Jプロツアーで最もステータスの高い大会「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」が、9月20日(月・祝)に新潟県南魚沼市で開催された。156kmのレースは序盤に形成された小集団が最後まで逃げ切り、草場啓吾がJプロツアー初優勝。前日のクリテリウムに続き、愛三工業レーシングチームが2連勝とした。女子は植竹海貴(Y's Road)が、大堀博美(MOPS)との一騎打ちを制して今季9勝目を挙げた。
三国川ダムの放水路を背に一列棒状で下っていく集団 photo:Satoru Kato
Jプロツアー第12戦は、2年ぶりの開催となる「南魚沼ロードレース」。今回は、Jプロツアーで最もレースレーティングの高い「プラチナ」に指定される「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」として開催された。
年間ランキングのポイント配分が高いだけでなく、Jプロツアーで唯一チーム対抗の団体戦が争われる大会であり、優勝チームには大会名にもなっている経済産業大臣旗、通称「輪翔旗」が贈られる。昨年まで4年連続で輪翔旗を獲得しているマトリックスパワータグの安原監督は、「年間ランキング首位は譲っても輪翔旗だけは譲らない」と過去に語ったほどだ。
真紅の輪翔旗が、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)からJBCF安原理事長に返還される photo:Satoru Kato
今回のレースではチームカーの運用が認められた photo:Satoru Kato
コースは、新潟県南魚沼市の三国川(さぐりがわ)ダムのダム湖「しゃくなげ湖」に沿って走る1周12km。残り1km地点からコントロールラインを挟んで2km続く登りは8%前後の斜度があり、コース最大の勝負所。残り6km付近からの後半は道幅が狭くカーブが連続し、残り3km付近からは高低差100mを一気に下るつづら折れのダウンヒルとなる。周回を重ねるだけでも人数が絞られるコースレイアウトは集団が有利とは言えず、2019年大会ではフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)が120kmを単独で逃げ切って優勝している。
前日のクリテリウムで優勝した岡本隼(愛三工業レーシングチーム)を先頭にスタート photo:Satoru Kato
リアルスタート直後から始まったアタック合戦 photo:Satoru Kato
1周目後半、10名の先頭集団が形成される photo:Satoru Kato
前日に行われたクリテリウム同様、朝から晴れて30℃に届こうかという暑さの中、正午すぎに13周のレースがスタート。アタック合戦の中から1周目に早くも10名の先頭集団が形成される。2周目までに2名が遅れて8名となった先頭集団は、メイン集団との差を一気に6分まで広げる。
2周目に8名となった先頭集団 後続との差は一気に6分まで開いた photo:Satoru Kato
先頭集団8名の構成は以下の通り。
草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)、橋本英也、沢田時(以上チームブリヂストンサイクリング)、小森亮平(マトリックスパワータグ)、冨尾大地(シエルブルー鹿屋)、中村龍吉(群馬グリフィンレーシングチーム)、香山飛龍(弱虫ペダルサイクリングチーム)、小林弘幸(リオモ・ベルマーレ・レーシングチーム)。
レース序盤、メイン集団はマトリックスパワータグがコントロール photo:Satoru Kato
メイン集団はマトリックスパワータグがコントロールに入るも、前日のクリテリウムで見せたような鉄壁のコントロールにはならない。3周目から追走していた佐野千尋と比護任(共にイナーメ信濃山形)を5周目に吸収した際には、先頭集団との差は3分20秒前後まで縮まったものの、その後再拡大。愛三工業レーシングチームやチームブリヂストンサイクリングが集団前方に出る場面もあるが、主要チームが先頭集団にメンバーを乗せていることもあってかペースが上がらず、7周目には7分まで広がってしまう。
その後も散発的に追走が発生するものの本格的な追走にはならず、勝負は先頭集団の8名に絞られる。
残り5周 単独先行した草場啓吾(愛三工業レーシングチーム) photo:Satoru Kato
残り2周 登り区間でアタックする沢田時(チームブリヂストンサイクリング) photo:Satoru Kato
最終周回 お互いに仕掛けどころを探るように進む先頭集団の4名 photo:Satoru Kato
最終周回で再度アタックした沢田時(チームブリヂストンサイクリング)後方に追走する3名が迫る photo:Satoru Kato
8周目終了時の中間ポイントを草場が先頭通過し、そのまま単独先行を開始。10周目まで続いた草場の先行により、先頭集団は6名まで絞られる。そして残り2周となる12周目、登り区間で沢田がアタックすると先頭集団は崩壊。草場、小森、冨尾が追いつき、4名となって最終周回に入る。沢田は再度登りでアタックして単独先行。一時10秒ほどの差をつけたものの、協調して追走した草場、小森、冨尾が残り4km付近で沢田に追いつく。勝負は4名でのスプリントへ持ち込まれた。
残り100m 最終コーナーをクリアしてスプリント勝負 アウト側(写真右側)で草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が伸びてくる photo:Satoru Kato
草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が}Jプロツアー初優勝 photo:Satoru Kato
残り100mの最終コーナーをクリアし、草場、沢田、小森が競り合いながら姿を現す。「中間スプリントでアウト側から行った方が伸びることを確認していたので、その通りにした」と言う草場のスプリントが伸び、フィニッシュライン数m手前で勝利を確信。ガッツポーズと雄叫びと共にJプロツアー初勝利を決めた。愛三工業レーシングチームは前日のクリテリウムに続き2連勝となった。
チームメイトに祝福される草場啓吾(愛三工業レーシングチーム) photo:Satoru Kato
表彰式 photo:Satoru Kato
「逃げメンバーの中から勝者が出る雰囲気になったので、でもあのまま淡々と走っていてもつまらないし、男ならカッコよく勝ちたいと思って勝負に出ました。残念ながらそれで勝ちきれなかったけれど、結果として追走してきたメンバーの脚を削ることになったし、削り合いの中での最後のスプリントになったので、最後は気持ちの勝負になったと思います。
沢田選手が2回アタックしたのは、おそらく僕を連れて行きたくなかったのだろうと思うのですが、冷静に対処出来たことと、最終周回では追走した3人の認識が一致していたので追いつけました。あそこで誰かが休んでいたら一気に差がついてしまうけれど、みんな勝ちたかったから手は抜かなかったです」と、草場は初優勝のレースを振り返った。
レース前、冗談混じりに勝利宣言とも取れる言葉を口にしていた草場。「もちろん狙っていましたよ」と言うが、それは勝てる自信があったからこその言葉だったか。
団体表彰式 photo:Satoru Kato
敢闘賞を受賞した沢田時(チームブリヂストンサイクリング) photo:Satoru Kato一方、果敢に攻めた沢田は2位に終わったものの、その姿勢が評価されて敢闘賞を受賞。7位に今村駿介、8位に山本哲央が入ったことで、チームブリヂストンサイクリングが団体優勝を決め、輪翔旗を獲得した。
沢田は「逃げ切りが決まった時、あのメンバーの中で登りを一番踏めるのは自分だと思っていたので、勝つチャンスは大きいと思っていました。でも登りきってからが長いコースだから無駄に脚を使っても逃げきれないので、最後まで我慢でした。最終周回で2回目のアタックをした時、みんなが警戒していた中で抜け出せたのは成功でしたが、諦めてくれなかったのは誤算でした。最後はメンタル勝負なところもありましたけれど、1対3になってしまったので難しかったです。あれで決まればカッコよかったですけれどね。それでも群馬で2位になった時よりも内容のあるレースでした。また挑戦します」と、語った。

Jプロツアー第12戦は、2年ぶりの開催となる「南魚沼ロードレース」。今回は、Jプロツアーで最もレースレーティングの高い「プラチナ」に指定される「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」として開催された。
年間ランキングのポイント配分が高いだけでなく、Jプロツアーで唯一チーム対抗の団体戦が争われる大会であり、優勝チームには大会名にもなっている経済産業大臣旗、通称「輪翔旗」が贈られる。昨年まで4年連続で輪翔旗を獲得しているマトリックスパワータグの安原監督は、「年間ランキング首位は譲っても輪翔旗だけは譲らない」と過去に語ったほどだ。


コースは、新潟県南魚沼市の三国川(さぐりがわ)ダムのダム湖「しゃくなげ湖」に沿って走る1周12km。残り1km地点からコントロールラインを挟んで2km続く登りは8%前後の斜度があり、コース最大の勝負所。残り6km付近からの後半は道幅が狭くカーブが連続し、残り3km付近からは高低差100mを一気に下るつづら折れのダウンヒルとなる。周回を重ねるだけでも人数が絞られるコースレイアウトは集団が有利とは言えず、2019年大会ではフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)が120kmを単独で逃げ切って優勝している。



前日に行われたクリテリウム同様、朝から晴れて30℃に届こうかという暑さの中、正午すぎに13周のレースがスタート。アタック合戦の中から1周目に早くも10名の先頭集団が形成される。2周目までに2名が遅れて8名となった先頭集団は、メイン集団との差を一気に6分まで広げる。

先頭集団8名の構成は以下の通り。
草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)、橋本英也、沢田時(以上チームブリヂストンサイクリング)、小森亮平(マトリックスパワータグ)、冨尾大地(シエルブルー鹿屋)、中村龍吉(群馬グリフィンレーシングチーム)、香山飛龍(弱虫ペダルサイクリングチーム)、小林弘幸(リオモ・ベルマーレ・レーシングチーム)。

メイン集団はマトリックスパワータグがコントロールに入るも、前日のクリテリウムで見せたような鉄壁のコントロールにはならない。3周目から追走していた佐野千尋と比護任(共にイナーメ信濃山形)を5周目に吸収した際には、先頭集団との差は3分20秒前後まで縮まったものの、その後再拡大。愛三工業レーシングチームやチームブリヂストンサイクリングが集団前方に出る場面もあるが、主要チームが先頭集団にメンバーを乗せていることもあってかペースが上がらず、7周目には7分まで広がってしまう。
その後も散発的に追走が発生するものの本格的な追走にはならず、勝負は先頭集団の8名に絞られる。




8周目終了時の中間ポイントを草場が先頭通過し、そのまま単独先行を開始。10周目まで続いた草場の先行により、先頭集団は6名まで絞られる。そして残り2周となる12周目、登り区間で沢田がアタックすると先頭集団は崩壊。草場、小森、冨尾が追いつき、4名となって最終周回に入る。沢田は再度登りでアタックして単独先行。一時10秒ほどの差をつけたものの、協調して追走した草場、小森、冨尾が残り4km付近で沢田に追いつく。勝負は4名でのスプリントへ持ち込まれた。


残り100mの最終コーナーをクリアし、草場、沢田、小森が競り合いながら姿を現す。「中間スプリントでアウト側から行った方が伸びることを確認していたので、その通りにした」と言う草場のスプリントが伸び、フィニッシュライン数m手前で勝利を確信。ガッツポーズと雄叫びと共にJプロツアー初勝利を決めた。愛三工業レーシングチームは前日のクリテリウムに続き2連勝となった。


「逃げメンバーの中から勝者が出る雰囲気になったので、でもあのまま淡々と走っていてもつまらないし、男ならカッコよく勝ちたいと思って勝負に出ました。残念ながらそれで勝ちきれなかったけれど、結果として追走してきたメンバーの脚を削ることになったし、削り合いの中での最後のスプリントになったので、最後は気持ちの勝負になったと思います。
沢田選手が2回アタックしたのは、おそらく僕を連れて行きたくなかったのだろうと思うのですが、冷静に対処出来たことと、最終周回では追走した3人の認識が一致していたので追いつけました。あそこで誰かが休んでいたら一気に差がついてしまうけれど、みんな勝ちたかったから手は抜かなかったです」と、草場は初優勝のレースを振り返った。
レース前、冗談混じりに勝利宣言とも取れる言葉を口にしていた草場。「もちろん狙っていましたよ」と言うが、それは勝てる自信があったからこその言葉だったか。


沢田は「逃げ切りが決まった時、あのメンバーの中で登りを一番踏めるのは自分だと思っていたので、勝つチャンスは大きいと思っていました。でも登りきってからが長いコースだから無駄に脚を使っても逃げきれないので、最後まで我慢でした。最終周回で2回目のアタックをした時、みんなが警戒していた中で抜け出せたのは成功でしたが、諦めてくれなかったのは誤算でした。最後はメンタル勝負なところもありましたけれど、1対3になってしまったので難しかったです。あれで決まればカッコよかったですけれどね。それでも群馬で2位になった時よりも内容のあるレースでした。また挑戦します」と、語った。
Jプロツアー第12戦 経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ・南魚沼ロードレース 結果(156km)
1位 | 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム) | 4時間13分23秒 |
2位 | 沢田 時(チームブリヂストンサイクリング) | +0秒 |
3位 | 小森亮平(マトリックスパワータグ) | +2秒 |
4位 | 冨尾大地(シエルブルー鹿屋) | +30秒 |
5位 | 小林弘幸(リオモ・ベルマーレ・レーシングチーム) | +4分11秒 |
6位 | 香山飛龍(弱虫ペダル サイクリングチーム) | +4分11秒 |
団体総合成績
1位 | チームブリヂストンサイクリング |
2位 | マトリックスパワータグ |
3位 | シエルブルー鹿屋 |

1回目 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)
2回目 小森亮平(マトリックスパワータグ)
3回目 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)
◆敢闘賞 沢田 時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)
Jプロツアーリーダー ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)
U23リーダー 山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)
女子 植竹海貴が昨年に続き南魚沼連覇



女子のレースは4周48km。スタート直後に米田和美(MOPS)が単独で飛び出すも、2周目に入るまでに吸収。その後植竹海貴(Y's Road)と大堀博美(MOPS)の2名が先行し、後続との差を大きく広げていく。最終周回に入り、登り区間で大堀がアタックすると植竹がすぐに反応。大堀との差を詰めた勢いのまま前に出て差を広げにかかるが、大堀もしぶとく食い下がる。植竹は再度アタックを試みるも大堀がジワジワと追いつき、残り1kmへ。最後まで食い下がった大堀を振り切って植竹が先着し、昨年に続き大会2連覇を達成した。

女子(F) 結果(48km)
1位 | 植竹海貴(Y's Road) | 1時間25分2秒 |
2位 | 大堀博美(MOPS) | +4秒 |
3位 | 米田和美(MOPS) | +1分7秒 |
E1 結果(84km)
1位 | 高岡亮寛(Roppongi Express) | 2時間10分56秒 |
2位 | 美甘星次郎(AVENTURA VICTORIA RACING) | +3秒 |
3位 | 本田竜介(F(t)麒麟山 Racing) | +4秒 |
4位 | 池川辰哉(VC VELOCE) | +5秒 |
5位 | 中野 圭(イナーメ信濃山形-EFT) | +7秒 |
6位 | 中里 仁(Rapha Cycling Club) | +28秒 |
E2(48km) | E3(36km) | |||
---|---|---|---|---|
1位 | 加藤 遼(東京工業大学) | 1時間15分9秒 | 高橋海成(バルバクラブフクイ) | 55分30秒 |
2位 | 高木 礼(イナーメ信濃山形-EFT) | +0秒 | 橋本晴哉(FURUTA RACING) | +0秒 |
3位 | 布田直也(MiNELVA-asahi) | +4秒 | 松本天照(那須ハイ-りんどう湖レーシングチーム) | |
4位 | 佐々木友輔(サイクルフリーダム・レーシング) | +1分13秒 | 横矢 峻( BMレーシングZUNOW) | |
5位 | 髙橋拓也(バルバクラブエチゼン) | +1分14秒 | 唐澤一瑠(群馬グリフィンエリート) | +1秒 |
6位 | 大野国寿(F(t)麒麟山Racing) | +1分17秒 | 中村太郎(ALDINA) |
text&photo:Satoru Kato
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