3年ぶりに開催された「アルプスあづみのセンチュリーライド」。4月開催の「桜のAACR」に引き続き、5月21~22日に開催された「緑のAACR」に初参加のCW編集部の高木が取材し、イベントレポートを前編と後編で紹介していく。後編は青木湖からゴールまでをレポート。(※前編はこちらから



青木湖の先にはトンネル区間があり、前後ライトは必須青木湖の先にはトンネル区間があり、前後ライトは必須 photo:Michinari TAKAGI
前編の終盤に登場した青木湖エイドはAACR名物の「ねぎみそおにぎり」があることや、コースプロフィールを見るとわかるのだが青木湖までは長い登りや激坂があり、青木湖エイドが120kmと160kmコースともに一番高いポイントになっている。青木湖から先は緩やかなアップダウンが続き、緩やかな区間である。

これから目指す第四エイドの白馬がスタートから81km地点にあり、緑のAACRの大会の折り返し地点となる。青木湖エイドをスタートすると分岐点に辿り着く。実はこの青木湖は第三エイドと第五エイドの両方に設定されているため、もう一度、訪れることになる。つまり、激坂がまたあなたの目の前に再び立ちはだかる。

長野オリンピックが開催された白馬ジャンプ競技場へ向かって走っていく長野オリンピックが開催された白馬ジャンプ競技場へ向かって走っていく photo:Michinari TAKAGI
白馬岳は暖かい季節らしい緑の装いになりつつある白馬岳は暖かい季節らしい緑の装いになりつつある photo:Michinari TAKAGI一時停止は手信号と声掛けで厳守一時停止は手信号と声掛けで厳守 photo:Michinari TAKAGI

ここから先はトンネルの区間が2か所あるため、大会の要項にあるように前後のライトが必須となる。スタートの時点からデイライトを実践しているサイクリストが多く、参加者の安全意識の高さが垣間見えた。

しばらく走ると安曇野アートラインに辿り着く。安曇野アートラインは、長野県安曇野市や池田町、松川村、大町市、白馬村にある美術館と博物館などを結ぶ道路である。安曇野アートラインから見える景色はまるで絵画の中を走っているかのような抜群のロケーションである。

長野らしい自然豊かな風景長野らしい自然豊かな風景 photo:Michinari TAKAGI
松川と白馬岳、そして愛車を並べて記念撮影松川と白馬岳、そして愛車を並べて記念撮影 photo:Michinari TAKAGI
安曇野アートラインを走っていると、かすかにスキージャンプ台が見えてくる。白馬ジャンプ競技場は長野県北安曇郡白馬村に位置し、日本で唯一ノーマルヒル、ラージヒル用のジャンプ台が2つ並んでいるジャンプ競技場である。1998年に開催された長野オリンピックのジャンプとノルディック複合ジャンプの競技会場として利用されたことでも、五輪の聖地として知っている人も多いだろう。

長野県北安曇郡白馬村を流れる松川に架かる松川大橋に差し掛かると多くの参加者が立ち止まっていたため、筆者も立ち止まってみる。そして、参加者の皆さんが向いている方を見ると、北アルプスと松川が織り成す絶景に見惚れてしまうほど。

松川沿いはどこもかしこも写真ポイント松川沿いはどこもかしこも写真ポイント photo:Michinari TAKAGI
皆さん、撮りますよ!ハイチーズ!皆さん、撮りますよ!ハイチーズ! photo:Michinari TAKAGI
ビアンキを取り扱うサイクルヨーロッパのスタッフさんとも偶然にも遭遇ビアンキを取り扱うサイクルヨーロッパのスタッフさんとも偶然にも遭遇 photo:Michinari TAKAGI白馬エイドに近づくにつれてさらに晴れてきました白馬エイドに近づくにつれてさらに晴れてきました photo:Michinari TAKAGI

そして、ここから松川を1kmほど北上して進むと、またもや大勢の参加者が立ち止まっているポイントがあった。取材のため、きれいな景色や写真の構図の良いポイントで止まっているのだが、松川沿いはどこもかしこも写真ポイントが多くて、ついつい時間を使い過ぎてしまったのはここだけの話。

そして、AACRの折り返し地点の白馬エイドに到着。到着すると、どこからか香ばしい香りが。このエイドでもAACRの名物がある予感。アルコール消毒をし、白馬エイドに入っていくと、「石窯ピザ」と「糀甘酒」が参加者を待っていた。

AACRの折り返し地点の白馬エイドに到着AACRの折り返し地点の白馬エイドに到着 photo:Michinari TAKAGI多くのバイクラックが用意されていた多くのバイクラックが用意されていた photo:Michinari TAKAGI

アルコール消毒とマスク着用で感染症対策は万全だアルコール消毒とマスク着用で感染症対策は万全だ photo:Michinari TAKAGI会社のサイクリンググループでAACRに参加会社のサイクリンググループでAACRに参加 photo:Michinari TAKAGI

石窯で焼いたばかりの熱々のピザ石窯で焼いたばかりの熱々のピザ photo:Michinari TAKAGI
白馬エイドは「石窯ピザ」と「糀甘酒」白馬エイドは「石窯ピザ」と「糀甘酒」 photo:Michinari TAKAGI
糀甘酒は、米糀と蒸した米を材料につくられ、「飲む点滴」と呼ばれるほど栄養豊富で江戸時代から長年飲まれている飲み物である。ブドウ糖や必須アミノ酸、ビタミンB群などの栄養素が豊富でライド中の補給ドリンク向きでもある。アルコール0%のため、ライド中でも安心だ。

30席ほどのキャンプチェアーが用意され、まったり座って休憩しながら石窯ピザと糀甘酒を参加者が多かった。折り返し地点ということもあり長めに休憩をして後半のライドに備えているようだ。

折り返し地点ということで、参加者同士が自転車トークをしながら少し長めのレスト折り返し地点ということで、参加者同士が自転車トークをしながら少し長めのレスト photo:Michinari TAKAGI
30席ほどのキャンプチェアーを用意30席ほどのキャンプチェアーを用意 photo:Michinari TAKAGI
ワコーズのスタッフの皆さんワコーズのスタッフの皆さん photo:Michinari TAKAGIワコーズのブースではバイクトラブルを解決ワコーズのブースではバイクトラブルを解決 photo:Michinari TAKAGI

ここではケミカルブランドであるワコーズのブースがあり、自転車に不具合を感じたライダーがメンテナンスを受けていた。ワコーズのスタッフたちはこれまで多くのイベントに帯同した経験豊富なメンバーで、自転車に関わるあらゆる悩みをその場で解決していた。

そして、白馬エイドで糀甘酒と石窯ピザでしっかりとお腹を満たし、休憩した後は、白馬ジャンプ競技場を背景にして安曇野アートラインを走り、第三エイドで訪れた青木湖を再び目指していく。

白馬岳が目と鼻の先に白馬岳が目と鼻の先に photo:Michinari TAKAGI筆者はレースと同じようにコース情報をプリントしたものをステムに貼っていた筆者はレースと同じようにコース情報をプリントしたものをステムに貼っていた photo:Michinari TAKAGI

白馬岳の前を駆け抜ける白馬岳の前を駆け抜ける photo:Michinari TAKAGI
再び青木湖エイド前の激坂へ再び青木湖エイド前の激坂へ photo:Michinari TAKAGI
再び、青木湖の激坂をクリアすると第五エイドの青木湖に到着。用意されていたのは「信州おやき」と「冷奴」。長野でおやきというと野沢菜かな?と予想をしながら、ほくほくのおやきを割ってみると、なんと!中身はあんこでした!野沢菜も大好きですが、あんこも大好きなので個人的にはうれしかったです。因みに桜のAACRで用意されていた信州おやきは野沢菜だったそうです。

12時過ぎということもあり、強めの日差しが降り注ぐ中で、気温も22℃まで上昇し、避暑地でもある長野としては暑く感じる気候となっていた。大町の湧水を積んだ給水車が待っており、参加者は空になったボトルに水を入れて、おいしい水をゴクゴクと飲み干している。まるで水のCMを見ているような一幕だ。

出来たての信州おやき出来たての信州おやき photo:Michinari TAKAGI
冷奴はワサビと醤油で頂きます冷奴はワサビと醤油で頂きます photo:Michinari TAKAGI大町の湧水を積んだ給水車が待っていた大町の湧水を積んだ給水車が待っていた photo:Michinari TAKAGI

信州おやきと冷奴を食べる参加者信州おやきと冷奴を食べる参加者 photo:Michinari TAKAGI
第六エイドの安曇野エイドまでは36㎞、これまでのエイドとエイドの区間としては最長の区間となる。コースの最高地点で青木湖から国道148号線まで移動し、下り基調で脚を止めた状態でも30~40km/hほど速度が出るため、体力を消耗せずに木崎湖まで辿り着ける。

しばらく下っていくと国道148号線と並走するようにJR東日本の大糸線の稲生駅に行きつく。稲生駅は1960年、昭和35年7月20日に日本国有鉄道の駅として開業した駅で、アニメの聖地として訪れる方も多いという。駅のホームからは木崎湖を一望することができ、抜群の景色についつい立ち止まってしまった。

JR東日本の大糸線の稲生駅JR東日本の大糸線の稲生駅 photo:Michinari TAKAGI
高瀬川を目指す高瀬川を目指す photo:Michinari TAKAGI
木崎湖のキャンプ場と温泉街を抜けて、安曇野市街を走る。高瀬川方面に向かっていくと高瀬川に架かる宮本橋に到着した。塔から斜めに張ったケーブルを橋桁に直接つなぎ支える斜張橋の宮本橋を渡りきったら、一気に南側へと走っていく。

延長が55.8kmの高瀬川の、長野県の大町市および安曇野市を主に流れる信濃川水系の一級河川。そんな高瀬川の土手上のルートを走り、下流へ向かっていく。土手上には白馬の山々から吹き下ろしてきた風が吹き、参加者の背中を押してくれていた。そして、高瀬橋を渡り、再び高瀬川を渡っていくと、しばらくして大糸線の踏切で電車が通過待ち。

高瀬川に架かる宮本橋高瀬川に架かる宮本橋 photo:Michinari TAKAGI
高瀬川の土手上のルートを走る高瀬川の土手上のルートを走る photo:Michinari TAKAGI高瀬橋を渡る参加者高瀬橋を渡る参加者 photo:Michinari TAKAGI

踏切で待っていると、やってきたのはE127系踏切で待っていると、やってきたのはE127系 photo:Michinari TAKAGI
そして、やってきたのはE127系 100番台。1995年にデビューし、中央本線と篠ノ井線、大糸線で運行されている。車体は軽量なステンレスを使用し、VVVFインバータ制御などの技術を導入している車両である。また、ワンマン運転も可能で効率的輸送ができるため、長野県や新潟県で活躍しているのだ。都心部に住んでいると10両や15両編成を見慣れているせいか、2両編成は見るたびに新鮮な気持ちになり、ついついカメラのシャッターを切ってしまう。そんな鉄分入りのサイクリストも多いのではないだろうか。

そして、第七エイドの碌山公園に14時過ぎごろ到着し、スタートから8時間が経過していたことを知る。これまで長野の綺麗な景色やおいしいグルメを食べ、写真をたくさん撮る中で、楽しくて時間という概念を忘れてしまっていたようだ。

第七エイドの碌山公園第七エイドの碌山公園 photo:Michinari TAKAGI
「黒胡麻おはぎ」が振舞われた「黒胡麻おはぎ」が振舞われた photo:Michinari TAKAGI「信州・安曇野のりんごジュース」と「黒胡麻おはぎ」「信州・安曇野のりんごジュース」と「黒胡麻おはぎ」 photo:Michinari TAKAGI

碌山公園は木造平屋で体験学習施設や多目的トイレ、芝生、広場、水路、約2,250台分の駐車場が整備されている大きな公園だ。体験学習施設では、陶芸教室や碌山美術館主催の講座などが行われているそうだ。

このエイドでは「信州・安曇野のりんごジュース」と「黒胡麻おはぎ」が参加者たちに用意されていた。安曇野りんごジュースは紙パックや缶ではなく、パウチされた袋容器なので、サイクルジャージのバッグポケットに入れて持ち運びできる。黒胡麻おはぎは黒胡麻の香ばしさとおはぎのほのかな甘さが上品な味付けだった。

ゴールまでチームメイトと共にラストスパートゴールまでチームメイトと共にラストスパート photo:Michinari TAKAGI
夫婦でガッツポーズ夫婦でガッツポーズ photo:Michinari TAKAGI
そして、最終エイドから目指すのは19km先にあるゴール地点の「梓水苑」。四方八方を果物や野菜畑に囲まれ、長野県らしいアップダウンが続くコースを走っていく。日差しが傾き始め、夕方らしい空模様になってきた。気温もピークを過ぎ、走りやすい気温になり走りやすくなってきていた。

遠くにゴール地点の「梓水苑」が見えてくると、先にゴールした参加者が次々とゴールする参加者を応援するために待っていてくれた。ロングライドイベントでもレースでも応援されると、疲れ切っているはずなのになんだか力が湧いてくる。改めて、応援のチカラって凄いなと実感した。

ゴール後は皆さん揃って、達成感に満ち溢れて良い表情をしていたゴール後は皆さん揃って、達成感に満ち溢れて良い表情をしていた photo:Michinari TAKAGI
多くの参加者が無事にゴールしていた多くの参加者が無事にゴールしていた photo:Michinari TAKAGI
最終コーナーを曲がると、目の前のゴール地点には大きなウエイブワンのゴールゲートとミズタニ自転車のブランドバナーが並び、まるでレースのゴールゲートに飛び込んでいくような感覚になり気分が高まる。そして、他の参加者と同じように、両手を掲げ、ゴールゲートをくぐったのであった。

その後、ゴールゲートでカメラを構えているとレースで優勝したようなガッツポーズでゴールする人、夫婦やグループで喜びを分かち合いながらゴールする人など、参加者が皆、笑顔で駆け込んでくる様子は達成感に満ちていて、ファインダー越しに「お疲れ様でした!」と思いながら、最高の瞬間を写真に収めたのだった。

長野県産の紅玉を使用したアップルパイ「開運堂りんごの天使」長野県産の紅玉を使用したアップルパイ「開運堂りんごの天使」 photo:Michinari TAKAGIゴール後に「開運堂りんごの天使」と「レッドブル」を頂きました!ゴール後に「開運堂りんごの天使」と「レッドブル」を頂きました! photo:Michinari TAKAGI

松川沿いで決めポーズをしてくれた皆さんもゴール松川沿いで決めポーズをしてくれた皆さんもゴール photo:Michinari TAKAGI
撮影スポットは大人気で行列ができていた撮影スポットは大人気で行列ができていた photo:Michinari TAKAGIミズタニ自転車のスタッフさんが記念写真を撮り続けていました!お疲れ様です!ミズタニ自転車のスタッフさんが記念写真を撮り続けていました!お疲れ様です! photo:Michinari TAKAGI

ゴール後はリストバンドの回収所があり、その近くで「開運堂りんごの天使」と「レッドブル」が完走賞として提供されていた。そして、AACRのロゴが入ったフォトスポットで、ライドを共にした仲間と記念撮影の行列ができていた。

「桜のAACR」に引き続き、無事にイベントが終了した「緑のAACR」。そこで、「アルプスあづみのセンチュリーライド」イベントをプロデュースしている鈴木雷太さんにお話を伺った。



鈴木雷太さんのインタビュー

「アルプスあづみのセンチュリーライド」をプロデュースしている鈴木雷太さん「アルプスあづみのセンチュリーライド」をプロデュースしている鈴木雷太さん photo:Michinari TAKAGI
■今回、桜のAACRに続いて緑のAACRが開催されてどうでしたか?

天気がちょっと心配でしたけど、雨が残ることもなく、晴れていたので良かったと思います。全体的に見て、僕らもやっぱり開催したいと思っていました。参加者の皆さんも凄く楽しみにしていてくれて、本当に緑のAACRが開催できて良かったと思いますね。

■とても賑わっていて、参加者の皆さんも楽しまれていたようでした

ちょっと山がしっかり見えなかったのは残念ですが、朝の天気を考えれば、良かったと思います。暑くなかったですし、風向きも良かったと思います。事故もなくて、良かったですね。一時停止など、交通ルールやマナーも徹底していきたので、啓蒙が実ってきたのかな。

実際やりたいのはそこではなくて、今のゴールした後の空気感をどうにかしたくて、「楽しかった、走って良かった」が一番なので、その為に自治体や警察の皆さんに協力してもらいました。

実際、車を運転していて自転車に対してストレスを感じているドライバーさんがいると思いますが、僕らは僕らで安全を守って、サイクリングを楽しく続けて広げていくことが、このイベントの趣旨であると考えています。そういった意味では今日は開催できて良かったと思います。

リドレー KANZO FASTで参加リドレー KANZO FASTで参加 photo:Michinari TAKAGI
■今後のイベントについて何か展開がありますでしょうか?

実は今度、長野の木曽で大きなサイクリングイベントをやろうと思っています。乗鞍と御岳がとても綺麗に見えて、100kmのコースだけど信号は2つしかなくて走りやすいのが特徴です。木祖という地形だから登らないといけないですが。地元の自治体と関係各所と協議をして、形にしていきたいと思っています。



「アルプスあづみのセンチュリーライド」に初参加したCW編集部員の高木です。久しぶりに大勢の参加者が集まったロングライドイベントを走ってみて、サイクリングの楽しみ方を再確認させられました。新型コロナウイルスによりレースやイベントが中止になり、ソロライドばかりしていたことを思い出すと、やっと普通の日常が帰ってきている気がしました。多くの地元の人に出会い、長野のコースやグルメを堪能した1日でとても充実していて、また、次のAACRも走りたいと思いました。また、長野でお会いしましょう!

緑のAACRの160kmコースを完走したCW編集部員の高木緑のAACRの160kmコースを完走したCW編集部員の高木 photo:ミズタニ自転車
text&photo:Michinari TAKAGI
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