2024/01/29(月) - 12:14
世界選手権まで1週間。日本選手団が参戦したUCIシクロクロスワールドカップ最終戦で男女の世界王者が大一番に向けて弾みを付けた。日本選手の結果とあわせてレポート。
年末年始の過密スケジュールとショートブレイクを終え、ヨーロッパのシクロクロスカレンダーは1週間後に迫った世界選手権(チェコ、ターボル)に向けて再始動。昨年の世界選手権開催地、オランダはホーヘルハイデにて開催されたUCIシクロクロスワールドカップ最終戦(第14戦)に、日本選手団を含めた世界選手権参戦メンバーが終結した。
三つ巴の女子エリート 圧倒的なスプリントでファンエンペル勝利
渡部春雅(明治大学/Liv)が参戦した女子エリートレースは、2列目スタートのマリー・シュライバー(ルクセンブルク、SDワークス)が前をこじ開けてホールショットを獲得して動き出す。しかしすぐに頭一つ抜け出した実力を誇る世界女王フェム・ファンエンペル(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)とルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)がハイペースを刻んだ。
互いの顔色を窺いながら、ペースを上げ下げしながら走る2人に対してパック・ピーテルス(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)やセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)たちが追いついてきたものの、やはり2人の加速勝負が始まると距離を開けられてしまう。これまで対等に渡りあってきたピーテルスとアルバラードはこの日、本気のアタック合戦についていくことはできなかった。
そんな中で気を吐いたのがカータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)だった。中盤以降激しい闘いを繰り広げたファンエンペルとブラントに一度は出遅れたものの、全6周回の5周目に追いつき戦線復帰。緊張感のある三つ巴の闘いに持ち込むと、最終ストレート手前のドロップオフを前に虚を突くアタックで先頭を奪った。
パワーだけに拠らない戦略的なアタックで逆転を狙ったヴァスだったが、続けざまの階段ではファンエンペルが先頭を奪い返し、ラインが1本しかないS字下りキャンバーを経てストレートへ。世界女王が緩斜面の登りスプリントで圧倒的な加速力を披露して優勝を奪いとった。
緊張感溢れる名勝負の末、ファンエンペルが今季W杯5勝目を達成した。2位に食い込んだヴァスは世界選手権優勝候補に名を挙げ、最後に遅れたブラントが3位。表彰台に絡むと思われていたピーテルスは8位、終盤に失速したアルバラードは15位とコンディションに疑問符を残す結果に終っている。
スタート時に落車で足止めされ、最後尾からの追い上げを強いられた渡部は僅かに完走届かず53位だった。
男子エリート:ファンデルプール、圧勝
世界選優勝候補の筆頭であるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)や沢田時(宇都宮ブリッツェン)が参戦した男子エリートレースは序盤から一列棒状で高速進行。中盤に入る頃には頭数を揃えるバロワーズ・トレック・ライオンズ勢にファンデルプールとエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が加わった先頭グループが抜け出す形になった。
チーム戦を目論むバロワーズ勢がレースを引っ張り、勝負所でアタックを仕掛けたものの、冷静にフォローするファンデルプールの表情は一切変わらない。世界王者は一度カウンターで抜け出したが調子を上げるティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が食らいついていることを見て一度ストップ。ペースを緩めた後、残り1周半を残して再び強烈なアタックを放った。
「最初のアタックは少し短すぎたんだ。2度目はもっと長くアタックを続けたら差が生まれた」と振り返るファンデルプールは、やはり喰いさがるネイスを8秒引き離して最終ラップ突入の鐘を聞く。限界値で追走していたネイスがスリップダウンしたことでこの日の勝負が決まった。
母国オランダファンの声援を一身に浴びるファンデルプールが最終ラップをウイニングラン。終盤までタイミングを待ち続ける勝ちにこだわった走りでW杯5勝目、前日開催のX2Oトロフェーに続く2連勝で世界選手権連覇に向けて大きく弾みを付けることになった。
「今日は脚が重かったけれど、来週の世界選手権に向けてトレーニングが順調に進んでいる証だと思う。身体がフレッシュじゃなかったのは僕だけじゃないだろうし、これから回復に務めたい。今僕が集中しているのは短いトレーニングと休養をこなして身体を整えること」とファンデルプールは話している。
この日沢田は45位、マイナス2ラップで完走ならず(最終完走は43位)。W杯ランキングでは2勝したイゼルビットがニューウェンハイスに25ポイント差で総合優勝を達成している。第9戦〜14戦に参戦し、そのうち5勝したファンデルプールはランキング6位だった。
またこの日、男子U23レースに出場した柚木伸元(日本大学)と鈴木来人(OnebyESU-ICV)はそれぞれ36位と37位で完走。男子ジュニアの成田光志(学校法人石川高等学校)と野嵜然新(桐光学園高等学校/弱虫ペダルサイクリングチーム)はそれぞれ40位と46位完走、女子ジュニアの日吉愛華(Teamまるいち)は29位で完走。それぞれ世界選手権に向けた実戦演習を終えている。
年末年始の過密スケジュールとショートブレイクを終え、ヨーロッパのシクロクロスカレンダーは1週間後に迫った世界選手権(チェコ、ターボル)に向けて再始動。昨年の世界選手権開催地、オランダはホーヘルハイデにて開催されたUCIシクロクロスワールドカップ最終戦(第14戦)に、日本選手団を含めた世界選手権参戦メンバーが終結した。
三つ巴の女子エリート 圧倒的なスプリントでファンエンペル勝利
渡部春雅(明治大学/Liv)が参戦した女子エリートレースは、2列目スタートのマリー・シュライバー(ルクセンブルク、SDワークス)が前をこじ開けてホールショットを獲得して動き出す。しかしすぐに頭一つ抜け出した実力を誇る世界女王フェム・ファンエンペル(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)とルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)がハイペースを刻んだ。
互いの顔色を窺いながら、ペースを上げ下げしながら走る2人に対してパック・ピーテルス(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)やセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)たちが追いついてきたものの、やはり2人の加速勝負が始まると距離を開けられてしまう。これまで対等に渡りあってきたピーテルスとアルバラードはこの日、本気のアタック合戦についていくことはできなかった。
そんな中で気を吐いたのがカータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)だった。中盤以降激しい闘いを繰り広げたファンエンペルとブラントに一度は出遅れたものの、全6周回の5周目に追いつき戦線復帰。緊張感のある三つ巴の闘いに持ち込むと、最終ストレート手前のドロップオフを前に虚を突くアタックで先頭を奪った。
パワーだけに拠らない戦略的なアタックで逆転を狙ったヴァスだったが、続けざまの階段ではファンエンペルが先頭を奪い返し、ラインが1本しかないS字下りキャンバーを経てストレートへ。世界女王が緩斜面の登りスプリントで圧倒的な加速力を披露して優勝を奪いとった。
緊張感溢れる名勝負の末、ファンエンペルが今季W杯5勝目を達成した。2位に食い込んだヴァスは世界選手権優勝候補に名を挙げ、最後に遅れたブラントが3位。表彰台に絡むと思われていたピーテルスは8位、終盤に失速したアルバラードは15位とコンディションに疑問符を残す結果に終っている。
スタート時に落車で足止めされ、最後尾からの追い上げを強いられた渡部は僅かに完走届かず53位だった。
男子エリート:ファンデルプール、圧勝
世界選優勝候補の筆頭であるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)や沢田時(宇都宮ブリッツェン)が参戦した男子エリートレースは序盤から一列棒状で高速進行。中盤に入る頃には頭数を揃えるバロワーズ・トレック・ライオンズ勢にファンデルプールとエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が加わった先頭グループが抜け出す形になった。
チーム戦を目論むバロワーズ勢がレースを引っ張り、勝負所でアタックを仕掛けたものの、冷静にフォローするファンデルプールの表情は一切変わらない。世界王者は一度カウンターで抜け出したが調子を上げるティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が食らいついていることを見て一度ストップ。ペースを緩めた後、残り1周半を残して再び強烈なアタックを放った。
「最初のアタックは少し短すぎたんだ。2度目はもっと長くアタックを続けたら差が生まれた」と振り返るファンデルプールは、やはり喰いさがるネイスを8秒引き離して最終ラップ突入の鐘を聞く。限界値で追走していたネイスがスリップダウンしたことでこの日の勝負が決まった。
母国オランダファンの声援を一身に浴びるファンデルプールが最終ラップをウイニングラン。終盤までタイミングを待ち続ける勝ちにこだわった走りでW杯5勝目、前日開催のX2Oトロフェーに続く2連勝で世界選手権連覇に向けて大きく弾みを付けることになった。
「今日は脚が重かったけれど、来週の世界選手権に向けてトレーニングが順調に進んでいる証だと思う。身体がフレッシュじゃなかったのは僕だけじゃないだろうし、これから回復に務めたい。今僕が集中しているのは短いトレーニングと休養をこなして身体を整えること」とファンデルプールは話している。
この日沢田は45位、マイナス2ラップで完走ならず(最終完走は43位)。W杯ランキングでは2勝したイゼルビットがニューウェンハイスに25ポイント差で総合優勝を達成している。第9戦〜14戦に参戦し、そのうち5勝したファンデルプールはランキング6位だった。
またこの日、男子U23レースに出場した柚木伸元(日本大学)と鈴木来人(OnebyESU-ICV)はそれぞれ36位と37位で完走。男子ジュニアの成田光志(学校法人石川高等学校)と野嵜然新(桐光学園高等学校/弱虫ペダルサイクリングチーム)はそれぞれ40位と46位完走、女子ジュニアの日吉愛華(Teamまるいち)は29位で完走。それぞれ世界選手権に向けた実戦演習を終えている。
UCIシクロクロスワールドカップ2023-2024 第14戦 女子エリート結果
1位 | フェム・ファンエンペル(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) | |
2位 | カータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス) | |
3位 | ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | |
4位 | ゾーイ・バックステッド(イギリス、キャニオン・スラム) | |
5位 | マリー・シュライバー(ルクセンブルク、SDワークス) | |
6位 | ラウラ・フェルドンショット(ベルギー) | |
7位 | サンヌ・カント(ベルギー、クレラン・コレンドン) | |
8位 | パック・ピーテルス(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) | |
9位 | クリスティナ・ゼマノヴァ(チェコ、ブライオンレーシングチームMB) | |
10位 | イザベラ・ホルムグレン(カナダ、リドル・トレック) | |
53位 | 渡部春雅(明治大学/Liv) | -1LAP |
UCIシクロクロスワールドカップ2023-2024 第14戦 男子エリート結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 1:02:57 |
2位 | ヨリス・ニューウェンハイス(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:05 |
3位 | ピム・ロンハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:09 |
4位 | ティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | |
5位 | エリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | |
6位 | ヨラン・ウィズーレ(ベルギー、クレラン・コレンドン) | +0:21 |
7位 | ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:28 |
8位 | クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アルケアB&Bホテルズ) | +0:38 |
9位 | フェリペ・オルツ(スペイン、ビラ・ホヨサ・ネテオ) | +0:45 |
10位 | ティモン・リュエッグ(スイス) | +0:56 |
45位 | 沢田時(宇都宮ブリッツェン) | -2LAP |
text:So.Isobe
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