UCI(国際自転車競技連合)は5月31日、UCIポイントによるチームランキングを発表。ロット・スーダルは2020年からのポイント累計で19位と、カレブ・ユアン(オーストラリア)が所属するワールドチームが降格の危機に陥っている。



ジロ・デ・イタリアを未勝利のまま棄権したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)ジロ・デ・イタリアを未勝利のまま棄権したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:CorVos
5月31日にUCIは最新のワールドチーム/プロチームのUCIポイントランキングを発表。先日閉幕したジロ・デ・イタリアの総合2位にリチャル・カラパス(エクアドル)が入ったイネオス・グレナディアーズがランキング1位だった一方で、ロット・スーダルは2022年のシーズンランキングでは13位ながらも、ワールドチームから降格の危機に立たされている。

その背景は2020年より施行されたワールドツアーの構造改革にある。これは2020年から2022年までの3年間にチームが獲得したUCIポイントの合計で、上位18チームにワールドチームの資格が与えられる施策だ。5月31日時点で累計トップにいるのは、今季は不調ながらも常に勝利数ではトップを走るクイックステップ・アルファヴィニル(合計29,976ポイント)。その一方でロット・スーダルは残留圏外の19位に沈んでいる。

この現状についてロット・スーダルのジョン・ルランゲ監督は「昨年の冬から同じことばかり聞かれている」と不満を口にしながら、「我々はUCIポイント獲得を第一目標になんてしない。なぜなら勝利を目指す走り方と全く異なるからだ」と語る。ロット・スーダルはジロ第8ステージでトーマス・デヘント(ベルギー)が区間優勝を挙げたものの、複数勝利が期待されていたエーススプリンターのカレブ・ユアン(オーストラリア)が未勝利のまま棄権。UCIポイント獲得の機会を逃した。

ジロ第8ステージを制し、UCIポイント100点を手に入れたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)ジロ第8ステージを制し、UCIポイント100点を手に入れたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:RCS Sport
降格危機に瀕するベルギーチームとは対照的に、1つ下のカテゴリーであるプロチームのアルペシン・フェニックス(現在ランキング7位)とアルケア・サムシック(ランキング12位)がワールドツアー昇格に向けて順調にポイントを加算している。特に今年のアルケアはUCIポイント獲得に積極的で、自動的に出場権が与えられていたジロ・デ・イタリアへの出場を辞退し、その代わりに同時期に行われたワンデーレースのトロ・ブロ・レオン(UCI.1.Pro)に出場。主力選手で臨んだ結果、優勝を含め4人をトップ10に送り込むなどUCIポイントを大量獲得して、ワールドチーム昇格を大きく引き寄せた。

だが、このUCIが定めるポイントの配分には多くの批判も集まっており、昨年引退したダニエル・マーティン(アイルランド)もツイッターで批判。「ワールドツアーのワンデーレース2勝分がツール総合優勝と同じ点数なんて、UCIポイントのシステムは崩壊している。もちろん全員に公平なシステムなんて不可能だが、1.1(上から3番目のカテゴリーのワンデーレース)の優勝ポイントがツールのステージ優勝と同じなんておかしい」と苦言を呈している。


現在プロチーム降格圏にいるのは19位のロット・スーダル(11,650ポイント)と、20位のイスラエル・プレミアテック(11,122ポイント)。そこに18位のEFエデュケーション・イージーポスト(12,400ポイント)と17位のバイクエクスチェンジ・ジェイコ(12,486ポイント)が僅差でつけている。

7月1日開幕のツール・ド・フランスを前に、クリテリウム・デュ・ドーフィネやツール・ド・スイス(共にUCIワールドツアー)を控えるロット・スーダル。ここから本格化する熾烈な残留争いを前にルランゲ監督は「シーズン序盤は我々とコフィディスが降格の危機と言われていた。そしていま、我々とイスラエルが降格圏内にいる。下位争いは僅差でシーズンが終わるまで何が起こるかわからない」と前向きな言葉を残した。

ちなみにワールドチームが降格(その権利を失効)した場合、所属選手には「予告なく、また損害賠償責任を追うことなくチームとの契約を終えることができる」という権利が保証されている。その中で注目されるのはロット・スーダルと2024年まで契約を残しているユアンの動向だが、同選手の代理人は「降格したからといって移籍する可能性は低いだろう。例えワールドツアーに出なくても成果は出せるのだからね」とコメント。ユアンは間接的にチーム残留の意思を伝えている。

text:Sotaro.Arakawa

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