2023/10/08(日) - 09:00
虚を突く下りアタックを決めたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が、史上3人目となるイル・ロンバルディア3連覇を達成。そして37位フィニッシュのティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が14年に渡る現役生活にピリオドを打った。
10月7日(土)、今年のヨーロッパでのUCIワールドツアーを締めくくるイル・ロンバルディアがイタリアのロンバルディア州で行われた。第117回目を迎える別名「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」は、昨年の逆となるコモからベルガモに向かう伝統的なコースレイアウト。そのため2021年と同じく残り87.1kmから始まるクロチェッタとザンブラの二段坂や、残り40.6kmから登坂するパッソ・ディ・ガンダ(距離9.2km/平均7.3%)が勝負所となる。
出場するのは3連覇を狙うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や前日にユンボ・ヴィスマとの合併消滅が報道されたスーダル・クイックステップのレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。また来年ボーラ・ハンスグローエに移籍するプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)もユンボ・ヴィスマでのラストレースとして出場した。
午前10時35分にスタートが切られ、すぐにトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)らがアタックを仕掛ける。逃げを目指す選手とそれをチェックする選手による慌ただしい展開のなか、僅か22km地点でエヴェネプールら5名が落車する。シュールト・バックス(オランダ、UAEチームエミレーツ)がリタイアを選んた一方で、左半身を地面に打ち付けたエヴェネプールは起き上がり、出血した左肘に包帯を巻きながら何とか再スタート。初制覇を目指すベルギー王者にいきなり不運が襲いかかった。
デヘントやシモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス)、ベン・スウィフト(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)などベテランが入った16名の逃げグループは、サイクリストの聖地とも言われるマドンナ・デル・ギザッロ教会の丘をクリア。一方のメイン集団はユンボ・ヴィスマやリチャル・カラパス(エクアドル)とベン・ヒーリー(アイルランド)を揃えるEFエデュケーション・イージーポストが中心にペースをコントロールした。
最大4分のリードを得た逃げ集団は山岳に入る度に人数を減らし、クロチェッタとザンブラの二段坂(残り87.1kmから)で今季調子の上がらないデヘントが脱落。プロトンでは昨年2位でレース序盤に落車したエンリク・マス(スペイン、モビスター)が遅れ、直後にリタイアを選択。優勝候補が一人去ったメイン集団からヒーリーが飛び出し、それに20歳のオスカー・オンレー(イギリス、DSM・フィルメニッヒ)が反応した。
ヒーリーとオンレーの2人はゲシュケのいる先頭集団に合流したものの、その時点でのリードは50秒まで縮まる。総獲得標高4,646mのサバイバルレースは終盤に突入し、プロトンではカラパスや来季スーダル・クイックステップに移籍するミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が落車するシーンもありながら、更に逃げとの差を縮めていく。
レース先頭は単独となったヒーリーがパッソ・ディ・ガンダ(距離9.2km/平均7.3%)の頂上を目指し、それを追うプロトンはUAEチームエミレーツがハイペースに持ち込む。そして現役ラストレースを走るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)の顔写真が路面に貼られたつづら折りでアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)が加速し、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が追従。それをログリッチが素早く引き戻す一方で、「フィニッシュに近づくにつれ落車の影響が大きくなっていった」と振り返るエヴェネプールが遅れていった。
ヒーリーを吸収し、アダム・イェーツがポガチャルのために牽引する精鋭集団は11名。マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)やアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)が加速してライバルたちの脚色を伺うなか、一度ポガチャルとログリッチは遅れをとる。しかし牽制に入った先頭のペースが落ちると2人は先頭に復帰。そして再びアダム・イェーツが作るペースを打ち破り、ポガチャルがパッソ・ディ・ガンダの頂上手前で飛び出した。
残り33km(頂上まで1.6km)でのアタックにカラパスらが遅れるなか、唯一ウラソフが食らいつく。するとログリッチやサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)、アンドレア・バジオーリ(イタリア、スーダル・クイックステップ)、カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)が合流。6名となった先頭集団が頂上を通過し、「酷かった2年前より少しだけ上手くなった」と語る下りでポガチャルが再び仕掛けた。
一気に15秒のリードを得たポガチャルは、アダム・イェーツが追いついた追走集団との距離を拡げていく。約16kmに及んだ下りを終えた時点でポガチャルとログリッチ・グループとの差は32秒。独走のまま平坦路に入ったポガチャルは「最初は右脚、その次に左脚が攣った」と語る太ももを叩きながら突き進み、それを追う追走集団はアダム・イェーツが上手くローテーションをかき乱す。
そしてポガチャルは大観衆の詰めかけるフィニッシュ前の丘「コッレ・アペルト」に1分差で突入。登坂でもペースを落とすことなくクリアしたポガチャルが、ベルガモの市街地に引かれたフィニッシュラインを通過。アルフレッド・ビンダとファウスト・コッピに次ぐ史上3人目となる大会3連覇を達成した。
「登りでアタックしようと思ったのだが、今日の登りはウラソフが一番強かった。だから諦めずに食らいつき、最後まで2人で行きたかったが後ろに追いつかれた。下りで後続と差が生まれたので、下手くそだった2年前より少しだけマシになったその下りで仕掛けた。距離のあるフィニッシュまでの道のりは辛かったよ」とポガチャルはレースを振り返る。
また「脚が攣ってもうダメだと思ったが、最後の丘のためにエアロポジションで力を溜めた。初出場から3年連続の優勝だ。まるで夢のようなシナリオとなり、痛みの中であっても最後の数キロは喜びを噛みしめることができた」と、ロンド・ファン・フラーンデレンに続く今年2つ目のモニュメント制覇をポガチャルはそう喜んだ。
ポガチャルから52秒遅れで到着した追走集団は、バジオーリがスプリントでログリッチを退け2位。ログリッチは3位でプロデビューした2016年から8年間所属したユンボ・ヴィスマに別れを告げた。
そしてティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)は大歓声の中37位でフィニッシュ。笑顔で14年に渡る現役生活にピリオドを打った。
10月7日(土)、今年のヨーロッパでのUCIワールドツアーを締めくくるイル・ロンバルディアがイタリアのロンバルディア州で行われた。第117回目を迎える別名「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」は、昨年の逆となるコモからベルガモに向かう伝統的なコースレイアウト。そのため2021年と同じく残り87.1kmから始まるクロチェッタとザンブラの二段坂や、残り40.6kmから登坂するパッソ・ディ・ガンダ(距離9.2km/平均7.3%)が勝負所となる。
出場するのは3連覇を狙うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や前日にユンボ・ヴィスマとの合併消滅が報道されたスーダル・クイックステップのレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。また来年ボーラ・ハンスグローエに移籍するプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)もユンボ・ヴィスマでのラストレースとして出場した。
午前10時35分にスタートが切られ、すぐにトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)らがアタックを仕掛ける。逃げを目指す選手とそれをチェックする選手による慌ただしい展開のなか、僅か22km地点でエヴェネプールら5名が落車する。シュールト・バックス(オランダ、UAEチームエミレーツ)がリタイアを選んた一方で、左半身を地面に打ち付けたエヴェネプールは起き上がり、出血した左肘に包帯を巻きながら何とか再スタート。初制覇を目指すベルギー王者にいきなり不運が襲いかかった。
デヘントやシモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス)、ベン・スウィフト(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)などベテランが入った16名の逃げグループは、サイクリストの聖地とも言われるマドンナ・デル・ギザッロ教会の丘をクリア。一方のメイン集団はユンボ・ヴィスマやリチャル・カラパス(エクアドル)とベン・ヒーリー(アイルランド)を揃えるEFエデュケーション・イージーポストが中心にペースをコントロールした。
最大4分のリードを得た逃げ集団は山岳に入る度に人数を減らし、クロチェッタとザンブラの二段坂(残り87.1kmから)で今季調子の上がらないデヘントが脱落。プロトンでは昨年2位でレース序盤に落車したエンリク・マス(スペイン、モビスター)が遅れ、直後にリタイアを選択。優勝候補が一人去ったメイン集団からヒーリーが飛び出し、それに20歳のオスカー・オンレー(イギリス、DSM・フィルメニッヒ)が反応した。
ヒーリーとオンレーの2人はゲシュケのいる先頭集団に合流したものの、その時点でのリードは50秒まで縮まる。総獲得標高4,646mのサバイバルレースは終盤に突入し、プロトンではカラパスや来季スーダル・クイックステップに移籍するミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が落車するシーンもありながら、更に逃げとの差を縮めていく。
レース先頭は単独となったヒーリーがパッソ・ディ・ガンダ(距離9.2km/平均7.3%)の頂上を目指し、それを追うプロトンはUAEチームエミレーツがハイペースに持ち込む。そして現役ラストレースを走るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)の顔写真が路面に貼られたつづら折りでアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)が加速し、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が追従。それをログリッチが素早く引き戻す一方で、「フィニッシュに近づくにつれ落車の影響が大きくなっていった」と振り返るエヴェネプールが遅れていった。
ヒーリーを吸収し、アダム・イェーツがポガチャルのために牽引する精鋭集団は11名。マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)やアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)が加速してライバルたちの脚色を伺うなか、一度ポガチャルとログリッチは遅れをとる。しかし牽制に入った先頭のペースが落ちると2人は先頭に復帰。そして再びアダム・イェーツが作るペースを打ち破り、ポガチャルがパッソ・ディ・ガンダの頂上手前で飛び出した。
残り33km(頂上まで1.6km)でのアタックにカラパスらが遅れるなか、唯一ウラソフが食らいつく。するとログリッチやサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)、アンドレア・バジオーリ(イタリア、スーダル・クイックステップ)、カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)が合流。6名となった先頭集団が頂上を通過し、「酷かった2年前より少しだけ上手くなった」と語る下りでポガチャルが再び仕掛けた。
一気に15秒のリードを得たポガチャルは、アダム・イェーツが追いついた追走集団との距離を拡げていく。約16kmに及んだ下りを終えた時点でポガチャルとログリッチ・グループとの差は32秒。独走のまま平坦路に入ったポガチャルは「最初は右脚、その次に左脚が攣った」と語る太ももを叩きながら突き進み、それを追う追走集団はアダム・イェーツが上手くローテーションをかき乱す。
そしてポガチャルは大観衆の詰めかけるフィニッシュ前の丘「コッレ・アペルト」に1分差で突入。登坂でもペースを落とすことなくクリアしたポガチャルが、ベルガモの市街地に引かれたフィニッシュラインを通過。アルフレッド・ビンダとファウスト・コッピに次ぐ史上3人目となる大会3連覇を達成した。
「登りでアタックしようと思ったのだが、今日の登りはウラソフが一番強かった。だから諦めずに食らいつき、最後まで2人で行きたかったが後ろに追いつかれた。下りで後続と差が生まれたので、下手くそだった2年前より少しだけマシになったその下りで仕掛けた。距離のあるフィニッシュまでの道のりは辛かったよ」とポガチャルはレースを振り返る。
また「脚が攣ってもうダメだと思ったが、最後の丘のためにエアロポジションで力を溜めた。初出場から3年連続の優勝だ。まるで夢のようなシナリオとなり、痛みの中であっても最後の数キロは喜びを噛みしめることができた」と、ロンド・ファン・フラーンデレンに続く今年2つ目のモニュメント制覇をポガチャルはそう喜んだ。
ポガチャルから52秒遅れで到着した追走集団は、バジオーリがスプリントでログリッチを退け2位。ログリッチは3位でプロデビューした2016年から8年間所属したユンボ・ヴィスマに別れを告げた。
そしてティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)は大歓声の中37位でフィニッシュ。笑顔で14年に渡る現役生活にピリオドを打った。
イル・ロンバルディア2023結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 5:55:33 |
2位 | アンドレア・バジオーリ(イタリア、スーダル・クイックステップ) | 0:52 |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
4位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | |
6位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | |
7位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | |
8位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | 1:06 |
9位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 1:26 |
10位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー) | |
37位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | +8:52 |
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