UCIシクロクロスワールドカップ2連戦の2日目は、ナミュール城塞の過酷なアップダウンコースが舞台。勝利から遠のいていたマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が今季初のビッグレース制覇を遂げた。
女子レース:ベッツェマを寄せ付けず、ブラントが4年連続ナミュール勝利
過酷なUCIシクロクロスワールドカップ2連戦。前日土曜日にルクフェン(オランダ)での第10戦を終えた選手たちは、ベルギーに渡りおよそ150km離れたナミュールへ。城塞を舞台にした有名コースでUCIシクロクロスワールドカップ第11戦が開催された。
名物のキャンバー区間を走るルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) photo:CorVos
長く険しいメインストレートの登り、絶え間なく続く高低差の大きなアップダウン、斜面を横切る長いオフキャンバー、パンクを誘発させる露出した木の根、担ぎセクションなど難関セクションが目まぐるしく現れる城塞コースは今年改修が施され、キャンバー区間や激下りが追加されたことでより難易度がアップ。しかもこの日は雨によって一瞬も気の抜けない100%泥コンディションに変貌を遂げた。
女子レースには、スペインでのチーム合宿からレース復帰したカータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)を含む72名がスタート。このナミュールで2018年から連勝しているルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が飛び出し、デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が追従。アグレッシブな走りが光るU23ランキングリーダーのパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス)がその後方に続いた。
前日のルクフェンと異なり、セクションの得手不得手で大差が付く難関コース(女子の平均スピード16km/h台)でブラントの走りは圧倒的だった。転倒者が続出する路面で堅実に駒を進め、後続選手を追いつかせない。最終周回突入時には2番手ベッツィマと21秒、3番手ピーテルスとは1分以上もの差を付けた。
3番手を走るパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
ナミュールで4年連続勝利を挙げたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) photo:CorVos
2位でフィニッシュするデニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) photo:CorVos
3位フィニッシュを喜ぶパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第12戦 女子表彰台 photo:CorVos
不調からの脱出を狙うセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)が徐々にポジションを上げ、一方ヴァスがリタイアするのを尻目に、終始安定した走りを貫いたブラントが独走勝利。このナミュール城塞で4年連続となる勝利を遂げた。
「この大好きなコースで4年連続勝利できるなんて、今の気持ちを表現できないくらい嬉しい。今日はミスをしないことが大切だったけれど、オフキャンバーは上手く走れず周回を重ねるごとに疲れでコントロールできなかった。ベッツェマのプレッシャーはとても大きくて、最初に大きなリードを得たのにそれ以降は広がらず、ミスをするたびに詰められる展開だった」と、簡単な4連勝ではなかったことを強調している。
男子エリート:ピドコックを退け、ファントーレンハウトが今季ビッグレース初勝利
クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム)のダッシュで動き出した男子エリートレース。後方スタートの前日勝者トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が追い上げを図る一方、泥を得意とするトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が独走態勢に持ち込んだ。
順調な滑り出しを見せたトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)だが、パンクと落車に泣く photo:CorVos
ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)やエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)がコースに手を焼く一方、アールツは15秒ものリードを獲得。このままリードを重ねていくかと思いきや、混戦の2位グループから抜け出したピドコックが徐々にタイム差を詰めにかかった。
全7周回中の4周目にピドコックがアールツの背中を捉え、続いてマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)にもパスされてしまう。突如ペースを失ったアールツの前輪はパンクしており、さらにピットまで距離を残していたため勝負圏外への脱落を喫した。
先頭に立つマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) photo:CorVos
「今日は脚が無かった」と言うトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
歓喜の表情でフィニッシュに飛び込むマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) photo:CorVos
こうして勝負はピドコックとファントーレンハウトの2人に絞られた。ピドコックはファントーレンハウトのバイク交換時に加速してリードを得ていたものの、名物のオフキャンバーで前転してしまう。一転追う立場に立たされたイギリスチャンピオンだったが、更なる落車も重なりファントーレンハウトとの差は開いていく一方だった。
最終周回をスピーディーに駆け抜け、フィニッシュラインに辿り着いたファントーレンハウトが今季初のビッグレース制覇。表彰台に乗り続けるも、頂点を逃し続けてきた28歳が待望の勝利を掴み取った。
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第12戦 男子エリート表彰台 photo:CorVos
「特別な気分だよ、長い間勝てると信じていたけれど、ピドコックは手に負えないと思っていた。今日勝てたのはファンのおかげ。僕のキャリアで最大の勝利の一つだ」と、勝利した瞬間顔を覆ったファントーレンハウト。一方「今日は昨日と身体が違っていて、最後は燃料がカラになってしまった。マイケルの後ろにつけていたけれど、ミスして以降は全く追いつけなかった。火がついたように走っていた彼に続く2位は悪くない」と、2位に入ったピドコックは振り返っている。
女子レース:ベッツェマを寄せ付けず、ブラントが4年連続ナミュール勝利
過酷なUCIシクロクロスワールドカップ2連戦。前日土曜日にルクフェン(オランダ)での第10戦を終えた選手たちは、ベルギーに渡りおよそ150km離れたナミュールへ。城塞を舞台にした有名コースでUCIシクロクロスワールドカップ第11戦が開催された。

長く険しいメインストレートの登り、絶え間なく続く高低差の大きなアップダウン、斜面を横切る長いオフキャンバー、パンクを誘発させる露出した木の根、担ぎセクションなど難関セクションが目まぐるしく現れる城塞コースは今年改修が施され、キャンバー区間や激下りが追加されたことでより難易度がアップ。しかもこの日は雨によって一瞬も気の抜けない100%泥コンディションに変貌を遂げた。
女子レースには、スペインでのチーム合宿からレース復帰したカータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス)を含む72名がスタート。このナミュールで2018年から連勝しているルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が飛び出し、デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が追従。アグレッシブな走りが光るU23ランキングリーダーのパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス)がその後方に続いた。
前日のルクフェンと異なり、セクションの得手不得手で大差が付く難関コース(女子の平均スピード16km/h台)でブラントの走りは圧倒的だった。転倒者が続出する路面で堅実に駒を進め、後続選手を追いつかせない。最終周回突入時には2番手ベッツィマと21秒、3番手ピーテルスとは1分以上もの差を付けた。





不調からの脱出を狙うセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)が徐々にポジションを上げ、一方ヴァスがリタイアするのを尻目に、終始安定した走りを貫いたブラントが独走勝利。このナミュール城塞で4年連続となる勝利を遂げた。
「この大好きなコースで4年連続勝利できるなんて、今の気持ちを表現できないくらい嬉しい。今日はミスをしないことが大切だったけれど、オフキャンバーは上手く走れず周回を重ねるごとに疲れでコントロールできなかった。ベッツェマのプレッシャーはとても大きくて、最初に大きなリードを得たのにそれ以降は広がらず、ミスをするたびに詰められる展開だった」と、簡単な4連勝ではなかったことを強調している。
男子エリート:ピドコックを退け、ファントーレンハウトが今季ビッグレース初勝利
クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム)のダッシュで動き出した男子エリートレース。後方スタートの前日勝者トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が追い上げを図る一方、泥を得意とするトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が独走態勢に持ち込んだ。

ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)やエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)がコースに手を焼く一方、アールツは15秒ものリードを獲得。このままリードを重ねていくかと思いきや、混戦の2位グループから抜け出したピドコックが徐々にタイム差を詰めにかかった。
全7周回中の4周目にピドコックがアールツの背中を捉え、続いてマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)にもパスされてしまう。突如ペースを失ったアールツの前輪はパンクしており、さらにピットまで距離を残していたため勝負圏外への脱落を喫した。



こうして勝負はピドコックとファントーレンハウトの2人に絞られた。ピドコックはファントーレンハウトのバイク交換時に加速してリードを得ていたものの、名物のオフキャンバーで前転してしまう。一転追う立場に立たされたイギリスチャンピオンだったが、更なる落車も重なりファントーレンハウトとの差は開いていく一方だった。
最終周回をスピーディーに駆け抜け、フィニッシュラインに辿り着いたファントーレンハウトが今季初のビッグレース制覇。表彰台に乗り続けるも、頂点を逃し続けてきた28歳が待望の勝利を掴み取った。

「特別な気分だよ、長い間勝てると信じていたけれど、ピドコックは手に負えないと思っていた。今日勝てたのはファンのおかげ。僕のキャリアで最大の勝利の一つだ」と、勝利した瞬間顔を覆ったファントーレンハウト。一方「今日は昨日と身体が違っていて、最後は燃料がカラになってしまった。マイケルの後ろにつけていたけれど、ミスして以降は全く追いつけなかった。火がついたように走っていた彼に続く2位は悪くない」と、2位に入ったピドコックは振り返っている。
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第11戦 女子結果
1位 | ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | 53:07 |
2位 | デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +0:20 |
3位 | パック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス) | +1:16 |
4位 | フェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +1:31 |
5位 | セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス) | +1:34 |
6位 | エレーヌ・クラウツェル(フランス、A.S.バイククロスチーム) | +1:41 |
7位 | インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、777) | +1:49 |
8位 | シリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +1:53 |
9位 | シルヴィア・ペルシコ(イタリア) | +1:54 |
10位 | マーガリー・ロシェット(カナダ、スペシャライズド・フィードバックスポーツ) | +1:56 |
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第11戦 男子結果
1位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | 59:28 |
2位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:36 |
3位 | トーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:51 |
4位 | クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム) | +1:38 |
5位 | エリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +2:01 |
6位 | ダーン・ソエテ(ベルギー、CXチームデスシャフト・グループヘンス・マースコンテナーズ) | +2:06 |
7位 | ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +2:15 |
8位 | コルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンス・サーカスCXチーム) | +2:40 |
9位 | ジョシュア・ドゥバウ(フランス) | +2:44 |
10位 | ティモン・リュエッグ(スイス、クロスチームレジェンドル) | +2:46 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
Amazon.co.jp