E-motionE-motion

3本ローラーは定点でより実走に近い状態でトレーニングを行うことを目的として開発されている。室内トレーナーとして手軽な固定式トレーナーと異なり、ローラーから脱輪しないよう常にバランスを取りながら走らなければならないという、乗ったことがない人にとっては未知の世界だ。実際に外を走るよりも数段難しいのが唯一のウィークポイントだろうか。

ただし、メリットも多い。より実走に近いので固定式よりも実用的な筋肉を鍛えることができる。つまり脚だけでなく腹筋や背筋などといった全身の筋肉を鍛えられる。

この3本ローラーが乗りにくいというのは「当たり前のこと」として捉えられているが、サイクルトレーナー大手メーカーのエリートより画期的な3本ローラーがリリースされた。その名もE-motionだ。

従来の3本ローラーと同じ構造だが、生じる慣性を減衰し従来にはない乗りやすさを提供する従来の3本ローラーと同じ構造だが、生じる慣性を減衰し従来にはない乗りやすさを提供する トレーナー自体が前後にフローティングしてバランスをとるトレーナー自体が前後にフローティングしてバランスをとる


この機構は「インサイド・ライド」というブランドからかつてリリースしていた「E-motion」のパテントを取得し、エリート社がこれまで培ったノウハウを注入することで、ブラッシュアップされリリースされた。その高いセイフティマージンはさらに向上している。

E-motion最大の特徴はローラー本体が台座からフローティングしており、ライダーのペダリングや動作にあわせ前後に可動しバランスを取る。ペダリングすることで発生する慣性を減衰して、劇的に乗りこなしやすくしたシステムである。

ダンシングができるのも大きな特徴で、ラインディングやペダリングにあわせてローラーが動き、自然に近いフォームでペダリングできる。

フロントホイールの脱輪を防止する「左右ガイドローラー」フロントホイールの脱輪を防止する「左右ガイドローラー」 ホイールベースにあわせてローラー台の前後幅調整ができるホイールベースにあわせてローラー台の前後幅調整ができる


さらに激しく左右に動くとホイールが脱輪しローラーから落ちてしまうことがある。その対策としてローラーの形状を独自のつづみ型にしたことで、ローラーの中央に集中するよう形状にも配所している。素材はサーモプラスチック製で走行音も比較的静かだ。

本体部は乗り降りがしやすいよう、ロープロファイルデザインとなり足をつきやすい親切設計もうれしい。

またトレーニングの質を高めるために、3段階の負荷調整機能を追加。より高い負荷でトレーニングを行いたいシリアスレーサーも満足できるだろう。

これらの機能はヨーロッパでも高い評価を得ており、2009年のユーロバイクショーではユーロバイクアワードに輝いているのだ。

脱輪の危険性を軽減するサーモプラスチック製「つづみ型ローラー」を採用脱輪の危険性を軽減するサーモプラスチック製「つづみ型ローラー」を採用 3段階の負荷機能付き。最大負荷はかなり負荷がかかる3段階の負荷機能付き。最大負荷はかなり負荷がかかる


さて、このユニークな機構をもつE-Motionをテストする鈴木祐一はどのようなインパクトを受けたのだろうか? さっそくそのインプレッションをお届けしよう。





―インプレッション

「数値では見えない部分を鍛えられる新世代ローラー」 鈴木祐一(Rise Ride)

「数値に表れない部分を鍛えられるのがE-motionだろう」鈴木祐一「数値に表れない部分を鍛えられるのがE-motionだろう」鈴木祐一 普段は3本ローラーも固定式のトレーナーも両方を使っていることもあり、動く必要性があるのか、どれだけ乗りやすくなるのか疑問があった。実際に乗ってみた感想だが最初はローラーが動くので踏み出しのときにいつもと違う違和感はあった。しかし慣れの範囲だろう。

シッティングでペダリングしているなら一般的な3本ローラーと大きな違いは感じなかった。効果を発揮するのはバイクを左右に振ってみたり、ダンシングなど負荷をかけたり大きい動きアクションをするときだ。スプリントのような動きにも対応するので「もがき」の練習もできる。

一番の違いを感じたのはダンシングをしたときの予想以上の素直な反応だろう。一般的な3本ローラーの上でもダンシングを行おうと思えば可能だが、ローラーから自転車が飛び出さないよう。崩れない位置を保つように荷重移動を気にしつつおそるおそる走る、という不自然なフォームになる。

しかし、ダンシングフォームで自然に生じる荷重移動に対しローラー台が前後に動いてローラーの中心にバイクを保つので、自然な動きでペダリングできる。

自転車自体の動きが自然に働くようにローラーが動いてくれるのが大きな違い。乗り込んでいくうちに一体感が生まれてくる。自然な動きに近づいてくる。

3本ローラーは実走に近いといわれるが。いままであまりにも実走には遠い。しかし固定式から3本ローラーでは大きな差があるが、3本ローラーとこのE-MOTIONも同じくらいの差があり、実走感により近づいている。
さらにいろんなシチュエーションで自然になるので、より実走感に近い。

いま注目のパワートレーニングや、心拍トレーニングがホビーレーサーの間でスタンダードなトレーニング方法になっていると思うが、ローラーでそれらのトレーニングを行う場合、自然に実走に近い感覚で行えればより充実した練習ができる。

車体を固定した固定式トレーナーでは出力や心拍といった数値だけを追い求めているところがあるが、バランスをとりながらペダリングするという部分も重要。ここで初心者とベテランとでは心拍数の上昇の違いや、細かいところでは筋肉の使い方も異なってくる。ただクランクを強く回転させるというところだけではなく、数値に表れない部分を鍛えられるのがE-motionだろう。

サーモプラスチック製ローラーの感触はアルミなどの金属製と比べて柔らかく吸い付くような感覚があり抵抗感がリアルに近い。そこがまた実走感に近づいている気がする。アスファルトを走っている感覚に近いがむしろ少し負荷が高いような感覚もあった。

価格は10万円を超える。正直驚いたが乗ってみると納得できる。この価格の価値は十分にあるローラー台だと思う。





エリートe-motionに実際に乗車してのインプレッション。ライダーのいろいろな動きに対応する様子を動画で確認して欲しい。


エリート E-motion
■3段階負荷調整機能
■足付き性の良いロープロファイル設計
■脱輪の危険性を軽減するサーモプラスティック製「つづみ型ローラー」と「左右ガイドローラー」を採用
■Made in ITALY
価格(税込): 109,700円




インプレライダーのプロフィール

鈴木祐一鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド



text:Ken-ichi.YAMAMOTO
photo:Makoto.AYANO

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