例年になくエピックな砂コースが舞台となるシクロクロス全日本選手権。男子エリートの優勝候補選手たちに、前日試走を経て感じたこと、そして翌日本戦への展望を語ってもらった。



マスターズレースの終了後、ワイルドネイチャープラザの特設コースでは2時間の試走時間が設けられ、翌日日曜日のカテゴリーレースに出場する選手たちがコースや身体コンディションの確認に勤しんだ。

圧倒的なスキルを見せつけた竹之内悠 photo:So Isobe

コースチェックの中心となったのはもちろん名物の砂区間で、深い轍が刻まれた180度コーナーや、大きな差がつく可能性のある長い下り区間に選手が集中。中でも圧倒的なテクニックとスピードを披露し、ギャラリーを驚かせたのが竹之内悠だった。

長い欧州遠征で培ったライン取りと柔らかい身体の動き。まるで浮き上がっているかのような走りを披露した竹之内。しかし本人に話を聞けば「昨日の乾いた状態では全然乗れず良い印象はなかった」と意外な言葉が返ってきた。「みんなにめちゃくちゃ"チャンスだね"って言われるのですが、実力的には(織田)聖が抜け出しているし、言われるほどにチャンスはなくなってしまう(笑)。いくら僕が砂が速くてもタイムで言えば全体の3割くらい。残りの区間でどれだけ我慢できるかですね」とも。

織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)を激励する渡辺航先生 photo:So Isobe

竹之内を含めライバル全員の厳しいマークを受けるのが、今季負けなしの11連勝と圧倒的な勝率をひっさげて乗り込んだ織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)だ。絶対的な砂区間のスピードでは竹之内に軍配が上がるものの、ストレートや林間区間のパワーや、ミスのないバニーホップなど織田の持つカードは誰よりも豊富だ。

「今季全勝しているがゆえにプレッシャーは感じていますが、実際まだチャンピオンでもないし、チャレンジャー精神で臨みたい。いい走りと結果で世界選手権に繋げたい」と答えた織田。砂区間では現役引退した元チームメイトで元チャンピオン、前田公平のアドバイスを受けて時間いっぱい乗り込みラインの確認に勤しんでいた。

骨折明けの小坂光が沢田時と一緒に試走を重ねる photo:So Isobe

宇都宮ブリッツェンジャージ姿を披露した沢田時 photo:So Isobe

小坂光と新加入・沢田時の宇都宮ブリッツェンコンビは試走時間の中で目を引く存在だった。1年間チャンピオンジャージを守ってきた小坂だが、わずか3週間前に上腕骨を骨折し、まだ痛みが残る中なんとかテーピング処置で走れる状態にしたという。優勝候補からは外れるものの、「勝ちたい気持ちはあるけれど、こういう状況ですしリラックスした気持ちでレースを走れると思います」とコメントする。

そんな小坂の思いをチームメイトとして共有するのが一昨年のチャンピオンである沢田だ。「砂に特化した練習をしてきたし、今日のフィーリングも良かった。バイクの上で力を出せる感じがある」と好感触を得ている模様。「ライン取りや機材のことなど、話題を(トップ選手同士で)共有できるのはメリットしかない」とも。目指すのは一昨年は沢田、昨年は小坂、そして今年は再び沢田というチーム内でのチャンピオンリレーだ。

スムーズに砂をこなす竹内遼(GHISALLO RACING) photo:So Isobe

「調子はバッチリだし、バイクに"乗れている"。それをレース中フルに出し切って優勝を目指す」と言う竹内遼(GHISALLO RACING)と丸山厚(BOMA/ROND CX TEAM)は実力派の中でもトップクラスに砂を乗りこなしていた選手。U23勢も鈴木来人を筆頭に、副島達海(大阪産業大学)、そして柚木伸元(朝明高校)らも安定感と勢いの良い走りを披露していた。

パワフルな走りを披露していた小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:So Isobe

砂区間の試走を繰り返した小川咲絵(AX cyclocross team) photo:So Isobe

実力伯仲の女子レース出場者の中、砂を乗りこなしていたのは小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)や石田唯(早稲田大学)といった選手たち。高いフィジカルレベルを誇る小川咲絵(AX cyclocross team)は手を焼きつつも、持ち前のフィジカルで砂を踏み倒していた。

text:So Isobe
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