本日7月1日、第109回ツール・ド・フランスがデンマークのコペンハーゲンで開幕する。13kmの個人タイムトライアルで始まる同国での3日間を経て、フランス北部を舞台とした石畳ステージ、本格山岳フィニッシュが登場する大会第1週目のコースを紹介します。



チームプレゼンテーションに臨むUAEチームエミレーツと昨年覇者のタデイ・ポガチャル(スロベニア)チームプレゼンテーションに臨むUAEチームエミレーツと昨年覇者のタデイ・ポガチャル(スロベニア) photo:CorVos
フランスの北東に位置する北欧の国デンマーク、その首都コペンハーゲンで第109回ツール・ド・フランスが開幕する。13kmの個人タイムトライアルでグランデパールを迎える今大会は、2日連続の平坦ステージを経てフランス北部の街ダンケルクから東側を沿ってスペインとの国境近くまで南下。そして今年もパリのシャンゼリゼにて幕を下ろす。

総距離3,349.8kmの21日の行程には平坦ステージが6、丘陵ステージが7、山岳ステージが6(うち山岳フィニッシュは5)、そして2つの個人タイムトライアル(13km+40km)が登場する。第1週目のハイライトととなるのは合計11箇所(総距離19.4km)の石畳区間が登場する第5ステージや、1級山岳フィニッシュの第7ステージだろう。そして休息日明けの第2週目は第10、11、12ステージと3連続の山岳フィニッシュで幕を開ける。特に第11、12ステージは超級山岳が設定されているため総合争いが動くのは間違いないだろう。

そしてアルプスからピレネーに舞台を移す第3週も、3日連続の山岳ステージでスタート。第19ステージの大会最後の平坦ステージをはさみ、翌日の第20ステージは今大会2度目の個人タイムトライアル(40.7km)。そしてツールは47年連続でパリ・シャンゼリゼにて千秋楽を迎える。



7月1日(金)第1ステージ
コペンハーゲン〜コペンハーゲン 13.2km(個人タイムトライアル)


7月1日(金)第1ステージ コペンハーゲン〜コペンハーゲン 13.2km7月1日(金)第1ステージ コペンハーゲン〜コペンハーゲン 13.2km image:A.S.O.1903年から続くツール・ド・フランスの歴史でフランス国外で「グランデパール(開幕)」を迎える、記念すべき10ヶ国目がデンマーク。その首都コペンハーゲンが開幕地として選ばれた。

記念すべき初日に行われるのは13.2kmの個人タイムトライアル。現地時間の午後4時(日本時間の午後11時)に最初の選手がスタートを切ると、1分間隔で合計176名の選手が順に飛び出していく。エルステッド公園を出発する選手たちは20ヶ所を越えるコーナーを抜け、セント・ヤコブ教会の前に設定された中間計測地点(6.6km)を通過。ランゲブロ橋やランゲルニエ埠頭「人魚姫の像」、アマリエンボー宮殿などコペンハーゲンが誇る観光名所を巡る。

左にチポリ公園、右にアンデルセン像の間に引かれたフィニッシュラインを最も速いタイムで駆け抜けた者に、第1ステージ優勝の称号とマイヨジョーヌが与えられる。

注目は昨年大会でも個人TTを制しているワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)と、現TT世界王者であるフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)の直接対決。そこに東京五輪TT金メダリストのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)やTTスペシャリストのシュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)がどう絡んでくるか。また約46万円のスキンスーツを纏うマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)も忘れてはならない存在だ。

第1ステージ コペンハーゲン〜コペンハーゲン 13.2km第1ステージ コペンハーゲン〜コペンハーゲン 13.2km image:A.S.O.

全選手フィニッシュ予定時刻:午前2時10分頃(日本時間)



7月2日(土)第2ステージ
ロスキレ〜ニュボー 202.5km(平坦ステージ)


7月2日(土)第2ステージ ロスキレ〜ニュボー 202.5km7月2日(土)第2ステージ ロスキレ〜ニュボー 202.5km image:A.S.O.デンマークに6千を越える風力発電機があるのは、それだけ風が強いから。この日は風が展開を左右することになるだろう。

デンマーク2日目の出発地はコペンハーゲンから30kmほど西に位置する街ロスキレ。ヴァイキングが作ったデンマークでも最古と言われるの街から海岸線を沿うように進む。レース中盤に登場する3つの4級山岳は今大会最初のカテゴリー山岳。それゆえ白地に赤い水玉模様の山岳賞ジャージを狙った選手たちによる白熱のバトルが見られるだろうか。

その後、選手たちは強風が予想される全長18㎞のグレート・ベルト橋を渡る。フィニッシュ地点はその先2km地点にあるニュボーの街だ。

集団で突入することになればファビオ・ヤコブセン(オランダ、クイックステップ・アルファヴィニル)やカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)、ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)などピュアスプリンターの出番。しかし風により集団が崩壊すればペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)や母国勝利を狙うマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)などにも勝機ある。

第2ステージ ロスキレ〜ニュボー 202.5km第2ステージ ロスキレ〜ニュボー 202.5km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時11分頃(日本時間)



7月3日(日)第3ステージ
バイレ〜セナボー 182km(平坦ステージ)


7月3日(日)第3ステージ バイレ〜セナボー 182km7月3日(日)第3ステージ バイレ〜セナボー 182km image:A.S.O.3日間に及んだデンマークでの争いも最終日。北欧でのレースを締めくくるのは集団スプリントが予想される平坦ステージだ。スタート地点であるバイレの街の周辺を約25kmの巡ってから、選手たちはフィニッシュ地点であるセナボーを目指して南下していく。途中に前日同様3つの4級山岳とスプリントポイントを越えると、この日のフィニッシュ地点も橋を渡った先にある。

残り800m地点で左の直角コーナーをクリアすると、まっすぐな道がフィニッシュまでつづく。そのため優勝候補に挙がるのは前日同様にヤコブセンやユアン、フィリプセンなどトップスピードに自信を持つピュアスプリンターたちだ。

そして選手やスタッフ、そしてメディア関係者たちは次なるスタート地点であるフランス本国を目指し、900kmの距離を移動する。

第3ステージ バイレ〜セナボー 182km第3ステージ バイレ〜セナボー 182km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時23分頃(日本時間)



7月4日(月)移動日



7月5日(火)第4ステージ
ダンケルク〜カレー 171.5km(丘陵ステージ)


7月5日(火)第4ステージ ダンケルク〜カレー 171.5km7月5日(火)第4ステージ ダンケルク〜カレー 171.5km image:A.S.O.フランス入国初日となる4日目は、フランス本土最北端でベルギーとの国境に近いダンケルクでスタートを切る。ここは毎年5月に開催されるダンケルク4日間レースの舞台で、名物はこの地方ならではの細かなアップダウンや石畳に強い海風。つまり春に行われるクラシックレースとさながらの雰囲気となるに違いない。

大会主催者が平坦ステージに分類するコースには6つの4級山岳が設定されている。30.7km地点に登場するカッセル(距離1.7km/平均4.2%)から始まり、約1kmの距離に平均勾配が7%前後の登りが連続して現れる。

ピュアスプリンターの課題となり得るのはフィニッシュ地点から10.8km手前から始まる4級山岳キャップ・ブラン・ネ。僅か900mという距離だが平均7.5%の登坂をスプリンターは耐えられるか。年々その登坂力を向上させるユアンやサガン、そしてファンアールトには問題はなさそうだが、ヤコブセンやフィリプセンなどには厳しいかと思われる。

第4ステージ ダンケルク〜カレー 171.5km第4ステージ ダンケルク〜カレー 171.5km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時25分頃(日本時間)



7月6日(水)第5ステージ
リール・メトロポル〜アランベール・ポルト・デュ・ハイナ 157km(丘陵ステージ)


7月6日(水)第5ステージ リール・メトロポル〜アランベール・ポルト・デュ・ハイナ 157km7月6日(水)第5ステージ リール・メトロポル〜アランベール・ポルト・デュ・ハイナ 157km image:A.S.O.今大会のハイライトとも言えるステージが、11ヶ所の石畳セクターが登場する第5ステージだ。最後にツールに石畳ステージが登場したのはゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が総合優勝した2018年。この時はクリストファー・フルーム(イギリス、現イスラエル・プレミアテック)らが落車し、リッチー・ポート(オーストラリア、現イネオス・グレナディアーズ)に至ってはそのままレースを去った。

リールを出発した一行は隣町ルーベでアクチュアルスタートを切ると、序盤の75kmは舗装路を走る。最初の石畳区間である第11セクター(フィニッシュに近づくにつれセクターの数字が減っていく)から、第1セクター「ポン・ジビュス(ジビュスの橋)」までの石畳区間の総距離は19.4km。ちなみにフィニッシュ地点はアランベール・ポルト・デュ・ハイナだが、パリ〜ルーベを象徴する石畳区間の1つであるアランベールは通らない。

優勝候補の行方はもちろん、このステージでの関心事は総合勢への影響だ。しかしプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)はそれぞれ3月のクラシックで予習済み。チームメイトの力を借り、難なくクリアする可能性は高い。

第5ステージ リール・メトロポル〜アランベール・ポルト・デュ・ハイナ 157km第5ステージ リール・メトロポル〜アランベール・ポルト・デュ・ハイナ 157km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時29分頃(日本時間)



7月7日(木)第6ステージ
バンシュ〜ロンウィー 220km(丘陵ステージ)


7月7日(木)第6ステージ バンシュ〜ロンウィー 220km7月7日(木)第6ステージ バンシュ〜ロンウィー 220km image:A.S.O.調整不足から出場の叶わなかったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)が舌なめずりをするようなレイアウト。そんな爆発力に優れるパンチャー向きのステージが、ベルギーのバンシュからフランス・ロンウィーを目指す220kmだ。

このステージを一言で表すのであれば「ラ・フレーシュ・ワロンヌ」。勾配が26%に達する激坂「ユイの壁」は登場しないものの、フランスに戻ってきてからのラスト20kmからは4級と3級山岳(距離0.8km/平均12.3%)を立て続けに越え、最後は距離1.6%/平均5.8%(最大11%)に挑む。

前回このフィニッシュ地点が登場した2017年大会の第3ステージでは、アルカンシエルを着たペテル・サガン(スロバキア、現トタルエネルジー)がクライマーであるダニエル・マーティン(アイルランド)らを破って優勝している。そのため今大会最初の登りフィニッシュもスプリンターからクライマーまであらゆる脚質の選手にチャンスがあるだろう。

第6ステージ バンシュ〜ロンウィー 220km第6ステージ バンシュ〜ロンウィー 220km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時分29頃(日本時間)



7月8日(金)第7ステージ
トンブレン〜ラ・シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユ 176.5km(山岳ステージ)


7月8日(金)第7ステージ トンブレン〜ラ・シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユ 176.5km7月8日(金)第7ステージ トンブレン〜ラ・シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユ 176.5km image:A.S.O.2022年大会最初の山岳ステージかつ山頂フィニッシュは、1級山岳シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユ(距離7km/平均8.7%)を舞台に行われる。ベルフィーユという名に聞き覚えがあるならば、それは2020年大会の第20ステージでログリッチが21歳のポガチャルにマイヨジョーヌを奪われた場だからだ。

トンブレンを出発した選手たちは平坦路を南下し、107.7kmと136.1km地点に設定された2つの3級山岳を越える。その後30kmはなだらかな丘陵地帯を走ると、といきなり13%で幕開けるベルフィーユの登りに突入する。距離7km/平均8.7%の登坂の途中にはグラベル区間が設定され、フィニッシュ手前に勾配は24%まで跳ね上がる。

2019年は今大会も出場するディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)が逃げ切り勝利を挙げ、激坂区間でアタックしたアラフィリップをトーマスが最後に追い抜いた場所でもある。区間優勝を狙うパンチャーやクライマー、そして総合タイムを稼ぎたい総合勢がこぞって仕掛ける白熱のステージとなる。

第7ステージ トンブレン〜ラ・シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユ 176.5km第7ステージ トンブレン〜ラ・シュペールプランシュ・デ・ベルフィーユ 176.5km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時29分頃(日本時間)



7月9日(土)第8ステージ
ドール〜ローザンヌ 186.5km(丘陵ステージ)


7月9日(土)第8ステージ ドール〜ローザンヌ 186.5km7月9日(土)第8ステージ ドール〜ローザンヌ 186.5km image:A.S.O.デンマークからフランスに入り、ベルギーとの国境を越えた選手たちはスイスに入国する。フランスのドルを出発して4級と3級山岳、スイスに入って4級山岳を越えてからはレマン湖を目指す約28kmの下りがつづいていく。

その後はIOC(国際オリンピック委員会)本部の前を通過し、ラストはオリンピックスタジアムを目指しては3級山岳(距離4.8km/平均4.6%)を駆け上がる。

スプリンターを退けるほどの登りは登場しないものの、最終3級山岳のラスト2〜1kmまでは勾配12%の登坂が設定されている。爆発力のあるユアンやサガン、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が有利となるか。

第8ステージ ドール〜ローザンヌ 186.5km第8ステージ ドール〜ローザンヌ 186.5km image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時40分頃(日本時間)



7月10日(日)第9ステージ
エーグル〜シャテル・レ・ポルト・デュ・ソレイユ 193km(山岳ステージ)


7月10日(日)第9ステージ エーグル〜シャテル・レ・ポルト・デュ・ソレイユ 193km7月10日(日)第9ステージ エーグル〜シャテル・レ・ポルト・デュ・ソレイユ 193km image:A.S.O.
第1週目を締めくくるのはUCI(国際自転車競技連合)の本部があるスイス・エーグルを出発する193kmコース。フィニッシュ地点であるスキーリゾート地シャテル・レ・ポルト・デュ・ソレイユを除き、ほぼスイス国内を巡るステージとなる。

エーグルからレマン湖を沿って東に向かい、時計回りに弧を描くように2級山岳と1級山岳クロワ峠(距離8.1km/平均7.6%)を越え、UCI本部に戻ってくる。そして17.8kmのダウンヒルをこなした選手たちは、1級山岳パ・ド・モルジャン(距離15.4km/平均6.1%)をクリアし、一度下ってカテゴリーのついていない4kmの登り(平均約4%)でフィニッシュを迎える。

逃げ狙いの選手たちが燃やすレイアウトであり、総合勢にとっても最終1級山岳パ・ド・モルジャン(距離15.4km/平均6.1%)は勝負所となるだろう。10ヶ所を越えるスイッチバックと最大9%を越える勾配に加え、翌日が休息日ということも激しいアタック合戦を誘発するか。

そしてレースを選手たちは第2週目の初日から始まるアルプス3連戦に向け、しばし休息とメディア対応に追われることとなる。

第9ステージ エーグル〜シャテル・レ・ポルト・デュ・ソレイユ第9ステージ エーグル〜シャテル・レ・ポルト・デュ・ソレイユ image:A.S.O.

フィニッシュ予定時刻:午前0時44分頃(日本時間)



7月5日(月)休息日




text:Sotaro.Arakawa

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