2023/06/06(火) - 17:10
自転車と鉄道、二つを愛する「テツ店長」ことバイクプラス多摩センターの河井孝介さんの輪行サイクリング紀行。今回は、昨シーズンで引退を発表した中島康晴選手と共に、山陰地方の廃線を巡る旅も後半へ。それではレポートをお届けしましょう。(※前編はこちら)
前編では岡山の鉄道スポットを忙しく回ったなかじ&テツ店長の鉄コンビ、二日目の後編はところ変わって山陰に舞台を移し、再び鉄分豊富なサイクリングへ出発進行♪という事で二日目の旅は『鳥取駅』からはじまります!早起きして余裕を持って駅にやって来た二人、ここからは山陰本線で米子方面に向かう予定です。
がここで我々には秘めた計画がありまして、せっかく山陰まできたら、ぜひとも国鉄型キハ40系に乗らねば!ということで、希望の車両が来るまでホームにで待とう作戦を実行したのでした。
そしていざフタを開けてみると、まず一発目にやってきた車両はご希望のキハ40ではなかった……。ということで躊躇なくその列車はお見送りして、次の列車を待つこと10分少々、エンジン音を唸らせながら入線して来たのは、我らが期待の星!タラコ色(国鉄首都圏色)のキハ40系気動車でした!!やった!!!
こちらのキハ40系気動車、1977年から1982年にかけて生産された生粋の国鉄型で、質実剛健な造りのおかげで今日まで生きながらえてきましたが、寄る年波には勝てずに、すでにJR東日本と東海からは引退して、現在は北海道、四国、九州の3島会社と西日本の4社で運用されてる状況です。
しかしながら近年では各社共置き換えがすすんで徐々に数を減らしつつあり、現時点において最大勢力を誇るのがJR西日本で、ここ山陰地区と岡山地区ではまだまだ主役を張っていますが、これもいつまで続くのか予断を許さない状況なのです(汗)。そんな事情をよく知っているふたり、わざわざ1本見送った価値はあったぜ!ということで顔を見合わせてニヤリとしたのは言うまでもありません(笑)
出発まで恒例の撮影タイムを満喫したら、あとは乗車して重厚なディーゼルサウンドを楽しみながら列車の旅を楽しむこととしましょうか♪♪
鳥取から国鉄型気動車のボックスで揺られること1時間、すっかり満ち足りて「今日はこのまま乗り続けたいですね(笑)」などと軽口をたたいているうちに、われらを乗せた普通列車は下車駅の『倉吉駅』に到着してしまいました。
さてホームで列車をお見送りして、改札を一歩出たら気持ちを自転車に切り替えてゆきましょう!時間もあまりないので、そそくさと駅前で自転車を組み立てて、いざ『日本一美しい廃線跡』に向かってサイクリングスタートです!
倉吉駅を出発した御一行様、この日もあらかじめなかじとコース概要について打ち合わせておいて、なかじリーダーでコースをガイドしていただくシステムでサイクリングは進行します(人はそれを丸投げという…(汗))
それにしてもこの日の倉吉は雲ひとつ無い晴天で、とても11月下旬とは思えない陽気♪♪
こんな日になかじとメモリアルなサイクリングできる幸運に感謝しながら、まずは市内を流れる"小鴨川"をさかのぼってゆきます。正面に見える"蒜山三座"に向かってゆくサイクリングの時間もまた、とても気持ちの良いものでした。
なかじの正確なルート案内で道に迷うこともなく20kmたらずを走り切り、てやってきたのは旧国鉄倉吉線の『泰久寺駅』跡!目的地に近づくと線路も復活してきて、われらのテンションも急上昇!!廃線敷に沿って走ること数分で、廃線敷への入口はたやすく見つけることができました。
ここ倉吉線の廃線跡も、最近では『日本一美しい廃線跡』のキャッチコピーですっかり人気観光地となった感もあり、案内看板や駐車場、仮設トイレなどもしっかりと用意されています。ということで、ここから先の『日本一美しい廃線跡』には歩いてゆくことにしましょう!
泰久寺駅ホームわきから廃線敷に入ると、レールは森の奥に向かってずーっと続いていました。廃線からすでに40年近く経つというのに、レールも枕木もまだしっかりと原型を保っていて、線路の上を歩くというスタンドバイミーな感じはいくつになっても心が躍ってしまいますね(笑)
そして5分ほど線路を歩いた先に現れたのがこちらの光景!竹林の中を線路が通り抜けてゆく幻想的な風景に加えて、線路の間からキレイに2本の竹が伸びているという、これぞ自然が編み出した奇跡の造形…
これは確かに『日本一美しい廃線跡』だわ、と心から納得しながら、自然の織り成す造形美に見惚れてしまう二人なのでした❤
ちなみに線路の間から生えている竹は以前もう1本あったそうですが、枯れてしまったために伐られてしまったのだそう……。残りの2本もいつ枯れてしまうか分からないので、この景色を目にしておきたいという方は、ちょっと急いだほうがよいかと思います。
ここからさらに線路をすすんでゆくと、まもなく鉄板で出入口をふさがれたトンネルが現れて、それ以上先は進めないようになっていました。どうやら、ガイド付きの廃線跡トレッキングツアーに参加すればトンネルの中まで入れるらしいのですが、それはまた別の機会にということで……。
われわれに残された滞在時間も少なくなってきので、そろそろ倉吉駅に戻らなければなりません。後ろ髪ひかれつつ帰路に就いたものの、次々あらわれる廃線跡が気になって、ついつい足が止まってしまうためにますます時間が…(汗)
そんな廃線跡は一部がサイクリングロードに転換されていたり、途中には"倉吉線鉄道記念館"なる資料館が設置されていたりと、とにかくテツには魅力的すぎるコンテンツが多すぎて、時間がいくらあっても足りないので、ホントに理性を保つのが大変なのでした。
フタを開けると、この日もまたカツカツな時間設定になってしまいましたが(←ワタシのコンテンツ詰め込み癖のせい)、なかじの的確なナビゲーションのおかげで、時間いっぱい倉吉線サイクリングを楽しむこともできて、なんとか予定の列車にも間にあいました(笑)
ふたたびの倉吉駅からは『特急スーパーまつかぜ』に乗車して、山陰本線を西へすすんで島根県へ!輪行のこの機動力はやっぱり良いですねぇ❤
幸いなことに、輪行準備から乗車までのわずかな時間に駅弁も購入できたので、列車での移動中に駅弁タイムという、効率的かつ至高のランチタイムを過ごすことができました♪♪
われわれを乗せた「スーパーまつかぜ5号益田行き」はおよそ30分で『米子駅』に到着!ここから今回の旅で一番乗りたかった列車に乗るために、あえて途中下車したのでした。
お目当ての列車がやってくるまで約40分ありましたが、その間もしっかりと米子駅のコンテンツをを楽しませてもらっているうちに、まもなくわれらが期待の星!国鉄特急色に塗られた『特急やくも』が臨場してきました!!
テツ的に特急電車といえばやっぱりこの色!いまや全国でもこの1編成のみとなった国鉄特急色の381系電車は、神々しいくらいにカッコ良すぎて、カメラを持つ手が震えてしまいそうでした(汗)
定期運用される最後の国鉄特急型電車となった381系も、2024年度中には引退が決まっており、現在は岡山と出雲市を結ぶ"特急やくも"で最後の活躍をしているところなので、ここは同じく現役を引退するなかじと共にぜひ乗り納めておきたい!というテツにしかわからない強い義務感でもって、ここまやってきたワケなのです!
そんな国鉄色の"やくも9号出雲市行き"に乗車すること40分たらず、なつかしいオルゴールの車内メロディや振り子式車両独特の揺れなど、テツにはたまらない演出がいっぱいで、どうにも落ち着かないまま、あっというまに下車駅である『宍道駅』に到着してしまいました!
興奮冷めやらぬ中下車し、走り去る"やくも"を万感の思いでお見送りすると、こんどは大急ぎでとなりホームで待つ一両編成のディーゼルカーに乗り込みます!!
いよいよ旅も大詰めになりますが、ここからは廃線のウワサもある、西日本屈指のローカル線『木次線』に乗って、駅ナカグルメ?を楽しもうというプランです。
山陰の山間部を走る木次線は、島根県の宍道駅から広島県は備後落合駅を結ぶ、路線距離81.9kmという、まあまあ距離の長いローカル線で、週末には観光列車『奥出雲おろち号』も走る風光明媚な路線なのですが、いかんせん乗降人数が低迷しており、最近も廃止が検討されているというニュースが出たりして先行き不透明感もあるので、ここは乗れるうちに乗っておきましょう!ということで、今回コースに組み込んだ次第…
われわれを乗せた1両編成のキハ120は、小さいながらも力強い走りで徐々に高度を上げてゆきます。乗車時間が1時間をすぎるとだんだんと景色が山深くなってゆき、人家もまばらになってきた頃に、列車は山間の小さな駅に停車しました。
ここが今回の目的地の『亀嵩駅』です!古くて小さな駅舎にはそば屋が併設されていて、美味しい出雲そばが食べられると聞いてやってきたのですが……
改札を出てもなんかお店が開いている気配がない??たしか営業時間は確認してきたはずなんだけど???そしてよくよく見てみると「本日は完売いたしました」という看板が目の前に!嗚呼なんということでしょう!!
「ここまでやってきて閉店か~い!!!」
あまりに衝撃的なできごとに、頭を抱えて嘆くこと数分……。しかしまあこれも旅の思い出ということでふたり慰め合い、なんとか気持ちに折り合いをつけたところで下山することにします。
ときは11月ということで日が傾くのも早く、刻々と夕方の気配が近づくなか、なかじの牽引でわれらのサイクリングも締めくくりが近づいてきました。山間部を下りきったころにはとっぷりと日も暮れ、最後はこれまでなかったナイトライドを走り切って、今回のサイクリングの終着駅『出雲市駅』まで無事到着することができました!
内心、帰りの列車に乗り遅れることだけは是が非でも避けなければならないので、ここの時間管理が一番気がかりだったのですが、真っ暗な中でもコースを誤ることなく、確実に目的地まで運んでくれるなかじの高いナビゲーション能力のおかげで、なんとか最後まで無事に走り切ることができました!いやはやこれでひと安心❤
ということで、コンテンツ満載の輪行ライド二日目もこれにて終了(*^^*)。さてここからはお楽しみタイム!われらにとって最高のご褒美である寝台列車の旅を存分に楽しむこととしましょう!
サクサクと自転車をたたんで、駅の売店で今夜のご飯と明日の朝食を調達したら、二人軽快な足取りで駅ホームに上がってゆきました。
これから乗車するのが18:53発の寝台特急『サンライズ出雲』東京行き。ここから一晩かけて953.6kmを走る在来線では日本一の長距離列車です。
いまや定期運用される最後の寝台列車となり、人気もうなぎ上りでなかなかきっぷの取りずらい列車となっていましたが、ここもなかじの尽力で『B寝台個室シングル(禁煙)』を2室確保することができたのでした(感謝!)
こちらの"シングル"個室であれば、自室に自転車も一緒に入れられるので(ギリギリですが)、輪行で利用する場合はこちらか、上位互換の"シングルツイン"か"シングルデラックス"を手配するのがよろしいかと思います。
また"サンライズエクスプレス"には車内にシャワー設備も設けられているので、サイクリングのあとにそのまま乗車してもスッキリ汗を流すこともできます!しかも走る列車内でシャワーを浴びるという経験もなかなか味わえない非日常体験で、きっとこれも良い旅の思い出になると思います(笑)
ちなみにシャワー設備を利用する際は、事前に車内の券売機でシャワーカードを購入しておく必要があり、発行される枚数にも限りがあるので、乗車したら早めに調達しておくのがおすすめです!
定刻に出発した上りサンライズ出雲でしたが、ここから明朝下車する横浜駅までは約12時間の列車の旅。自分だけの空間でゆったりと移動できる優雅で贅沢な時間は、きっとプライスレスな思い出になることでしょう♪♪
とか言いながら、岡山駅到着後に"サンライズ瀬戸"を併結する段になると、ふたり申し合わせたように部屋から出てきて、連結作業を先頭の貫通扉ごしに耳で確認しながら(連結時下車できないため)勝手に盛り上がったりていて、落ち着きなくサンライズでの旅を満喫していたのでしたが…(笑)
岡山駅での連結作業を楽しんだところで、ようやくこの日の活動を終えてお休みすることにします。夜も更けてゆくなか、心地よい揺れに身を任せて、レールのジョイント音を子守歌に眠りに落ちてゆきたいところですが、テツの血が騒いでしまってなかなか眠りにつくことが出来ないのはどうしたものか…
とか言っているうちに、いつの間にか意識を失っていて、次に目が覚めたのは横浜駅到着前の『おはよう放送』でした(笑)たぶん到着30分前くらいだったかと思いますが、まもなく下車ということで、後ろ髪ひかれながらいそいそと荷物をまとめて洗顔、朝食を済ませます。
夢のような12時間はあっという間に過ぎ去ってゆき、定刻の6:44に『サンライズ瀬戸・出雲』は横浜駅に到着しました。これにて輪界鉄コンビによる2泊3日の輪行サイクリングツアーは終了。自分にとっては本当に楽しくて夢のような時間でした❤
ワタシが立てた欲張りなスケジュールを、なかじがなんとかするというこのチームワーク?も、今回でかなり練度を上げたと勝手に自負しておりますが、現役を引退しても鉄コンビは不滅ですので、またこんど電車に…もとい自転車に乗りいきましょう!!
中島康晴選手、16年間の選手生活本当にお疲れ様でした!これからも多方面でのご活躍をお祈りしています!!
~後日談~
そんな思い出深い輪行旅が終わって1ヶ月ほど経った12月中旬、この日テツ店長が向かった先は、兵庫県北播磨地域を走る『北条鉄道』という少々地味な(失礼!)ローカル鉄道でした。
こちらでのお目当ては、かつて青森県と岩手県を結ぶJR東日本の五能線を走っていたキハ40系気動車(先月も乗ってたヤツですが…)、テツ店長はとにかくこの車両が大好きなんですね❤
しかもこの車両、ローカル鉄道を活性化させたいと言う同社のいち運転士の熱意が通じて、東北から関西に転じて第二の人生を歩むこととなったという、ちょっといい話もあって足が向いてしまったのでした。
現地に到着して意気揚々とキハ40に乗り込んだテツ店長でしたが、そこには我が目を疑う光景がありました!なんと天井からぶら下がった吊り広告に、「中島康晴トレイン」なるワードが……???
ちょっと意味が分からなくなって、その場でなかじに連絡すると「北条鉄道さんに広告を出したんですよ!明日からはヘッドマークも出るんでよかったら取材していってください」。加えて「ボクが連絡入れておくので、北条町駅に着いたら駅員さんに声かけてください!」と言うことで、急遽取材活動となりました(笑)
じつはなかじさん、これまでも北条鉄道で貸し切り列車によるサイクルトレインイベントを何回も行っていた縁で、最後を飾る鉄分満載なイベントををセルフプロデュースしていたのですね!いやはやこれはステキ過ぎます❤
終点の北条町駅に着いたところで、改札口まで行って駅員さんにおそるおそる声をかけると…
「中島選手から連絡受けていますよ!」とのことで中へ通され、そこには大きなヘッドマークが鎮座しておりました!
写真を撮りたい旨お願いすると、「ちょっと待っててください」とのことで、別の職員さんがやってきて「彼がキハ40を呼んだ男です」とのことで、ヘッドマークを持って写真におさまってもらったのでした(笑)
北条鉄道様、その節はありがとうございました!
という、なかじのあふれる鉄道愛に触れたひとときでしたが、日本の美しい田園風景が詰め込まれた北条鉄道の景色は、乗ってよし!眺めてよし!!法華口駅舎内にある『駅舎工房 モン・ファボリ』のパンもとっても美味しいので、ぜひ一度立ち寄ってみてください。
おわり
写真と文:河井孝介(バイクプラス多摩センター店)
前編では岡山の鉄道スポットを忙しく回ったなかじ&テツ店長の鉄コンビ、二日目の後編はところ変わって山陰に舞台を移し、再び鉄分豊富なサイクリングへ出発進行♪という事で二日目の旅は『鳥取駅』からはじまります!早起きして余裕を持って駅にやって来た二人、ここからは山陰本線で米子方面に向かう予定です。
がここで我々には秘めた計画がありまして、せっかく山陰まできたら、ぜひとも国鉄型キハ40系に乗らねば!ということで、希望の車両が来るまでホームにで待とう作戦を実行したのでした。
そしていざフタを開けてみると、まず一発目にやってきた車両はご希望のキハ40ではなかった……。ということで躊躇なくその列車はお見送りして、次の列車を待つこと10分少々、エンジン音を唸らせながら入線して来たのは、我らが期待の星!タラコ色(国鉄首都圏色)のキハ40系気動車でした!!やった!!!
こちらのキハ40系気動車、1977年から1982年にかけて生産された生粋の国鉄型で、質実剛健な造りのおかげで今日まで生きながらえてきましたが、寄る年波には勝てずに、すでにJR東日本と東海からは引退して、現在は北海道、四国、九州の3島会社と西日本の4社で運用されてる状況です。
しかしながら近年では各社共置き換えがすすんで徐々に数を減らしつつあり、現時点において最大勢力を誇るのがJR西日本で、ここ山陰地区と岡山地区ではまだまだ主役を張っていますが、これもいつまで続くのか予断を許さない状況なのです(汗)。そんな事情をよく知っているふたり、わざわざ1本見送った価値はあったぜ!ということで顔を見合わせてニヤリとしたのは言うまでもありません(笑)
出発まで恒例の撮影タイムを満喫したら、あとは乗車して重厚なディーゼルサウンドを楽しみながら列車の旅を楽しむこととしましょうか♪♪
鳥取から国鉄型気動車のボックスで揺られること1時間、すっかり満ち足りて「今日はこのまま乗り続けたいですね(笑)」などと軽口をたたいているうちに、われらを乗せた普通列車は下車駅の『倉吉駅』に到着してしまいました。
さてホームで列車をお見送りして、改札を一歩出たら気持ちを自転車に切り替えてゆきましょう!時間もあまりないので、そそくさと駅前で自転車を組み立てて、いざ『日本一美しい廃線跡』に向かってサイクリングスタートです!
倉吉駅を出発した御一行様、この日もあらかじめなかじとコース概要について打ち合わせておいて、なかじリーダーでコースをガイドしていただくシステムでサイクリングは進行します(人はそれを丸投げという…(汗))
それにしてもこの日の倉吉は雲ひとつ無い晴天で、とても11月下旬とは思えない陽気♪♪
こんな日になかじとメモリアルなサイクリングできる幸運に感謝しながら、まずは市内を流れる"小鴨川"をさかのぼってゆきます。正面に見える"蒜山三座"に向かってゆくサイクリングの時間もまた、とても気持ちの良いものでした。
なかじの正確なルート案内で道に迷うこともなく20kmたらずを走り切り、てやってきたのは旧国鉄倉吉線の『泰久寺駅』跡!目的地に近づくと線路も復活してきて、われらのテンションも急上昇!!廃線敷に沿って走ること数分で、廃線敷への入口はたやすく見つけることができました。
ここ倉吉線の廃線跡も、最近では『日本一美しい廃線跡』のキャッチコピーですっかり人気観光地となった感もあり、案内看板や駐車場、仮設トイレなどもしっかりと用意されています。ということで、ここから先の『日本一美しい廃線跡』には歩いてゆくことにしましょう!
泰久寺駅ホームわきから廃線敷に入ると、レールは森の奥に向かってずーっと続いていました。廃線からすでに40年近く経つというのに、レールも枕木もまだしっかりと原型を保っていて、線路の上を歩くというスタンドバイミーな感じはいくつになっても心が躍ってしまいますね(笑)
そして5分ほど線路を歩いた先に現れたのがこちらの光景!竹林の中を線路が通り抜けてゆく幻想的な風景に加えて、線路の間からキレイに2本の竹が伸びているという、これぞ自然が編み出した奇跡の造形…
これは確かに『日本一美しい廃線跡』だわ、と心から納得しながら、自然の織り成す造形美に見惚れてしまう二人なのでした❤
ちなみに線路の間から生えている竹は以前もう1本あったそうですが、枯れてしまったために伐られてしまったのだそう……。残りの2本もいつ枯れてしまうか分からないので、この景色を目にしておきたいという方は、ちょっと急いだほうがよいかと思います。
ここからさらに線路をすすんでゆくと、まもなく鉄板で出入口をふさがれたトンネルが現れて、それ以上先は進めないようになっていました。どうやら、ガイド付きの廃線跡トレッキングツアーに参加すればトンネルの中まで入れるらしいのですが、それはまた別の機会にということで……。
われわれに残された滞在時間も少なくなってきので、そろそろ倉吉駅に戻らなければなりません。後ろ髪ひかれつつ帰路に就いたものの、次々あらわれる廃線跡が気になって、ついつい足が止まってしまうためにますます時間が…(汗)
そんな廃線跡は一部がサイクリングロードに転換されていたり、途中には"倉吉線鉄道記念館"なる資料館が設置されていたりと、とにかくテツには魅力的すぎるコンテンツが多すぎて、時間がいくらあっても足りないので、ホントに理性を保つのが大変なのでした。
フタを開けると、この日もまたカツカツな時間設定になってしまいましたが(←ワタシのコンテンツ詰め込み癖のせい)、なかじの的確なナビゲーションのおかげで、時間いっぱい倉吉線サイクリングを楽しむこともできて、なんとか予定の列車にも間にあいました(笑)
ふたたびの倉吉駅からは『特急スーパーまつかぜ』に乗車して、山陰本線を西へすすんで島根県へ!輪行のこの機動力はやっぱり良いですねぇ❤
幸いなことに、輪行準備から乗車までのわずかな時間に駅弁も購入できたので、列車での移動中に駅弁タイムという、効率的かつ至高のランチタイムを過ごすことができました♪♪
われわれを乗せた「スーパーまつかぜ5号益田行き」はおよそ30分で『米子駅』に到着!ここから今回の旅で一番乗りたかった列車に乗るために、あえて途中下車したのでした。
お目当ての列車がやってくるまで約40分ありましたが、その間もしっかりと米子駅のコンテンツをを楽しませてもらっているうちに、まもなくわれらが期待の星!国鉄特急色に塗られた『特急やくも』が臨場してきました!!
テツ的に特急電車といえばやっぱりこの色!いまや全国でもこの1編成のみとなった国鉄特急色の381系電車は、神々しいくらいにカッコ良すぎて、カメラを持つ手が震えてしまいそうでした(汗)
定期運用される最後の国鉄特急型電車となった381系も、2024年度中には引退が決まっており、現在は岡山と出雲市を結ぶ"特急やくも"で最後の活躍をしているところなので、ここは同じく現役を引退するなかじと共にぜひ乗り納めておきたい!というテツにしかわからない強い義務感でもって、ここまやってきたワケなのです!
そんな国鉄色の"やくも9号出雲市行き"に乗車すること40分たらず、なつかしいオルゴールの車内メロディや振り子式車両独特の揺れなど、テツにはたまらない演出がいっぱいで、どうにも落ち着かないまま、あっというまに下車駅である『宍道駅』に到着してしまいました!
興奮冷めやらぬ中下車し、走り去る"やくも"を万感の思いでお見送りすると、こんどは大急ぎでとなりホームで待つ一両編成のディーゼルカーに乗り込みます!!
いよいよ旅も大詰めになりますが、ここからは廃線のウワサもある、西日本屈指のローカル線『木次線』に乗って、駅ナカグルメ?を楽しもうというプランです。
山陰の山間部を走る木次線は、島根県の宍道駅から広島県は備後落合駅を結ぶ、路線距離81.9kmという、まあまあ距離の長いローカル線で、週末には観光列車『奥出雲おろち号』も走る風光明媚な路線なのですが、いかんせん乗降人数が低迷しており、最近も廃止が検討されているというニュースが出たりして先行き不透明感もあるので、ここは乗れるうちに乗っておきましょう!ということで、今回コースに組み込んだ次第…
われわれを乗せた1両編成のキハ120は、小さいながらも力強い走りで徐々に高度を上げてゆきます。乗車時間が1時間をすぎるとだんだんと景色が山深くなってゆき、人家もまばらになってきた頃に、列車は山間の小さな駅に停車しました。
ここが今回の目的地の『亀嵩駅』です!古くて小さな駅舎にはそば屋が併設されていて、美味しい出雲そばが食べられると聞いてやってきたのですが……
改札を出てもなんかお店が開いている気配がない??たしか営業時間は確認してきたはずなんだけど???そしてよくよく見てみると「本日は完売いたしました」という看板が目の前に!嗚呼なんということでしょう!!
「ここまでやってきて閉店か~い!!!」
あまりに衝撃的なできごとに、頭を抱えて嘆くこと数分……。しかしまあこれも旅の思い出ということでふたり慰め合い、なんとか気持ちに折り合いをつけたところで下山することにします。
ときは11月ということで日が傾くのも早く、刻々と夕方の気配が近づくなか、なかじの牽引でわれらのサイクリングも締めくくりが近づいてきました。山間部を下りきったころにはとっぷりと日も暮れ、最後はこれまでなかったナイトライドを走り切って、今回のサイクリングの終着駅『出雲市駅』まで無事到着することができました!
内心、帰りの列車に乗り遅れることだけは是が非でも避けなければならないので、ここの時間管理が一番気がかりだったのですが、真っ暗な中でもコースを誤ることなく、確実に目的地まで運んでくれるなかじの高いナビゲーション能力のおかげで、なんとか最後まで無事に走り切ることができました!いやはやこれでひと安心❤
ということで、コンテンツ満載の輪行ライド二日目もこれにて終了(*^^*)。さてここからはお楽しみタイム!われらにとって最高のご褒美である寝台列車の旅を存分に楽しむこととしましょう!
サクサクと自転車をたたんで、駅の売店で今夜のご飯と明日の朝食を調達したら、二人軽快な足取りで駅ホームに上がってゆきました。
これから乗車するのが18:53発の寝台特急『サンライズ出雲』東京行き。ここから一晩かけて953.6kmを走る在来線では日本一の長距離列車です。
いまや定期運用される最後の寝台列車となり、人気もうなぎ上りでなかなかきっぷの取りずらい列車となっていましたが、ここもなかじの尽力で『B寝台個室シングル(禁煙)』を2室確保することができたのでした(感謝!)
こちらの"シングル"個室であれば、自室に自転車も一緒に入れられるので(ギリギリですが)、輪行で利用する場合はこちらか、上位互換の"シングルツイン"か"シングルデラックス"を手配するのがよろしいかと思います。
また"サンライズエクスプレス"には車内にシャワー設備も設けられているので、サイクリングのあとにそのまま乗車してもスッキリ汗を流すこともできます!しかも走る列車内でシャワーを浴びるという経験もなかなか味わえない非日常体験で、きっとこれも良い旅の思い出になると思います(笑)
ちなみにシャワー設備を利用する際は、事前に車内の券売機でシャワーカードを購入しておく必要があり、発行される枚数にも限りがあるので、乗車したら早めに調達しておくのがおすすめです!
定刻に出発した上りサンライズ出雲でしたが、ここから明朝下車する横浜駅までは約12時間の列車の旅。自分だけの空間でゆったりと移動できる優雅で贅沢な時間は、きっとプライスレスな思い出になることでしょう♪♪
とか言いながら、岡山駅到着後に"サンライズ瀬戸"を併結する段になると、ふたり申し合わせたように部屋から出てきて、連結作業を先頭の貫通扉ごしに耳で確認しながら(連結時下車できないため)勝手に盛り上がったりていて、落ち着きなくサンライズでの旅を満喫していたのでしたが…(笑)
岡山駅での連結作業を楽しんだところで、ようやくこの日の活動を終えてお休みすることにします。夜も更けてゆくなか、心地よい揺れに身を任せて、レールのジョイント音を子守歌に眠りに落ちてゆきたいところですが、テツの血が騒いでしまってなかなか眠りにつくことが出来ないのはどうしたものか…
とか言っているうちに、いつの間にか意識を失っていて、次に目が覚めたのは横浜駅到着前の『おはよう放送』でした(笑)たぶん到着30分前くらいだったかと思いますが、まもなく下車ということで、後ろ髪ひかれながらいそいそと荷物をまとめて洗顔、朝食を済ませます。
夢のような12時間はあっという間に過ぎ去ってゆき、定刻の6:44に『サンライズ瀬戸・出雲』は横浜駅に到着しました。これにて輪界鉄コンビによる2泊3日の輪行サイクリングツアーは終了。自分にとっては本当に楽しくて夢のような時間でした❤
ワタシが立てた欲張りなスケジュールを、なかじがなんとかするというこのチームワーク?も、今回でかなり練度を上げたと勝手に自負しておりますが、現役を引退しても鉄コンビは不滅ですので、またこんど電車に…もとい自転車に乗りいきましょう!!
中島康晴選手、16年間の選手生活本当にお疲れ様でした!これからも多方面でのご活躍をお祈りしています!!
~後日談~
そんな思い出深い輪行旅が終わって1ヶ月ほど経った12月中旬、この日テツ店長が向かった先は、兵庫県北播磨地域を走る『北条鉄道』という少々地味な(失礼!)ローカル鉄道でした。
こちらでのお目当ては、かつて青森県と岩手県を結ぶJR東日本の五能線を走っていたキハ40系気動車(先月も乗ってたヤツですが…)、テツ店長はとにかくこの車両が大好きなんですね❤
しかもこの車両、ローカル鉄道を活性化させたいと言う同社のいち運転士の熱意が通じて、東北から関西に転じて第二の人生を歩むこととなったという、ちょっといい話もあって足が向いてしまったのでした。
現地に到着して意気揚々とキハ40に乗り込んだテツ店長でしたが、そこには我が目を疑う光景がありました!なんと天井からぶら下がった吊り広告に、「中島康晴トレイン」なるワードが……???
ちょっと意味が分からなくなって、その場でなかじに連絡すると「北条鉄道さんに広告を出したんですよ!明日からはヘッドマークも出るんでよかったら取材していってください」。加えて「ボクが連絡入れておくので、北条町駅に着いたら駅員さんに声かけてください!」と言うことで、急遽取材活動となりました(笑)
じつはなかじさん、これまでも北条鉄道で貸し切り列車によるサイクルトレインイベントを何回も行っていた縁で、最後を飾る鉄分満載なイベントををセルフプロデュースしていたのですね!いやはやこれはステキ過ぎます❤
終点の北条町駅に着いたところで、改札口まで行って駅員さんにおそるおそる声をかけると…
「中島選手から連絡受けていますよ!」とのことで中へ通され、そこには大きなヘッドマークが鎮座しておりました!
写真を撮りたい旨お願いすると、「ちょっと待っててください」とのことで、別の職員さんがやってきて「彼がキハ40を呼んだ男です」とのことで、ヘッドマークを持って写真におさまってもらったのでした(笑)
北条鉄道様、その節はありがとうございました!
という、なかじのあふれる鉄道愛に触れたひとときでしたが、日本の美しい田園風景が詰め込まれた北条鉄道の景色は、乗ってよし!眺めてよし!!法華口駅舎内にある『駅舎工房 モン・ファボリ』のパンもとっても美味しいので、ぜひ一度立ち寄ってみてください。
おわり
写真と文:河井孝介(バイクプラス多摩センター店)
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