2023/04/09(日) - 09:30
逃げ集団を鼓舞し、スプリントに持ち込み、大金星を挙げたアリソン・ジャクソン(カナダ、EFエデュケーション・TIBCO-SVB)。トレックやSDワークスの追走を振り切った34歳のベテランが、第3回パリ〜ルーベ・ファムを制覇した。
コロナ禍で10月開催だった2021年、またフランス大統領選挙の影響によりアムステル・ゴールドレースと開催日が入れ替わった2022年を経て、ようやく例年通り4月の第2週目に戻ってきたパリ〜ルーベが開幕。その先陣を切るのは第3回目を迎える女子レース「パリ〜ルーベ・ファム(UCIワールドツアー)」だ。
出発地点であるパリ近郊のドゥナンから、蛇行するように石畳(パヴェ)を越え北にあるルーベのヴェロドロームを目指すコースは145.4km。その詳細はレースプレビューに詳しいが、登場するパヴェ区間は全17箇所(総距離29.2km)。パリ〜ルーベの象徴とも言えるアランベールは通過しないものの、石畳の最高難易度を示す5つ星の「No.11 モンサン=ぺヴェル」と「No.4 カルフール=ド=ラルブル」は今年も勝負所となる。
試走時に濡れていた道は乾き、気温12度の曇り模様。ドゥナンのスタート地点にはチームとして3連覇、自身2連覇を目指すエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)ら142名が集結し、大会は未勝利ながらも今年のクラシックで無類の強さを誇るSDワークスは、ロッタ・コペッキー(ベルギー)とロレーナ・ウィーベス(オランダ)ら強力布陣を揃えた。
午後1時45分にスタートが切られ、舗装路を20km進んだ地点で早くも逃げグループが成立する。そこにSDワークスはフェムケ・マルクス(オランダ)、トレックはリサ・クライン(ドイツ)を送り、全員がチームの異なる18名は5分のリードを得てパヴェ区間に突入した。
落ち着いたペースで距離を進めるメイン集団では、2つ目のパヴェ区間でダニエク・ヘンゲフェルト(オランダ、チームDSM)がアタックし、時を同じくマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)はパンクに見舞われる。
この報を受けたイタリア王者エリーザ・バルサモ(トレック・セガフレード)がプロトン先頭に出てペースアップを実施。優勝候補の一角であるフォスは同じく遅れたマリー・ルネット(フランス、FDJ・スエズ)と共に、パヴェ区間の序盤から追走を強いられることとなった。
逃げから4分12秒遅れで4つ星の「No.12 オシー=レ=オルシ〜ベルシー」に突入したメイン集団は、バルサモの高速牽引で小さくなった人数をウィーベスが集団先頭で更に減らしにいく。このペースアップを利用してコペッキーが飛び出し、ペースが乱れた集団の前方で落車が発生。これにバルサモやシャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM)など有力勢が巻き込まれた一方で、大きな影響を受けなかったロンゴボルギーニやファイファー・ジョルジ(イギリス)らがコペッキーに合流を果たした。
コペッキー・グループは先を行っていたヘンゲフェルトを捉え、18名の第1追走集団が形成される。しかし「No.9 ポン・ティボー〜エンヌヴラン(残り39.6km)」で集団牽引を務めていたルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)が落車。その背後を走っていたコペッキーはもちろん、ロミー・カスパー(ドイツ、AGインシュランス・スーダル・クイックステップ)を除くほぼ全員が巻き込まれた。
反対に2分差まで詰められていた逃げ集団にとって、有力勢を含む追走集団の落車は幸いとなった。逃げグループではカティア・ラグーザ(イタリア、リブレーシング・エクストラ)やマルクス、アリソン・ジャクソン(カナダ、EFエデュケーション・TIBCO-SVB)など、実力確かな選手たちがライバルを減らすために断続的なアタックを実行。「No.2 ヴィレム〜エム(残り8.6km)」に突入した時点で7名まで減った逃げ集団が、僅か10〜20秒のリードを保ちながら突き進んだ。
それを追うロンゴボルギーニとブラント、エリーズ・シャベイ(スイス、キャニオン・スラム)などがいる第1追走集団からは、落車で遅れたコペッキーが距離を使って合流を果たす。更にここにはチームメイトの協力も得ながら諦めず踏み続けたフォスも追いつき、逃げを捉えるのは時間の問題と思われた。
しかし、この千載一遇のチャンスを逃すまいと34歳のベテラン、ジャクソンが集団を鼓舞。これに若手のマルタ・ラッハ(ポーランド、セラティツィット・マヴィック・WNTプロサイクリング)らが呼応する形で、最終パヴェ区間である「No.1 ルーベ(残り1.8km)」を通過した。
姿は捉えながらも一向に縮まらないギャップにロンゴボルギーニとブラントがそれぞれ加速する。しかし集団内で静観するコペッキーの存在もあり、思うように先頭との距離は縮まらない。そして10秒のリードのまま、6名の逃げ集団はついに1周半を回るヴェロドロームに突入した。
ラッハを先頭に残り1周の鐘を聞いた直後、ジャクソンと接触したマルクスが単独で落車。ラッハからマリオン・ボラ(フランス、サンミッシェル・オーベル93)に先頭が入れ替わっても、2番手のポジションを保持したジャクソンが最終コーナーの外側から加速し先頭へ。その背後から迫るカティア・ラグーザ(イタリア、リブレーシング・エクストラ)を抑えたジャクソンが、先着して雄叫びを上げた。
フィニッシュ直後に喜びのダンスを披露し、勝利が信じられないと何度も頭を横に振ったジャクソン。「試走でこのヴェロドロームを走った際、ここで勝つ自分の姿を想像した。だけどそういう夢は夢のまま終わるのが常。だからそれが現実となったいま、”信じられない”という言葉でしかこの気持ちは表現できない」と語った。
2015年からプロレースに参戦し、今年リブレーシング・エクストラから2018〜19年に所属した古巣EFへの復帰を果たしたジャクソン。「今年の春のクラシックはチームとして上手くいっておらず、だからレース先頭で積極的な走りがしたかった。週のはじめに降った雨によって、所々濡れて滑りやすくなっていたことも逃げに乗った理由の1つ。どんなレースでも先頭でフィニッシュするのは最高だが、ルーベでの先頭フィニッシュはどのレースよりも気持ち良かった」と満面の笑みを浮かべたジャクソンは、表彰台で重い石畳のトロフィーを掲げた。
ジャクソンのフィニッシュから12秒後にやってきた追走集団はコペッキーが先着。トレックの2人(ロンゴボルギーニとブラント)が遅れるなか、フォスが10位に入り元世界王者の意地を見せた。
追走の届かなかったコペッキーは「落車した時の痛みは酷く、足首が骨折しているかと恐怖に襲われた。何とかバイクに跨ることはでき、ペダルを踏んでいく度に力が戻っていった。この結果はとても悔しいが、私のパリ〜ルーベはまた終わっていない」と悔しさを素直に口にした。
コロナ禍で10月開催だった2021年、またフランス大統領選挙の影響によりアムステル・ゴールドレースと開催日が入れ替わった2022年を経て、ようやく例年通り4月の第2週目に戻ってきたパリ〜ルーベが開幕。その先陣を切るのは第3回目を迎える女子レース「パリ〜ルーベ・ファム(UCIワールドツアー)」だ。
出発地点であるパリ近郊のドゥナンから、蛇行するように石畳(パヴェ)を越え北にあるルーベのヴェロドロームを目指すコースは145.4km。その詳細はレースプレビューに詳しいが、登場するパヴェ区間は全17箇所(総距離29.2km)。パリ〜ルーベの象徴とも言えるアランベールは通過しないものの、石畳の最高難易度を示す5つ星の「No.11 モンサン=ぺヴェル」と「No.4 カルフール=ド=ラルブル」は今年も勝負所となる。
試走時に濡れていた道は乾き、気温12度の曇り模様。ドゥナンのスタート地点にはチームとして3連覇、自身2連覇を目指すエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)ら142名が集結し、大会は未勝利ながらも今年のクラシックで無類の強さを誇るSDワークスは、ロッタ・コペッキー(ベルギー)とロレーナ・ウィーベス(オランダ)ら強力布陣を揃えた。
午後1時45分にスタートが切られ、舗装路を20km進んだ地点で早くも逃げグループが成立する。そこにSDワークスはフェムケ・マルクス(オランダ)、トレックはリサ・クライン(ドイツ)を送り、全員がチームの異なる18名は5分のリードを得てパヴェ区間に突入した。
落ち着いたペースで距離を進めるメイン集団では、2つ目のパヴェ区間でダニエク・ヘンゲフェルト(オランダ、チームDSM)がアタックし、時を同じくマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)はパンクに見舞われる。
この報を受けたイタリア王者エリーザ・バルサモ(トレック・セガフレード)がプロトン先頭に出てペースアップを実施。優勝候補の一角であるフォスは同じく遅れたマリー・ルネット(フランス、FDJ・スエズ)と共に、パヴェ区間の序盤から追走を強いられることとなった。
逃げから4分12秒遅れで4つ星の「No.12 オシー=レ=オルシ〜ベルシー」に突入したメイン集団は、バルサモの高速牽引で小さくなった人数をウィーベスが集団先頭で更に減らしにいく。このペースアップを利用してコペッキーが飛び出し、ペースが乱れた集団の前方で落車が発生。これにバルサモやシャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM)など有力勢が巻き込まれた一方で、大きな影響を受けなかったロンゴボルギーニやファイファー・ジョルジ(イギリス)らがコペッキーに合流を果たした。
コペッキー・グループは先を行っていたヘンゲフェルトを捉え、18名の第1追走集団が形成される。しかし「No.9 ポン・ティボー〜エンヌヴラン(残り39.6km)」で集団牽引を務めていたルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)が落車。その背後を走っていたコペッキーはもちろん、ロミー・カスパー(ドイツ、AGインシュランス・スーダル・クイックステップ)を除くほぼ全員が巻き込まれた。
反対に2分差まで詰められていた逃げ集団にとって、有力勢を含む追走集団の落車は幸いとなった。逃げグループではカティア・ラグーザ(イタリア、リブレーシング・エクストラ)やマルクス、アリソン・ジャクソン(カナダ、EFエデュケーション・TIBCO-SVB)など、実力確かな選手たちがライバルを減らすために断続的なアタックを実行。「No.2 ヴィレム〜エム(残り8.6km)」に突入した時点で7名まで減った逃げ集団が、僅か10〜20秒のリードを保ちながら突き進んだ。
それを追うロンゴボルギーニとブラント、エリーズ・シャベイ(スイス、キャニオン・スラム)などがいる第1追走集団からは、落車で遅れたコペッキーが距離を使って合流を果たす。更にここにはチームメイトの協力も得ながら諦めず踏み続けたフォスも追いつき、逃げを捉えるのは時間の問題と思われた。
しかし、この千載一遇のチャンスを逃すまいと34歳のベテラン、ジャクソンが集団を鼓舞。これに若手のマルタ・ラッハ(ポーランド、セラティツィット・マヴィック・WNTプロサイクリング)らが呼応する形で、最終パヴェ区間である「No.1 ルーベ(残り1.8km)」を通過した。
姿は捉えながらも一向に縮まらないギャップにロンゴボルギーニとブラントがそれぞれ加速する。しかし集団内で静観するコペッキーの存在もあり、思うように先頭との距離は縮まらない。そして10秒のリードのまま、6名の逃げ集団はついに1周半を回るヴェロドロームに突入した。
ラッハを先頭に残り1周の鐘を聞いた直後、ジャクソンと接触したマルクスが単独で落車。ラッハからマリオン・ボラ(フランス、サンミッシェル・オーベル93)に先頭が入れ替わっても、2番手のポジションを保持したジャクソンが最終コーナーの外側から加速し先頭へ。その背後から迫るカティア・ラグーザ(イタリア、リブレーシング・エクストラ)を抑えたジャクソンが、先着して雄叫びを上げた。
フィニッシュ直後に喜びのダンスを披露し、勝利が信じられないと何度も頭を横に振ったジャクソン。「試走でこのヴェロドロームを走った際、ここで勝つ自分の姿を想像した。だけどそういう夢は夢のまま終わるのが常。だからそれが現実となったいま、”信じられない”という言葉でしかこの気持ちは表現できない」と語った。
2015年からプロレースに参戦し、今年リブレーシング・エクストラから2018〜19年に所属した古巣EFへの復帰を果たしたジャクソン。「今年の春のクラシックはチームとして上手くいっておらず、だからレース先頭で積極的な走りがしたかった。週のはじめに降った雨によって、所々濡れて滑りやすくなっていたことも逃げに乗った理由の1つ。どんなレースでも先頭でフィニッシュするのは最高だが、ルーベでの先頭フィニッシュはどのレースよりも気持ち良かった」と満面の笑みを浮かべたジャクソンは、表彰台で重い石畳のトロフィーを掲げた。
ジャクソンのフィニッシュから12秒後にやってきた追走集団はコペッキーが先着。トレックの2人(ロンゴボルギーニとブラント)が遅れるなか、フォスが10位に入り元世界王者の意地を見せた。
追走の届かなかったコペッキーは「落車した時の痛みは酷く、足首が骨折しているかと恐怖に襲われた。何とかバイクに跨ることはでき、ペダルを踏んでいく度に力が戻っていった。この結果はとても悔しいが、私のパリ〜ルーベはまた終わっていない」と悔しさを素直に口にした。
パリ〜ルーベ・ファム2023結果
1位 | アリソン・ジャクソン(カナダ、EFエデュケーション・TIBCO-SVB) | 3:42:56 |
2位 | カティア・ラグーザ(イタリア、リブレーシング・エクストラ) | |
3位 | マルト・トルイアン(ベルギー、フェニックス・ドゥクーニンク) | |
4位 | ウジェニー・デュヴァル(フランス、FDJ・スエズ) | |
5位 | マリオン・ボラ(フランス、サンミッシェル・オーベル93) | |
6位 | マルタ・ラッハ(ポーランド、セラティツィット・マヴィック・WNTプロサイクリング) | +0:03 |
7位 | ロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス) | +0:12 |
8位 | ファイファー・ジョルジ(イギリス、チームDSM) | |
9位 | キアラ・コンソンニ(イタリア、UAEチームADQ) | |
10位 | マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) |
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