トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が2022年限りで選手生活に終止符を打つことを発表。「トレーニングに掛けた努力がパフォーマンスに繋がらないことが度々起こるようになった」と引退の理由を話している。



「自転車を愛する全ての人へ。2022年限りでプロ自転車選手から退くことを決めた」。との書き出しで、トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)は、自身のInstagramに引退を決めたこと、そしてその理由や、有終の美として世界選手権個人TTを狙うこと、そして感謝の思いを長文で綴り投稿した。

今年のジロでは個人TTで3位に入るも、その後リタイアしたトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)今年のジロでは個人TTで3位に入るも、その後リタイアしたトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
「2020年が非常に難しい年となり、その年の終わりにオーバートレーニングになり燃え尽きてしまった。そして2020年の末に影が僕を覆い、自転車から離れ、自分の未来について考えることにした」とデュムランは、2021年1月から半年間の選手活動休止期間を振り返る。復帰の理由は五輪と、自転車競技への愛である、とも。

「暫くの後、自転車競技を続けることにした。その理由の1つは、5年に及び頭にあった東京五輪に出たかったから。そしてもう1つはもちろん自転車を愛し、自転車という世界への情熱があったから。幾度なく僕に衝撃を与えると同時に、まるで自分の家にいるような安らぎも与えてくれたから。2020年の秋以降、時折自分の力を発揮できる時があった。昨年の銀メダル獲得は僕の選手生活のハイライトになり得る成果だ。あの時の自分の走りをとても誇りに思う」。

区間優勝を挙げたクーン・ボウマンを祝うトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)区間優勝を挙げたクーン・ボウマンを祝うトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
「もちろん今年は特に調子の良い時があったが、同時にフラストレーションが溜まることも多かった。具体的には身体が疲れを感じ、いまもその疲労は抜けていない。ひとたびトレーニングの負荷が上がったり、レースの強度が高まると強くなるどころか疲労に苦しめられ、痛み、怪我をするようになった。

トレーニングに掛けた努力がパフォーマンスに繋がらないことが度々起こった。トレーニングのために捧げた努力によって後々に得るものが合わなくなり、トレーニングに対する100%の献身が難しくなっていった」と、心に対して身体がついていかなくなった状況を語っている。

2017年のジロで総合優勝したトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)2017年のジロで総合優勝したトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
デュムランはジロ・デ・イタリア総合優勝や、世界選手権個人タイムトライアルでの優勝など、2017年にキャリアハイと呼べるシーズンを過ごし、翌2018年もジロとツール・ド・フランスで共に総合2位となるなど活躍。しかし本人が語るように2020年はコロナ禍も重なり苦しい時期を過ごしたという。復活後の2021年はTTを中心にコンスタントに成績を出したものの、今年はジロを途中棄権していた。

「根気よく慎重にトレーニングに取り組めば、必ずや復活できると信じている。だがそれは長く根気のいる道で、成功する保証もない。そのため僕はその道を進まないことに決めた。だがその代わりに、自転車世界の道ではない、知らない道を進むことにしたんだ。現役最後の数ヶ月で最大限の結果を得るため、チームと計画を立てるつもりだ。その間も幸福と成功が来ることを望み、特にオーストラリアで開催される世界選手権の個人タイムトライアルでベストを尽くしたい」と、有終の美を飾るための意気込みも話している。以下はコメントの後半部分。これから、そして携わった人々への感謝を綴っている。

アルカンシェルに袖を通したトム・デュムラン(オランダ)アルカンシェルに袖を通したトム・デュムラン(オランダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
自転車選手を引退後、自分が何がしたいのかはわからず、いまそれを知りたいとも思っていない。だが自転車への愛は、自転車界との繋がりを保ち続けてくれるだろう。自分の未来に何が待っているのか、とてもワクワクしている。いま僕は満足感と感謝に溢れ、既に振り返り始めている自分のキャリアに誇りを感じている。

最後になったが、僕の素晴らしい冒険を共にしてくれた全ての人に感謝したい。僕を助け、特別な瞬間を共有した人たちに感謝したい。チームメイトや監督、マッサージャー、メカニック、スタッフ、スポンサーに感謝を伝えたい。また特に僕を応援してくれた自転車ファンに感謝したい。血と汗と涙を流す自転車競技であっても、美しく瞬間の連続だった。

ありがとう。本当にありがとう。

トム


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