5月7日(日)に千葉県成田市・下総運動公園で行われた「しもふさクリテリウム」でQNリーグが開幕した。Qリーグは小田恵利花(フィッツ)、Nリーグは落合隼がリーダージャージを獲得している。主催者からのレポートで紹介する。



激しい雨風と寒さでレインウエアーのまま出走する選手の姿も photo:Yosuke SUGA

5月7日(日)、千葉県成田市・下総運動公園で「しもふさクリテリウム MATRIX ヒヤリハンター杯 5月」が開催され、4期目となるリーグの今シーズン開幕戦がおこなわれた。

今大会はサイクルロードレース協会東日本(MATRIX)主催で下総運動公園内にある1周約1.5km の
常設サイクリングコースでおこなわれ、トップクラスはもちろん、ジュニア、キッズ、女子にも人気が高く“しもふさクリテ”の通称で親しまれている。リーグ対象レースはQリーグとNリーグ中学生女子NWはレディースクラス、Nリーグ中学生男子Nは中学生クラスを走り、順位に基づくポイントを獲得しランキングを競う。

昨シーズン、1年かけて手に入れたバトルマリンジャージ死守を誓う稲葉の鋭い眼差し photo:Yosuke SUGA

一⻫にスタートする中学生クラスは悪天候ながらも高い出走率となった photo:Yosuke SUGA

前日までの晴天から一転して朝から雨。昼過ぎには気温が下がり風雨が強くなる厳しいコンディション。そんな天候でも、大会ホストチームでJプロツアーを中心に活躍するチーム「マトリックスパワータグ」の所属選手達が、朝のサイクルクリニックや第1レースとなる120分エンデューロで参戦ライダーをエスコートしながら大会をあたためる。

120分エンデューロが終了し、10時40分にスタートとなったのがNリーグ中学生男子Nの対象レー
スとなる「中学生」クラス。今回は36名のライダーがエントリーし31名出走という、悪天候に反して出席率の高いレースとなった。6周回=9kmで競われる短いレース展開とはいえスタートから雨と風の強いなか、集団の速度が下がると思いきや、1周目からNリーグ登録の井上湧心(TEAM BFY Racing)を先頭に集団のスピードが一気に上がる。

単独で集団から飛び出す、越川和音(川口自転車競技連盟) photo:Yosuke SUGA

越川を追うメイン集団。昨シーズンリーダー稲葉(一番左)と優勝した落合(一番右)の姿も photo:Yosuke SUGA

2周回目では越川和音(川口自転車競技連盟)が単独で集団から抜け出して逃げ続ける。この逃げに追いつくためにメイン集団のスピードは上がり、徐々に15名までに絞られる。そして残り2周のタイミングで逃げていた越川を集団が吸収、最終周回では集団から1名が遅れて14名に。

雨の不安定な路面と土砂降りで視界も見づらいなか、少しでも早めに仕掛けたい!という思惑のなかで、拮抗する集団から一足先に動いたのは落合隼。現在、中学3年生という落合は、昨年から自転車レースを始めたニューカマー。昨シーズン2022-23のNリーグシリーズ第12戦「大磯クリテリウム第5戦」中学生男子クラスで2位入賞の実力を、初出場となったしもふさクリテでも存分に力を発揮した。

早めに仕掛けた落合が、ゴールに向かい単独で飛び込む photo:Yosuke SUGA

雨の熱戦を制した落合は、2月の大磯クリテリウム第5戦で2位の実力を発揮した photo:Yosuke SUGA
バトルマリンジャージを着てうれしそうにガッツポーズを決める落合。言葉少ないが力強い走りで今後も注目! photo:Yosuke SUGA


ポイントリーダー授与式では「この後のNリーグシリーズ戦でも全て勝って、このバトルマリンジャージを守りたい」と熱い意気込みをコメントしてくれた。

一方で、昨シーズンのNリーグ年間総合ポイントリーダー稲葉恵人(TEAM BFY Racing)は落合に続く2位と健闘はしたものの、非常に苦い表情を浮かべていた。「(昨年)1年かけて、ようやく手に入れたリーダージャージを今シーズンも着続けたかった。今日は絶対に勝たなければいけないレースだった。本当に悔しい!」とコメントしながらも、次戦に向けて気合を入れていた。

バトルマリンジャージを着てスタートを待つ⻄山。毎レースで経験を重ねて積極的な走りに photo:Yosuke SUGA

前日のMTBレース参戦後、滋賀県から千葉県まで1人で車移動しスタートに立つ小田 photo:Yosuke SUGA

この後、キッズの年齢別レースを挟んで12時6分にスタートしたのはQリーグ、そしてNリーグ中学生女子NWの対象レース「レディース」クラス。エントリー22名と多かったものの、こちらは悪天候ということもあり13名の出走に。

しかし5周回=7.5kmで争われたレースは、最初の1周回目から福島舞(WCU)が牽引する先頭集
団が、先ほどの中学生レースのようなハイスピードとなり一気に10名に絞られる。その集団のなかには、昨シーズンのNリーグ中学生女子NWで年間総合ポイントリーダーとなった西山千智(High Ambition女子サイクリングアカデミー)の姿も。

昼過ぎから雨が強くなるなか早く決着を付けたいためか集団はハイスピードに photo:Yosuke SUGA

冷たく激しい風雨のなか、果敢に走るレディースクラスの選手達 photo:Yosuke SUGA
雨の中を力強く走り続ける選手たちへ、応援はますます熱くなる photo:Yosuke SUGA


しかし3周目に入るとさらにスピードが増し、西山を含めた4名が先頭集団から脱落。残る6名の集団は一層激しく降る雨のなかを、声援を受けて走り続ける。そこには今年4月に中学生となったばかり、念願のNリーグ登録をした小田島寛奈(#1-PRIMERA-)もいる。

そして最終周回まで6名の塊のまま、ゴールスプリントに突入。少し先に出たのが今年3月のレースで、昨シーズンQリーグ年間総合ポイントリーダーとなった岡本彩那(ブラウ・ブリッツエン)に競り負け悔しい想いをした篠塚萠依(AVENTURA)と、今シーズン初リーグ登録となった小田恵利花(フィッツ)の2名。この一騎打ちは、わずかなタイヤ差で篠塚に軍配、優勝を決めた。

雨の飛沫を上げてゴールスプリント、タイヤ差で優勝を決めたのは篠塚 photo:Yosuke SUGA

惜しくも2位となった小田は、昨日開催の「Coupe du Japon MTB2023 シリーズ戦・びわ湖高島 Stage XCO」で2位という快挙を果たし、そのまま滋賀県高島市から車を1人で運転して千葉県成田市のレース会場まで移動して参戦。

普段からフィッツのチームジャージでBioracerジャージを着こなしていることもあり、アメジストジャージの着心地は「最高です!」とうれしそう。「展開的には逃げるか?(スプリ
ントで)刺すか?で、勝つために最後まで悩みましたが結局、僅差で負けてしまいすごく悔しいです。悔しさで一杯です!」と苦い表情を見せた。今後の意気込みとして「最終戦まで、このジャージを守りたいので、ご声援をお願いします!」と冷たい雨のなか、弾ける笑顔でコメントした。

「滋賀県から移動して、レースに間に合って良かった!帰りも安全運転で!」と小田 photo:Yosuke SUGA

そんな小田と篠塚の一騎打ちの直ぐ後ろ、1秒遅れで3位争いを展開し4位とはなったものの年代別カテゴリーで優勝を果たした小田島は、ガッツ溢れる走りが素晴らしく「とても寒かったけど、(先頭集団と)最後まで一緒に走れてよかった」と安堵の表情。

袖を通したバトルマリンジャージのサイズは、まだ小さいがレース経験は⻑く「今までトライアスロンに参加していましたが、自転車に乗るのが楽しいのでロードレースに出るようになりました。秋からはシクロクロスにも出たいと思います」と意欲満々。今後の活躍にぜひ注目していただきたい1人だ。

ゴールスプリントでは僅かに負けるも年代別優勝を決めた小田島 photo:Yosuke SUGA

EXLUB Nリーグ 中学生女子 NW ポイントリーダー賞を授与した小田島寛奈(#1-PRIMERA-) photo:Yosuke SUGA

レディースレースの後には今回も将来、競技者を目指す中学生・高校生向けの「ジュニア強化レース」を大会協賛社の提供で開催。今大会にエントリーしていれば参加料は無料、年齢の近い同士で手合わせをするような積極的レース展開で、こちらも会場を盛り上げていた。さらに「レディース割引サービス」として、レディースクラスだけでなく120分エンデューロに出場する場合でも女性なら一律2000円で参加できるサービスも継続しておこなっている。このようなジュニアや女子に嬉しい制度もサイクルロードレース協会東日本(MATRIX)主催大会の大きな魅力の1つだろう。

スタートした4期目のリーグ戦、対象レースでのリーグ登録選手達の熱い闘いと走りは、隅に追いやられがちな「女子」「中学生・ジュニア」の存在を改めて示した。自転車レースの未来を担う大事で重要な存在として認知を広げていきたい。

左からQリーグポイントリーダーのた小田恵利花(フィッツ) 、Nリーグポイントリーダーの落合隼、NWリーグポイントリーダーの小田島寛奈(#1-PRIMERA-) photo:QNリーグ事務局

さらにリーグのランキング制度を始めた理由の1つに、未だ見ぬ優秀な選手達を取りこぼしのないように注目してもらう機会作りという考えがある。そこからランキング上位の選手のうち数名が当初チーム所属なしだったのが、レースで注目され仲間や知り合いが増えることで、しばらくしてクラブチーム等への加入が決定しているケースを見かける。なによりもさまざまなレース会場で仲間や友人が増えているのは非常に微笑ましい。良き仲間、そして良きライバルが集まれる場所をレースやチームとともに広げていくためにも、皆さんにリーグを便利に利用いただければ幸いである。

今後もリーグ対象レースを拡大することで登録する女子・ジュニアの活躍の場も広げていきながら、さらに多くの方々に日本自転車レースの面白さと楽しさを「エリート男子」以外の機会で知っていただけるよう活動を続けていきたい。そして、Qリーグ・Nリーグのポイントリーダーの証・アメジストジャージとバトルマリンジャージを巡る熱い戦いにご注目いただきたい。

text:須藤むつみ
photo:Yosuke SUGA、QNリーグ事務
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