2023/09/15(金) - 18:17
プレミアムブランドを多数扱うダイアテックの展示会をレポート。ABUS(アブス)の新型エアロヘルメット「GAMECHANGER 2.0」が初披露されたほか、マックオフの超音波洗浄・注油サービスが始動することも発表された。「最先端のヘルメット」と誇るアブス本国スタッフへのインタビューを交えて紹介します。
ダイアテックといえば、エンヴィに始まり、ローター、セラミックスピード、そしてマックオフと、世界のトップブランドを取り扱う京都の輸入販売代理店。ただモノを売るだけに留まらず、グラインデューロジャパン初回大会の主催や、斑尾グラベルバイクパークの造成、ストーリーテラーとして取り扱いブランドを掘り下げるブランドブック「the book」のリリースなど、いち代理店の範疇を飛び出した活動で知られている。
そんなダイアテックが東京ショールームでメディアとショップスタッフ向けの展示会を開催した。内容はアブスの最新ヘルメット「GAMECHANGER 2.0」の発表や、マックオフの新サービス情報、エンヴィのホイールビルド講習会(手組みホイール需要が高いエンヴィらしい取り組み!)などなど。セラミックスピードやブルックス、ペダレッド、ダリオペゴレッティといった美しい製品たちも花を添え、高級感溢れる雰囲気の中での進行だ。
ツールでデビューした新型エアロヘルメット「GAMECHANGER 2.0」
軽量モデル「AIRBREAKER」と共に、アブスのヘルメットラインナップのツートップを成すのがエアロモデル「GAMECHANGER」だ。これまでモビスターやアルペシン・ドゥクーニンクに供給され、新旧世界王者であるマチュー・ファンデルプール(オランダ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)の走りを支えてきた。
そんなGAMECHANGERが第2世代を示す「GAMECHANGER 2.0」としてフルモデルチェンジを果たし、先のツール・ド・フランスでデビューした。そこではファンデルプールとのコンビネーションによってステージ4勝を挙げ、最速スプリンターの証マイヨヴェールを獲得したヤスペル・フィリプセン(ベルギー)たちを支えるなど、大いにそのプレゼンスを発揮したのだ。
「GAMECHANGER 2.0の開発目標は、エアロダイナミクスはもちろん、ヘルメット内部の冷却性能を高め、安全性、快適性、パフォーマンスを最高レベルに引き出すことだった」と言うのは、発表会のために来日したアブス本国のマーケティングを担当するアクセル・ロースラー氏。先進の開発製造技術をもつイタリアの自社工場で作られており、「それだけではなく、フィッティングや快適性など、ありとあらゆる角度から細かいディティールを詰めた最先端ヘルメット」と胸を張る。
2.0は1.0と比べて前面インテークを追加することでエアー流入量を32%改善し、内部の溝形状の改善によってエアフローは20%改善させた。さらに上部インテークから取り入れた空気を取り入れて流れを増やし、後方の絞った放出口へ。空気圧を変えながら流れを作ることで冷却効果を兼ね備えているのだ。
結果的に46-52km/hというプロレースのスピード領域では約2〜5%のエアロダイナミクス向上を叶えた(1.0比)ほか、ヘルメット後部のカムテール部分を11%長く、さらに後部を8°低くすることで、スプリント時の頭を下げたポジションでのパフォーマンスを改善。上部インテークに設けられたプレート「エアロブレード」は穴の形状を徹底的に煮詰めることで低速時に空気を取り込み、スプリントなど前傾ポジションでは流入を防ぎ、まるで穴が存在していないかのようなエアロ効果を叶えたのだという。
アクセル氏によれば、エアロブレードは理想を叶えるために試作品を100も作り、モビスターのエンリク・マス(スペイン)を起用した風洞実験を重ねた、とも。(ずっと風に当たり続けていたマスは寒さで震えていたらしい...)。
さらにプロ選手からの最大の要求であった「汗が前に垂れてくることを何とかしてほしい」に応えるべく額のパッドを改良。汗がパッドを通じてストラップに流れ、そこで乾くようにしたが、これは前面に追加されたインテークも大きく貢献している部分だそうだ。アクセル氏によれば、そのストラップ自体も下着メーカーと協力体制によって快適性を追求。素材自体を見直すことはもちろん、不快感に繋がるプラスチックパーツを除き、さらに航空力学を取り入れたエアロ断面までも採用。高速巡航時でもバタつきを防ぐと共に柔らかい肌当たりを兼ね備えた。
GAMECHANGER 2.0は先行入荷モデルが既に購入可能で、来月には本格入荷が始まる。予定価格は39,800円+税と、ハイエンドヘルメットの中では比較的買い求めやすい価格であることもポイントだ。
また、GAMECHANGER 2.0のテクノロジーを受け継ぐミドルグレードモデル「POWERDOME(パワードーム)」もリリースされている。こちらはエアロ性能を重視しつつベンチレーションを増やし、より涼しさ、そして軽さ(GAMECHANGER 2.0よりも30g軽量)を兼ね備えた意欲作。イタリア製造であることも一緒だ。
イタリアのデザイン、ドイツの堅実設計。アブスは次の100年へ
そもそもアブスがスポーツサイクリング用ヘルメットブランドとして認知されたのは、モビスターへの供給を開始した5,6年前からだが、自転車用ヘルメットの開発に着手したのは1993年にまで遡る。当時は鍵を使うシティユーザーに向けたヘルメットをリリースしていたが、コミューター市場が大きくなるにつれて規模を膨らませ、2015年に「ワールドツアーチームにヘルメットを供給し、ロードの世界チャンピオン、そしてツール・ド・フランスのチャンピオンを支える」という目標のもとスポーツ用ヘルメット開発に着手したという。
サステナブルで小回りの効いた生産活動のために北イタリアのヴィチェンツァ周辺に拠点を置き、ヘルメットのデザインはイタリアオフィスのデザイナーが、そして構造体としてのプロダクトデザインは本国ドイツが担う。「イタリアの美的センス、そしてドイツの堅実性を合わせた唯一無二のヘルメットなのです」とアクセル氏は胸を張る。
「性能や機能はプレゼンでお話しした通りですが、我々はヘルメットの美しさにも自信を持っています。アブスのヘルメットは"キノコ頭"になりません。シュッとしていて、鏡に映った自分が速そうに、カッコよく見える。美しさは気分を上げる大きな要素。趣味のものですからこれはすごく重要なことなのです」とも。
来年、2024年はアブス創設100周年という節目の年だ。防犯対策用のセキュリティブランドとして始まった同社だが、今やサイクリングビジネスの規模が上回り、社内にも熱心なサイクリストがたくさん在籍しているという。
「自転車に対するパッションがあって、より良いものをユーザーに届けたいという思いがあります。次の100年にも大いに期待してもらいたいと思っています。我々はスポーツサイクリングヘルメットの常識全てを変えたい。「GAMECHANGER」は単なる製品名ではなく、我々が本当にヘルメットを変えてやろうという決意の表れなのです。次の100年もユーザーがワクワクするような製品をリリースしていきたいと考えています」。
text&photo:So Isobe
ダイアテックといえば、エンヴィに始まり、ローター、セラミックスピード、そしてマックオフと、世界のトップブランドを取り扱う京都の輸入販売代理店。ただモノを売るだけに留まらず、グラインデューロジャパン初回大会の主催や、斑尾グラベルバイクパークの造成、ストーリーテラーとして取り扱いブランドを掘り下げるブランドブック「the book」のリリースなど、いち代理店の範疇を飛び出した活動で知られている。
そんなダイアテックが東京ショールームでメディアとショップスタッフ向けの展示会を開催した。内容はアブスの最新ヘルメット「GAMECHANGER 2.0」の発表や、マックオフの新サービス情報、エンヴィのホイールビルド講習会(手組みホイール需要が高いエンヴィらしい取り組み!)などなど。セラミックスピードやブルックス、ペダレッド、ダリオペゴレッティといった美しい製品たちも花を添え、高級感溢れる雰囲気の中での進行だ。
ツールでデビューした新型エアロヘルメット「GAMECHANGER 2.0」
軽量モデル「AIRBREAKER」と共に、アブスのヘルメットラインナップのツートップを成すのがエアロモデル「GAMECHANGER」だ。これまでモビスターやアルペシン・ドゥクーニンクに供給され、新旧世界王者であるマチュー・ファンデルプール(オランダ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)の走りを支えてきた。
そんなGAMECHANGERが第2世代を示す「GAMECHANGER 2.0」としてフルモデルチェンジを果たし、先のツール・ド・フランスでデビューした。そこではファンデルプールとのコンビネーションによってステージ4勝を挙げ、最速スプリンターの証マイヨヴェールを獲得したヤスペル・フィリプセン(ベルギー)たちを支えるなど、大いにそのプレゼンスを発揮したのだ。
「GAMECHANGER 2.0の開発目標は、エアロダイナミクスはもちろん、ヘルメット内部の冷却性能を高め、安全性、快適性、パフォーマンスを最高レベルに引き出すことだった」と言うのは、発表会のために来日したアブス本国のマーケティングを担当するアクセル・ロースラー氏。先進の開発製造技術をもつイタリアの自社工場で作られており、「それだけではなく、フィッティングや快適性など、ありとあらゆる角度から細かいディティールを詰めた最先端ヘルメット」と胸を張る。
2.0は1.0と比べて前面インテークを追加することでエアー流入量を32%改善し、内部の溝形状の改善によってエアフローは20%改善させた。さらに上部インテークから取り入れた空気を取り入れて流れを増やし、後方の絞った放出口へ。空気圧を変えながら流れを作ることで冷却効果を兼ね備えているのだ。
結果的に46-52km/hというプロレースのスピード領域では約2〜5%のエアロダイナミクス向上を叶えた(1.0比)ほか、ヘルメット後部のカムテール部分を11%長く、さらに後部を8°低くすることで、スプリント時の頭を下げたポジションでのパフォーマンスを改善。上部インテークに設けられたプレート「エアロブレード」は穴の形状を徹底的に煮詰めることで低速時に空気を取り込み、スプリントなど前傾ポジションでは流入を防ぎ、まるで穴が存在していないかのようなエアロ効果を叶えたのだという。
アクセル氏によれば、エアロブレードは理想を叶えるために試作品を100も作り、モビスターのエンリク・マス(スペイン)を起用した風洞実験を重ねた、とも。(ずっと風に当たり続けていたマスは寒さで震えていたらしい...)。
さらにプロ選手からの最大の要求であった「汗が前に垂れてくることを何とかしてほしい」に応えるべく額のパッドを改良。汗がパッドを通じてストラップに流れ、そこで乾くようにしたが、これは前面に追加されたインテークも大きく貢献している部分だそうだ。アクセル氏によれば、そのストラップ自体も下着メーカーと協力体制によって快適性を追求。素材自体を見直すことはもちろん、不快感に繋がるプラスチックパーツを除き、さらに航空力学を取り入れたエアロ断面までも採用。高速巡航時でもバタつきを防ぐと共に柔らかい肌当たりを兼ね備えた。
GAMECHANGER 2.0は先行入荷モデルが既に購入可能で、来月には本格入荷が始まる。予定価格は39,800円+税と、ハイエンドヘルメットの中では比較的買い求めやすい価格であることもポイントだ。
また、GAMECHANGER 2.0のテクノロジーを受け継ぐミドルグレードモデル「POWERDOME(パワードーム)」もリリースされている。こちらはエアロ性能を重視しつつベンチレーションを増やし、より涼しさ、そして軽さ(GAMECHANGER 2.0よりも30g軽量)を兼ね備えた意欲作。イタリア製造であることも一緒だ。
イタリアのデザイン、ドイツの堅実設計。アブスは次の100年へ
そもそもアブスがスポーツサイクリング用ヘルメットブランドとして認知されたのは、モビスターへの供給を開始した5,6年前からだが、自転車用ヘルメットの開発に着手したのは1993年にまで遡る。当時は鍵を使うシティユーザーに向けたヘルメットをリリースしていたが、コミューター市場が大きくなるにつれて規模を膨らませ、2015年に「ワールドツアーチームにヘルメットを供給し、ロードの世界チャンピオン、そしてツール・ド・フランスのチャンピオンを支える」という目標のもとスポーツ用ヘルメット開発に着手したという。
サステナブルで小回りの効いた生産活動のために北イタリアのヴィチェンツァ周辺に拠点を置き、ヘルメットのデザインはイタリアオフィスのデザイナーが、そして構造体としてのプロダクトデザインは本国ドイツが担う。「イタリアの美的センス、そしてドイツの堅実性を合わせた唯一無二のヘルメットなのです」とアクセル氏は胸を張る。
「性能や機能はプレゼンでお話しした通りですが、我々はヘルメットの美しさにも自信を持っています。アブスのヘルメットは"キノコ頭"になりません。シュッとしていて、鏡に映った自分が速そうに、カッコよく見える。美しさは気分を上げる大きな要素。趣味のものですからこれはすごく重要なことなのです」とも。
来年、2024年はアブス創設100周年という節目の年だ。防犯対策用のセキュリティブランドとして始まった同社だが、今やサイクリングビジネスの規模が上回り、社内にも熱心なサイクリストがたくさん在籍しているという。
「自転車に対するパッションがあって、より良いものをユーザーに届けたいという思いがあります。次の100年にも大いに期待してもらいたいと思っています。我々はスポーツサイクリングヘルメットの常識全てを変えたい。「GAMECHANGER」は単なる製品名ではなく、我々が本当にヘルメットを変えてやろうという決意の表れなのです。次の100年もユーザーがワクワクするような製品をリリースしていきたいと考えています」。
text&photo:So Isobe
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