この日も厳しい山岳が用意されたツアー・オブ・ジ・アルプス第4ステージで、グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、モビスター)が逃げ切り勝利。2021年に髄膜炎を患ったミュールベルガーにとって移籍後初勝利となった。



スタート前に談笑する総合首位ゲイガンハートとヤングライダー賞でトップのマックス・プール(イギリス、チームDSM) photo:CorVos

ロヴェレートからノルディックスキーの競技場として有名なプレダッツォにフィニッシュするツアー・オブ・ジ・アルプス(UCI2.Pro)第4ステージ。この日はスタート直後に1級山岳を越え、終盤には2級山岳プラマディッシオ峠(距離9.7.km/平均6.2%)が登場。その頂上から15.5kmの下りと平坦路を進んだ先にフィニッシュが待つ152.9kmのレイアウトだ。

獲得標高差が3,600mオーバーのこの日は、序盤から13名の逃げグループが形成される。モビスターはオスカル・ロドリゲス(スペイン)ら4名のクライマーを送り込み、EFエデュケーション・イージーポストからはサイモン・カー(イギリス)とステファン・デボッド(南アフリカ)が入った。

最終山岳で逃げから先頭集団に残った3名 photo:Tour of The Alps

最終山岳で飛び出し、一時単独となったジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ) photo:CorVos

メイン集団を牽引したのはリーダーチームであるイネオス・グレナディアーズ。逃げ集団で最も総合タイムが良いトースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム)でも5分以上遅れているため逃げ切り容認ムードで距離を消化した。

いよいよ2級山岳プラマディッシオ峠(距離9.7.km/平均6.2%)の登坂に入り、逃げの人数が一気に減っていく。頂上まで6kmを残した時点で、先頭にはトレーエンとグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、モビスター)、そして19歳のイタリア人クライマーであるジュリオ・ペリツァーリ(グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)の3名だけとなった。

積極的な走りを見せていたペリツァーリが頂上付近でアタック。一時はトレーエンとミュールベルガーに10秒のリードを得たペリツァーリだったが、下りでライン取りのミスを連発して2人に追いつかれてしまう。そしてメイン集団と3分以上のリードを保った3名が、最終ストレートに突入。ロングスプリントを仕掛けたミュールベルガーが勝利した。

3名によるスプリントを制したグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、モビスター) photo:Tour of The Alps

久々の勝利を喜ぶグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、モビスター) photo:Tour of The Alps

「長きに渡る逆境を乗り越え、掴みとった勝利は格別だ」と喜ぶミュールベルガーにとって、これが2020年7月以来、998日振りとなる勝利。「モビスターに移籍した2021年に髄膜炎を患い、復帰できるか不安のなか入院とリハビリを乗り越えた。ここまで僕を信じ続けてくれたチームに感謝したい」とミュールベルガーは語っている。

メイン集団はミュールベルガーから遅れること3分22秒でフィニッシュ地点に到着。総合上位に変動はなく、テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が2位と22秒差を保ったまま、大会は最終日を迎える。

表彰台で久々の勝利を喜ぶグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、モビスター) photo:Movistar Team

ゲイガンハートを含むメイン集団は3分22秒遅れでフィニッシュ photo:CorVos


ツアー・オブ・ジ・アルプス2023第4ステージ結果
1位 グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、モビスター) 4:16:53
2位 トースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム)
3位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)
4位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:40
5位 ステファン・デボッド(南アフリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)
個人総合成績
1位 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 15:41:54
2位 ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:22
3位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:28
4位 ジェフェルソン・セペダ(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:36
5位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、エオーロ・コメタ) +0:38
その他の特別賞
ポイント賞 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
山岳賞 ジェフェルソン・セペダ(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)
ヤングライダー賞 マックス・プール(イギリス、チームDSM)
チーム総合成績 イネオス・グレナディアーズ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos