2024/02/03(土) - 18:30
シクロクロス世界一を決める年に一度の大勝負、世界選手権がチェコ・ターボルで開幕。新監督が率いる日本選手団が参戦する、2日間の戦いをプレビューします。
名門コース、ターボルを舞台にした世界選手権
3日間に渡るシクロクロス世界選手権がチェコ、南ボヘミア州の街ターボルで開幕した。今から600年前に宗教改革運動であるフス戦争の拠点として建設された街に、ヨーロッパを中心に世界各国のトップシクロクロッサーが集結。金・土・日の3日間、アルカンシエルと各国の威信をかけた戦いが繰り広げられる。
ターボルは毎年ワールドカップカレンダーに組み込まれ、2001年、2010年、そして2015年と過去3度世界選手権を迎えた格式あるコース。平らな芝生面と林の中の丘陵地内を縫うように繋ぎ、近年になってキャンバー区間が追加されたことで、よりパワーとテクニックを問うレイアウトに生まれ変わった。
当初はスピードレースが予想されていたものの、雪解けと大雨で現在コースはたっぷりと水分を帯びている。週末の天気予報は曇りで最高気温は7度と現状よりコンディションは整いそうだが、完全なドライコースにはならない見込み。ドライと泥が入り混じる、タイヤ選択に差が出る状況となりそうだ。
ファンデルプールが圧倒的優勝候補 ライバル国ベルギーはどう戦う?
男子エリートレースには18カ国から49名の選手達が出場する。優勝候補筆頭はなんといっても現世界王者のマチュー・ファンデルプール(オランダ)だ。
2015年にこのターボルで、若干20歳にして初のエリート世界王者となったファンデルプールはその後2019年、2020年、2021年、そして2023年と合計5度戴冠。今年はロードレースシーズン終了後に短い休養を挟んでCX参戦し実に13戦12勝し、唯一の黒星となったUCIワールドカップ第13戦も落車とメカトラに見舞われたものであり、ライバルであるワウト・ファンアールト(ベルギー)をもってしてもファンデルプールの勢いを止めることはできなかった。
2018年に地元ファルケンブルク大会(父がコースディレクターを務めた)での優勝を逃すなど、大一番に弱かったのも今は昔。オランダはラース・ファンデルハールや台頭著しいヨリス・ニューウェンハイスを揃え、表彰台を独占できる力を備えている。
一方、何としてもアルカンシエルを奪回したいのがライバル国ベルギーだ。
出場しないファンアールトに変わり、ベルギーはタフレースに強いマイケル・ファントーレンハウトとワールドカップの総合ランキングで優勝したエリ・イゼルビットを主力に据えるが、事前の記者会見でイゼルビットは「彼のペースについていくと自滅する可能性が高い。コースがドライなら主導権を握れるけれど、ウェットでは彼が逃げだす要素が多すぎる。メダルを確保することも重要だ」と守りに徹するコメント。一方ファントーレンハウトは「できるだけ彼についていくつもりだ。失敗したらそれでいい。何より後悔したくない」と、背水の陣でファンデルプールと勝負する構えをアピール。ワールドカップ最終戦で2度ファンデルプールのアタックに食らいついたティボー・ネイスも初のエリートカテゴリーでのメダル獲得チャンスがある。
3度の世界王者、"スティービー"の現役最終レース
また、今大会の最注目選手が2010、2011、そして2014年の世界王者であるチェコのスター、ゼネク・スティバル(チェコ)だ。38歳になった”スティービー”は2023年限りで輝かしいロードキャリアを終え、この母国開催のシクロクロス世界選手権でキャリア最後のレースを迎えることとなる。
感謝を綴ったスペシャルジャージで1月1日以降のレースを走り、2010年にここターボルで初めてアルカンシエルを獲得した時と同じデザインのリドレーバイクを駆り、彼のためにデコレーションされた世界選手権に臨むスティバルの気合は十分。今季のワールドカップでは43位と27位だったが、10位台でフィニッシュする可能性も十分にあるだろう。
ファンエンペルの連覇か、ブラントやピーテルスの逆襲か
女子エリートレースをオランダ勢が支配することはこれまでのレースを見ても確定事項と言えるだろう。中でもエリート昇格した初年度にアルカンシエルを獲った現世界女王フェム・ファンエンペルの勢いは他を圧倒し、今季は19戦17勝と一気に彼女の時代にしてしまった感が強い。
シーズン途中は度重なる落車で膝を痛めたものの、直近のレースを見る限りその影響はもやは無い。良きライバル関係を築く同い歳のパック・ピーテルス(オランダ)も強さを維持しているが、特にパワー勝負になった時のフィジカルではファンエンペルには及ばない。むしろターボルのコースでは元世界女王のベテラン、ルシンダ・ブラント(オランダ)のパワーがファンエンペルに肉薄するかもしれない。
世界選手権で強いイタリアはサラ・カサソラを、地元チェコはワールドカップ上位常連となったクリスティナ・ゼマノヴァをラインナップして上位を目指す。先日のベルギー選手権で15連覇を達成した元世界女王、サンヌ・カントの走りにも注目したい。
日の丸を背負う7選手 竹之内悠が新監督就任
日本から出場するのは、セレクションレースと全日本選手権の結果を踏まえて選定された7名。男子エリートには7年ぶりの世界選手権参戦となる沢田時(宇都宮ブリッツェン)が、女子U23は渡部春雅(明治大学/Liv)が、男子U23には柚木伸元(日本大学)と鈴木来人(OnebyESU-ICV)が、男子ジュニアには野嵜然新(桐光学園高等学校/弱虫ペダルサイクリングチーム)と成田光志(学校法人石川高等学校)が、女子ジュニアには日吉愛華(Teamまるいち)が参戦。
新しく監督に就任した竹之内悠と、長らく日本選手団をサポートする現地スタッフチームのサポートのもと好結果を狙っている。
各レースはUCIの公式Youtubeチャンネルで配信され、男子エリートレースは2月4日22:30よりJ SPORTSで生中継される。各カテゴリーの出場選手に向けて声援を送りたい。
text:So Isobe
名門コース、ターボルを舞台にした世界選手権
3日間に渡るシクロクロス世界選手権がチェコ、南ボヘミア州の街ターボルで開幕した。今から600年前に宗教改革運動であるフス戦争の拠点として建設された街に、ヨーロッパを中心に世界各国のトップシクロクロッサーが集結。金・土・日の3日間、アルカンシエルと各国の威信をかけた戦いが繰り広げられる。
ターボルは毎年ワールドカップカレンダーに組み込まれ、2001年、2010年、そして2015年と過去3度世界選手権を迎えた格式あるコース。平らな芝生面と林の中の丘陵地内を縫うように繋ぎ、近年になってキャンバー区間が追加されたことで、よりパワーとテクニックを問うレイアウトに生まれ変わった。
当初はスピードレースが予想されていたものの、雪解けと大雨で現在コースはたっぷりと水分を帯びている。週末の天気予報は曇りで最高気温は7度と現状よりコンディションは整いそうだが、完全なドライコースにはならない見込み。ドライと泥が入り混じる、タイヤ選択に差が出る状況となりそうだ。
ファンデルプールが圧倒的優勝候補 ライバル国ベルギーはどう戦う?
男子エリートレースには18カ国から49名の選手達が出場する。優勝候補筆頭はなんといっても現世界王者のマチュー・ファンデルプール(オランダ)だ。
2015年にこのターボルで、若干20歳にして初のエリート世界王者となったファンデルプールはその後2019年、2020年、2021年、そして2023年と合計5度戴冠。今年はロードレースシーズン終了後に短い休養を挟んでCX参戦し実に13戦12勝し、唯一の黒星となったUCIワールドカップ第13戦も落車とメカトラに見舞われたものであり、ライバルであるワウト・ファンアールト(ベルギー)をもってしてもファンデルプールの勢いを止めることはできなかった。
2018年に地元ファルケンブルク大会(父がコースディレクターを務めた)での優勝を逃すなど、大一番に弱かったのも今は昔。オランダはラース・ファンデルハールや台頭著しいヨリス・ニューウェンハイスを揃え、表彰台を独占できる力を備えている。
一方、何としてもアルカンシエルを奪回したいのがライバル国ベルギーだ。
出場しないファンアールトに変わり、ベルギーはタフレースに強いマイケル・ファントーレンハウトとワールドカップの総合ランキングで優勝したエリ・イゼルビットを主力に据えるが、事前の記者会見でイゼルビットは「彼のペースについていくと自滅する可能性が高い。コースがドライなら主導権を握れるけれど、ウェットでは彼が逃げだす要素が多すぎる。メダルを確保することも重要だ」と守りに徹するコメント。一方ファントーレンハウトは「できるだけ彼についていくつもりだ。失敗したらそれでいい。何より後悔したくない」と、背水の陣でファンデルプールと勝負する構えをアピール。ワールドカップ最終戦で2度ファンデルプールのアタックに食らいついたティボー・ネイスも初のエリートカテゴリーでのメダル獲得チャンスがある。
3度の世界王者、"スティービー"の現役最終レース
また、今大会の最注目選手が2010、2011、そして2014年の世界王者であるチェコのスター、ゼネク・スティバル(チェコ)だ。38歳になった”スティービー”は2023年限りで輝かしいロードキャリアを終え、この母国開催のシクロクロス世界選手権でキャリア最後のレースを迎えることとなる。
感謝を綴ったスペシャルジャージで1月1日以降のレースを走り、2010年にここターボルで初めてアルカンシエルを獲得した時と同じデザインのリドレーバイクを駆り、彼のためにデコレーションされた世界選手権に臨むスティバルの気合は十分。今季のワールドカップでは43位と27位だったが、10位台でフィニッシュする可能性も十分にあるだろう。
ファンエンペルの連覇か、ブラントやピーテルスの逆襲か
女子エリートレースをオランダ勢が支配することはこれまでのレースを見ても確定事項と言えるだろう。中でもエリート昇格した初年度にアルカンシエルを獲った現世界女王フェム・ファンエンペルの勢いは他を圧倒し、今季は19戦17勝と一気に彼女の時代にしてしまった感が強い。
シーズン途中は度重なる落車で膝を痛めたものの、直近のレースを見る限りその影響はもやは無い。良きライバル関係を築く同い歳のパック・ピーテルス(オランダ)も強さを維持しているが、特にパワー勝負になった時のフィジカルではファンエンペルには及ばない。むしろターボルのコースでは元世界女王のベテラン、ルシンダ・ブラント(オランダ)のパワーがファンエンペルに肉薄するかもしれない。
世界選手権で強いイタリアはサラ・カサソラを、地元チェコはワールドカップ上位常連となったクリスティナ・ゼマノヴァをラインナップして上位を目指す。先日のベルギー選手権で15連覇を達成した元世界女王、サンヌ・カントの走りにも注目したい。
日の丸を背負う7選手 竹之内悠が新監督就任
日本から出場するのは、セレクションレースと全日本選手権の結果を踏まえて選定された7名。男子エリートには7年ぶりの世界選手権参戦となる沢田時(宇都宮ブリッツェン)が、女子U23は渡部春雅(明治大学/Liv)が、男子U23には柚木伸元(日本大学)と鈴木来人(OnebyESU-ICV)が、男子ジュニアには野嵜然新(桐光学園高等学校/弱虫ペダルサイクリングチーム)と成田光志(学校法人石川高等学校)が、女子ジュニアには日吉愛華(Teamまるいち)が参戦。
新しく監督に就任した竹之内悠と、長らく日本選手団をサポートする現地スタッフチームのサポートのもと好結果を狙っている。
各レースはUCIの公式Youtubeチャンネルで配信され、男子エリートレースは2月4日22:30よりJ SPORTSで生中継される。各カテゴリーの出場選手に向けて声援を送りたい。
text:So Isobe
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