2021/12/18(土) - 11:15
全日本選手権トラック開催期間中の12月12日、東京五輪を終えての総括と、次のパリ五輪に向けての課題などについて、ハイパフォーマンスセンター(HPCJC)ディレクターのミゲル・トーレス氏をはじめとした監督・コーチが出席しての記者会見が催された。ブノワ・ペドゥ氏、短距離ヘッドコーチのジェイソン・ニブレット氏、中距離ヘッドコーチのクレイグ・グリフィン氏のコメントを紹介する。
トラック種目の選手強化を目的として伊豆ベロドロームを拠点に設立された「HPCJC(High Performance Center of Japan Cycling)」は、世界選手権や東京五輪でのメダル獲得を目標にこれまで活動してきた。全日本選手権3日目の競技開始前に行われた会見では、これまでの総括と今後について、各部門の責任者がコメントした。
HPCJCディレクター ミゲル・トーレス氏 「日本はハイレベルな選手を生み出せる国になった」
我々の目的は、日本を世界のトップにし、五輪と世界選手権でメダルを獲得できるようになることです。この伊豆ベロドロームを拠点とし、すでにある設備や競輪養成所の設備を活かしてトレーニング環境を整えました。選手とコーチだけでなく、科学的分野、医学的分野、メカニック、運営、全ての面でプロフェッショナルな人材を集め、短距離、中距離共にコンベンショナルな環境を作ることが出来ました。
東京五輪は、そうして生み出した新しいモデルを実践する場となりました。残念ながら、期待通りのメダル獲得にはなりませんでしたが、世界選手権では昨年の梶原悠未選手の金メダルをはじめ、今年の世界選手権では若手選手の佐藤水菜選手が銀メダルを獲得しました。これまでの取り組みが競技の成績に現れ、日本はハイレベルな選手を生み出せる国になったと思います。
HPCJCは、パリ五輪に向けて安定した組織にならないといけません。これを続けるには、競技団体、企業など、多くの方の協力をお願いしたいです。
HPCJCテクニカルディレクター ブノワ・ペドゥ氏「東京に向けてやってきたことがパリへの一歩」
最初にここに来た時はゼロからのスタートでした。1年目、香港での世界選手権では我々のレベルを知る機会となったが、トップは遥か遠いところにありました。でも私は日本には可能性があると以前から感じていたので、ミゲル・トーレス氏をはじめHPCJCと協力しながら、肉体的・精神的に競争力のある選手を育てることに力を入れてきました。
他の国に比べ15年は遅れていた分を短期間で埋めるためにはHPCJCのサポートが必要だったし、機材やウェアの開発には時間とエネルギーが必要でした。おかげで必要な人材を集めることが出来て、ブリヂストンが競争力のある自転車を開発してくれました。同時に、選手の競技力向上にも力を入れました。短距離では競輪選手が多いので、競技と両立しながら出来ることを証明することも大切なことでした。
パリ五輪に向けては、東京に向けてやってきたことがパリのための第1歩でもあります。例えば、イギリスで選手強化プログラムが出来てから成績が出るまで6年から7年もかかっていますから、成績が見えるまでは時間がかかります。今年の世界選手権では女子ケイリンで初めて佐藤選手がメダルを獲りましたが、佐藤選手がナショナルチームに入ったのは2年前。これは、東京に向けての準備と並行して、パリへの準備も進めていたことの表れです。これは、上の世代の選手が引退したら、次の世代の選手が育ってくるように競輪養成所と協力してやってきたことでもあります。
短距離も中距離も、パリではメダルを目指します。みんなが協力することで、絶対良い成績が出せると思います。
短距離ヘッドコーチ ジェイソン・ニブレット氏「パリではケイリンとスプリントでメダルの可能性」
東京五輪までは、専門家チームの支えがあって成績を向上させることが出来ました。パリ五輪に向けては、それぞれの分野でさらに改善して伸ばしていく必要があります。
パリ五輪の出場枠がまだ確定していないので、メダルの可能性があるケイリンとスプリントをターゲットとして力を入れていきたいと考えています。短距離は若い選手に入れ替わってきているのでまだ評価している段階にあり、今後世界のステージで戦う機会を与えて見きわめていきたいと思います。
今回の全日本選手権前日にトライアルを行いました。未来の才能ある選手を発掘することはとても重要で、この全日本選手権もその機会となっています。普段見ない選手のポテンシャルを知る機会であり、選手にとってもアピールする良い機会となっているので、じっくり見ています。
中距離ヘッドコーチ クレイグ・グリフィン氏「パリに向けて、新しいものを求めて改善していかねばならない」
機材については、我々のスポンサーやパートナーのおかげで世界レベルと同じくらいの開発が出来たと思います。我々の仕事は、選手を肉体的・精神的にレースできる状態に準備することでした。コロナ禍で海外レースに参加することが出来ず、五輪前18ヶ月で1回しか国際大会に参加することが出来ませんでしたが、ホーム開催の利を活かして選手がトレーニングに集中できる環境づくりが出来たと思います。
パリ五輪はあっという間にやってきます。今は早急に東京五輪までを評価し、それを踏まえて新しいアイデアを生み出し、実施していくことが必要となります。これまでと同じことをするのは絶対してはいけないことで、世界はトレーニングや機材などの新しい方法を開発しています。我々も常に新しいものを求めて改善していかねばなりません。
これまでを見ても、男子・女子共にオムニアムがパリでも有力と思います。男子のチームパーシュートも競争力のあるチームを作ることが出来ると思っています。新しい選手が入ってきているので、出場枠など今後の動向を見ながら戦略を決めていきたいと考えています。
ただ最近の傾向としてオムニアムやマディソンには、ロードレースのワールドチームから参加する選手が増え、レースペースが非常に高くなっています。ロードに特化した体力が必要になっているので、トレーニング方法を変える必要があると思っています。
日本では、高校、大学には自転車競技人口が多いので、タレント発掘合宿やトライアルにもっと参加してほしいです。今大会でも、スクラッチ(全日本選手権初日に開催)で、レース終盤にアタックした高校生が印象的だったので話を聞きに行きました。なぜトライアルに参加しないのか聞いたら、「自分のレベルがまだ足りないから」と言うので、ショックでした。だから、彼をタレント発掘合宿に招待することにしました。
ナショナルチームのドアはいつでもオープンしているので、自分の力を見せたいという選手はいつでも歓迎します。
text:Satoru kato
トラック種目の選手強化を目的として伊豆ベロドロームを拠点に設立された「HPCJC(High Performance Center of Japan Cycling)」は、世界選手権や東京五輪でのメダル獲得を目標にこれまで活動してきた。全日本選手権3日目の競技開始前に行われた会見では、これまでの総括と今後について、各部門の責任者がコメントした。
HPCJCディレクター ミゲル・トーレス氏 「日本はハイレベルな選手を生み出せる国になった」
我々の目的は、日本を世界のトップにし、五輪と世界選手権でメダルを獲得できるようになることです。この伊豆ベロドロームを拠点とし、すでにある設備や競輪養成所の設備を活かしてトレーニング環境を整えました。選手とコーチだけでなく、科学的分野、医学的分野、メカニック、運営、全ての面でプロフェッショナルな人材を集め、短距離、中距離共にコンベンショナルな環境を作ることが出来ました。
東京五輪は、そうして生み出した新しいモデルを実践する場となりました。残念ながら、期待通りのメダル獲得にはなりませんでしたが、世界選手権では昨年の梶原悠未選手の金メダルをはじめ、今年の世界選手権では若手選手の佐藤水菜選手が銀メダルを獲得しました。これまでの取り組みが競技の成績に現れ、日本はハイレベルな選手を生み出せる国になったと思います。
HPCJCは、パリ五輪に向けて安定した組織にならないといけません。これを続けるには、競技団体、企業など、多くの方の協力をお願いしたいです。
HPCJCテクニカルディレクター ブノワ・ペドゥ氏「東京に向けてやってきたことがパリへの一歩」
最初にここに来た時はゼロからのスタートでした。1年目、香港での世界選手権では我々のレベルを知る機会となったが、トップは遥か遠いところにありました。でも私は日本には可能性があると以前から感じていたので、ミゲル・トーレス氏をはじめHPCJCと協力しながら、肉体的・精神的に競争力のある選手を育てることに力を入れてきました。
他の国に比べ15年は遅れていた分を短期間で埋めるためにはHPCJCのサポートが必要だったし、機材やウェアの開発には時間とエネルギーが必要でした。おかげで必要な人材を集めることが出来て、ブリヂストンが競争力のある自転車を開発してくれました。同時に、選手の競技力向上にも力を入れました。短距離では競輪選手が多いので、競技と両立しながら出来ることを証明することも大切なことでした。
パリ五輪に向けては、東京に向けてやってきたことがパリのための第1歩でもあります。例えば、イギリスで選手強化プログラムが出来てから成績が出るまで6年から7年もかかっていますから、成績が見えるまでは時間がかかります。今年の世界選手権では女子ケイリンで初めて佐藤選手がメダルを獲りましたが、佐藤選手がナショナルチームに入ったのは2年前。これは、東京に向けての準備と並行して、パリへの準備も進めていたことの表れです。これは、上の世代の選手が引退したら、次の世代の選手が育ってくるように競輪養成所と協力してやってきたことでもあります。
短距離も中距離も、パリではメダルを目指します。みんなが協力することで、絶対良い成績が出せると思います。
短距離ヘッドコーチ ジェイソン・ニブレット氏「パリではケイリンとスプリントでメダルの可能性」
東京五輪までは、専門家チームの支えがあって成績を向上させることが出来ました。パリ五輪に向けては、それぞれの分野でさらに改善して伸ばしていく必要があります。
パリ五輪の出場枠がまだ確定していないので、メダルの可能性があるケイリンとスプリントをターゲットとして力を入れていきたいと考えています。短距離は若い選手に入れ替わってきているのでまだ評価している段階にあり、今後世界のステージで戦う機会を与えて見きわめていきたいと思います。
今回の全日本選手権前日にトライアルを行いました。未来の才能ある選手を発掘することはとても重要で、この全日本選手権もその機会となっています。普段見ない選手のポテンシャルを知る機会であり、選手にとってもアピールする良い機会となっているので、じっくり見ています。
中距離ヘッドコーチ クレイグ・グリフィン氏「パリに向けて、新しいものを求めて改善していかねばならない」
機材については、我々のスポンサーやパートナーのおかげで世界レベルと同じくらいの開発が出来たと思います。我々の仕事は、選手を肉体的・精神的にレースできる状態に準備することでした。コロナ禍で海外レースに参加することが出来ず、五輪前18ヶ月で1回しか国際大会に参加することが出来ませんでしたが、ホーム開催の利を活かして選手がトレーニングに集中できる環境づくりが出来たと思います。
パリ五輪はあっという間にやってきます。今は早急に東京五輪までを評価し、それを踏まえて新しいアイデアを生み出し、実施していくことが必要となります。これまでと同じことをするのは絶対してはいけないことで、世界はトレーニングや機材などの新しい方法を開発しています。我々も常に新しいものを求めて改善していかねばなりません。
これまでを見ても、男子・女子共にオムニアムがパリでも有力と思います。男子のチームパーシュートも競争力のあるチームを作ることが出来ると思っています。新しい選手が入ってきているので、出場枠など今後の動向を見ながら戦略を決めていきたいと考えています。
ただ最近の傾向としてオムニアムやマディソンには、ロードレースのワールドチームから参加する選手が増え、レースペースが非常に高くなっています。ロードに特化した体力が必要になっているので、トレーニング方法を変える必要があると思っています。
日本では、高校、大学には自転車競技人口が多いので、タレント発掘合宿やトライアルにもっと参加してほしいです。今大会でも、スクラッチ(全日本選手権初日に開催)で、レース終盤にアタックした高校生が印象的だったので話を聞きに行きました。なぜトライアルに参加しないのか聞いたら、「自分のレベルがまだ足りないから」と言うので、ショックでした。だから、彼をタレント発掘合宿に招待することにしました。
ナショナルチームのドアはいつでもオープンしているので、自分の力を見せたいという選手はいつでも歓迎します。
text:Satoru kato
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