「いまだ注目されることに慣れない」とセップ・クス(アメリカ)はレース後、ハニカミながらそう語った。ジロとツールを山岳アシストとして走り、臨んだブエルタで見事総合優勝に輝いたクスの言葉を紹介します。



総合優勝 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)

マドリードでの最終ステージを走るセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

レース直後インタビュー

素晴らしい気持ちだよ。だが今日が大会を通して最も辛いステージだった。(第17ステージの)アングリル以上にね(笑)。だからそれが終わってホッとしている。

―ブエルタで総合優勝を果たし、全く新しい自転車選手に生まれ変わったか?

いいや、僕は何も変わらない。もちろん多少の変化はあるかもしれないが、後でこの楽しい思い出を振り返りたい。ただ、まだ実感が湧くには時間がかかりそうだ。この後はチームや家族、友人と一緒に祝いたい。そしてチームメイトやスタッフとこの3週間にあった出来事を振り返るんだ。たくさんの良い思い出があったからね。

グランツールを全制覇したユンボ・ヴィスマの3名が並ぶ photo:CorVos

表彰式後インタビュー

様々な感情が身体の中を駆け巡っている。自分が達成したことに圧倒されているし、注目されることにいまだ慣れていない。だが自分が達成したことがどれほど特別なことなのか実感しているし、この大会で体験した全ての思い出を噛み締めたい。

―表彰式ではスペイン語でのスピーチを披露した。その理由はなにか?

2018年のブエルタが僕にとって初めてのグランツールで、その頃からこの大会に特別な思いがあった。なぜならアメリカからヨーロッパに来た時、最初にスペインに住んだ。スペイン人はとても他人を尊重し、どんなレースの誰であっても声援を送ってくれる。その選手がどこのチーム、どこの国出身であってもね。

それにスペイン人は山を登る選手の苦しさや、チーム内の選手の役割など自転車レースを熟知している。それにいま住んでいるアンドラも地理的にスペイン文化と近く、だからこそ僕にとってブエルタは特別なレースなんだ。だから毎年、この大会は外せない。

―では来年のブエルタにはまたアシストとして、または総合エースのどちらで戻ってくるつもりか?

来年は背中にゼッケン1を付けて、ディフェンディングチャンピオンとして戻ってきたい。

無事フィニッシュし、偉業達成を喜ぶユンボ・ヴィスマ photo:CorVos

囲みインタビュー

スペインの自転車レースの表彰式で、アメリカ国歌が流れるのは変な感じがした。それが僕に誇りを与えてくれ、その時の感情を言葉にするのは難しい。3週間に渡って毎日集中し、ステージ優勝では味わうことのできない、積み上げた成果がもたらす喜びを噛み締めていた。素晴らしい体験だったよ。

毎年、チームからレースプランが与えられ、僕はその頂点に向けて努力をしていた。今年はその想定していた以上の結果であるブエルタの総合優勝を達成した。アシスト選手が日の目を見る、まるでシンデレラのような物語だ。

この大会を通して自分がどういう選手であるか、何が可能であるかを学んだ。フィジカル的なことはもちろん、精神的な面でも。だから僕がこの後どんな選手になるのか見てみよう。

総合トップスリーを独占したヴィンゲゴーとクス、ログリッチ photo:CorVos

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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