2022/12/30(金) - 18:14
元プロロード選手の今中大介氏が興した輸入販売代理店のインターマックスが創業25周年を迎える。四半世紀という長い年月を祝うアニバーサリーイヤーにオリジナルブランドを再始動、その第一弾となる限定50台のスペシャルバイクをテストした。
イタリアの名門チーム・ポルティから近代のツール・ド・フランスに日本人で初めて出場した今中大介氏。日本人が欧州で活躍する道筋をつけたレジェンドの一人だ。ロードレース中継の解説者として欧州のロードレース文化を日本国内に紹介し、メディアの機材インプレッション記事やイベントのゲストとして登場する機会も多く、国内のロードバイク文化にも大きく貢献してきた人物だ。
今中氏はプロ引退後より1年後の1998年に輸入・販売代理店のインターマックスを設立し、ヨーロッパブランドを国内のサイクリストに提案。翌年にはプロ選手の経験から得た知見をもとにオリジナルバイクの開発に着手し、インターマックスブランドとしてロードバイクを展開し、国内のサイクリストにとって馴染み深いブランドへと成長していった。
創業当時のプロスペック・アルミモデルのゼルトゲンボスや、オートクレーブ製法のカーボンフレームを日本に広めたスクアドライタリア、独創的なチュービングで注目されたコルサイタリア、チーム右京の設立当初に選手が乗っていたヴァルブレンボなど多くのバイクをラインアップしてきたものの、近年はバイクブランドとしては休止状態になっていたのは事実だ。
しかし、この1年ほど今中氏がダズル迷彩カラーのフレームに乗る姿を自身のSNSに投稿し始め、インターマックスの新型がリリースされる機運をインターマックスファンは受け取っていた。次第に新型への期待は日に日に大きくなっていった。そして、2022年のジャパンカップ・サイクルロードレースの現場で、新型バイク「インターマックス25」が満を持して発表された。
ゼルトゲンボスのような固有のモデル名を示す文字もなく、会社名に"25"という数字が振られた新型は、1998年に創業した同社が2023年で25周年を迎えること記念して、限定50台で販売されるスペシャルバイクだった。そして、このバイクを周年記念というだけではなく、これを機にインターマックスブランドが復活する狼煙でもある。
インターマックス25のフレームは、トライアスロンバイクブランドのCEEPO(シーポ)が展開するStingerというモデルがベースだ。「シーポのバイクは性能が良いことを以前から知っており、テストを続けていたStingerももちろん良いフレームということをわかった上で今回の特別バイクに採用しました」と今中氏のお墨付きを得たモデルが限定品として白羽の矢が立ったのだ。
今回のフレームは今までインターマックスが開発してきたバイクとは毛色が異なる。「これまでは競技で突き抜けるためのバイクを作っていました。その時インターマックスバイクに乗っていた方が10年経過した今乗りやすいバイク」とこのフレームをテストし続けてきた今中氏は言う。
ベースとなったシーポ Stingerは、UCI規定に囚われないトライアスロンバイクの開発で得た知見をUCIルールの枠内に収めたエアロロードだ。フレームの各部はエアロダイナミクスに配慮したインテグレートデザインが多用されており、チューブに当たった風が綺麗に後方へと流れるように設計された。チューブの断面形状も定番となったカムテールデザインだ。
また近年のエアロロードで標準スペックとなったケーブルフル内装は、シーポとFSA、トーケンとのパートナーシップで実現。FSAのSMR規格のステムに、インターマックスのロゴがあしらわれたオリジナルハンドルが今回のスペシャルバイクに組み合わせられている。もちろんこのハンドルも今中氏のライドテストでお墨付きを得たものだ。
このようにインターマックス25は、同社アニバーサリーイヤーを感じさせるパーツアセンブリも特徴だ。サドルもインターマックスロゴがあしらわれる特別品が用意され、マヴィックの通常ラインにはないCOSMIC SLR 45のグレーロゴも協力を得て実現したスペシャルな仕様だ。
タイヤはヴィットリアのCORSA N.EXT。今中氏はシマノやポルティを含めたプロ時代から現在に至るまでヴィットリアのタイヤを愛用し続けており、インターマックスでも取り扱うほど。そんな今中氏が伝統的なコットンケーシングではなく、ナイロンケーシングのN.EXTを選んだのもテストでその良さを確認したから。「路面のインフォメーションを捉えやすく、レスポンスが良い点が気に入っています」と今中氏はいう。
インターマックスの創業25周年を祝うのに相応しいスペシャルバイクをシクロワイアードの編集部員2名がテスト。今後本格的に再始動するブランドの第一弾の実力やいかに。
−インプレッション
「物の価値と走りの良さが噛み合った特別な一台」磯部聡(シクロワイアード編集部)
加速感に秀でていて、滑走感に気持ち良さを感じるバイクでした。カーボンの層が薄くて軽量感がありつつ、大口径チューブで剛性を確保しているから、フレームにしなりがあってペダリングしやすいところが、そう思わせます。例えば、同じような見た目のエアロロードはある程度の脚力がなければ楽しさを引き出しにくい剛性になっていますが、このバイクに関しては誰でも少し乗っただけでもロードバイクに乗る楽しさに気がつけると思います。
例えるなら揺り椅子。椅子が前後に揺れるかのように、BB周りがペダリングに対して自然にしなってくれるし、力をかけなくても揺れてくれるから本当に心地良さがあります。自分でも感じられるようになってきたんですけど、若い時のように踏めないと感じている40、50代の方はいると思うんですよ。完成車の価格を考えてもそういう人たちが気持ちよく、楽しくロードサイクリングを楽しみたい時にフィットする上がりの一台でもありです。
ただ一方で性能がいいからレースに出場したっていいです。しなりが際立つフレームなので、疲れてペダリングが雑になってしまったり、ペダリングが完成されていない人が乗ってもフレーム側が補正して、気持ちよく加速してくれます。マヴィックのCOSMIC SLR 45がアセンブルされているのも走りを考えてのことでしょう。フレームとホイールどちらのキャラクターも喧嘩せず、走りの面でまとまりがあって、走りの良さに一役買っています。
走行性能で付け加えたいのは、ハンドリングが直進安定性高めなこと。レーシングバイクのようにバイクを振った瞬間にバンクする自転車ではなく、一回キッカケを作った後にバンクする自転車なので、気を使わずにコーナーに進入できるのもキャラクターにマッチしていると思います。
他にもDURA-ACEのコンポーネントや、今中さんのこだわりを感じられるほど非常に細身のハンドルが装備されていることからも、積極的にライドを続ける今中さんがプロデュースした自転車ということが、アセンブリとテストした印象からも伝わってきます。
バイクの走りだけの評価ではなく、インターマックスブランドが復活するという点においても価値が高い自転車だと思います。マヴィックがこのバイクのためにスペシャルロゴのCOSMICを用意したり、25周年記念ロゴの入ったハンドルやサドルがアセンブルされていたりと、様々な関係者が25周年のために協力したところに価値を感じます。
今中さんの現役時代に憧れを持っていてインターマックスのバイクを所有していたり、そこに憧れがあった人は、一度この自転車に興味を持って良いと断言できるバイクでした。
「正直、レースで使いたくなる。高水準にまとめ上げれらたレーシングバイク」高木三千成(シクロワイアード編集部)
このバイク、すごく良いですね。とてもキビキビ走るバイクで、加速感が心地いい一台です。ゼロ発進で踏み出した瞬間から前に出る感覚があって、これは期待できそうだなと思いながら走りだしたのですが、非常に高レベルにまとまったレーシングバイクでした。
どこかで力が逃げているような、モサッとした感覚は一切ありません。あえて重めのギアを掛けていっても、フレームがググッと力を受け止めてから「パンッ」と前に出るような気持ちいい加速感が味わえます。
低速から高速まで、どんな速度域でも意のままに加速できるようなバイクですね。しかし、ガチガチの高剛性バイクというわけではなくて、どちらかと言えばしならせて進んでいくのが気持ちよさに繋がるような印象です。でも、登りで軽いギアを使ってクルクル回していくのも素直に進んでくれるので、どんなスピード、ペダリングにも対応してくれる懐の深さも感じました。
レーシーさ、という意味ではハンドリングはクイックな部類です。集団で位置取りをしつつ隙間を縫って前へ上がっていくようなシーンでは使いやすいでしょう。ダウンヒルでも、カミソリのような切れ味鋭いコーナーが楽しめると思います。テストバイクでは、ハンドルポジションが高かったので少し攻めきれない部分もありましたが、しっかりポジションを合わせてスペーサーを抜いたセッティングにすれば、もっと下りも楽しめそうです。
このクイックさは登りのダンシングでもよい方向に影響していますね。バイクのリズムが軽快で、クイクイっと登っていけます。スプリントの際にライン変更もしやすいでしょうし、正直レースで使ってみたくなりました。
トライアスロンで有名なシーポのバイクがベースという前情報も伺っていたので、どちらかといえば直進安定性が強めのどっしりとした乗り味を想像していたのですが、いい意味で裏切られましたね。
見た目にもリアセンターやホイールベースが短くて、横方向に詰まっているように見えますが、実際の乗り味も見た目通りです。あらゆる動作が軽快なファイターとして、クリテリウムなどで活躍すること間違いなしでしょう。
25周年記念車ということで、パーツ類も特別なアセンブルがされているとのことですが、完成車パッケージとしてみても隙が無いですね。コックピット周りも握りやすくて操作しやすいですし、オリジナルロゴ入りのサドルも厚めのパディングで快適な座り心地ながら、しっかり形状的には踏みやすくて、良いですね。
ホイールもマヴィックのCOSMIC SLRですが、このマッチングもグッドです。クイックな性格のフレームが苦手な分野を、平坦でのスピード維持に優れるCOSMICが補ってくれているように感じます。フレームの加速性能で一気に上げた速度をホイールの巡航性能で維持するような、上手い噛み合い方をしています。
139万円という価格設定ですが、昨今の価格上昇も踏まえればかなりリーズナブルな設定だと感じました。性能面でいえば、150万円以上するような他ブランドのハイエンドモデルに勝るとも劣らないですしね。
しばらく休止していたインターマックスブランドですが、これからバイクブランドとして復活の第1作として、予想以上の完成度を誇る一台でした。続くモデルにも期待したいですね。
インターマックス 25
フレーム:東レT800カーボン、電動コンポーネント専用フレーム、25周年スペシャルペイント
重量:830g(Mサイズ・フレーム)、404g(フォーク)
コンポーネントパーツ:SHIMANNO DURA-ACE Di2
ハンドルバー:InterMax オリジナルカーボンハンドル
バーテープ:SUPACAZ
サドル:VELO SENSO ANGEL カーボンサドル InterMax仕様
シートポスト:専用カーボンシートポスト
ホイール:MAVIC COSMIC SLR 45 DISC スペシャルロゴ
タイヤ:VITTORIA CORSA N.EXT TLR 700x28C
価格:1,386,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
磯部聡(シクロワイアード編集部)
CWスタッフ歴12年、参加した海外ブランド発表会は20回超を数えるテック担当。ロードの、あるいはグラベルのダウンヒルを如何に速く、そしてスマートにこなすかを探求してやまない。
高木三千成(シクロワイアード編集部)
学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO
イタリアの名門チーム・ポルティから近代のツール・ド・フランスに日本人で初めて出場した今中大介氏。日本人が欧州で活躍する道筋をつけたレジェンドの一人だ。ロードレース中継の解説者として欧州のロードレース文化を日本国内に紹介し、メディアの機材インプレッション記事やイベントのゲストとして登場する機会も多く、国内のロードバイク文化にも大きく貢献してきた人物だ。
今中氏はプロ引退後より1年後の1998年に輸入・販売代理店のインターマックスを設立し、ヨーロッパブランドを国内のサイクリストに提案。翌年にはプロ選手の経験から得た知見をもとにオリジナルバイクの開発に着手し、インターマックスブランドとしてロードバイクを展開し、国内のサイクリストにとって馴染み深いブランドへと成長していった。
創業当時のプロスペック・アルミモデルのゼルトゲンボスや、オートクレーブ製法のカーボンフレームを日本に広めたスクアドライタリア、独創的なチュービングで注目されたコルサイタリア、チーム右京の設立当初に選手が乗っていたヴァルブレンボなど多くのバイクをラインアップしてきたものの、近年はバイクブランドとしては休止状態になっていたのは事実だ。
しかし、この1年ほど今中氏がダズル迷彩カラーのフレームに乗る姿を自身のSNSに投稿し始め、インターマックスの新型がリリースされる機運をインターマックスファンは受け取っていた。次第に新型への期待は日に日に大きくなっていった。そして、2022年のジャパンカップ・サイクルロードレースの現場で、新型バイク「インターマックス25」が満を持して発表された。
ゼルトゲンボスのような固有のモデル名を示す文字もなく、会社名に"25"という数字が振られた新型は、1998年に創業した同社が2023年で25周年を迎えること記念して、限定50台で販売されるスペシャルバイクだった。そして、このバイクを周年記念というだけではなく、これを機にインターマックスブランドが復活する狼煙でもある。
インターマックス25のフレームは、トライアスロンバイクブランドのCEEPO(シーポ)が展開するStingerというモデルがベースだ。「シーポのバイクは性能が良いことを以前から知っており、テストを続けていたStingerももちろん良いフレームということをわかった上で今回の特別バイクに採用しました」と今中氏のお墨付きを得たモデルが限定品として白羽の矢が立ったのだ。
今回のフレームは今までインターマックスが開発してきたバイクとは毛色が異なる。「これまでは競技で突き抜けるためのバイクを作っていました。その時インターマックスバイクに乗っていた方が10年経過した今乗りやすいバイク」とこのフレームをテストし続けてきた今中氏は言う。
ベースとなったシーポ Stingerは、UCI規定に囚われないトライアスロンバイクの開発で得た知見をUCIルールの枠内に収めたエアロロードだ。フレームの各部はエアロダイナミクスに配慮したインテグレートデザインが多用されており、チューブに当たった風が綺麗に後方へと流れるように設計された。チューブの断面形状も定番となったカムテールデザインだ。
また近年のエアロロードで標準スペックとなったケーブルフル内装は、シーポとFSA、トーケンとのパートナーシップで実現。FSAのSMR規格のステムに、インターマックスのロゴがあしらわれたオリジナルハンドルが今回のスペシャルバイクに組み合わせられている。もちろんこのハンドルも今中氏のライドテストでお墨付きを得たものだ。
このようにインターマックス25は、同社アニバーサリーイヤーを感じさせるパーツアセンブリも特徴だ。サドルもインターマックスロゴがあしらわれる特別品が用意され、マヴィックの通常ラインにはないCOSMIC SLR 45のグレーロゴも協力を得て実現したスペシャルな仕様だ。
タイヤはヴィットリアのCORSA N.EXT。今中氏はシマノやポルティを含めたプロ時代から現在に至るまでヴィットリアのタイヤを愛用し続けており、インターマックスでも取り扱うほど。そんな今中氏が伝統的なコットンケーシングではなく、ナイロンケーシングのN.EXTを選んだのもテストでその良さを確認したから。「路面のインフォメーションを捉えやすく、レスポンスが良い点が気に入っています」と今中氏はいう。
インターマックスの創業25周年を祝うのに相応しいスペシャルバイクをシクロワイアードの編集部員2名がテスト。今後本格的に再始動するブランドの第一弾の実力やいかに。
−インプレッション
「物の価値と走りの良さが噛み合った特別な一台」磯部聡(シクロワイアード編集部)
加速感に秀でていて、滑走感に気持ち良さを感じるバイクでした。カーボンの層が薄くて軽量感がありつつ、大口径チューブで剛性を確保しているから、フレームにしなりがあってペダリングしやすいところが、そう思わせます。例えば、同じような見た目のエアロロードはある程度の脚力がなければ楽しさを引き出しにくい剛性になっていますが、このバイクに関しては誰でも少し乗っただけでもロードバイクに乗る楽しさに気がつけると思います。
例えるなら揺り椅子。椅子が前後に揺れるかのように、BB周りがペダリングに対して自然にしなってくれるし、力をかけなくても揺れてくれるから本当に心地良さがあります。自分でも感じられるようになってきたんですけど、若い時のように踏めないと感じている40、50代の方はいると思うんですよ。完成車の価格を考えてもそういう人たちが気持ちよく、楽しくロードサイクリングを楽しみたい時にフィットする上がりの一台でもありです。
ただ一方で性能がいいからレースに出場したっていいです。しなりが際立つフレームなので、疲れてペダリングが雑になってしまったり、ペダリングが完成されていない人が乗ってもフレーム側が補正して、気持ちよく加速してくれます。マヴィックのCOSMIC SLR 45がアセンブルされているのも走りを考えてのことでしょう。フレームとホイールどちらのキャラクターも喧嘩せず、走りの面でまとまりがあって、走りの良さに一役買っています。
走行性能で付け加えたいのは、ハンドリングが直進安定性高めなこと。レーシングバイクのようにバイクを振った瞬間にバンクする自転車ではなく、一回キッカケを作った後にバンクする自転車なので、気を使わずにコーナーに進入できるのもキャラクターにマッチしていると思います。
他にもDURA-ACEのコンポーネントや、今中さんのこだわりを感じられるほど非常に細身のハンドルが装備されていることからも、積極的にライドを続ける今中さんがプロデュースした自転車ということが、アセンブリとテストした印象からも伝わってきます。
バイクの走りだけの評価ではなく、インターマックスブランドが復活するという点においても価値が高い自転車だと思います。マヴィックがこのバイクのためにスペシャルロゴのCOSMICを用意したり、25周年記念ロゴの入ったハンドルやサドルがアセンブルされていたりと、様々な関係者が25周年のために協力したところに価値を感じます。
今中さんの現役時代に憧れを持っていてインターマックスのバイクを所有していたり、そこに憧れがあった人は、一度この自転車に興味を持って良いと断言できるバイクでした。
「正直、レースで使いたくなる。高水準にまとめ上げれらたレーシングバイク」高木三千成(シクロワイアード編集部)
このバイク、すごく良いですね。とてもキビキビ走るバイクで、加速感が心地いい一台です。ゼロ発進で踏み出した瞬間から前に出る感覚があって、これは期待できそうだなと思いながら走りだしたのですが、非常に高レベルにまとまったレーシングバイクでした。
どこかで力が逃げているような、モサッとした感覚は一切ありません。あえて重めのギアを掛けていっても、フレームがググッと力を受け止めてから「パンッ」と前に出るような気持ちいい加速感が味わえます。
低速から高速まで、どんな速度域でも意のままに加速できるようなバイクですね。しかし、ガチガチの高剛性バイクというわけではなくて、どちらかと言えばしならせて進んでいくのが気持ちよさに繋がるような印象です。でも、登りで軽いギアを使ってクルクル回していくのも素直に進んでくれるので、どんなスピード、ペダリングにも対応してくれる懐の深さも感じました。
レーシーさ、という意味ではハンドリングはクイックな部類です。集団で位置取りをしつつ隙間を縫って前へ上がっていくようなシーンでは使いやすいでしょう。ダウンヒルでも、カミソリのような切れ味鋭いコーナーが楽しめると思います。テストバイクでは、ハンドルポジションが高かったので少し攻めきれない部分もありましたが、しっかりポジションを合わせてスペーサーを抜いたセッティングにすれば、もっと下りも楽しめそうです。
このクイックさは登りのダンシングでもよい方向に影響していますね。バイクのリズムが軽快で、クイクイっと登っていけます。スプリントの際にライン変更もしやすいでしょうし、正直レースで使ってみたくなりました。
トライアスロンで有名なシーポのバイクがベースという前情報も伺っていたので、どちらかといえば直進安定性が強めのどっしりとした乗り味を想像していたのですが、いい意味で裏切られましたね。
見た目にもリアセンターやホイールベースが短くて、横方向に詰まっているように見えますが、実際の乗り味も見た目通りです。あらゆる動作が軽快なファイターとして、クリテリウムなどで活躍すること間違いなしでしょう。
25周年記念車ということで、パーツ類も特別なアセンブルがされているとのことですが、完成車パッケージとしてみても隙が無いですね。コックピット周りも握りやすくて操作しやすいですし、オリジナルロゴ入りのサドルも厚めのパディングで快適な座り心地ながら、しっかり形状的には踏みやすくて、良いですね。
ホイールもマヴィックのCOSMIC SLRですが、このマッチングもグッドです。クイックな性格のフレームが苦手な分野を、平坦でのスピード維持に優れるCOSMICが補ってくれているように感じます。フレームの加速性能で一気に上げた速度をホイールの巡航性能で維持するような、上手い噛み合い方をしています。
139万円という価格設定ですが、昨今の価格上昇も踏まえればかなりリーズナブルな設定だと感じました。性能面でいえば、150万円以上するような他ブランドのハイエンドモデルに勝るとも劣らないですしね。
しばらく休止していたインターマックスブランドですが、これからバイクブランドとして復活の第1作として、予想以上の完成度を誇る一台でした。続くモデルにも期待したいですね。
インターマックス 25
フレーム:東レT800カーボン、電動コンポーネント専用フレーム、25周年スペシャルペイント
重量:830g(Mサイズ・フレーム)、404g(フォーク)
コンポーネントパーツ:SHIMANNO DURA-ACE Di2
ハンドルバー:InterMax オリジナルカーボンハンドル
バーテープ:SUPACAZ
サドル:VELO SENSO ANGEL カーボンサドル InterMax仕様
シートポスト:専用カーボンシートポスト
ホイール:MAVIC COSMIC SLR 45 DISC スペシャルロゴ
タイヤ:VITTORIA CORSA N.EXT TLR 700x28C
価格:1,386,000円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
磯部聡(シクロワイアード編集部)
CWスタッフ歴12年、参加した海外ブランド発表会は20回超を数えるテック担当。ロードの、あるいはグラベルのダウンヒルを如何に速く、そしてスマートにこなすかを探求してやまない。
高木三千成(シクロワイアード編集部)
学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO
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