2024/04/08(月) - 08:45
世界チャンピオンによる59.6kmの独走。4月7日に行われた第121回パリ〜ルーベはアルペシン・ドゥクーニンクがレースを制圧し、マチュー・ファンデルプール(オランダ)が2年連続で石畳トロフィーを受け取った。
今年の五輪の舞台であるフランス・パリから80km北にあるコンピエーニュを出発し、ベルギー国境近くのルーベを目指す第121回パリ〜ルーベ。259.7kmコースに総距離55.7km/合計29セクター(区間)のパヴェ(石畳)が敷き詰められた「北の地獄」は、優勝候補たちが下馬評通りの力を発揮するリアルかつ残酷とも言える展開となった。
レースは2022年大会の覇者であるディラン・ファンバーレ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)が体調不良のため未出走という報のなか、現地時間の午前11時25分にスタート。逃げ集団の成立に2時間近くをかかった昨年とは違い、今年はすんなりと7名がエスケープに成功する。その中にはアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)のアタックが失敗に終わる一方で、優勝候補の一人カスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)など強力なメンバーが入った。
これがルーベデビューの20歳ペールストランド・ハーゲネス(ノルウェー、ヴィスマ・リースアバイク)も入った逃げ集団に対し、38秒差を許したメイン集団では約20名を巻き込む集団落車が発生する。そのためエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)とヨナス・ルッチ(ドイツ、EFエデュケーション・イージーポスト)が棄権し、その後走り出したジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)もリタイア。そのためリドルは序盤で早くも重要な戦力を失うこととなった。
この落車によりプロトンのペースが落ち着いたため、逃げ集団は1分27秒差でこの日最初のパヴェ・セクターである「No.29 トロワヴィル〜アンシー」に突入する。そしてメイン集団を先導するアルペシン・ドゥクーニンクが一つ目からハイペースに持ち込む中、ヴィスマの単独エースであるクリストフ・ラポルト(フランス)がパンク。横風による集団分断の煽りも受けたラポルトは、早くも優勝争いから脱落した(最終的に25位でフィニッシュ)。
アルペシンがメイン集団の先頭で回すローテーションにはマチュー・ファンデルプール(オランダ)も加わったため、プロトンは残り140km地点で早くも逃げを吸収。集団後方ではパンクで遅れたジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がスティッキーボトル(チームカーがボトルを渡すふりをして引き上げる行為)によって失格処分を受けるシーンもあった。
「No.23 アルトル〜ケレネン」に入る頃に先頭集団は35名まで減り、相変わらずファンデルプールを含め5名を残すアルペシンが先導する。その中にはマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)やシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)など優勝候補たちはもちろん、イツリア・バスクカントリーを開幕直前の落車で回避し、急遽初出場を決めたトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の姿もあった。
そしていよいよ選手たちはCPA(プロ選手組合)の要請によって設置された「シケイン(減速を促すコーナー)」をクリアしながら、大会を象徴する5つ星「No.19 アランベール」に突入する。その先頭にファンデルプールが出ると後続との差は拡がり、ピーダスンとフィリプセン、そしてミック・ファンダイケ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)の3名が食らいつく。
しかしフィリプセンの後輪がパンクしたため先頭集団はペースを緩め、アランベールで遅れた後続集団が合流する。一度ペースが緩んだ隙にキュングとニルス・ポリッツ(ドイツ、UAEチームエミレーツ)のアタックし、それにはジャンニ・フェルミールス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)がマーク。ファンデルプールを含む追走集団はリドルがペースを作った。
その甲斐もあり残り66kmで集団は再び一つに戻り、先頭で脚を溜めていたフェルミールスが先導を開始。そして3つ星の「No.13 オルシ」に入った直後、先頭を行くフェルミールスをファンデルプールが追い抜き、そして飛び出した。
残り59.6km地点でアタックした世界王者に対し、ピーダスンやキュングらは反応することができない。そのためファンデルプールは続く4つ星の「No.12 オシー・レ・オルシ〜ベルセ」と5つ星「No.11 モン・サン・ペヴェル」を単独でクリア。その頃に後続との差は1分35秒まで拡がり、キュングと共に追いかけるローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ)が落車した残り30km地点で、そのリードは2分まで拡大した。
ピシーが素早く復帰した追走集団にはピーダスンとキュング、ポリッツがローテーションを回し、その最後尾にフィリプセンが位置を取る。そのため集団がファンデルプールに追いついても脚を溜めるフィリプセンでスプリント勝負できる、必勝態勢をアルペシンは整えた。
しかし、その心配も杞憂に終わるほどファンデルプールは順調なペースで距離を消化。そしてこの日最後の5つ星である「No.4 カルフール・ド・ラルブル」も危なげなくクリアした世界王者は、途中チームカーの監督と拳を突き合わせる余裕を見せながら、後続に3分差をつけてルーベのヴェロドロームに到達した。
そしてアルカンシエルを纏ったファンデルプールが、両手を拡げながらフィニッシュ。ロンド・ファン・フラーンデレンに続くモニュメント(5大クラシック)2連勝と共に、2年連続の優勝に輝いた。
レース直後、土埃のついた顔でインタビューに答えたファンデルプールは「信じられない。チームとして昨年よりも更に強くなっている。チームメイトを誇りに思うし、その走りを勝利に繋げることができた。ただ展開を厳しくしたかっただけで、あそこ(残り60km)から単独になるつもりはなかった。追い風の助けもあったが、今日は本当に調子がよかったんだ」とコメント。
「終盤は楽しんで走ることができた。子どもの頃に夢にすら描かなかったようなことだ。このジャージで勝ちたかったし、予想を遥かに上回る結果に言葉がでないよ」と喜びを語った。
ファンデルプールがヴェロドロームの内側から見守るなか、ピーダスンとポリッツ、フィリプセンによる表彰台争いはフィリプセンが先着。そのためアルペシンは2年連続で同一選手によるワンツーフィニッシュを成し遂げた。
ちなみに平均時速47.802kmは、昨年(時速46.841km)を1kmも上回る過去最速となった。
選手のコメントは別記事にてお伝えします。
今年の五輪の舞台であるフランス・パリから80km北にあるコンピエーニュを出発し、ベルギー国境近くのルーベを目指す第121回パリ〜ルーベ。259.7kmコースに総距離55.7km/合計29セクター(区間)のパヴェ(石畳)が敷き詰められた「北の地獄」は、優勝候補たちが下馬評通りの力を発揮するリアルかつ残酷とも言える展開となった。
レースは2022年大会の覇者であるディラン・ファンバーレ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)が体調不良のため未出走という報のなか、現地時間の午前11時25分にスタート。逃げ集団の成立に2時間近くをかかった昨年とは違い、今年はすんなりと7名がエスケープに成功する。その中にはアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)のアタックが失敗に終わる一方で、優勝候補の一人カスパー・アスグリーン(デンマーク、スーダル・クイックステップ)など強力なメンバーが入った。
これがルーベデビューの20歳ペールストランド・ハーゲネス(ノルウェー、ヴィスマ・リースアバイク)も入った逃げ集団に対し、38秒差を許したメイン集団では約20名を巻き込む集団落車が発生する。そのためエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)とヨナス・ルッチ(ドイツ、EFエデュケーション・イージーポスト)が棄権し、その後走り出したジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)もリタイア。そのためリドルは序盤で早くも重要な戦力を失うこととなった。
この落車によりプロトンのペースが落ち着いたため、逃げ集団は1分27秒差でこの日最初のパヴェ・セクターである「No.29 トロワヴィル〜アンシー」に突入する。そしてメイン集団を先導するアルペシン・ドゥクーニンクが一つ目からハイペースに持ち込む中、ヴィスマの単独エースであるクリストフ・ラポルト(フランス)がパンク。横風による集団分断の煽りも受けたラポルトは、早くも優勝争いから脱落した(最終的に25位でフィニッシュ)。
アルペシンがメイン集団の先頭で回すローテーションにはマチュー・ファンデルプール(オランダ)も加わったため、プロトンは残り140km地点で早くも逃げを吸収。集団後方ではパンクで遅れたジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がスティッキーボトル(チームカーがボトルを渡すふりをして引き上げる行為)によって失格処分を受けるシーンもあった。
「No.23 アルトル〜ケレネン」に入る頃に先頭集団は35名まで減り、相変わらずファンデルプールを含め5名を残すアルペシンが先導する。その中にはマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)やシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)など優勝候補たちはもちろん、イツリア・バスクカントリーを開幕直前の落車で回避し、急遽初出場を決めたトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の姿もあった。
そしていよいよ選手たちはCPA(プロ選手組合)の要請によって設置された「シケイン(減速を促すコーナー)」をクリアしながら、大会を象徴する5つ星「No.19 アランベール」に突入する。その先頭にファンデルプールが出ると後続との差は拡がり、ピーダスンとフィリプセン、そしてミック・ファンダイケ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)の3名が食らいつく。
しかしフィリプセンの後輪がパンクしたため先頭集団はペースを緩め、アランベールで遅れた後続集団が合流する。一度ペースが緩んだ隙にキュングとニルス・ポリッツ(ドイツ、UAEチームエミレーツ)のアタックし、それにはジャンニ・フェルミールス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)がマーク。ファンデルプールを含む追走集団はリドルがペースを作った。
その甲斐もあり残り66kmで集団は再び一つに戻り、先頭で脚を溜めていたフェルミールスが先導を開始。そして3つ星の「No.13 オルシ」に入った直後、先頭を行くフェルミールスをファンデルプールが追い抜き、そして飛び出した。
残り59.6km地点でアタックした世界王者に対し、ピーダスンやキュングらは反応することができない。そのためファンデルプールは続く4つ星の「No.12 オシー・レ・オルシ〜ベルセ」と5つ星「No.11 モン・サン・ペヴェル」を単独でクリア。その頃に後続との差は1分35秒まで拡がり、キュングと共に追いかけるローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ)が落車した残り30km地点で、そのリードは2分まで拡大した。
ピシーが素早く復帰した追走集団にはピーダスンとキュング、ポリッツがローテーションを回し、その最後尾にフィリプセンが位置を取る。そのため集団がファンデルプールに追いついても脚を溜めるフィリプセンでスプリント勝負できる、必勝態勢をアルペシンは整えた。
しかし、その心配も杞憂に終わるほどファンデルプールは順調なペースで距離を消化。そしてこの日最後の5つ星である「No.4 カルフール・ド・ラルブル」も危なげなくクリアした世界王者は、途中チームカーの監督と拳を突き合わせる余裕を見せながら、後続に3分差をつけてルーベのヴェロドロームに到達した。
そしてアルカンシエルを纏ったファンデルプールが、両手を拡げながらフィニッシュ。ロンド・ファン・フラーンデレンに続くモニュメント(5大クラシック)2連勝と共に、2年連続の優勝に輝いた。
レース直後、土埃のついた顔でインタビューに答えたファンデルプールは「信じられない。チームとして昨年よりも更に強くなっている。チームメイトを誇りに思うし、その走りを勝利に繋げることができた。ただ展開を厳しくしたかっただけで、あそこ(残り60km)から単独になるつもりはなかった。追い風の助けもあったが、今日は本当に調子がよかったんだ」とコメント。
「終盤は楽しんで走ることができた。子どもの頃に夢にすら描かなかったようなことだ。このジャージで勝ちたかったし、予想を遥かに上回る結果に言葉がでないよ」と喜びを語った。
ファンデルプールがヴェロドロームの内側から見守るなか、ピーダスンとポリッツ、フィリプセンによる表彰台争いはフィリプセンが先着。そのためアルペシンは2年連続で同一選手によるワンツーフィニッシュを成し遂げた。
ちなみに平均時速47.802kmは、昨年(時速46.841km)を1kmも上回る過去最速となった。
選手のコメントは別記事にてお伝えします。
パリ〜ルーベ2024結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 5:25:58 |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | +3:00 |
3位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | |
4位 | ニルス・ポリッツ(ドイツ、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | +3:15 |
6位 | ジャンニ・フェルミールス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | +3:47 |
7位 | ローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ) | +3:48 |
8位 | ヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +3:47 |
9位 | ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | |
10位 | マディス・ミケルス(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ) | |
11位 | ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | |
12位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
13位 | ドリス・ファンヘステル(ベルギー、トタルエネルジー) | |
14位 | エフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、アスタナ・カザクスタン) | |
15位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツ) |
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