スペイン・バスクを舞台とした第2回イツリア・ウィメン(女子ワールドツアー)が閉幕。3日間の戦いでデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)が2連勝し、最終日を独走で制したマーレン・ローセル(スイス、SDワークス)が総合優勝に輝いた。



スペインのバスクを舞台としたイツリア・ウィメン photo:CorVos

アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)の総合優勝で幕を閉じたラ・ブエルタ・フェメニーナの5日後、同じスペインでイツリア・ウィメン(UCIワールドツアー)が開幕した。その舞台となるのは今年7月開幕の男子ツール・ド・フランスの開幕地であるスペインのバスク地方。1924年に始まった歴史ある男子はステージレースの女子版で、バスクらしい短くの急勾配な登り坂を越える3日間レースだ。

初回大会の昨年を3戦全勝で総合優勝したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)が出場した第2回大会には、ファンフルーテンやそのチームメイトであるリアヌ・リッパート(ドイツ、モビスター)、ブエルタでは力を発揮できなかったカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)など登りに強い選手たちが集結した。



第1ステージ エクセバリア〜マルキナ・シェメイン

第1ステージで逃げたアンナ・キーセンホーファー(オーストリア、イスラエル・プレミアテック・ローランド) photo:CorVos

大会初日は沿岸の丘陵地帯を進む122.2km。雨の中行われたレースは、スタートから88kmでようやく東京五輪金メダリストのアンナ・キーセンホーファー(オーストリア、イスラエル・プレミアテック・ローランド)ら2名が逃げを打つ。しかし2級山岳ウルカレギ(残り14.4km地点)を前にプロトンに捉えられ、登坂に入りフォレリングがアタックした。

この加速に追従したニエウィアドマは遅れ、ファンフルーテンもついていくことはできない。雨でかじかむ手を振って感覚を取り戻そうとするフォレリングは、プロトンと約1分差のリードを得てウルカレギ頂上を通過。フィニッシュまでの下りと平坦区間も危なげなくクリアしたフォレリングが、圧巻の独走でイツリア初日を制した。

独走勝利を決めたデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:CorVos



第2ステージ ビトリア・ガステイス〜アムリオ

スタートを待つアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター) photo:CorVos

2つの3級山岳を越える第2ステージは133.2kmの丘陵ステージで争われた。前日の雨は上がり、陽が選手たちを照らすレースはキーセンホーファーが2日連続の逃げを目指しアタック。しかしその強さを知っているプロトンは許さず、そのチームメイトであるシルヴィア・マーグリ(イタリア、イスラエル・プレミアテック・ローランド)ら若手選手3名が逃げグループを作った。

ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス)の牽引を前に逃げ集団はプロトンに吸収され。フィニッシュまで30km以上を残し再びひと塊となった集団から、SDワークスの強固な牙城を崩すべくキャニオン・スラムが攻勢に出る。この動きはSDワークスはもちろん、モビスターも協力して潰し、クレア・スティールス(イギリス、イスラエル・プレミアテック・ローランド)が単独で飛び出すものの後続に追いつかれる。

スプリントを制したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:CorVos

雨が再び路面を濡らすなか、勝負は緩斜面を駆ける集団スプリントへ。キレの良いダンシングで先頭に立たソラヤ・パラディン(イタリア、キャニオン・スラム)を、フォレリングがフィニッシュライン手前で追い抜き、2連勝を飾った。



第3ステージ ドノスティア〜ドノスティア

大会最終日の舞台はサン・セバスティアンとも呼ばれるドノスティアの周辺を巡る114.8km。序盤に大会唯一の1級山岳が登場し、残り32km地点から2級山岳を登坂する。昨年大会からフォレリングが5戦5勝で迎えた第3ステージは、10名が先行する展開で進行した。

アタックを決めるマーレン・ローセル(スイス、SDワークス) photo:CorVos

そして最終2級山岳を前に逃げ集団を飲み込んだプロトンから、フォレリングから総合で1分11秒遅れ(総合5位)のファンフルーテンが幾度となくアタックを仕掛ける。しかしフォレリングを引き離すことはできず、頂上で30秒差をつけられた後続のマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJ・スエズ)たちが平坦区間で追いついた。

5名となった先頭集団は、フィニッシュまで13kmを残した地点でマーレン・ローセル(スイス、SDワークス)が飛び出す。フォレリングの存在を意識したファンフルーテンなどが追走を躊躇う一方で、今年ヘント〜ウェヴェルヘムを制したTTスペシャリストのローセルが平坦区間を駆け抜ける。

そしてローセルが独走勝利を飾り、後続に2分38秒差をつけたためフォレリングを総合で逆転。ローセルが第2代イツリア・ウィメンの総合優勝者に輝いた。

最終日を制し、総合優勝を挙げたマーレン・ローセル(スイス、SDワークス) photo:CorVos

イツリア・ウィメン2023総合表彰台:2位フォレリング、1位ローセル、3位ニエウィアドマ photo:CorVos

「これはデミ(フォレリング)からのギフトのような勝利」と、今年のアルデンヌクラシックでフォレリングの完全制覇にアシストとして尽力したローセルは喜ぶ。「チームミーティングでデミは、私が独走して総合順位が入れ替わっても構わないと言ってくれた。本当にチャンピオンらしい発言で、彼女が今大会で最も強いことには変わらない」と内幕を語った。

フォレリングの連勝は途絶えたものの、SDワークスとしては昨年から土付かずの全勝をキープ。総合2位にはフォレリング、チーム全体での積極的な走りが光ったニエウィアドマが3位で総合表彰台に上がっている。
第1ステージ(5月12日)
1位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) 3:16:32
2位 マーレン・ローセル(スイス、SDワークス) +0:47
3位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) +0:49
第2ステージ(5月13日)
1位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) 3:30:34
2位 ソラヤ・パラディン(イタリア、キャニオン・スラム)
3位 マーレン・ローセル(スイス、SDワークス)
第3ステージ(5月14日)
1位 マーレン・ローセル(スイス、SDワークス) 3:09:56
2位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) +2:38
3位 オリヴィア・バリル(カナダ、UAEチームADQ)
個人総合成績
1位 マーレン・ローセル(スイス、SDワークス) 9:57:24
2位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) +1:50
3位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) +2:59
4位 オリヴィア・バリル(カナダ、UAEチームADQ) +3:00
5位 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター) +3:07
その他の特別賞
ポイント賞 マーレン・ローセル(スイス、SDワークス)
山岳賞 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)
ヤングライダー賞 エラ・ウィリー(ニュージランド、ライフプラス・ワフー)
チーム総合成績 SDワークス
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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