2010年7月18日、ツール・ド・フランス第14ステージがピレネー山脈の本格山岳コースで行なわれ、逃げグループから飛び出したクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)が独走勝利を飾った。総合争いも加熱し、コンタドールが果敢にアタック。しかしアンディは安定した走りで総合リードを守った。

コース脇には広大なヒマワリ畑が広がるコース脇には広大なヒマワリ畑が広がる photo:Cor Vosツール・ド・フランスに山岳ステージが設定されて今年で100年目。レース主催者はその記念として、当時初登場したピレネー山脈を2010年大会の最終決戦地に位置づけた。

第14ステージから始まるピレネー4連戦はいずれも超級山岳が登場する難易度の高いもの。この4日間でマイヨジョーヌ争いはほぼ決着を迎える。ピレネー初日の第14ステージには超級山岳パイエール峠が登場。そして1級山岳アクス・トロワ・ドメーヌの頂上1km先にゴールが設定された今大会2回目の頂上ゴールだ。

先頭グループを形成するユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)ら9名先頭グループを形成するユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)ら9名 photo:Cor Vos前日より気温、湿度ともに下がったこの日、レースは序盤からアタックの応酬が繰り広げられた。先ずは12名の選手たちが飛び出し、ここから更に4名が先行。後方から5名が合流すると、23km地点で9名の逃げグループが形成された。

ステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)やデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、ピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)と言った強者揃いのこの逃げは、ゴールまで100kmを残して10分のアドバンテージ。しかしアスタナの積極的な集団牽引により、レース後半にかけて逃げのリードは縮小の一途をたどった。

ピレネー山脈が近づき、岩を切り縫いたトンネルも登場ピレネー山脈が近づき、岩を切り縫いたトンネルも登場 photo:Cor Vosゴール29km手前に頂上が設定された超級山岳パイエール峠は登坂距離15.5km・平均勾配7.9%。

メイン集団から4分のリードをもってこの難関山岳に突入した逃げグループは、クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)、ユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)、アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)の3名に。やがて頂上が近づくと総合成績トップ(総合33位・24分37秒遅れ)のリブロンが独走を開始した。

超級山岳パイエール峠でメイン集団のペースを上げるダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ)超級山岳パイエール峠でメイン集団のペースを上げるダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos一方のメイン集団ではカウンターアタックが頻発化し、総合ですでに8分以上遅れていたカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)やラファエル・バルス(スペイン、フットオン・セルヴェット)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)が飛び出した。

超級山岳パイエール峠を先頭で上り切ったリブロンから1分50秒遅れでサストレとバルス。2分30秒遅れでメイン集団という展開。メイン集団からはランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)や山岳賞2位のジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)が早々に脱落した。

独走で1級山岳アクス・トロワ・ドメーヌを駆け上がるクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)独走で1級山岳アクス・トロワ・ドメーヌを駆け上がるクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル) photo:Cor Vosマイヨアポワを着るアントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)はパイエール峠を7番手で通過し、8ポイント加算して山岳賞のリードを広げることに成功している。

先頭リブロンはパイエール峠のテクニカルなダウンヒルにも怯むことなく挑み、独走のまま1級山岳アクス・トロワ・ドメーヌに突入。登坂距離7.8km・平均勾配8.2%という上りに対峙した。

ペースを上げるアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)をアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がマークペースを上げるアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)をアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がマーク photo:Cor Vosこのアクス・トロワ・ドメーヌで積極的にメイン集団を率いたのは前日のステージ優勝者アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)。ハイペースで上りを進むメイン集団は、それまで先行していたサストレやバルス、クネゴを飲み込み、人数を減らしながら頂上を目指した。

口火を切ったのは総合2位のアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)。当然マイヨジョーヌのアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)はこの動きを見逃さず、ダンシングで加速を続けるコンタドールに食らいつく。アンディが追従する姿を確認したコンタドールがペースを弱め、他のライバルたちも合流するという展開。

互いに牽制してペースを落とすアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)互いに牽制してペースを落とすアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vosこの日、アンディは自ら動くことなく、何度もアタックを仕掛けるコンタドールのマークに徹した。牽制しながら走る総合上位2名はペースが上がらず、その隙を突いて総合3位のサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)と総合4位デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)がアタックを成功させた。

先頭のリブロンが最後までペースを崩さず走り切り、後続を約1分引き離したままゴール。嬉しいステージ初優勝に喜びを爆発させた。

1級山岳アクス・トロワ・ドメーヌで飛び出したデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)1級山岳アクス・トロワ・ドメーヌで飛び出したデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) photo:Cor Vosメンショフとサンチェスは54秒遅れ、そしてマイヨジョーヌを含むメイングループは1分08秒遅れでゴールした。総合成績は大きく動かず、総合3位と総合4位が14秒タイム差を詰め、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)やブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が更にタイムを失う結果に。

優勝したリブロンは本来個人タイムトライアルを得意とするスピードマンだ。トラック競技にも精通しており、2008年のトラック世界選手権のポイントレースで銀メダル獲得。今年トラック世界選手権のマディソンで再び銀メダルを獲得している。近年は山岳力も強化しており、前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは総合7位に入った。

独走でゴールに飛び込むクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)独走でゴールに飛び込むクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル) photo:Cor Vos「これまでのステージの結果に落胆していた。特にここ2日間は調子が上がらず凹んでいたんだ。でも3週目で調子の波が来ることを監督に言われて、逃げに乗ってみることにした。監督たちに励まされて手にした勝利のようなもの。終盤はただ『勝つんだ』と自分に言い聞かせながら走った。ラスト1kmを切るまでステージ優勝の確証は得られなかった(レース公式サイトより)」

今大会のフランス人ステージ優勝者は4人目。14年連続出場のアージェードゥーゼルにとってはステージ通算11勝目だ。直近の勝利は2008年のシリル・デッセル(フランス)。

27分10秒遅れでゴールに向かうトマ・ヴォクレール(フランス)と新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)27分10秒遅れでゴールに向かうトマ・ヴォクレール(フランス)と新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano多くのスプリンターたちが37分近く遅れる中、この日もチームの活躍に尽くした新城幸也は、チームリーダーのトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)をエスコートして27分10秒遅れでゴールした。ユキヤの2年連続ツール完走の前に立ちはだかる難関山岳は残り3つだ。

フランス人の活躍でスタートしたピレネー山岳シリーズ。翌日の第15ステージはゴール手前に超級山岳バレ峠が設定されている。下りでタイム差がつく可能性有りの難関山岳ステージだ。


ツール・ド・フランス2010第14ステージ結果
1位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)   4h52'42"
2位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)            +54"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
4位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)      +1'08"
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)           +1'49"
10位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)
11位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)   +1'53"
13位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
21位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
22位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)
28位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)         +3'03"
36位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)       +4'59"
37位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +5'39"
103位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)           +27'10"

第14ステージ敢闘賞
クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)     68h02'30"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)          +31"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)        +2'31"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)            +2'44"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+3'31"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)          +4'27"
7位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)    +4'51"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)         +4'58"
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)     +5'56"
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)            +6'52"
11位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)     +7'04"
12位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)          +7'11"
15位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)    +8'15"
18位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)       +11'30"
19位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)  +12'39"
98位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)            +1h48'08"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)        187pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)  185pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)162pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム) 115pts
2位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)     92pts
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)    76pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク  )   68h02'30"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)         +4'27"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)         +7'11"

チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ  204h16'00"
2位 レディオシャック     +08"
3位 ラボバンク       +17'13"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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