2024/06/03(月) - 19:00
20回目の節目を迎えたMt.富士ヒルクライムに9,308名のサイクリストがエントリー。主催者選抜男子を金子宗平が連覇し、女子を三島雅世が制した。大会の様子、そして選抜クラスで入賞した選手のバイクを紹介していこう。
霊峰、富士山を北側から登る「富士スバルライン」を舞台に開催されるヒルクライムレースがMt.富士ヒルクライム(以下、富士ヒル)だ。今年で20回目の大会となった富士ヒルに、日本、そして世界から多くのサイクリストが集まった。
20回記念大会となり、晴天に恵まれた大会前日には富士吉田の市街地から会場となる富士北麓公園を目指すパレードランも開催。地元の方々にも受け入れられている大会であることを印象づけた。大会会場では多くの自転車関連ブランドが軒を連ねるサイクルエキスポも開催。受付に訪れたサイクリストたちが、最新バイクやパーツに触れる機会となった。
大会当日は雨が予報されていたものの、午前中は雨粒が落ちてくることも無く。ゴール地点となる五合目は晴れているとの情報に、スタートに並んだ参加者たちも明るい表情となった。
そして、各々の目標に向かいペダルを回したサイクリストの中でも、頂点を争うのが「主催者選抜」クラスの面々。過去の富士ヒルや他のレースなどでの戦績が考慮され、大会主催者が選考した強豪のみがエントリー出来るカテゴリーで、今年も熱い戦いが繰り広げられた。
主催者選抜男子を制したのは、ディフェンディングチャンピオンである金子宗平(群馬グリフィン)。Jプロツアーのリーダーでもあるトップライダーが、その強さを証明するように自己新記録で連覇を果たした。
一方の主催者選抜女子は、昨年3位に入った三島雅世(Cycling-gym)が念願の初優勝。ラストの登り区間でロングスパートをかけ、後続を大きく引き離す走りでビッグタイトルを掴んだ。
それでは、主催者選抜クラス入賞者のバイクを紹介していこう。まずは男子から。
金子宗平(群馬グリフィン) ウィアウィス WAWS-PRO XP DISC
56分42秒という歴代2位の記録で大会史上2人目となる連覇を果たした金子宗平。現在、Jプロツアーでルビーレッドジャージを着用し、ヒルクライムだけでなくあらゆるレースで活躍するオールラウンダーだ。
そんな金子が今年の富士ヒルに選んだのはチームバイクでもあるウィアウィスのエアロロードであるWAWS-PRO XP。「実はもう少しで新型が来る予定なんです(笑)」という金子だが、現行モデルでも十分な戦闘力を有していることはその戦績で証明済み。
特に注目ポイントとなるのが足回り。オリジナルでカーボンリムを設計する「ちくわ輪業」のCHR55ホイールは、55mmハイトながら前後で1200g程度という軽量でエアロな一品。「リムのデザインが良くて、外幅32mmで28Cタイヤとツライチになるように設計されているんです」と評価する。
リム以外のパーツは自由に選択可能で、カーボンスポークにも対応するというCHRホイール。「カーボンスポークは丸断面の部分が多いので、反応性を重視してリアに。フロントは空力に優れるCX-RAYを選んでいます」とのことだ。
タイヤはヴィットリアのCORSA PRO SPEED TLRの28Cモデルを装着。軽量なElilee XXEクランクにローターQリングを組み合わせる。ギア構成は54-39T×11-34Tでヒルクライム仕様に。「富士ヒルだとフロントはアウター固定で、保険として34Tを入れています」と、そのチョイスの理由を教えてくれた。
富士ヒル連覇を果たし、波に乗る金子宗平。次なる目標は全日本選手権。ロードもタイムトライアルも狙っていくという。
真鍋 晃(EMU SPEED CLUB)キャニオン AEROAD CFR
「タイム差で見るとわずかに見えるかもしれないですが、力の差は大きかったです」と、悔しさを滲ませる真鍋。2022年大会の王者は、最終局面で金子の仕掛けに対応できなかったと語る。「あのキツい状況から、更に踏めるのかと」。
今年駆ったのはキャニオンのエアロロードであるAEAROAD CFR。一昨年の優勝時に乗っていたファクターのO2からスイッチした。「昨年のおきなわに出るために用意したバイクですが、富士ヒルではやはり空力が重要になるので、こちらを選びました」という。
ハンドルやシートポストはAEROADの専用モデルを使用。ブラケットは内側に倒しエアロポジションを取りやすいセッティングに。一番のこだわりはホイールで、金子と同じちくわ輪業のCHR46ホイールを選択。真鍋は前後輪ともにカーボンスポーク、ハブにはCX001という仕様で組み上げた。
タイヤはヴィットリアのCORSA PRO SPEED TLRで、前輪は26C、後輪は28Cという組み合わせに。「色んなタイヤを試した結果、現時点で最速のタイヤだと思います。明らかに速いですね」と、その性能に惚れ込んでいる様子。空気圧は6気圧と、路面状況も綺麗なので高めに設定していたという。
ドライブトレインはElileeのクランクにDURA-ACEのチェーンリングを組合せ、52-36T×11-30Tというギア構成だ。ペダルは軽量なエクスペドを使用。また、ボトルには印象的なエアロモデルを引き続き使用していた。
加藤大貴(COW GUMMA)スペシャライズド S-WORKS TARMAC SL8
過去にも何度も表彰台に登ってきた加藤大貴が3位に。日本有数の激坂としてしられるあざみラインのレコードホルダーでもあるトップクライマーが選んだのは、スペシャライズドの最新レースバイクであるS-WORKS TARMAC SL8だ。
昨年はSL7を駆っていた加藤だが、「SL8になって、軽いしなんといっても乗り心地が良い。ロングでも疲労度が全然違うし、体力が残せる」と高く評価する。なお、SL7はロードレース仕様にして、使い分けているのだとか。
足回りはジップのフラッグシップである353NSW。特徴的なSawtoothデザインリムが目を惹くホイールは、フックレス仕様も相まってエアロかつ軽量で富士ヒルにはもってこい。「富士ヒルは25km/h以上の平均スピードになるので、エアロの比重が高くなってきます」と、ロヴァールのALPINISTも所持している加藤は、コースによって使い分けているという。
そしてタイヤはヴィットリアのCORSA PRO SPEED TLR 28C。奇しくも上位3名が全員同じモデル(真鍋はフロントのみ26C)となった。このチョイスについて加藤は「やはり速いですね。ヴィンゲゴーが使うだけあります(笑)。耐久性は不安な面もありますが、それを上回るメリットがあります」と語る。加藤はこのタイヤを4気圧で運用。転がりも良く、乗り心地も抜群だと、太鼓判を押した。
コンポーネントはDURA-ACE DI2で、カーボンドライジャパンのビッグプーリーを使用。ギア構成は52-36×11-30T。ペダルはスピードプレイを愛用していた。
今年はニセコクラシック、そして自身初となるツール・ド・おきなわ200kmに出場予定だという加藤。ロードレースにおいてもその強さが発揮されることは間違いないはずだ。
今年も熱い戦いが繰り広げられたMt.富士ヒルクライム。次回は主催者選抜クラス女子の入賞者バイクをお届け予定。お楽しみに。
text&photo:Naoki Yasuoka
霊峰、富士山を北側から登る「富士スバルライン」を舞台に開催されるヒルクライムレースがMt.富士ヒルクライム(以下、富士ヒル)だ。今年で20回目の大会となった富士ヒルに、日本、そして世界から多くのサイクリストが集まった。
20回記念大会となり、晴天に恵まれた大会前日には富士吉田の市街地から会場となる富士北麓公園を目指すパレードランも開催。地元の方々にも受け入れられている大会であることを印象づけた。大会会場では多くの自転車関連ブランドが軒を連ねるサイクルエキスポも開催。受付に訪れたサイクリストたちが、最新バイクやパーツに触れる機会となった。
大会当日は雨が予報されていたものの、午前中は雨粒が落ちてくることも無く。ゴール地点となる五合目は晴れているとの情報に、スタートに並んだ参加者たちも明るい表情となった。
そして、各々の目標に向かいペダルを回したサイクリストの中でも、頂点を争うのが「主催者選抜」クラスの面々。過去の富士ヒルや他のレースなどでの戦績が考慮され、大会主催者が選考した強豪のみがエントリー出来るカテゴリーで、今年も熱い戦いが繰り広げられた。
主催者選抜男子を制したのは、ディフェンディングチャンピオンである金子宗平(群馬グリフィン)。Jプロツアーのリーダーでもあるトップライダーが、その強さを証明するように自己新記録で連覇を果たした。
一方の主催者選抜女子は、昨年3位に入った三島雅世(Cycling-gym)が念願の初優勝。ラストの登り区間でロングスパートをかけ、後続を大きく引き離す走りでビッグタイトルを掴んだ。
それでは、主催者選抜クラス入賞者のバイクを紹介していこう。まずは男子から。
金子宗平(群馬グリフィン) ウィアウィス WAWS-PRO XP DISC
56分42秒という歴代2位の記録で大会史上2人目となる連覇を果たした金子宗平。現在、Jプロツアーでルビーレッドジャージを着用し、ヒルクライムだけでなくあらゆるレースで活躍するオールラウンダーだ。
そんな金子が今年の富士ヒルに選んだのはチームバイクでもあるウィアウィスのエアロロードであるWAWS-PRO XP。「実はもう少しで新型が来る予定なんです(笑)」という金子だが、現行モデルでも十分な戦闘力を有していることはその戦績で証明済み。
特に注目ポイントとなるのが足回り。オリジナルでカーボンリムを設計する「ちくわ輪業」のCHR55ホイールは、55mmハイトながら前後で1200g程度という軽量でエアロな一品。「リムのデザインが良くて、外幅32mmで28Cタイヤとツライチになるように設計されているんです」と評価する。
リム以外のパーツは自由に選択可能で、カーボンスポークにも対応するというCHRホイール。「カーボンスポークは丸断面の部分が多いので、反応性を重視してリアに。フロントは空力に優れるCX-RAYを選んでいます」とのことだ。
タイヤはヴィットリアのCORSA PRO SPEED TLRの28Cモデルを装着。軽量なElilee XXEクランクにローターQリングを組み合わせる。ギア構成は54-39T×11-34Tでヒルクライム仕様に。「富士ヒルだとフロントはアウター固定で、保険として34Tを入れています」と、そのチョイスの理由を教えてくれた。
富士ヒル連覇を果たし、波に乗る金子宗平。次なる目標は全日本選手権。ロードもタイムトライアルも狙っていくという。
真鍋 晃(EMU SPEED CLUB)キャニオン AEROAD CFR
「タイム差で見るとわずかに見えるかもしれないですが、力の差は大きかったです」と、悔しさを滲ませる真鍋。2022年大会の王者は、最終局面で金子の仕掛けに対応できなかったと語る。「あのキツい状況から、更に踏めるのかと」。
今年駆ったのはキャニオンのエアロロードであるAEAROAD CFR。一昨年の優勝時に乗っていたファクターのO2からスイッチした。「昨年のおきなわに出るために用意したバイクですが、富士ヒルではやはり空力が重要になるので、こちらを選びました」という。
ハンドルやシートポストはAEROADの専用モデルを使用。ブラケットは内側に倒しエアロポジションを取りやすいセッティングに。一番のこだわりはホイールで、金子と同じちくわ輪業のCHR46ホイールを選択。真鍋は前後輪ともにカーボンスポーク、ハブにはCX001という仕様で組み上げた。
タイヤはヴィットリアのCORSA PRO SPEED TLRで、前輪は26C、後輪は28Cという組み合わせに。「色んなタイヤを試した結果、現時点で最速のタイヤだと思います。明らかに速いですね」と、その性能に惚れ込んでいる様子。空気圧は6気圧と、路面状況も綺麗なので高めに設定していたという。
ドライブトレインはElileeのクランクにDURA-ACEのチェーンリングを組合せ、52-36T×11-30Tというギア構成だ。ペダルは軽量なエクスペドを使用。また、ボトルには印象的なエアロモデルを引き続き使用していた。
加藤大貴(COW GUMMA)スペシャライズド S-WORKS TARMAC SL8
過去にも何度も表彰台に登ってきた加藤大貴が3位に。日本有数の激坂としてしられるあざみラインのレコードホルダーでもあるトップクライマーが選んだのは、スペシャライズドの最新レースバイクであるS-WORKS TARMAC SL8だ。
昨年はSL7を駆っていた加藤だが、「SL8になって、軽いしなんといっても乗り心地が良い。ロングでも疲労度が全然違うし、体力が残せる」と高く評価する。なお、SL7はロードレース仕様にして、使い分けているのだとか。
足回りはジップのフラッグシップである353NSW。特徴的なSawtoothデザインリムが目を惹くホイールは、フックレス仕様も相まってエアロかつ軽量で富士ヒルにはもってこい。「富士ヒルは25km/h以上の平均スピードになるので、エアロの比重が高くなってきます」と、ロヴァールのALPINISTも所持している加藤は、コースによって使い分けているという。
そしてタイヤはヴィットリアのCORSA PRO SPEED TLR 28C。奇しくも上位3名が全員同じモデル(真鍋はフロントのみ26C)となった。このチョイスについて加藤は「やはり速いですね。ヴィンゲゴーが使うだけあります(笑)。耐久性は不安な面もありますが、それを上回るメリットがあります」と語る。加藤はこのタイヤを4気圧で運用。転がりも良く、乗り心地も抜群だと、太鼓判を押した。
コンポーネントはDURA-ACE DI2で、カーボンドライジャパンのビッグプーリーを使用。ギア構成は52-36×11-30T。ペダルはスピードプレイを愛用していた。
今年はニセコクラシック、そして自身初となるツール・ド・おきなわ200kmに出場予定だという加藤。ロードレースにおいてもその強さが発揮されることは間違いないはずだ。
今年も熱い戦いが繰り広げられたMt.富士ヒルクライム。次回は主催者選抜クラス女子の入賞者バイクをお届け予定。お楽しみに。
text&photo:Naoki Yasuoka
第20回Mt.富士ヒルクライム 主催者選抜男子 リザルト
1位 | 金子宗平(群馬グリフィン) | 56:42 |
2位 | 真鍋 晃(EMU SPEED CLUB) | 56:49 |
3位 | 加藤大貴(COW GUMMA) | 56:50 |
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