2022/11/13(日) - 21:55
UCIレースとなった野辺山2日目の男女エリートは共に前日勝者が独走。小川咲絵(AX cyclocross team)がドライレースを、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が雨の泥レースを制した。
UCI女子エリート:小川咲絵が2日連続勝利
シクロクロッサーにテクニックとパワーを問う野辺山、滝沢牧場の2.7kmコースで、大会2日目のUCI男女エリートレースが幕開ける。世界選手権を目指す選手にとってはUCIポイントを狙う重要な機会であり、全日本に向けたコンディションアップや、全日本参戦のためのポイント確保、そして「野辺山エリート完走」を目指す選手など、さまざまな思惑が交錯する。午後からは雨予報だったものの、女子レースは最後を除いてドライコンディションが保たれた。
14名の女子エリート選手が号砲と共に飛び出した。先頭を第1コーナーで抜け出したのは前日ウィナーの小川咲絵(AX cyclocross team)だったが、「昨日はスタートで出遅れて取り戻せなかったので、序盤から突っ込みたかった」と言う大蔵こころ(早稲田大学) が先頭を奪う。「今日はタイム差というよりも確実に勝って(世界選手権を目指す上で大切な)UCIポイントを取る」と振り返る小川はその背後で様子を窺った。
前日の1位と4位が先頭パックを作り、スタートで出遅れた與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)と石田唯(早稲田大学)がその後ろに続く。しかし2周目突入を待たず、登坂区間では有利と気づいていたと言う小川が抜け出し、早くも独走態勢に持ち込むことに成功。3番手グループでも「なぜか身体が動いてくれなかった」と悔やむ石田が與那嶺から遅れを喫した。
日本人唯一の女子ワールドツアー選手として活動し、来季は早めのシーズンインを予定している與那嶺は、やがて大蔵を追い抜き単独2番手に浮上する。「咲絵ちゃんは速いし、こころちゃんも全然ミスしないので平坦で踏むしかない。かなり本気でした」と振り返る。先頭小川、2番手與那嶺、そして3番手大蔵。こうして表彰台メンバーが選りすぐられていった。
降車を強いられるシケインやキャニオン(溝越え)、滑りやすいコーナーも危なげなくこなした小川が、2日連続の勝利を掴み取った。「こころちゃんが積極的に攻めたので焦ったけれど、良いレースができてすごく楽しかった」。特大カウベルを受け取った表彰台では「出場全レース優勝」という言葉も飛び出した。
「若い子たちが積極的だったので私もガチンコでやらないといけない。こういうレースをみんなが継続すればすごく良い」と2日連続2位に入った與那嶺は語る。「過去のシクロクロス参戦の中で一番身体が軽いので踏めないですね。来季は登りの(ロード)レースで私自身が成績を狙うことになるので楽しみ」とも。
前日取りこぼした表彰台を射止めた大蔵は表彰式後のインタビューで笑顔を見せた。「與那嶺さんに引き離されたので悔しいけれど、積極的に良い走りができました。今年は学連のレースで優勝できてないのでCX、ロード、トラックも並行して取り組んでいきたい」と話している。
UCI男子エリート:雨の難コンディションで織田聖が2連勝
「天気予報は当たるものですね」と、会場MCはマイクを通してつぶやいた。
2日間のRapha+弱虫ペダル スーパークロス野辺山を締めくくるUCI男子エリートが始まる14時半、滝沢牧場には雨粒が降り注いでいた。序盤こそあまり影響ない程度だったが、時を追うごとに雨脚は強まり、レース中盤には一気に泥コンディションへと変貌を遂げた。しかも緩く深い泥ではなく「カチパン」に締まった路面の表層だけが緩むという、最も滑りやすい状況だ。
つまりは、状況変化を見越した準備と対応力が求められるレースコンディション。そんな状況下で、序盤積極的に攻めたのは前日4位の鈴木来人だった。
しかし1周目の舗装登坂では「来人がペースを上げてくれたのは自分には良かった。なぜなら、その状態から飛び出せば後ろもキツいはずですから」と振り返る織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)がチームメイトの中島渉を引き連れて先頭に立つ。キャニオンで降車を選んだ鈴木は後ろに下がり、3番手に小坂光(宇都宮ブリッツェン)と加藤健悟(臼杵レーシング)。その後ろに鈴木、堀川滉太(NEBcycling)、そして竹之内悠という面々が続いた。
いよいよ本降りとなる中、トップ勢はバイク交換を行ってスリッピーな路面に対応していく。早くも独走態勢に持ち込んだ織田はノーマルタイヤのまま空気圧を0.1落とし、小坂はパンクリスクを嫌って空気圧高めのマッドタイヤに、そして欧州経験豊富な竹之内は空気圧を落としたマッドタイヤに変更したという。
力強い走りで織田が独走に持ち込み、中島・小坂・加藤の2番手パックでは中島の落車で加藤も停止。復帰に手間取る2人を尻目に小坂が単独2番手となり、鈴木と竹之内がその後ろ。先頭の織田も数度のスリップダウンでジャージを汚したものの、メカトラブルには見舞われずハイペースを維持し続けた。
落車が頻発する完全ウェットコンディションで、観客をどよめかせたのは竹之内だった。「まだレース強度に耐える練習をしていない」と言いつつ、水を得た魚のように泥コースを1人飛ばし、「空気圧が高すぎた」と悔やむ小坂を捉えて突き放す。そのペースアップは当然織田の耳にも入っており「(自分が有利な)舗装路の登り区間がなければ悠さんに食われて負けていた」と言わしめた。
ぐいぐい迫る竹之内を振り切って、シケインと溝越えも全て乗車で飛び切った織田がフィニッシュまで逃げ切った。連覇を達成した織田だが、「悠さんや光さんは経験値が豊富だからタイヤのマネジメントがうまい。そう言う部分を伸ばしていかないと」と気を引き締める。表彰台ではこの日一番大きなカウベルを2日連続で受け取った。
竹之内が2位に入り、前日2位の小坂が3位フィニッシュ。織田が頭一つ抜け出したフィジカルを再び見せつけたが、「少しずつ差を縮められている」と言う小坂と、引き出しの多さを見せつけた竹之内もまた存在感を強めている。
このレースでは67名が出走し、フルラップ完走は22名。国内シクロクロスカレンダーは次週UCI関西琵琶湖、11月26日-27日に全日本選手権と同じワイルドネイチャープラザ(愛知県稲沢市)で開催されるJCFシリーズ第3戦と重要レースが続いていく。
UCI女子エリート:小川咲絵が2日連続勝利
シクロクロッサーにテクニックとパワーを問う野辺山、滝沢牧場の2.7kmコースで、大会2日目のUCI男女エリートレースが幕開ける。世界選手権を目指す選手にとってはUCIポイントを狙う重要な機会であり、全日本に向けたコンディションアップや、全日本参戦のためのポイント確保、そして「野辺山エリート完走」を目指す選手など、さまざまな思惑が交錯する。午後からは雨予報だったものの、女子レースは最後を除いてドライコンディションが保たれた。
14名の女子エリート選手が号砲と共に飛び出した。先頭を第1コーナーで抜け出したのは前日ウィナーの小川咲絵(AX cyclocross team)だったが、「昨日はスタートで出遅れて取り戻せなかったので、序盤から突っ込みたかった」と言う大蔵こころ(早稲田大学) が先頭を奪う。「今日はタイム差というよりも確実に勝って(世界選手権を目指す上で大切な)UCIポイントを取る」と振り返る小川はその背後で様子を窺った。
前日の1位と4位が先頭パックを作り、スタートで出遅れた與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)と石田唯(早稲田大学)がその後ろに続く。しかし2周目突入を待たず、登坂区間では有利と気づいていたと言う小川が抜け出し、早くも独走態勢に持ち込むことに成功。3番手グループでも「なぜか身体が動いてくれなかった」と悔やむ石田が與那嶺から遅れを喫した。
日本人唯一の女子ワールドツアー選手として活動し、来季は早めのシーズンインを予定している與那嶺は、やがて大蔵を追い抜き単独2番手に浮上する。「咲絵ちゃんは速いし、こころちゃんも全然ミスしないので平坦で踏むしかない。かなり本気でした」と振り返る。先頭小川、2番手與那嶺、そして3番手大蔵。こうして表彰台メンバーが選りすぐられていった。
降車を強いられるシケインやキャニオン(溝越え)、滑りやすいコーナーも危なげなくこなした小川が、2日連続の勝利を掴み取った。「こころちゃんが積極的に攻めたので焦ったけれど、良いレースができてすごく楽しかった」。特大カウベルを受け取った表彰台では「出場全レース優勝」という言葉も飛び出した。
「若い子たちが積極的だったので私もガチンコでやらないといけない。こういうレースをみんなが継続すればすごく良い」と2日連続2位に入った與那嶺は語る。「過去のシクロクロス参戦の中で一番身体が軽いので踏めないですね。来季は登りの(ロード)レースで私自身が成績を狙うことになるので楽しみ」とも。
前日取りこぼした表彰台を射止めた大蔵は表彰式後のインタビューで笑顔を見せた。「與那嶺さんに引き離されたので悔しいけれど、積極的に良い走りができました。今年は学連のレースで優勝できてないのでCX、ロード、トラックも並行して取り組んでいきたい」と話している。
UCI男子エリート:雨の難コンディションで織田聖が2連勝
「天気予報は当たるものですね」と、会場MCはマイクを通してつぶやいた。
2日間のRapha+弱虫ペダル スーパークロス野辺山を締めくくるUCI男子エリートが始まる14時半、滝沢牧場には雨粒が降り注いでいた。序盤こそあまり影響ない程度だったが、時を追うごとに雨脚は強まり、レース中盤には一気に泥コンディションへと変貌を遂げた。しかも緩く深い泥ではなく「カチパン」に締まった路面の表層だけが緩むという、最も滑りやすい状況だ。
つまりは、状況変化を見越した準備と対応力が求められるレースコンディション。そんな状況下で、序盤積極的に攻めたのは前日4位の鈴木来人だった。
しかし1周目の舗装登坂では「来人がペースを上げてくれたのは自分には良かった。なぜなら、その状態から飛び出せば後ろもキツいはずですから」と振り返る織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)がチームメイトの中島渉を引き連れて先頭に立つ。キャニオンで降車を選んだ鈴木は後ろに下がり、3番手に小坂光(宇都宮ブリッツェン)と加藤健悟(臼杵レーシング)。その後ろに鈴木、堀川滉太(NEBcycling)、そして竹之内悠という面々が続いた。
いよいよ本降りとなる中、トップ勢はバイク交換を行ってスリッピーな路面に対応していく。早くも独走態勢に持ち込んだ織田はノーマルタイヤのまま空気圧を0.1落とし、小坂はパンクリスクを嫌って空気圧高めのマッドタイヤに、そして欧州経験豊富な竹之内は空気圧を落としたマッドタイヤに変更したという。
力強い走りで織田が独走に持ち込み、中島・小坂・加藤の2番手パックでは中島の落車で加藤も停止。復帰に手間取る2人を尻目に小坂が単独2番手となり、鈴木と竹之内がその後ろ。先頭の織田も数度のスリップダウンでジャージを汚したものの、メカトラブルには見舞われずハイペースを維持し続けた。
落車が頻発する完全ウェットコンディションで、観客をどよめかせたのは竹之内だった。「まだレース強度に耐える練習をしていない」と言いつつ、水を得た魚のように泥コースを1人飛ばし、「空気圧が高すぎた」と悔やむ小坂を捉えて突き放す。そのペースアップは当然織田の耳にも入っており「(自分が有利な)舗装路の登り区間がなければ悠さんに食われて負けていた」と言わしめた。
ぐいぐい迫る竹之内を振り切って、シケインと溝越えも全て乗車で飛び切った織田がフィニッシュまで逃げ切った。連覇を達成した織田だが、「悠さんや光さんは経験値が豊富だからタイヤのマネジメントがうまい。そう言う部分を伸ばしていかないと」と気を引き締める。表彰台ではこの日一番大きなカウベルを2日連続で受け取った。
竹之内が2位に入り、前日2位の小坂が3位フィニッシュ。織田が頭一つ抜け出したフィジカルを再び見せつけたが、「少しずつ差を縮められている」と言う小坂と、引き出しの多さを見せつけた竹之内もまた存在感を強めている。
このレースでは67名が出走し、フルラップ完走は22名。国内シクロクロスカレンダーは次週UCI関西琵琶湖、11月26日-27日に全日本選手権と同じワイルドネイチャープラザ(愛知県稲沢市)で開催されるJCFシリーズ第3戦と重要レースが続いていく。
Rapha+弱虫ペダル スーパークロス野辺山2022 UCI男子エリート結果
1位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 1:07:42 |
2位 | 竹之内悠 | +0:25 |
3位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェン) | +0:45 |
4位 | 鈴木来人 | +1:40 |
5位 | 積田連(SNEL CYCLOCROSS TEAM) | +2:32 |
6位 | 加藤健悟(臼杵レーシング) | +3:00 |
7位 | アレクサンダー・ジェームス(SNEL CYCLOCROSS TEAM) | +3:07 |
8位 | 丸山厚(BOMA/ROND CX TEAM) | +3:31 |
9位 | 中島渉(弱虫ペダルサイクリングチーム) | +3:52 |
10位 | 島田真琴(ペダル) | +4:28 |
Rapha+弱虫ペダル スーパークロス野辺山2022 UCI女子エリート結果
1位 | 小川咲絵(AX cyclocross team) | 47:58 |
2位 | 與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス) | +1:21 |
3位 | 大蔵こころ(早稲田大学) | +1:32 |
4位 | 石田唯(早稲田大学) | +3:28 |
5位 | 川崎路子(PAXPROJECT) | +4:59 |
6位 | 西形舞(TRC PANAMA REDS) | +5:07 |
7位 | 鵜飼知春(and more) | +5:12 |
8位 | 須藤むつみ(Ready Go JAPAN) | |
9位 | 安藤沙弥(SHIDO-WORKS) | +6:43 |
10位 | 小田恵利花(PAXPROJECT) | -2Lap |
text:So.Isobe
photo:Kei Tsuji/Rapha+弱虫ペダル Super Cross Nobeyama
photo:Kei Tsuji/Rapha+弱虫ペダル Super Cross Nobeyama
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