強豪海外チームがずらりと揃う30回目のジャパンカップ。アラフィリップ、フルーム、チッコーネ、そして新城幸也。ビッグネームが多数登壇したチームプレゼンテーションの模様をダイジェストでレポートします。



リュブリャナ・グスト・サンティック

スロベニアのリュブリャナ・グスト・サンティックはもはやレギュラー出場チーム photo:Makoto AYANO

タデイ・ポガチャルを輩出したことでも知られる、ジャパンカップお馴染みのスロベニアンチームがリュブリャナ・グスト・サンティック。人気のゆるキャラ「アタ吉」を伴っての登壇だ。ボリャネック監督によれば、ポガチャルやプリモシュ・ログリッチなど有力選手が次々と生まれている理由は「国にロードレースに対するパッションがあるから」。ヨーロッパを巻き込むスロベニア旋風を宇都宮にも巻き起こすことができるのか?土曜日は現クロアチア王者ヴィクトル・ポトチュキをエースに据える。



チーム ノボ ノルディスク

選手全員が1型糖尿病のチーム ノボ ノルディスク photo:Makoto AYANO

チーム ノボ ノルディスクが駆るアルゴン18 SUM PRO photo:Makoto AYANO

2014年から連続出場となるのが、所属選手全員が1型糖尿病患者からなるチーム ノボ ノルディスク。「糖尿病とともに生きる人々を元気づけ、治療に積極的に取り組み、それぞれの人生の目標に向けて生きていくことを応援する」という大きなメッセージを掲げて今年も宇都宮の地を走る。過去大会で逃げに乗ったダビ・ロサノ(スペイン)やペーテル・クストル(ハンガリー)などジャパンカップ出場経験豊富なメンバーはチームにとっての安心材料になるはずだ。



ロット・ディスティニー

昨年に続き出場するロット・デスティニー photo:Makoto AYANO

昨年5位のマキシム・ファンヒルス(ベルギー)に期待がかかる photo:Makoto AYANO
選手の似顔絵イラストフラッグを自作したファン photo:Makoto AYANO



UCIワールドチーム残留争いを賭けて昨年のジャパンカップに臨み、トップ10に2人を送り込んだロット・ディスティニー。プロチームに降格した今年もワールドチームレベルの選手層で活躍し、勢いそのままに2年連続の宇都宮入りを果たした。

ロット・デスティニーが駆るリドレーの新型バイク photo:Makoto AYANO

エースを務めるのは昨年5位のマキシム・ファンヒルス(ベルギー)だ。今年はアルデンヌクラシックでトップ10を2回、グラン・コロンビエールにフィニッシュするツール・ド・フランス第13ステージで区間2位に入るなど活躍。「コンディションはいいと思う。雰囲気も良く、大好きな日本でいい走りをしたい。日本ダイスキ(日本語で)」とコメントを残した。



イスラエル・プレミアテック

ジャパンカップ初参戦を遂げたクリス・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック) photo:Kei Tsuji

ジャパンカップ初出場のクリス・フルーム(イギリス) photo:Makoto AYANO
クリス・フルーム(イギリス)のバイク、ファクターOSTRO VAM。ギアが真円に! photo:Makoto AYANO



昨年はメンバーの怪我などで急遽来日中止、2度目の正直でジャパンカップ参戦を遂げたイスラエル・プレミアテック。なんといっても注目はツール・ド・フランスを4度制したクリス・フルーム(イギリス)の来日だ。古くは2008年のツアー・オブ・ジャパン、ここ近年はさいたまクリテリウムでの来日経験はあれど、彼にとっては初のジャパンカップ出場となる。直近のパリ〜トゥールでスタジエ(研修生)ながら劇的な逃げ切りを決めたライリー・シーハン(アメリカ)もメンバー入りし、「パフォーマンスも維持できているしコースも好き」と意欲的だ。



ジェイコ・アルウラー

ジェイコ・アルウラー photo:Makoto AYANO

オーストラリア籍のジェイコ・アルウラーは、かつてパリ〜ルーベを制したマシュー・ヘイマン監督に率いられての登壇だ。エースを張るエディ・ダンバー(アイルランド)は移籍初年度の今年、ジロ・デ・イタリアで自身初めてグランツールのエースを任されるや否や総合7位と力を発揮。ブエルタ・ア・エスパーニャでの落車リタイアなど直近のレースでは目立った成績を残せていないものの、その登坂力はやはり侮れない。

経験豊富なルーカス・ハミルトン(オーストラリア)や、昨年のヨーロッパ選手権U23王者フェリックス・エンゲルハルト(ドイツ)や、研修生としてメンバー入りした19歳のハミッシュ・マッケンジー(オーストラリア)は世界選手権U23個人タイムトライアル3位に入るなど若手有望株を揃えてジャパンカップに臨む。

土曜も日曜も活躍を期待したいエドワード・ダンバー(アイルランド) photo:Makoto AYANO
チーム・ジェイコ・アルウラーが駆るのはジャイアントPROPEL photo:Makoto AYANO



スーダル・クイックステップ

久々の出場となるスーダル・クイックステップ photo:Makoto AYANO

日曜の優勝候補にも挙げられるファウスト・マスナダ(イタリア) photo:Makoto AYANO
ジュリアン・アラフィリップ(フランス)のスペシャライズドTARMAC SL8 photo:Makoto AYANO



"ウルフパック"ことスーダル・クイックステップにとっては2013年以来10年ぶりのジャパンカップ参戦だ。ファンの大注目は、金曜日の試走からファンが詰めかけたりとフィーバーを巻き起こしているジュリアン・アラフィリップ(フランス)。「暖かい歓迎に感謝したい。すごく短い滞在を楽しみたいと思っているよ」と言う2020年と2021年の世界王者にとっては初来日であり、短距離急勾配の古賀志林道は彼が最も得意とする場面と言える。

ひときわ大きな声援を受けるジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ) photo:Kei Tsuji

チームはロンバルディア前哨戦で5位に入ったファウスト・マスナダ(イタリア)や、若きドイツツアー総合勝者イラン・ファンウィルデル(ベルギー)など屈強なメンバーを揃えている。チーム存続も確定路線となり、シーズンラストレースを優勝でまとめたいところ。



リドル・トレック

ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)。落車からの完全復活となれば優勝候補の筆頭だ photo:Kei Tsuji

2015年と2019年の本戦覇者バウケ・モレマ(オランダ)と、クリテリウム2連覇中のエドワード・トゥーンス(ベルギー)を抱えるリドル・トレックは最もジャパンカップの"勝ち方"を知っているチームかもしれない。今年は急遽1人少ない5名での参戦となるが、ツール・ド・フランス山岳賞を獲ったジュリオ・チッコーネ(イタリア)をエースにジャパンカップでの勝ち星追加を見据えている。

チームグッズを観客席に投げるバウケ・モレマ(リドル・トレック) photo:Makoto AYANO
リドル・トレック応援旗を今年も用意したファン photo:Makoto AYANO



なおメンバーの多くはカスタムペイントが施されたトレックバイクでレースに挑む。チッコーネのバイクに取り付けられるマイヨアポワ仕様のコンピュータも機材ファンなら注目したいところ。



アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ

順番を待つルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)たち photo:Kei Tsuji

20歳の若手からベテランまで、幅広いメンバー構成で挑むのがアンテルマルシェ・サーカス・ワンティだ。チームとしてはジャパンカップ初参戦であり、中でも元世界王者ルイ・コスタ(ポルトガル)は今年ブエルタ・ア・エスパーニャを含む4勝を挙げ、直前のロンバルディアでは13位と復活の年を過ごすなど注目したいところ。

急遽来日が決まった元世界チャンピオン、ルイ・コスタ(ポルトガル) photo:Makoto AYANO

その脇をベテランのレイン・タラマエ(エストニア)、今年のジロ第7ステージ区間3位のシモーネ・ペティッリ(イタリア)と登れる選手で固め、日曜日の好結果を目指す。なお移籍ニュースが流れたコスタだが、事前に本人に聞いたところワールドチーム加入は確定済み。ロンバルディア後は母国で休養を入れたとのことでモチベーションは高いはずだ。



コフィディス

連続出場のコフィディス。アラン・デロエイユ監督にとっても最終レースだ photo:Makoto AYANO

プロ自転車選手にして哲学書の著作があるギヨーム・マルタン(フランス) photo:Makoto AYANO

コフィディスは選手はもちろん監督、スタッフまで全員フランス人という構成で2年連続のジャパンカップに挑む。昨年は前半戦から攻撃し、最終的に6位に入ったギヨーム・マルタンは「昨年はレースの内外でとてもいい経験ができたので、今年ももちろん良いレースを見せたい」と言いつつ、自身著の哲学書の宣伝活動に勤しむシーンも。昨年クリテリウム2位のアクセル・ザングルは「今年こそフィニッシュで両手を挙げたい」とリベンジを狙っている。



バーレーン・ヴィクトリアス

新城幸也率いるバーレーン・ヴィクトリアス photo:Makoto AYANO

チームの応援旗をたくさん持参した新城幸也 photo:Makoto AYANO
新城幸也の駆るメリダREACT photo:Makoto AYANO



ジャパンカップ出場は実に12回目。39歳となった新城幸也が率いるのがお馴染みチームのバーレーン・ヴィクトリアスだ。新城自身は「アジア大会を走ってからヨーロッパに戻り、また日本に帰ってきたので身体がふわついていますが日曜日には合わせられると思う」とコメント。「他のチームはメンバーリスト上では強いですが、うちもロンバルディアを走ったメンバー3人が来ているので、指示を出しながら、後半に数を残して勝負したい」となかなか実戦的な作戦を話す。

オリジナルうちわを用意した新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:Kei Tsuji

やる気に満ち溢れたコメントを残したのが昨年4位のハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア)だ。「日曜日はタフなレースになると思うけれど、僕の目標は表彰台に登ること。6年在籍したバーレーンでの最終レースでもあるし、モチベーションはすごく高い」と意気込んでいる。



EFエデュケーション・イージーポスト

昨年2位の優勝候補アンドレア・ピッコロ(イタリア) photo:Makoto AYANO

昨年優勝チームのEFエデュケーション・イージーポスト photo:Makoto AYANO
EFエデュケーション・イージーポストが駆るキャノンデールSuperSix Evo LAB71 photo:Makoto AYANO



過去10回参戦したうち優勝4回。EFエデュケーション・イージーポストもまた、参戦チーム随一のジャパンカップと相性の良いチームと言えるだろう。チームリーダーを務めるのは昨年ニールソン・ポーレスとともにワンツー優勝を決めた22歳アンドレア・ピッコロ(イタリア)で、今年はブエルタでマイヨロホを途中着用するなど、過去最高と呼べるシーズンの締めくくりに優勝を渇望している。

ピッコロを支えるのはツール・ド・ランカウイで総合優勝を挙げ、「良い調子のまま日本にやってくることができた」と言うジェームス・ショーやサイモン・カー(共にイギリス)、さらに経験豊富なミケル・ヴァルグレン(デンマーク)といった登りに強い選手たち。古賀志林道で再びEF旋風が巻き起こるかどうか?

ディフェンディングチーム、EFエデュケーション・イージーポスト photo:Kei Tsuji

text:So Isobe
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji