2023/12/08(金) - 12:00
11月23日、栃木県のモビリティリゾートもてぎにて、秋の恒例耐久レース「もてぎエンデューロ」が開催された。秋晴れの下、多くのサイクリストたちがサーキットを思い思いに駆け巡った1日をレポート。
鈴鹿サーキットや富士スピードウェイとならぶ、日本を代表する国際サーキットとして知られるモビリティリゾートもてぎ。以前は、ツインリンクの名で親しまれていたサーキットであるが、近年はカートコース、グランピング、ジップラインや自然を体感できる様々なプログラムなど、1日では遊び尽くせないほどのボリュームを持った、まさに「モビリティリゾート」として人気を集めている。
そんなモビリティリゾートもてぎの中心となる国際サーキットをサイクリストが埋め尽くす、特別な一日となるのが「もてぎエンデューロ」だ。以前は「もてぎ7時間エンデューロ」という名前だった大会から「7時間」が取れ、メインとなる耐久レースも6時間となり、よりフレンドリーな大会へとリニューアルしたばかり。
新たな一歩を踏み出したもてぎエンデューロには、関東一円から多くのサイクリストたちが集結。サーキットへ近づくにつれ、前も後ろもロードバイクを積んだ車に。こういった瞬間にふとした連帯感を覚えるのは、きっと私だけではないはずだ。
サーキットに到着し車から降りてみれば、前夜に雨雲が通り過ぎたようで、路面は少し濡れている状態。でも、雨が降り出しそうな気配はなく、むしろ遠くには青空も覗いている。自転車日和の良い一日になりそうだ。
今年は晴れそうで良かったですね、と大会をプロデュースするギャラップの山本さんにご挨拶。「皆さんに楽しんでもらえそうで、本当に安心しました」とおっしゃるには少し訳があり、昨年大会は雨でなかなか過酷な様相を呈していたのだ。「去年はもう、申し訳ない気持ちでいっぱいで……」と語る山本さんだが、今年はそんな心労を感じずにすみそうでなによりだ。
7時からは試走タイムとなり、多くの参加者がコースイン。以前も参加しているし、どうせ本番では沢山走るし試走はいいや、という人もいるかもしれないけれど、安全かつスムーズに走るには重要だ。コース自体は同じでも、路面状況によってラインは変わってくる。
特に、今回のように雨は降っていないけれど路面はウェット、というのはサーキット路面に沁み込んだ油が浮いたりして、思わぬ箇所がスリッピーになったりもする。実際、レース中に撮影していても同じ箇所で何人も立て続けに落車するシーンも見かけた。高速かつ密度の高い集団で走る本番に臨む前に、試走時に余裕をもってコースを把握しておけば、アクシデントのリスクも低くなる。
試走が終わった後は、このイベントである意味最も盛り上がる種目が始まる。そう、子ども達が参加するキッズ&ひよこレースだ。広いサーキットを贅沢に使ったコースで子どもたちの熱いバトルが繰り広げられる。
未就学児、小学校低学年、高学年と年齢別に3つの距離が用意されるキッズ&ひよこレースだが、やはりなんといっても高学年の部の真剣勝負は大人顔負け。渾身の逃げ、白熱のスプリント。ここから将来プロレーサーが生まれていくのかもしれないと思うようなレースが展開されていく。
そしてなんといっても可愛らしいのは未就学児のひよこレース。こちらは、保護者の方も伴走出来るシステムで、親子一緒に走る姿も。応援が最も盛り上がるのもこのひよこレースである。
そんな子どもたちをサポートしてくれるのは、宇都宮ブリッツェンやマトリックスパワータグ、さいたま那須サンブレイブ、の選手たち。そして大会アンバサダーでもある「ユキヤ」こと新城幸也も子供たちと一緒に走り、励ましてくれていた。
大盛り上がりのキッズレースを終えるころには、ピットロードに大人たちが勢揃い。ゲストライダー達が勢揃いしたスタートセレモニーを終えた後、まず4時間エンデューロが、少し時間を置いて最長種目の6時間エンデューロがスタートしていく。
スタートしてしばらくはウェットだった路面も、日が昇るにつれ、そして大勢の自転車が走るにつれてどんどんドライに。1時間も経つころにはすっかり走りやすい状況となり、下りも安心できるように。
一周4.8kmのコースの勝負所となるのはなんといってもトンネルを抜けた先、90°コーナーを越えた後の登り区間。反対周りとなるモータースポーツであればブレーキング勝負となるこの区間は、一気に標高を稼ぐ急こう配。勝利を狙う選手らにとっては、毎周ごとにセレクションがかかるポイントである一方、多くの参加者にとっては出来るだけ体力の消耗を抑えてクリアしたい箇所。
登り切ったらすぐに長い下りが登場。いくつものコーナーが現れるものの、道幅も広くそこまで難しいことは無いハズ。しっかり足を休めて、もう一つのアンダーブリッジを越えると、3連のストレート区間へ。特に最初のストレートは緩く登っていることもあり、意外に脚を使う区間でもある。風向きを読みつつ、上手く集団に入ることが出来れば効率的に走れるだろう。
ちなみに今年で20周年を迎えるもてぎエンデューロの特別企画として、「エンデューロ×完走」という取り組みも行われていたのだ。6時間で28周、4時間で19周、2時間で10周、キッズクラスは8周と、それぞれの目標が定められており、達成者には記念メダルが贈られるというもの。
過去のデータからの想定完走率は85%と絶妙な設定で、走りきるためには無駄足を使わない省エネ走法は重要となってくる。集団が大きいままの序盤が過ぎれば、ゲストライダー達も先頭集団以外でペースを作ってくれるチャンスも増えてくるので有効活用するのが吉だ。
そうして周回を重ねるうちに4時間エンデューロの面々がフィニッシュし、入れ替わるように2時間エンデューロの参加者がコースインしていく。
こちらの2時間エンデューロは、レース初心者向けに用意された種目でもあり、事前に走行レクチャーが行われたのちにスタートすることとなっている。さいたま那須サンブレイブの若杉GMらが安全に集団で走れるような実走講座を行ってくれる。いきなり集団走にぶっつけ本番で挑戦するのではなく、しっかりと順序を踏んで慣れていくことが出来るのは非常に嬉しい取り組みだ。
冷雨だった昨年が嘘のような温暖な気候の下、参加者達も順調に周回を重ねていく。秋の日は釣瓶落とし、という言葉を実感するようにどんどん太陽が低くなっていく中、6時間の長いレースはフィニッシュを迎えることに。
最長カテゴリーとなる6時間エンデューロの総合争いは、なんと逃げ切りを果たしたチーム、TS TECH 自転車部の手に。メンバー交代のロスがあるため、一般的にはソロが有利とされるエンデューロレースでチームが勝つのは珍しいこと。更に企業対抗部門も制し、来年のファーストグリッド出走権を確定させている。
ただ速い人だけが表彰されるのではなく、ジャストフィニッシュ賞として、制限時間ピッタリにゴールラインを通過した人を対象とした賞も用意されるなど、多くのサイクリストが楽しめるような仕掛けがされているのももてぎエンデューロらしさだ。
特に、最後にフィニッシュする方はユキヤさんをはじめとしたゲストライダー、そしてサポートバイクも総出でお出迎え。ある意味先頭でフィニッシュするよりも特別な体験となること間違いない。
フィニッシュ後には表彰式と抽選会を開催。そして忘れてはならないのが、完走メダルの受け取りだ。今回、天候が良かったこともあってか、完走者が当初予定よりも多かったのことで、2時間エンデューロの方は後日発送となるという、ある種嬉しいハプニングもありつつも、もてぎエンデューロの1日は幕を下ろすのであった。
昨年、コロナ禍より復活し、今年で20周年を迎えたもてぎエンデューロ。来年に向けても既に動き始めているとのことで、2024年はついに久しぶりに春大会も復活するというウワサも。シーズン初めと終わりを締めくくる長距離イベントとして、完全復活の日は近そうだ。
text&photo:Naoki yasuoka
鈴鹿サーキットや富士スピードウェイとならぶ、日本を代表する国際サーキットとして知られるモビリティリゾートもてぎ。以前は、ツインリンクの名で親しまれていたサーキットであるが、近年はカートコース、グランピング、ジップラインや自然を体感できる様々なプログラムなど、1日では遊び尽くせないほどのボリュームを持った、まさに「モビリティリゾート」として人気を集めている。
そんなモビリティリゾートもてぎの中心となる国際サーキットをサイクリストが埋め尽くす、特別な一日となるのが「もてぎエンデューロ」だ。以前は「もてぎ7時間エンデューロ」という名前だった大会から「7時間」が取れ、メインとなる耐久レースも6時間となり、よりフレンドリーな大会へとリニューアルしたばかり。
新たな一歩を踏み出したもてぎエンデューロには、関東一円から多くのサイクリストたちが集結。サーキットへ近づくにつれ、前も後ろもロードバイクを積んだ車に。こういった瞬間にふとした連帯感を覚えるのは、きっと私だけではないはずだ。
サーキットに到着し車から降りてみれば、前夜に雨雲が通り過ぎたようで、路面は少し濡れている状態。でも、雨が降り出しそうな気配はなく、むしろ遠くには青空も覗いている。自転車日和の良い一日になりそうだ。
今年は晴れそうで良かったですね、と大会をプロデュースするギャラップの山本さんにご挨拶。「皆さんに楽しんでもらえそうで、本当に安心しました」とおっしゃるには少し訳があり、昨年大会は雨でなかなか過酷な様相を呈していたのだ。「去年はもう、申し訳ない気持ちでいっぱいで……」と語る山本さんだが、今年はそんな心労を感じずにすみそうでなによりだ。
7時からは試走タイムとなり、多くの参加者がコースイン。以前も参加しているし、どうせ本番では沢山走るし試走はいいや、という人もいるかもしれないけれど、安全かつスムーズに走るには重要だ。コース自体は同じでも、路面状況によってラインは変わってくる。
特に、今回のように雨は降っていないけれど路面はウェット、というのはサーキット路面に沁み込んだ油が浮いたりして、思わぬ箇所がスリッピーになったりもする。実際、レース中に撮影していても同じ箇所で何人も立て続けに落車するシーンも見かけた。高速かつ密度の高い集団で走る本番に臨む前に、試走時に余裕をもってコースを把握しておけば、アクシデントのリスクも低くなる。
試走が終わった後は、このイベントである意味最も盛り上がる種目が始まる。そう、子ども達が参加するキッズ&ひよこレースだ。広いサーキットを贅沢に使ったコースで子どもたちの熱いバトルが繰り広げられる。
未就学児、小学校低学年、高学年と年齢別に3つの距離が用意されるキッズ&ひよこレースだが、やはりなんといっても高学年の部の真剣勝負は大人顔負け。渾身の逃げ、白熱のスプリント。ここから将来プロレーサーが生まれていくのかもしれないと思うようなレースが展開されていく。
そしてなんといっても可愛らしいのは未就学児のひよこレース。こちらは、保護者の方も伴走出来るシステムで、親子一緒に走る姿も。応援が最も盛り上がるのもこのひよこレースである。
そんな子どもたちをサポートしてくれるのは、宇都宮ブリッツェンやマトリックスパワータグ、さいたま那須サンブレイブ、の選手たち。そして大会アンバサダーでもある「ユキヤ」こと新城幸也も子供たちと一緒に走り、励ましてくれていた。
大盛り上がりのキッズレースを終えるころには、ピットロードに大人たちが勢揃い。ゲストライダー達が勢揃いしたスタートセレモニーを終えた後、まず4時間エンデューロが、少し時間を置いて最長種目の6時間エンデューロがスタートしていく。
スタートしてしばらくはウェットだった路面も、日が昇るにつれ、そして大勢の自転車が走るにつれてどんどんドライに。1時間も経つころにはすっかり走りやすい状況となり、下りも安心できるように。
一周4.8kmのコースの勝負所となるのはなんといってもトンネルを抜けた先、90°コーナーを越えた後の登り区間。反対周りとなるモータースポーツであればブレーキング勝負となるこの区間は、一気に標高を稼ぐ急こう配。勝利を狙う選手らにとっては、毎周ごとにセレクションがかかるポイントである一方、多くの参加者にとっては出来るだけ体力の消耗を抑えてクリアしたい箇所。
登り切ったらすぐに長い下りが登場。いくつものコーナーが現れるものの、道幅も広くそこまで難しいことは無いハズ。しっかり足を休めて、もう一つのアンダーブリッジを越えると、3連のストレート区間へ。特に最初のストレートは緩く登っていることもあり、意外に脚を使う区間でもある。風向きを読みつつ、上手く集団に入ることが出来れば効率的に走れるだろう。
ちなみに今年で20周年を迎えるもてぎエンデューロの特別企画として、「エンデューロ×完走」という取り組みも行われていたのだ。6時間で28周、4時間で19周、2時間で10周、キッズクラスは8周と、それぞれの目標が定められており、達成者には記念メダルが贈られるというもの。
過去のデータからの想定完走率は85%と絶妙な設定で、走りきるためには無駄足を使わない省エネ走法は重要となってくる。集団が大きいままの序盤が過ぎれば、ゲストライダー達も先頭集団以外でペースを作ってくれるチャンスも増えてくるので有効活用するのが吉だ。
そうして周回を重ねるうちに4時間エンデューロの面々がフィニッシュし、入れ替わるように2時間エンデューロの参加者がコースインしていく。
こちらの2時間エンデューロは、レース初心者向けに用意された種目でもあり、事前に走行レクチャーが行われたのちにスタートすることとなっている。さいたま那須サンブレイブの若杉GMらが安全に集団で走れるような実走講座を行ってくれる。いきなり集団走にぶっつけ本番で挑戦するのではなく、しっかりと順序を踏んで慣れていくことが出来るのは非常に嬉しい取り組みだ。
冷雨だった昨年が嘘のような温暖な気候の下、参加者達も順調に周回を重ねていく。秋の日は釣瓶落とし、という言葉を実感するようにどんどん太陽が低くなっていく中、6時間の長いレースはフィニッシュを迎えることに。
最長カテゴリーとなる6時間エンデューロの総合争いは、なんと逃げ切りを果たしたチーム、TS TECH 自転車部の手に。メンバー交代のロスがあるため、一般的にはソロが有利とされるエンデューロレースでチームが勝つのは珍しいこと。更に企業対抗部門も制し、来年のファーストグリッド出走権を確定させている。
ただ速い人だけが表彰されるのではなく、ジャストフィニッシュ賞として、制限時間ピッタリにゴールラインを通過した人を対象とした賞も用意されるなど、多くのサイクリストが楽しめるような仕掛けがされているのももてぎエンデューロらしさだ。
特に、最後にフィニッシュする方はユキヤさんをはじめとしたゲストライダー、そしてサポートバイクも総出でお出迎え。ある意味先頭でフィニッシュするよりも特別な体験となること間違いない。
フィニッシュ後には表彰式と抽選会を開催。そして忘れてはならないのが、完走メダルの受け取りだ。今回、天候が良かったこともあってか、完走者が当初予定よりも多かったのことで、2時間エンデューロの方は後日発送となるという、ある種嬉しいハプニングもありつつも、もてぎエンデューロの1日は幕を下ろすのであった。
昨年、コロナ禍より復活し、今年で20周年を迎えたもてぎエンデューロ。来年に向けても既に動き始めているとのことで、2024年はついに久しぶりに春大会も復活するというウワサも。シーズン初めと終わりを締めくくる長距離イベントとして、完全復活の日は近そうだ。
text&photo:Naoki yasuoka
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