだと思っていたほどの仕上がりだった。

そして今回のもう一つのこだわりがタイヤだという。ヴィットリアのCORSA PRO SPEED 26Cをラテックスチューブで運用する。「最高のタイヤです!」と語る人部だが、チューブレスではなくチューブド運用する理由については、「チューブレスで使い始めてすぐにパンクしてしまって。少しネガティブなイメージがついてしまったので今はラテックスチューブを入れています」という。大会当日は4.7気圧にセッティングしたとのこと。

ホイールは軽量なロヴァール CLX 32を使用。タイヤは人気のCORSA PRO SPEED TLR

ライデアのビッグプーリーを使用する
所属するEMU SPEED CLUBのステッカーが貼られる



ホイールはロヴァールのCLX32。平地での転がりと登りの軽さのバランスが取れており、平坦区間も長い富士ヒルクライムにはピッタリだという。また、コックピットは専用ハンドルではなく、トラディショナルな別体式のステムとハンドルとしている。ポジションを試行錯誤しており、高さやステム長をいろいろと交換し、最近ようやくポジションが決まりつつあるとのこと。「このまま大丈夫そうなら、ステム一体型ハンドルにしてみたいですね」と語ってくれた。

ポジションを重視する志向はサドルチョイスにも表れている。「以前はショートノーズのPOWERを使っていたのですが、前後方向の自由度が欲しくて交換しました」というROMINは、表皮が捲れるほど使い込まれ、乗り手のストイックさを伝える。他にも機材にはかなりのこだわりが見え隠れしており、カブトの極薄手バーテープやライデアのビッグプーリーなど、エンスーなサイクリストが喜びそうなパーツアセンブルに。ギア構成は50-34×11-30T。

text&photo:Naoki Yasuoka
第20回Mt.富士ヒルクライム 主催者選抜女子 リザルト
1位 三島雅世(Cycling-gym) 1:11:09
2位 河田朱里(Infinity Style) 1:11:22
3位 人部香(EMU SPEED CLUB) 1:11:56

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