2021/12/24(金) - 18:56
12月20日夜、エカーズを率いる浅田顕監督と所属選手達を招き、エキップアサダ後援会主催の2021年度活動報告会が開催された。昨年に引き続き今回もオンライン開催となった本会で語られた、コロナ禍における活動状況、チームの来季体制について、提供資料を交えながらお伝えする。
浅田監督は挨拶を終えると、2021年の戦いを振り返っていった。ワールドチームへの所属を目指し、欧州での活動・評価を中心とするエカーズの選手達には、やはりコロナ禍の影響は小さくなかったようだ。
昨年から続く新型コロナの影響を受け、今季のエカーズは、海外で活動出来ない際には国内中心のレース活動を行う「Bプラン」を持って臨んだと言う。
「本来は3月にネイションズカップがあって、選手達はそこで毎年コテンパンにやられてるような状況だったのですが、新型コロナが響き、Bプラン、つまり日本国内のUCIレースとJBCFを中心に走ることとなりました。日本に残った組は、欧州での厳しいレース展開を想定して、順位のみならず、展開を重視した。とにかくエカーズや日本代表の選手が出ることでレースが厳しくなるよう仕掛けた。その結果、いくつかのレースで優勝。関係者にも参加者にも強いインパクトを与える事が出来た」と監督は語る。
その最たる結果が留目夕陽がエリートを相手に逃げ切り勝利を果たした西日本チャレンジロードであろう。これは今季序盤の国内ロードレースシーンで大きなトピックとなった。
6月に入ると、欧州トップアマレースが本格再開。U23で準所属の蠣崎優仁、松田祥位、小笠原拓海、湯浅博貴、津田悠義と言ったメンバーが、欧州アマトップのチームメイト達と共に各地を転戦した。小笠原が仏第一カテゴリーのレースで初優勝するなど、一部に結果も出ていたが、全体として真に納得いく成績を残せたケースは多くなかったようだ。怪我や体調不良などにより、回復やコンディショニングに難が出た選手も多かったように見受けられる。
夏には一時的に新型コロナの感染拡大が落ち着き、エカーズの選手も日本代表としてU23世界最高峰レース「ツール・ド・ラヴニール」に参戦。本来は3〜5月にかけて徐々にレベルを上げながら出場するはずだが、この状況下でほとんどぶっつけ本番となってしまったと言う。
それでもプロローグでは好感触を得て、「体力的には例年を上回っているんじゃないか」と言う感触も掴めたようだ。しかし翌日からマスドスタートのレースが始まり、状況が一変。集団への順応や技術面で劣る点が出て落車なども起こり、最後まで走りきったのはわずか1名(小出樹)と言う非常に厳しい現実が待っていた。
今季は10月下旬に開催を移動した全日本選手権で国内レースは締めくくりとなった。男子タイムトライアルU23では松田祥位が勝利。しかしロードは苦戦し、各選手とも積極的に走ったものの、結果を出せずにレースは終了。勝利と入賞の回数だけ見れば悪くない結果だが、渡欧もままならぬ不自由な状況下での戦い――監督の言葉の端々から、それが歯がゆいものであった事が伝わってくる報告であった。
かつて兄・藍道と共に入団し、9年もの間エカーズで走った蠣崎は、そのジャージを脱ぐものの、引き続き自力で欧州でのチャレンジを続ける。松田はチームブリヂストンサイクリングへ加入。来季はその脚質を活かし、トラックの中距離(チームパーシュート)を中心に走り、パリ五輪出場を目指す。ラヴニール唯一の完走者で、全日本ロード男子U23でも積極的に逃げを見せていた小出は、国内強豪のキナンサイクリングチームへ向かう。
1学年下の平井光介は大学卒業まで1年を残しているものの「3年時の全日本までに結果が出なければ引退する」と言う話を浅田監督と当初より交わしており、現時点で選手を引退し、社会人へのステップに備える事となった。スペインの強豪クラブチーム「アンティガ・カーザ・ベルソラジローナ」で走った湯浅博貴も1年を残し、ヴィクトワール広島へ移籍。国内レースへと焦点を切り替える。
AG2RシトロエンU23に所属していた津田悠義は、既報の通り来季はEFエデュケーション・NIPPOディベロップメントチームへ移籍。再び欧州ワールドチーム傘下でトップチーム昇格を目指して戦うこととなる。
春先から国内レースで話題をさらった留目夕陽も退団となる。来季所属先等は未定だ。監督もその人並み外れた持久力を惜しみ、「また気持ちも身体も回復して、改めて世界を目指してほしい」とエールを送った。
高校生の藤本怜は、来季、名門・松山学院での最後のシーズンを迎える。レギュラーを獲る事が非常に難しい強豪校だけに「高校での活動に一旦専念し、持ち前のスピード力でレギュラーを勝ち取り、次のステップへ繋げて欲しい」と監督に送り出される。退団ではなく、所属を一時中断する形だ。
浅田監督は挨拶を終えると、2021年の戦いを振り返っていった。ワールドチームへの所属を目指し、欧州での活動・評価を中心とするエカーズの選手達には、やはりコロナ禍の影響は小さくなかったようだ。
昨年から続く新型コロナの影響を受け、今季のエカーズは、海外で活動出来ない際には国内中心のレース活動を行う「Bプラン」を持って臨んだと言う。
「本来は3月にネイションズカップがあって、選手達はそこで毎年コテンパンにやられてるような状況だったのですが、新型コロナが響き、Bプラン、つまり日本国内のUCIレースとJBCFを中心に走ることとなりました。日本に残った組は、欧州での厳しいレース展開を想定して、順位のみならず、展開を重視した。とにかくエカーズや日本代表の選手が出ることでレースが厳しくなるよう仕掛けた。その結果、いくつかのレースで優勝。関係者にも参加者にも強いインパクトを与える事が出来た」と監督は語る。
その最たる結果が留目夕陽がエリートを相手に逃げ切り勝利を果たした西日本チャレンジロードであろう。これは今季序盤の国内ロードレースシーンで大きなトピックとなった。
6月に入ると、欧州トップアマレースが本格再開。U23で準所属の蠣崎優仁、松田祥位、小笠原拓海、湯浅博貴、津田悠義と言ったメンバーが、欧州アマトップのチームメイト達と共に各地を転戦した。小笠原が仏第一カテゴリーのレースで初優勝するなど、一部に結果も出ていたが、全体として真に納得いく成績を残せたケースは多くなかったようだ。怪我や体調不良などにより、回復やコンディショニングに難が出た選手も多かったように見受けられる。
夏には一時的に新型コロナの感染拡大が落ち着き、エカーズの選手も日本代表としてU23世界最高峰レース「ツール・ド・ラヴニール」に参戦。本来は3〜5月にかけて徐々にレベルを上げながら出場するはずだが、この状況下でほとんどぶっつけ本番となってしまったと言う。
それでもプロローグでは好感触を得て、「体力的には例年を上回っているんじゃないか」と言う感触も掴めたようだ。しかし翌日からマスドスタートのレースが始まり、状況が一変。集団への順応や技術面で劣る点が出て落車なども起こり、最後まで走りきったのはわずか1名(小出樹)と言う非常に厳しい現実が待っていた。
今季は10月下旬に開催を移動した全日本選手権で国内レースは締めくくりとなった。男子タイムトライアルU23では松田祥位が勝利。しかしロードは苦戦し、各選手とも積極的に走ったものの、結果を出せずにレースは終了。勝利と入賞の回数だけ見れば悪くない結果だが、渡欧もままならぬ不自由な状況下での戦い――監督の言葉の端々から、それが歯がゆいものであった事が伝わってくる報告であった。
卒業・退団選手達の来季
まず、U23を終えてチーム卒業となる選手は3名。蠣崎優仁、松田祥位、小出樹が新たな所属先へと羽ばたく。かつて兄・藍道と共に入団し、9年もの間エカーズで走った蠣崎は、そのジャージを脱ぐものの、引き続き自力で欧州でのチャレンジを続ける。松田はチームブリヂストンサイクリングへ加入。来季はその脚質を活かし、トラックの中距離(チームパーシュート)を中心に走り、パリ五輪出場を目指す。ラヴニール唯一の完走者で、全日本ロード男子U23でも積極的に逃げを見せていた小出は、国内強豪のキナンサイクリングチームへ向かう。
1学年下の平井光介は大学卒業まで1年を残しているものの「3年時の全日本までに結果が出なければ引退する」と言う話を浅田監督と当初より交わしており、現時点で選手を引退し、社会人へのステップに備える事となった。スペインの強豪クラブチーム「アンティガ・カーザ・ベルソラジローナ」で走った湯浅博貴も1年を残し、ヴィクトワール広島へ移籍。国内レースへと焦点を切り替える。
AG2RシトロエンU23に所属していた津田悠義は、既報の通り来季はEFエデュケーション・NIPPOディベロップメントチームへ移籍。再び欧州ワールドチーム傘下でトップチーム昇格を目指して戦うこととなる。
春先から国内レースで話題をさらった留目夕陽も退団となる。来季所属先等は未定だ。監督もその人並み外れた持久力を惜しみ、「また気持ちも身体も回復して、改めて世界を目指してほしい」とエールを送った。
高校生の藤本怜は、来季、名門・松山学院での最後のシーズンを迎える。レギュラーを獲る事が非常に難しい強豪校だけに「高校での活動に一旦専念し、持ち前のスピード力でレギュラーを勝ち取り、次のステップへ繋げて欲しい」と監督に送り出される。退団ではなく、所属を一時中断する形だ。
EQADS卒業・退団選手
来季体制
現時点で来季所属が決まっている選手は以下の通りだ。スタッフの陣容は今季体制を維持。昨年末の発表以降に北見裕史ストレングスコーチが加わっている。EQADS 2022年度 所属選手
氏名 | 生まれ年 | 所属年数 | 所属形態 | 正所属チーム | 登録都道府県 | JPT登録 | JCF強化指定 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
川崎三織 | 2001 | 2 | 正所属 | EQADS | 埼玉県 | ● | ● |
西本健三郎 | 2002 | 1 | 正所属 | EQADS | 東京都 | ● | ● |
長川達也 | 2002 | 1 | 正所属 | EQADS | 埼玉県 | ● | |
小笠原匠海 | 2000 | 4 | 準所属 | Dordogne Sud Cyclisme | 東京都 | ● | |
山田拓海 | 2001 | 1 | 準所属 | 早稲田大学 | 長野県 | ● | ● |
馬場慶三郎 | 2002 | 新規 | 正所属 | EQADS | 東京都 | ● | |
町田朝陽 | 2004 | 新規 | 正所属 | EQADS | 福島県 | ● |
EQADS 2022年度 スタッフ
氏名 | 役職 | 主な担当業務 | 資格等 |
---|---|---|---|
浅田顕 | 監督 | 総括・強化プログラム実施 | (公財)日本スポーツ協会 コーチ資格保有 |
山崎健一 | マネージャー | 広報、契約、海外業務担当 | 国際自転車競技連合公認 選手代理人 |
相川将 | コーチ | 国内レース・トレーニング担当 | (公財)日本スポーツ協会 コーチ資格保有 |
小俣康司 | コーチ | 国内レース・トレーニング担当 | (公財)日本スポーツ協会 コーチ資格保有 |
香立武士 | コーチ | トレーニング・ポジション担当 | (公財)日本スポーツ協会 コーチ資格保有 |
市川貴大 | メカニック | メカサポート・ロジスティック | (一社)自転車協会 安全整備士、自転車技士 |
西幹祐太 | トレーナー | フィジカルコンディショニング | 理学療法士 |
北見裕史 | ストレングスコーチ | 筋力トレーニングプランと指導 | スーパーKアスリートラボ |
GONZALES Denis | 欧州活動コーディネイター | 欧州におけるチームサポート | 元プロチーム(USポスタル)スポーツディレクター |
蠣崎らと同学年の小笠原匠海は、早生まれ(2000年生)のため、来季もエカーズに準所属しながらドルドーニュ・スッド・シクリズムの一員として走ることが決まっている。シーズン序盤の怪我に泣いた川崎三織も来季はU23最終年を迎える。リハビリも兼ねたオフトレに入るが、浅田監督は来季の飛躍に期待を寄せる。
飯田風越高時代には全日本TTジュニアでも優勝経験がある山田拓海については、「元々高いスピード持続力とパンチ力を有するが、今シーズンはエカーズの活動でより持久力の範囲を広げた」との監督評。来季は国際的評価を得られるレースでの成績を狙ってもらいたいとしている。
西本健三郎は今季の欧州挑戦は叶わなかったものの、JBCFのレースでエリート選手に混じり、何度か上位入賞を果たした。来季は逃げでの牽引力と粘り強さを武器に欧州で走るチャンスを掴み、評価の得られる実績を上げるのが目標となる。
長川達哉は自転車競技歴が短く、まだ結果を残すに至ってはいないが、理想的なスポーツ履歴と取り組みの真剣さがあると言う。浅田監督は「今季の悔しさと強い思いをバネに、中途半端な選手をぶち抜いていってほしい」と成長を期待する。
新規所属は、馬場慶三郎と町田朝陽。馬場は、昨夏に設立されたエカーズの弟分とも言える「埼玉ユース自転車競技部」から昇格と言う形でエカーズに。「ユースで1年やらせていただいて、エカーズにチームが変わったのは僕にとってかなり大きなこと。リザルトを残したいと言う気持ちが強い」と意気込む。
来年3月に学法石川高校を卒業予定の町田朝陽は、チームの国内拠点がある埼玉県東松山市近郊の大学に通いながら、正所属選手として走る。
なお、この後に語られた活動計画から伺うに、シーズン途中に所属選手が増えることも大いにありそうだ。
「どういう立場に立ったら選手が強くなれるか。日本ではやらないでも逃げられるが、ヨーロッパへ行ったらやるしかない。ストレートに世界を目指して、ネイションズカップへ行ったら、強豪国の選手達と肩を並べて走れる。そんな環境をどんどん提供していきたいと考えています」
その上で、チームとしては「1人でも多くの日本代表選手を輩出し、個々のシーズン目標を達成すること」と定めている。加えて、新たな取り組みとして、外部選手の受け入れを始める。毎週実施しているトレーニングプログラムに外部の選手にも参加してもらい、刺激を与え合う中で個々のレベルアップを図る。対象はトップレベルを目指す首都圏在住の高校生や大学生で、最大30人程度を想定しているようだ。
トライアウトも秋を待たずに、通年実施する体制へと変わる。他競技からの転向やシーズン途中での採用枠も設け、個別招集、即日評価、課題提供を行う流れを作りたいとしている。コロナ禍と言う状況も鑑みて、オンラインでの実施もあり得るとのこと。
そして、最後に語られたのが「ユースのうちからグローバルスタンダードへ」という意識改革だ。グローバルスタンダードとは何か。浅田監督から語られた内容をまとめるとこうだ。
「世界の視点から見た時、ロードレースは自転車競技の花形であり完成形です。入りは何でもいい。最後は花形のロードレースに到達すれば良いと思っています。
そのロードレースにおける選手の成長過程やピークには特徴があります。ピーク年齢の高いスポーツであるロードレースでは、導入から頂点までの成長に合わせた長期的なプランが必要です。早ければ良いと言うスポーツではないし、早く仕上げることも出来ません。
我々は過去にも選手としてのピークが早すぎてその後伸び悩んでしまったと言う事例を沢山見てきています。エカーズでは、早期から世界を意識しつつ、かつ急ぎ過ぎず、成長時期の個人差も考慮した上でカテゴリーに応じた段階的な選手強化を行っています。若い選手達にはもちろん、特に保護者の方々にもこういったお話をさせていただき、成長を見守っていただきたいと思っています」
即ち、世界に通用するロード選手を生み出すには、日本国内で完結するプランではなく、より若いうちにそこへの道筋を示し、長期的視野に立った育成と目標を意識させる必要があると言うことになろうか。
「コロナ禍もまだ続きます。こればかりはどうなるかわかりませんが、海外に行けないからとヘコんでしまうんでなく、来年もBプランを備えて活動していく」としている。
「新城は来季38になろうかと言う年齢にも関わらず、自己ベストの体調に持ってきました。練習だけ見ても、本当にこんな練習する選手がいるんだなと言う程です。実際合流してからはさらに熱が入りました。
そして、やはり驚かされたのは本番での新城の走り。35位と言うのはレースの中で埋もれてしまったかのように見えますが、実際はそうじゃありません。最後の三国峠で集団がバラバラになった時、脱落した他の選手をどんどんパスしながら上っていく新城を見て、今まで見た中でも一番凄味を感じました。
彼は準備、追い込み、集中力など全てにおいて群を抜いている。今、彼に代われる選手は日本はもちろんアジアにもいませんし、ヨーロッパの中でも高い位置にあります」そう評して浅田監督は話を締めくくった。
報告会は、田之頭宏明後援会長の挨拶、浅田監督の挨拶と続き、閉会となった。挨拶の中で田之頭会長は、エキップアサダ後援会が2006年末の結成から15周年を迎えると伝えた。
当時プロチーム解体の危機を救うため立ち上がった有志による後援活動は、かつての規模ではないものの、新たな会員も生み出しながら長きにわたり続けられている。これはチームを率いる浅田監督の高い志と人徳に他ならぬものではあるが、同様に後援会員個々の諦めぬ志にも大いに敬意を表すべきであろう。「あと40年はやる」と話す浅田監督のバイタリティを底支えする後援会は、この先も共にその歩みを続けるはずだ。
text: Yuichiro Hosoda
資料提供: EQADS/Cyclisme Japon
飯田風越高時代には全日本TTジュニアでも優勝経験がある山田拓海については、「元々高いスピード持続力とパンチ力を有するが、今シーズンはエカーズの活動でより持久力の範囲を広げた」との監督評。来季は国際的評価を得られるレースでの成績を狙ってもらいたいとしている。
西本健三郎は今季の欧州挑戦は叶わなかったものの、JBCFのレースでエリート選手に混じり、何度か上位入賞を果たした。来季は逃げでの牽引力と粘り強さを武器に欧州で走るチャンスを掴み、評価の得られる実績を上げるのが目標となる。
長川達哉は自転車競技歴が短く、まだ結果を残すに至ってはいないが、理想的なスポーツ履歴と取り組みの真剣さがあると言う。浅田監督は「今季の悔しさと強い思いをバネに、中途半端な選手をぶち抜いていってほしい」と成長を期待する。
新規所属は、馬場慶三郎と町田朝陽。馬場は、昨夏に設立されたエカーズの弟分とも言える「埼玉ユース自転車競技部」から昇格と言う形でエカーズに。「ユースで1年やらせていただいて、エカーズにチームが変わったのは僕にとってかなり大きなこと。リザルトを残したいと言う気持ちが強い」と意気込む。
来年3月に学法石川高校を卒業予定の町田朝陽は、チームの国内拠点がある埼玉県東松山市近郊の大学に通いながら、正所属選手として走る。
なお、この後に語られた活動計画から伺うに、シーズン途中に所属選手が増えることも大いにありそうだ。
根元は揺るがず、新しい流れを ユースのうちからグローバルスタンダードへ
多くの選手が抜ける来季エカーズだが、画像の表にもある通り、根幹をなす方向性は変わらず、基本プログラムもそれに根ざしたものとなっている。セカンドキャリアに向けての学習や語学学習も義務として課されており、欧州での単独競技活動を行う事も自ずと視野に入った内容だ。「どういう立場に立ったら選手が強くなれるか。日本ではやらないでも逃げられるが、ヨーロッパへ行ったらやるしかない。ストレートに世界を目指して、ネイションズカップへ行ったら、強豪国の選手達と肩を並べて走れる。そんな環境をどんどん提供していきたいと考えています」
その上で、チームとしては「1人でも多くの日本代表選手を輩出し、個々のシーズン目標を達成すること」と定めている。加えて、新たな取り組みとして、外部選手の受け入れを始める。毎週実施しているトレーニングプログラムに外部の選手にも参加してもらい、刺激を与え合う中で個々のレベルアップを図る。対象はトップレベルを目指す首都圏在住の高校生や大学生で、最大30人程度を想定しているようだ。
トライアウトも秋を待たずに、通年実施する体制へと変わる。他競技からの転向やシーズン途中での採用枠も設け、個別招集、即日評価、課題提供を行う流れを作りたいとしている。コロナ禍と言う状況も鑑みて、オンラインでの実施もあり得るとのこと。
そして、最後に語られたのが「ユースのうちからグローバルスタンダードへ」という意識改革だ。グローバルスタンダードとは何か。浅田監督から語られた内容をまとめるとこうだ。
「世界の視点から見た時、ロードレースは自転車競技の花形であり完成形です。入りは何でもいい。最後は花形のロードレースに到達すれば良いと思っています。
そのロードレースにおける選手の成長過程やピークには特徴があります。ピーク年齢の高いスポーツであるロードレースでは、導入から頂点までの成長に合わせた長期的なプランが必要です。早ければ良いと言うスポーツではないし、早く仕上げることも出来ません。
我々は過去にも選手としてのピークが早すぎてその後伸び悩んでしまったと言う事例を沢山見てきています。エカーズでは、早期から世界を意識しつつ、かつ急ぎ過ぎず、成長時期の個人差も考慮した上でカテゴリーに応じた段階的な選手強化を行っています。若い選手達にはもちろん、特に保護者の方々にもこういったお話をさせていただき、成長を見守っていただきたいと思っています」
即ち、世界に通用するロード選手を生み出すには、日本国内で完結するプランではなく、より若いうちにそこへの道筋を示し、長期的視野に立った育成と目標を意識させる必要があると言うことになろうか。
「コロナ禍もまだ続きます。こればかりはどうなるかわかりませんが、海外に行けないからとヘコんでしまうんでなく、来年もBプランを備えて活動していく」としている。
群を抜く新城幸也の凄味
この後は後援会員からの質問を受けたQ&Aコーナーや、日本代表監督として臨んだ東京オリンピックの裏話などで盛り上がった。後援会員限定と言う場でこそ語られた内容であるため、ここでその多くは明かせないが、1つだけエピソードを。オリンピックでの新城幸也の走りは、監督の長い付き合いの中でも格別だったと言う。「新城は来季38になろうかと言う年齢にも関わらず、自己ベストの体調に持ってきました。練習だけ見ても、本当にこんな練習する選手がいるんだなと言う程です。実際合流してからはさらに熱が入りました。
そして、やはり驚かされたのは本番での新城の走り。35位と言うのはレースの中で埋もれてしまったかのように見えますが、実際はそうじゃありません。最後の三国峠で集団がバラバラになった時、脱落した他の選手をどんどんパスしながら上っていく新城を見て、今まで見た中でも一番凄味を感じました。
彼は準備、追い込み、集中力など全てにおいて群を抜いている。今、彼に代われる選手は日本はもちろんアジアにもいませんし、ヨーロッパの中でも高い位置にあります」そう評して浅田監督は話を締めくくった。
15周年を迎えるエキップアサダ後援会
報告会は、田之頭宏明後援会長の挨拶、浅田監督の挨拶と続き、閉会となった。挨拶の中で田之頭会長は、エキップアサダ後援会が2006年末の結成から15周年を迎えると伝えた。
当時プロチーム解体の危機を救うため立ち上がった有志による後援活動は、かつての規模ではないものの、新たな会員も生み出しながら長きにわたり続けられている。これはチームを率いる浅田監督の高い志と人徳に他ならぬものではあるが、同様に後援会員個々の諦めぬ志にも大いに敬意を表すべきであろう。「あと40年はやる」と話す浅田監督のバイタリティを底支えする後援会は、この先も共にその歩みを続けるはずだ。
text: Yuichiro Hosoda
資料提供: EQADS/Cyclisme Japon
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