7月30日(日)に群馬県利根郡みなかみ町の群馬サイクルスポーツセンターで「JCRC legacy WR ロード:群馬 CSC ロードレース」を開催。併催されたQNリーグのシリーズ第5戦では、Qリーグは岡本彩那(ブラウ・ブリッツエン)が、Nリーグは落合隼が優勝し、各リーグのリーダージャージに変動はなかった。主催者からのレポートで紹介する。



盛夏の深緑を走るNリーグ対象レース・スポーツクラスのメイン集団 photo: Kai_Sasaki

7月30日(日)、群馬県利根郡みなかみ町・群馬サイクルスポーツセンター(CSC)にて「JCRC legacy WR ロード:群馬 CSC ロードレース」が開催された。

この大会は、1980年にスポーツ競技としての自転車普及を掲げて発足して惜しまれながら2021年12月に活動終了した JCRC(社団法人日本サイクルレーシング協会)の精神を受け継ぎ、ホビーレースの輪をさらに広げる活動として株式会社ウォークライドが 2023年から立ち上げた主催ロードレース「JCRC legacy WR ロード」シリーズ戦の1つ。JCRC でも多くの名勝負が生まれた群馬スポーツセンター(以下:CSC)を舞台に1周回=6kmのサーキットコースで、1時間耐久レースや年齢・脚力別クラスのロードレースが繰り広げられた。

スタートを待つ小学生チャンピオンクラス。このクラスはウォークライドのロードシリーズとマトリックス主催チャレンジリーグ東日本地域大会を対象とした小学生ランキング制度 photo:QNリーグ事務局

JCRCが掲げていた「日本の自転車競技の強化には、何よりも普及」という指針のうえで実施していたレース運営活動は、多くのホビーレース運営団体にも良い影響を及ぼし、レース距離設定やクラス分けなどの参考にしていると思われる。私どものリーグも、そんな精神を受け継ぐホビーレースの輪を広げる一助になりたいと活動をおこない、中高生の参加料割引制度が追加されたこの「JCRC legacy WR ロード」をリーグシリーズ戦を組み込むことが出来た。

ウォークライド代表の山根理史氏によると「自分も選手として、独自のクラス分けや絶妙な距離を設定するJCRC レースに参戦するなかで走力を磨いたり、仲間と闘う貴重な機会を多く経験できました。その思いや経験を多くの方々にも引き継げればと考え、JCRCのレガシーと銘打ちシリーズ戦を企画しました」とコメント。

さらに「JCRCレースの舞台にもなった伝統的な群馬と伊豆、2つのサイクルスポーツセンターでシリーズ戦を企画し、ご好評いただいております秋から冬に開催の『大磯クリテリウム』のような短距離コースのクリテリウムに対して、レース距離もクリテリウムより⻑めに設定して夏から秋にかけて持久力を鍛え、ロードならではの走りと闘い方を覚えるレース経験を積みながら、参加選手の皆さんに楽しんでいただきたいです」と狙いを教えてくれた。

朝から強い日差しが降り注ぐ群馬 CSC、ホームストレートのスタート地点 photo: Kai_Sasaki

レースの当日は、朝から非常に気温が高く蒸し暑い、かなり厳しいコンディション。朝8時過ぎからスタートとなる1時間エンデューロからレースは開幕。木影にいないと汗が滲むような状況であったが、周回コースはホームストレートを抜けると木陰が多くなるので、少しは暑さが免れるのではないだろうか。それでも走行距離が⻑めなので厳しいレースになると予想された。

まずは昼前、小学生の学年別や女子ビギナーレースの後、11時42分スタートとなったのが高校生女子以上のQリーグと中学生女子のNリーグNWが対象の女子スポーツ。同じコース3周回で競う小学生チャンピオン、男子ビギナー、60歳以上とは時差スタートとなる混走レースである。

スタートを待つ女子スポーツクラスの参戦する女子選手達 photo:QNリーグ事務局

和やかに談笑する、左から Q リーグ現ポイントリーダー根本、昨シーズン Q リーグ年間女王・岡本、N リーグ NW 現ポイントリーダー岡田 photo: Kai_Sasaki

猛烈な暑さのなか、お互いを意識しホームストレートのスタートラインを切ったのは、現在Qリーグポイントリーダーの根本香織(Team 一匹狼)とNリーグNWポイントリーダーの岡田愛裕來(ブラウ・ブリッツエンU15)、そして昨年2022-2023のQリーグ総合ポイントリーダー岡本彩那(ブラウ・ブリッツエン)の3人。さっそく、3人は他の女子スポーツ参戦選手たちを置いてきぼりにして先行しながら集団形成を狙う。しかし平坦や下りを得意とする根本は、比較的に登坂を得意とする岡本と岡田の走りに付いていくのが徐々に辛くなったようだ。

群馬CSCのコースはスタート直後からカーブが連続する下り。その後はライン取りによっては流れがつかみづらく、コース後半にある傾斜8%の登坂箇所である通称“心臓破りの坂”は、手前から集団で勢いよく入らないと脚に負担が強くかかる厄介な登りになる。その後はバックストレートを下って、ホームストレートに向かい緩く登るレイアウト。今回の女子スポーツはエントリーが5名となっており、集団が形成されづらいため、この複雑なレイアウトのコースがいつも以上に難しく負担が大きくなる。

登坂などタフなレイアウトを得意とする岡田(左)と岡本(右)が2人で抜け出す photo: Kai_Sasaki

先行する岡田と岡本の背中を必死で追う根本 photo: Kai_Sasaki

そのため1周回目を終えた時点では、先行する岡本と岡田、その後ろに付く根本とのタイム差は5秒ほどであったが、2周目には岡田も遅れてしまい、単独で先頭を走る岡本とのタイム差が45秒、その後ろの根本が30秒差とビハインドが広がる。結局、単独先行を守った岡本が混走の他クラス選手達の集団に追いつき、そのまま1位ゴールを決めた。岡田が2位、根本が3位と順当にゴールを果たした。

無事にレースを終えた直後、NリーグNWポイントリーダーを守った岡田は「(昨年のQリーグ女王である)岡本選手は登りもグイグイ、下りもグイグイ行っちゃうから休む暇がなかったです」とコメント。岡本になんとか1周回に付いて走れたことには「やっぱり凄いな、経験値が違うな、と思いました」と言う岡田だがまだ中学1年生。

岡本は高校3年と年齢的な分があるが、岡田はブラウ・ブリッツエンのジュニア育成チームであるブリッツエン☆ステラの頃からレースに親しんでいるので今後の活躍に期待したい。2戦にわたり守り切ったポイントリーダーの証・バトルマリンジャージについては「これからも、このジャージを守っていきたいので頑張ります!」と意気込みを表明。

女子スポーツクラスの表彰式。左より2位・岡田、優勝・岡本、3位・根本 photo: K.Kazuma

Nリーグポイントリーダー授与式に臨む岡田は笑顔が溢れる photo: K.Kazuma

そんな2人の走りを見届けるような形となりながらも、Qリーグポイントリーダーを守った根本は「途中、心臓破りの坂に入る前までは 2人に付いて走れたのですが。(岡本)彩那ちゃんがグイグイ行っているから、背中が見えている間は何とか頑張ろうと思いました」と 2人の走りを評価。このレース翌日から英国・グラスゴーで開催のグランフォンド世界選手権に参戦するために渡航する根本は、初の海外レース遠征について「世界でも自分の走りが出来るようにいってきます!」と力強くコメントした。

この後、昼休みを挟んで午後1時過ぎからスタートとなったのが、中学生男子NリーグNが対象となるスポーツクラス。こちらは同じ周回数となるミディアムと男子50歳代が時差スタートの混走となる。なお、昼を過ぎてさらに気温が上昇したため、周回数を6周回から5周回に減らす処置をとられてのスタートとなった。

レース後、互いに走りをコメントする N リーグ岡田(左)と Q リーグ根本(右) photo: Kai_Sasaki

スタート直前のスポーツを含むクラスの男子選手達 photo:QNリーグ事務局

スタートはミディアム、その後にスポーツとなり、ニュートラル走行から解除されてからスピードが一気に上がる。ここまでNリーグシリーズ戦の全対象レースで優勝を決めている現ポイントリーダーの落合隼は前方に付けていたが、スポーツクラスから1名が抜け出して見送る形となってしまった。しかし、その1名を追う追走集団には昨年のNリーグN総合ポイントリーダー稲葉恵人(Team BFY Racing)も含まれているため、落合には彼のチェックも必須となる。そのため、この集団に残る冷静な判断をし、様子を見ることとなったようだ。

スポーツの追走集団には落合と稲葉を含む9名。その前に約1分のタイム差をつけてミディアムクラスに交じるスポーツ1名が入る状況が2周目まで続くが、3周目にはミディアムの先頭集団も抜き去り、単独でスポーツの先頭1名が行ってしまう。

ゴール前、冷静に展開を見計らっていた落合は鋭いスプリントを決める photo: Kai_Sasaki

一方、追走する落合と稲葉を含む9名の集団は3周目で8名、残り1周回のコントロールライン前のアタックで稲葉がドロップ、とうとう6名となってしまった。こんなに最初から集団が絞られる展開となったレースについて落合はゴール後、「メチャクチャきつかった」とレースを振り返る。そして、ラスト一周でドロップしてしまった稲葉は「結構アタック合戦があったので、何とか耐えようとしたけど、やはりメチャクチャきつかった」と同じ思いだったようだ。

その後、先行してスタートしたミディアムクラスに追いついた落合は、そのまま流れ込んだゴールスプリントについて「流れを見ていて行けそうだなあ、と思った」と落ち着いて状況を見ていたようだ。落合は力強いスプリントで集団の頭を取りゴール。スポーツクラス27名中の2位となり、同クラスにエントリーしていた中高生選手のなかではトップとなった。

ゴール直後に動画用コメントに応じる落合(左)と稲葉(右) photo: Kai_Sasaki

文字通り熱い闘いを見せてくれた選手達、レース後は素早くクールダウン photo: Kai_Sasaki
レース優勝は惜しくも果たせなかったが、素晴らしいゴールスプリントで沸かせた落合。ポイントリーダー授与式でも堂々としたバトルマリンジャージ姿を披露した photo:K.Kazuma



今回、Nリーグシリーズ戦には久しぶりの参戦となった稲葉は「このレースの後は中学3年生で高校受験なので、この後あまりレースに出場できないと思っていて、何とか(リーグトップポイントの28Pを)取りたかったのですが、練習不足で叶わなかった」と非常に残念そうであった。一方で今回もNリーグ登録選手の中で順位トップとなった落合は「次回こそレース1位を取りたい」と強くコメント。そんな落合へ昨年のNリーグ王者である稲葉からは「全戦に出場して全て勝てば初の快挙となるので、頑張って欲しい」とアドバイスとエールを送った。

次のリーグシリーズ戦は福島復興サイクルロードレースシリーズを舞台とした連戦となる。第6戦は8月19日(土)に「ツール・ド・かわうち(かわうちヴィンヤード山岳タイムトライアル)」、続く翌日、第7戦は8月20日(日)には「小野こまちロードレース」が行われる。学生は夏休み期間、そして社会人は盆休みに入りトレーニングも集中して出来る時期だが、まだまだ暑い日々が続くので体調に気を付けながら、リーグ登録選手たちには引き続きポイントリーダーを目指して頑張ってほしい。

左からQリーグポイントリーダーの根本香織(Team 一匹狼) 、Nリーグポイントリーダーの落合隼、NWリーグポイントリーダーの岡田愛裕來(ブラウ・ブリッツエン U15) photo:QNリーグ事務局


photo:K.Kazuma、Kai_Sasaki、QNリーグ事務局
text:須藤むつみ(QNリーグ事務局)
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