2021/10/23(土) - 19:09
全ての逃げを吸収して迎えた最終周回、予定外の早めのアタックを仕掛けたと言う兒島直樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling)。メイン集団との差はみるみる広がっていき、最終周回の12kmを単独で逃げ切って優勝を決めた。男子U23の詳細レポート。
朝から秋の青空が広がった広島県中央森林公園 photo:Satoru Kato
全日本選手権2日目、前日の曇り空がうそのように朝から秋の青空が広がった。それでも風の冷たさは変わらず、まだ朝の寒さが残る午前8時に、男子U23のレースがスタートした。
1周目のフェンストンネルでのアタック合戦 photo:Satoru Kato
2周めに向かう集団の先頭 留目夕陽(中央大学)らが先頭を引いてペースを上げる photo:Makoto AYANO
集団先頭で積極的に動く天野壮悠(シマノレーシング) photo:Satoru Kato
1周12.3kmのコースを10周・123kmのレースは、スタート直後からアタック合戦が始まる。天野壮悠(シマノレーシング)、留目夕陽(中央大学)、小出樹(京都産業大学)、平井光介(EQADS)、山田拓海(早稲田大学)らが集団前方で積極的に動くも、2周以上続く逃げにはつながらない状態が続く。
レース前半はアタックと吸収を繰り返しながら、1周17分台の速いペースで周回を重ねていく。
集団からの飛び出しが繰り返されるも、すぐに吸収されていく photo:Satoru Kato
6周目に単独で飛び出した河野翔輝(TEAM BRIDGESTONE Cycling) photo:Satoru Kato
レース後半に入った6周目、集団の動きが落ち着いてペースが緩んだところで河野翔輝(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が単独で飛び出し、メイン集団に1分の差をつけて先行する。7周目に入ると、小出、天野、佐藤宇志(那須ブラーゼン)、加藤遼(東京工業大学)の4名が追走。メイン集団も続いて追走し、残り3周となる8周目に吸収する。そのカウンターで小出が再び飛び出すものの、決定打とならない。集団はひとつになって最終周回に入る。
吸収された直後、再度飛び出した小出樹(京都産業大学) photo:Satoru Kato
最終周回 単独先行した兒島直樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling) photo:Satoru Kato
単独先行する兒島直樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling)に集団との差が伝えられる photo:Satoru Katoその直後の下り区間で、兒島がアタック。「ゴール手前の坂でアタックする予定だったのですが、集団も大きいし、さすがに捕まってしまうと思ったので、残り1周になってすぐの下りで仕掛けました」と兒島が話す通り、不意をついたアタックに反応する者はなく、牽制状態となったメイン集団との差は10秒、20秒と開く。
コース後半に入り、集団では留目らがペースアップを図るものの、残り3km付近の展望台への登りで30秒差まで開き、勝負は決定的となる。
兒島直樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling)がU23男子ロードレースを制覇 photo:Satoru Kato
2位争いのスプリント勝負を制した山本哲夫(TEAM BRIDGESTONE Cycling) photo:Satoru Kato
残り300mのホームストレートに姿を現した兒島は、後方に迫る集団を何度も確認。残り100mで勝利を確信し、両腕を天に突き上げててフィニッシュラインを超えた。兒島は9月に行われたJプロツアー「群馬CSCロード」で、ロードレース初優勝を挙げたばかり。2勝目は全日本選手権という大金星を射止めた。
2位争いのスプリントは山本哲夫が制し、TEAM BRIDGESTONE Cyclingがワン・ツーフィニッシュ。3位にはU23 1年目の寺田吉騎(Asia Cycling Academy)が入った。
優勝 兒島直樹「前日のTTの疲れはほぼ無く、いい感じで走れた」
U23男子 表彰式 photo:Satoru Kato
「(山本)哲央さんが「今日は個人戦で走りたい」と話していたので、チームとしてはBSが仕掛けているときは集団をひかないようにしようと。でも一番駒を揃えていたのはBSですし、例えチーム戦として走ればもっといい感じだったのかなあ、と(笑)。
選手の力も拮抗していましたし、やばい逃げができたら追いかけようと思っていましたが、それも生まれず。序盤は前に行くために脚を使ったんですが、中盤から後半にかけては前に位置できて、動きにもしっかりと対応できていました。なおかつ脚もセーブできていたので最後独走に持っていけたのはよかった。こういう展開にもっていったのは初めての経験でした。
昨日TTを走ったおかげで脚も軽く感じていました。昨日は少し疲労を感じていましたが、マッサージを受けて睡眠をとったらほぼ疲れはありませんでした。いい感じで走れましたね。
全日本チャンピオンジャージは初めて。今年はトラックのチャンピオンを狙っていたのですが、その前にチャンピオンジャージを獲ることができて嬉しいですし、いい弾みになりました。」
2位 山本哲央「BSとしてはこれ以上ない順位だが、個人的にはとても悔しい」
U23男子で1-2フィニッシュを決めたTEAM BRIDGESTONE Cyclingのメンバー photo:Satoru Kato
「BSとしては序盤は河野くんが動き、その後僕と兒島が動きました。それでも登りではエカーズが上げていいリズムを刻みました。個人で動いたのでチームとしての作戦はあまり決めずにいましたが、とにかく順位を狙う走りを、と聞かされていました。BS勢が動いたときは潰し合いだけはしないように心がけました。
登りの中盤で兒島が飛び出していたことに気づきました。個人的には全員を引きちぎって追いつきたかったのですが、寺田くんと大河内くんが強くでそれはできませんでした。それでも最後は兒島を捉えるまで追いつきましたが、ちょっと足りませんでした。BSとしてはこれ以上ない順位ですが、個人的にはとても悔しい。TTもロードもふがいない成績で終わってしまいました。次はトラックの全日本があるので頑張っていきます。
次の全日本選手権が予定通りなら半年後ですか?それなら来年U23最後なので、リベンジしたい気持ちはありますね」
3位 寺田吉騎「すごくいいレースができた」
3位の寺田吉騎(Asia Cycling Academy)が山本哲夫と握手を交わす photo:Satoru Kato
「最初からエカーズと大学生の選手達がペースを上げていきました。僕は単独参戦だったのですが、かなりペースが上がる中みんなは消耗していたみたいですね。後半になってから集団前で展開するようにして、三段坂で抜け出すことができました。少人数のスプリントという僕にとってはいい展開で、最後は哲央さんこそまくれなかったものの、個人的にはすごくいいレースができたと思います。
今年はずっとフランスで活動して、その後JBCFを走ってこの全日本選手権にしっかりと合わせることができました。良かったですね。アンダー1年目ですが、充実した1年間にすることが出来ました。」
小出樹「レベルが高くなって想像以上に厳しいレースだった」
全日本選手権を戦ったU23の選手達(前列左から2番目が小出) photo:Satoru Kato
「(積極的に行っていたことに)ああしないと自分はスプリントが無いから勝てなかったけど、結果全然ダメでした。みんな足があって逃げが決まらず、きつい展開でした。下の世代のレベルが高くなっているのもあって、想像以上に厳しいレースでしたね。
今年はコロナでレースが無い割に海外レースにも行けたし、結果よりも良い経験をさせてもらいました。それがこのレースで活かせずじまいになってしまったのは残念ですが、来年はエリートに上がって頑張ります」
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全日本選手権2日目、前日の曇り空がうそのように朝から秋の青空が広がった。それでも風の冷たさは変わらず、まだ朝の寒さが残る午前8時に、男子U23のレースがスタートした。
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1周12.3kmのコースを10周・123kmのレースは、スタート直後からアタック合戦が始まる。天野壮悠(シマノレーシング)、留目夕陽(中央大学)、小出樹(京都産業大学)、平井光介(EQADS)、山田拓海(早稲田大学)らが集団前方で積極的に動くも、2周以上続く逃げにはつながらない状態が続く。
レース前半はアタックと吸収を繰り返しながら、1周17分台の速いペースで周回を重ねていく。
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レース後半に入った6周目、集団の動きが落ち着いてペースが緩んだところで河野翔輝(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が単独で飛び出し、メイン集団に1分の差をつけて先行する。7周目に入ると、小出、天野、佐藤宇志(那須ブラーゼン)、加藤遼(東京工業大学)の4名が追走。メイン集団も続いて追走し、残り3周となる8周目に吸収する。そのカウンターで小出が再び飛び出すものの、決定打とならない。集団はひとつになって最終周回に入る。
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コース後半に入り、集団では留目らがペースアップを図るものの、残り3km付近の展望台への登りで30秒差まで開き、勝負は決定的となる。
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残り300mのホームストレートに姿を現した兒島は、後方に迫る集団を何度も確認。残り100mで勝利を確信し、両腕を天に突き上げててフィニッシュラインを超えた。兒島は9月に行われたJプロツアー「群馬CSCロード」で、ロードレース初優勝を挙げたばかり。2勝目は全日本選手権という大金星を射止めた。
2位争いのスプリントは山本哲夫が制し、TEAM BRIDGESTONE Cyclingがワン・ツーフィニッシュ。3位にはU23 1年目の寺田吉騎(Asia Cycling Academy)が入った。
優勝 兒島直樹「前日のTTの疲れはほぼ無く、いい感じで走れた」
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「(山本)哲央さんが「今日は個人戦で走りたい」と話していたので、チームとしてはBSが仕掛けているときは集団をひかないようにしようと。でも一番駒を揃えていたのはBSですし、例えチーム戦として走ればもっといい感じだったのかなあ、と(笑)。
選手の力も拮抗していましたし、やばい逃げができたら追いかけようと思っていましたが、それも生まれず。序盤は前に行くために脚を使ったんですが、中盤から後半にかけては前に位置できて、動きにもしっかりと対応できていました。なおかつ脚もセーブできていたので最後独走に持っていけたのはよかった。こういう展開にもっていったのは初めての経験でした。
昨日TTを走ったおかげで脚も軽く感じていました。昨日は少し疲労を感じていましたが、マッサージを受けて睡眠をとったらほぼ疲れはありませんでした。いい感じで走れましたね。
全日本チャンピオンジャージは初めて。今年はトラックのチャンピオンを狙っていたのですが、その前にチャンピオンジャージを獲ることができて嬉しいですし、いい弾みになりました。」
2位 山本哲央「BSとしてはこれ以上ない順位だが、個人的にはとても悔しい」
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「BSとしては序盤は河野くんが動き、その後僕と兒島が動きました。それでも登りではエカーズが上げていいリズムを刻みました。個人で動いたのでチームとしての作戦はあまり決めずにいましたが、とにかく順位を狙う走りを、と聞かされていました。BS勢が動いたときは潰し合いだけはしないように心がけました。
登りの中盤で兒島が飛び出していたことに気づきました。個人的には全員を引きちぎって追いつきたかったのですが、寺田くんと大河内くんが強くでそれはできませんでした。それでも最後は兒島を捉えるまで追いつきましたが、ちょっと足りませんでした。BSとしてはこれ以上ない順位ですが、個人的にはとても悔しい。TTもロードもふがいない成績で終わってしまいました。次はトラックの全日本があるので頑張っていきます。
次の全日本選手権が予定通りなら半年後ですか?それなら来年U23最後なので、リベンジしたい気持ちはありますね」
3位 寺田吉騎「すごくいいレースができた」
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「最初からエカーズと大学生の選手達がペースを上げていきました。僕は単独参戦だったのですが、かなりペースが上がる中みんなは消耗していたみたいですね。後半になってから集団前で展開するようにして、三段坂で抜け出すことができました。少人数のスプリントという僕にとってはいい展開で、最後は哲央さんこそまくれなかったものの、個人的にはすごくいいレースができたと思います。
今年はずっとフランスで活動して、その後JBCFを走ってこの全日本選手権にしっかりと合わせることができました。良かったですね。アンダー1年目ですが、充実した1年間にすることが出来ました。」
小出樹「レベルが高くなって想像以上に厳しいレースだった」
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「(積極的に行っていたことに)ああしないと自分はスプリントが無いから勝てなかったけど、結果全然ダメでした。みんな足があって逃げが決まらず、きつい展開でした。下の世代のレベルが高くなっているのもあって、想像以上に厳しいレースでしたね。
今年はコロナでレースが無い割に海外レースにも行けたし、結果よりも良い経験をさせてもらいました。それがこのレースで活かせずじまいになってしまったのは残念ですが、来年はエリートに上がって頑張ります」
全日本選手権ロードレース2021男子U23結果
1位 | 兒島直樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling) | 3時間03分44秒 |
2位 | 山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling) | +0分06秒 |
3位 | 寺田吉騎(Asia Cycling Academy) | |
4位 | 大河内将泰(鹿屋体育大学) | |
5位 | 谷内健太(京都産業大学) | +0分16秒 |
6位 | 岡本勝哉(日本大学) | |
7位 | 上野颯斗(京都産業大学) | |
8位 | 道見優太(鹿屋体育大学) | |
9位 | 中村龍吉(中央大学) | |
10位 | 川野碧己(慶應義塾大学) |
text:Satoru Kato
photo:Satoru Kato, Makoto AYANO
photo:Satoru Kato, Makoto AYANO
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