2010/07/15(木) - 09:34
2010年7月14日、ツール・ド・フランス第10ステージが行なわれ、逃げグループ内での闘いを制したセルジオ・パウリーニョ(ポルトガル、レディオシャック)がツールのステージ初優勝を飾った。新城幸也(Bboxブイグテレコム)は序盤のアタック合戦に加わったが、決定的な逃げには乗れなかった。
実質的なアルプス最終日の第10ステージ。選手たちはシャンブリからギャップまで179kmかけて南下する。後半にかけて1級、3級、2級と山岳が連続するが、「中級山岳ステージ」に分類されているだけに難易度は高くない。
気温35度を超える暑さの中、第10ステージはトニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア)のファーストアタックで幕開けた。アタックと吸収を延々と繰り返すハイスピードな状態がしばらく続き、ユキヤの姿もこの中に。
32km地点でマリオ・アールツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、ドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップ)、ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)、セルジオ・パウリーニョ(ポルトガル、レディオシャック)の4名が抜け出すことに成功。すぐさま1分のリードを築いた。
フランス革命記念日にフランス人選手どころかフランスチーム所属選手が逃げに乗っていない危機的状況。フランスチームは攻撃の手を弱めずアタックを続行した。
ユキヤらが再びアタックを仕掛けて追走グループを形成。しかしユキヤの動きは潰され、カウンターで飛び出したピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)とマキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)の2人が先行。ロランとブエが67km地点で先頭グループに合流すると、ようやくレースは落ち着きを取り戻した。
総合争いにおける危険な選手が逃げていないとして、サクソバンクがコントロールするメイン集団はペースダウン。結局メイン集団は最後まで逃げ吸収に興味を示さなかった。
この日最初の1級山岳ラフレイはアールツが先頭通過。1級山岳では8番手通過の選手までポイントが与えられるため、集団先頭の2番手までポイントが与えられる。ここでマイヨアポワ争いが加熱した。
第9ステージで71ポイントを荒稼ぎしたアントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)は、同ポイントでジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)と並んで山岳賞トップに。しかしマイヨアポワを奪われた立場のピノーは、この1級山岳ラフレイでシャルトーを破って7番手通過を果たす。ピノーは一日でマイヨアポワを奪い返すことに成功した。
逃げグループとメイン集団のタイム差は、ラスト100km地点で9分、ラスト60km地点で11分、ラスト30km地点で11分30秒。ゴールまで20kmを切ると、逃げ切りが確定的となった6名の逃げグループの中でのアタック合戦が始まった。
アールツやデヴェナインスのアタックにフランス勢が脱落し、やがてパウリーニョとキリエンカの2人が先行。後続を1分引き離したこのポルトガルとベラルーシのコンビは、協力しながらラスト1kmのアーチを駆け抜けた。
互いを警戒する牽制状態に入った2人は、ラスト200mを切ってからスプリント開始。付き位置をキープしたパウリーニョが先に仕掛けると一気に先頭へ。キリエンカの追い上げは僅かに届かず、パウリーニョがおしゃぶりをくわえるポーズでゴールに飛び込んだ。
2004年のアテネ五輪ロードレースで銀メダルを獲得したパウリーニョは、これがツールのステージ初優勝。ブエルタ・ア・エスパーニャでは2006年にステージ優勝を達成している。
所属するレディオシャックはランス・アームストロング(アメリカ)の総合成績を第一目標にこのツールに挑んでいたが、肝心のアームストロングが第8ステージで失速。チームとして、ステージ優勝狙いに目標をスイッチしていた。
「際どいスプリントだったけど、これは自分にとってもチームにとっても重要な勝利。まだまだチームにはステージ優勝のチャンスがある。同時にチーム総合成績も視野に入れている。これはアテネ五輪の銀メダルよりも価値のある勝利だよ(レース公式サイト)」
最終的に14分以上遅れたメイン集団はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)を先頭にゴール。ステージ11位のトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)がマイヨヴェールを守った。
ラスト10km地点でアタックを仕掛けたニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)は、メイン集団を1分21秒引き離してゴールし、総合17位から13位に浮上。それ以外の総合順位には大きな動きが見られず、初めてマイヨジョーヌを着て走ったアンディが総合首位の座をキープした。
アルプス山脈を抜けたツールは、難易度の低い数ステージを経てピレネー山脈に突入する。翌第11ステージは平坦なコースレイアウトであり、再びスプリンターにチャンスが回ってくる。いよいよツールも後半戦に突入だ。
ツール・ド・フランス2010第10ステージ結果
1位 セルジオ・パウリーニョ(ポルトガル、レディオシャック) 5h10'56"
2位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)
3位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップ) +1'29"
4位 ピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)
5位 マリオ・アールツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +1'33"
6位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル) +3'20"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +12'58"
8位 レミ・ポリオル(フランス、コフィディス) +13'57"
9位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) +14'19"
10位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
111位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
第10ステージ敢闘賞
マリオ・アールツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 49h00'56"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) +41"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +2'45"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +2'58"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +3'31"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +3'59"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +4'22"
8位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ) +4'41"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +5'08"
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +5'09"
11位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +5'11"
13位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +6'31"
15位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +7'13"
16位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +7'18"
18位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +7'47"
107位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1h16'51"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)138pts
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ) 131pts
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ) 116pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ) 91pts
2位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム) 90pts
3位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ) 62pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 49h00'56"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +4'22"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +5'11"
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 147h07'02"
2位 レディオシャック +31"
3位 アスタナ +14'54"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
実質的なアルプス最終日の第10ステージ。選手たちはシャンブリからギャップまで179kmかけて南下する。後半にかけて1級、3級、2級と山岳が連続するが、「中級山岳ステージ」に分類されているだけに難易度は高くない。
気温35度を超える暑さの中、第10ステージはトニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア)のファーストアタックで幕開けた。アタックと吸収を延々と繰り返すハイスピードな状態がしばらく続き、ユキヤの姿もこの中に。
32km地点でマリオ・アールツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、ドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップ)、ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)、セルジオ・パウリーニョ(ポルトガル、レディオシャック)の4名が抜け出すことに成功。すぐさま1分のリードを築いた。
フランス革命記念日にフランス人選手どころかフランスチーム所属選手が逃げに乗っていない危機的状況。フランスチームは攻撃の手を弱めずアタックを続行した。
ユキヤらが再びアタックを仕掛けて追走グループを形成。しかしユキヤの動きは潰され、カウンターで飛び出したピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)とマキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)の2人が先行。ロランとブエが67km地点で先頭グループに合流すると、ようやくレースは落ち着きを取り戻した。
総合争いにおける危険な選手が逃げていないとして、サクソバンクがコントロールするメイン集団はペースダウン。結局メイン集団は最後まで逃げ吸収に興味を示さなかった。
この日最初の1級山岳ラフレイはアールツが先頭通過。1級山岳では8番手通過の選手までポイントが与えられるため、集団先頭の2番手までポイントが与えられる。ここでマイヨアポワ争いが加熱した。
第9ステージで71ポイントを荒稼ぎしたアントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)は、同ポイントでジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)と並んで山岳賞トップに。しかしマイヨアポワを奪われた立場のピノーは、この1級山岳ラフレイでシャルトーを破って7番手通過を果たす。ピノーは一日でマイヨアポワを奪い返すことに成功した。
逃げグループとメイン集団のタイム差は、ラスト100km地点で9分、ラスト60km地点で11分、ラスト30km地点で11分30秒。ゴールまで20kmを切ると、逃げ切りが確定的となった6名の逃げグループの中でのアタック合戦が始まった。
アールツやデヴェナインスのアタックにフランス勢が脱落し、やがてパウリーニョとキリエンカの2人が先行。後続を1分引き離したこのポルトガルとベラルーシのコンビは、協力しながらラスト1kmのアーチを駆け抜けた。
互いを警戒する牽制状態に入った2人は、ラスト200mを切ってからスプリント開始。付き位置をキープしたパウリーニョが先に仕掛けると一気に先頭へ。キリエンカの追い上げは僅かに届かず、パウリーニョがおしゃぶりをくわえるポーズでゴールに飛び込んだ。
2004年のアテネ五輪ロードレースで銀メダルを獲得したパウリーニョは、これがツールのステージ初優勝。ブエルタ・ア・エスパーニャでは2006年にステージ優勝を達成している。
所属するレディオシャックはランス・アームストロング(アメリカ)の総合成績を第一目標にこのツールに挑んでいたが、肝心のアームストロングが第8ステージで失速。チームとして、ステージ優勝狙いに目標をスイッチしていた。
「際どいスプリントだったけど、これは自分にとってもチームにとっても重要な勝利。まだまだチームにはステージ優勝のチャンスがある。同時にチーム総合成績も視野に入れている。これはアテネ五輪の銀メダルよりも価値のある勝利だよ(レース公式サイト)」
最終的に14分以上遅れたメイン集団はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)を先頭にゴール。ステージ11位のトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)がマイヨヴェールを守った。
ラスト10km地点でアタックを仕掛けたニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)は、メイン集団を1分21秒引き離してゴールし、総合17位から13位に浮上。それ以外の総合順位には大きな動きが見られず、初めてマイヨジョーヌを着て走ったアンディが総合首位の座をキープした。
アルプス山脈を抜けたツールは、難易度の低い数ステージを経てピレネー山脈に突入する。翌第11ステージは平坦なコースレイアウトであり、再びスプリンターにチャンスが回ってくる。いよいよツールも後半戦に突入だ。
ツール・ド・フランス2010第10ステージ結果
1位 セルジオ・パウリーニョ(ポルトガル、レディオシャック) 5h10'56"
2位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)
3位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップ) +1'29"
4位 ピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)
5位 マリオ・アールツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +1'33"
6位 マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル) +3'20"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +12'58"
8位 レミ・ポリオル(フランス、コフィディス) +13'57"
9位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) +14'19"
10位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
111位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
第10ステージ敢闘賞
マリオ・アールツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 49h00'56"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) +41"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +2'45"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +2'58"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +3'31"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +3'59"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +4'22"
8位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ) +4'41"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +5'08"
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +5'09"
11位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +5'11"
13位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +6'31"
15位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +7'13"
16位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +7'18"
18位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +7'47"
107位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +1h16'51"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)138pts
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ) 131pts
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ) 116pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ) 91pts
2位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム) 90pts
3位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ) 62pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 49h00'56"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +4'22"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +5'11"
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 147h07'02"
2位 レディオシャック +31"
3位 アスタナ +14'54"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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