2021/06/26(土) - 11:11
ロードレースにおいてアルカンシェル(世界チャンピオン)と並んで最も栄誉とされるのがマイヨジョーヌ。ツール・ド・フランスの総合リーダーの証である「黄色いジャージ」の仕組みと、注目選手をチェックしておきましょう。
大会の象徴、栄光のマイヨジョーヌ
マイヨジョーヌを着て昨年ツールの最終ステージを走るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji
イエロージャージを意味するマイヨジョーヌは総合リーダーの証。個人総合成績首位の選手だけが着用を許される栄光のジャージであり、総合優勝者は最終日パリの表彰台でマイヨジョーヌを受け取ることになる。簡潔に説明するならば、6月26日(土)から7月18日(日)までの3,383kmという距離を最も少ない時間で走った選手が総合優勝に輝く。
仮に総合成績の上で2名が同タイムの場合、タイムトライアルの成績を1/100秒のタイムまでさかのぼって比較する。それでも同タイムの場合は全ステージの順位の合計が少ない選手が上位に。また、それでも同順位の場合は最終ステージの順位で決定する。
マイヨジョーヌを着たタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Makoto.AYANO
1903年に初開催されたツールだが、マイヨジョーヌが初めて登場したのは1919年の第13回大会のこと。リヨンに拠点を置くLCL銀行(コーポレートカラーも黄色)が1987年から一貫してジャージのスポンサーを務めている。
コース図中の「B」マークがボーナスポイント。今年は合計6ステージに設定される image:A.S.O.2021年も引き続きボーナスタイムが導入されている。ステージ1位の選手は10秒、ステージ2位の選手は6秒、ステージ3位の選手は4秒のタイムが総合時間からボーナスとしてマイナスされる(個人TTを除く)。つまりステージ上位に入った選手が有利に総合争いを進めることができるため、積極的なレース展開につながる。
2018年に初めて導入された「ボーナスポイント」は継続。従来の「スプリントポイント」とは別に設定され、ポイント賞に関係するポイントは与えられない。全て山岳ステージの終盤(フィニッシュの一つ手前の山岳)に設定されており、先頭通過者3名には8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが与えられる。今年は合計6ステージ(第2、7、8、11、14、15)に設けられており、各チームの戦術を変える要素となりうる。
大会の象徴、栄光のマイヨジョーヌ
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イエロージャージを意味するマイヨジョーヌは総合リーダーの証。個人総合成績首位の選手だけが着用を許される栄光のジャージであり、総合優勝者は最終日パリの表彰台でマイヨジョーヌを受け取ることになる。簡潔に説明するならば、6月26日(土)から7月18日(日)までの3,383kmという距離を最も少ない時間で走った選手が総合優勝に輝く。
仮に総合成績の上で2名が同タイムの場合、タイムトライアルの成績を1/100秒のタイムまでさかのぼって比較する。それでも同タイムの場合は全ステージの順位の合計が少ない選手が上位に。また、それでも同順位の場合は最終ステージの順位で決定する。
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1903年に初開催されたツールだが、マイヨジョーヌが初めて登場したのは1919年の第13回大会のこと。リヨンに拠点を置くLCL銀行(コーポレートカラーも黄色)が1987年から一貫してジャージのスポンサーを務めている。
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2018年に初めて導入された「ボーナスポイント」は継続。従来の「スプリントポイント」とは別に設定され、ポイント賞に関係するポイントは与えられない。全て山岳ステージの終盤(フィニッシュの一つ手前の山岳)に設定されており、先頭通過者3名には8秒、5秒、2秒のボーナスタイムが与えられる。今年は合計6ステージ(第2、7、8、11、14、15)に設けられており、各チームの戦術を変える要素となりうる。
ボーナスタイム
順位 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
フィニッシュ | 10秒 | 6秒 | 4秒 |
ボーナスポイント | 8秒 | 5秒 | 2秒 |
スロベニアの二人か、イネオス逆襲か



昨年のマイヨジョーヌ、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は昨年とは全く異なる立場で自身2度目のツール・ド・フランスへと挑む。登坂力はもちろん精鋭グループのゴール勝負を制する爆発力も高めている22歳は、今年もシーズン序盤から絶好調を維持しており、総合優勝候補筆頭であることは間違いない。
チームのホームレースであるUAEツアーでの総合優勝を皮切りに、ティレーノ〜アドリアティコで総合優勝、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュではジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)を下して自身初のモニュメント制覇を達成。更に2ヶ月のトレーニング期間を挟み臨んだ母国レース、ツアー・オブ・スロベニアを圧勝して弾みを付けてきた。
UAEは例年スプリンター混成チームを組んできたものの、今年はアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)もフェルナンド・ガビリア(コロンビア)もいないポガチャル最優先布陣を組んだ。ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)やラファウ・マイカ(ポーランド)、ブランドン・マクナルティ(アメリカ)といったクライマー陣が、2連覇のプレッシャーがのし掛かるポガチャルを手助けする。
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昨年大会でほぼ手中に収めていたマイヨジョーヌをポガチャルに奪い取られたのが、同じスロベニアのプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)。雪辱を果たすことを誓う今年は、アルデンヌクラシック後から戦線を離れ、長期山岳合宿を行うという例年と異なるアプローチを採ってきた。
絞りきった精悍な顔つきでプレゼンテーションに臨んだログリッチを守るのは、昨年非凡な活躍ぶりを見せた新ベルギーチャンピオンのワウト・ファンアールトやセップ・クス(アメリカ)、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)。ロベルト・ヘーシンク(オランダ)、そして好調ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)といった面々。山岳戦力ではUAEを上回っている感もあり、ログリッチに心強さを与えている。
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直近10年のツール・ド・フランスを7度制しているイネオス・グレナディアーズは3人のグランツールウィナーを揃えて復権を誓う。2018年の総合優勝者ゲラント・トーマス(イギリス)とツール・ド・スイスを制したリチャル・カラパス(エクアドル)と昨年のジロ覇者テイオ・ゲイガンハート(イギリス)を揃え、更にクリテリウム・デュ・ドーフィネを制したばかりのリッチー・ポート(オーストラリア)が脇を固める。
ポガチャルとログリッチが暫くレースを離れていたためトーマスやカラパスとの直近の力関係は不明だが、チーム戦力だけで見ればイネオスが頭一つ抜けている。難関山岳の勝負所でイネオス勢が数で圧倒している場合も考えられ、駒数勝負に持ち込めばポガチャルとログリッチの登坂力を打ち崩すことも可能だ。デイブ・ブレイルスフォード氏はエースの名を明言していないものの、個人タイムトライアル比率が大きい今大会ではトーマスが主軸となるはずだ。



2019年のツールでステージ2勝&マイヨジョーヌ14日間着用&総合5位という大活躍を演じたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は、今年アルカンシエルを纏ってブレストからスタートする。パンチャー向けの第1ステージからマイヨジョーヌを狙うことを宣言しており、開幕早々フランスを熱狂させることは間違いない。
ティボー・ピノ(グルパマFDJ)とロマン・バルデ(チームDSM)不在の今年、アラフィリップと共にフランスの期待を背負うのは昨年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ2勝、総合8位と活躍したダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)だ。グルパマはどちらかと言えばアルノー・デマール(フランス)中心のスプリンターチームを組んできたものの、上手く立ち回ればゴデュのトップ5入りの道は拓けてくる。
総合狙いではないものの、ジロ・デ・イタリアで総合3位表彰台に入ったサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)も注目だ。東京五輪を見据えステージ優勝に狙いを絞ると宣言しているが、ジロ・デ・イタリアではカラパスに匹敵する登坂力を披露しており、エステバン・チャベス(コロンビア)と、ここ数年総合勢として成長を続けるルーカス・ハミルトン(オーストラリア)とのタッグで3強チームに挑むこととなる。
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近年プロトンを席巻しているコロンビア勢で好調なのがツール・ド・スイス総合2位で終えた2017年ツール総合2位リゴベルト・ウラン(コロンビア)と、直近のモンヴァントゥーチャレンジで圧勝したミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)だ。スイスのアップダウン個人TTで圧勝するなどここ例年以上の仕上がりを見せるウランはセルジオ・イギータ(コロンビア)とニールソン・ポーレス(アメリカ)の、”スーパーマン”ロペスは最年長アレハンドロ・バルベルデ、マルク・ソレル、エンリク・マスといったズラリ揃ったスペイン勢のアシストを受ける。
2019年ツール総合4位のエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)はジロ第15ステージの落車リタイア(頭部への打撃)が心配されたものの、ドイツ選手権では4位と復調している様子。ボーラはドーフィネ総合4位のウィルコ・ケルデルマン(オランダ)とパトリック・コンラッド(オーストリア)も揃えており、サガンのマイヨヴェール争いとの二軸で忙しいツールを過ごす。
ドーフィネ総合2位のアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)や同5位ジャック・ヘイグ(オーストラリア)、ロマンディとドーフィネで共に総合トップ10入りしたベン・オコーナー(オーストラリア)、激坂だけではなく超級山岳での力も伸ばしているマイケル・ウッズ(カナダ)など、注目すべき選手が目白押し。これら選手は平坦/丘陵ステージが続く開幕1週間を無事に過ごし、第8ステージから始まるアルプス決戦に挑むこととなる。
歴代のツール総合優勝者
2020年 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) |
2019年 | エガン・ベルナル(コロンビア) |
2018年 | ゲラント・トーマス(イギリス) |
2017年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2016年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2015年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2014年 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア) |
2013年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2012年 | ブラドレー・ウィギンズ(イギリス) |
2011年 | カデル・エヴァンス(オーストラリア) |
2010年 | アンディ・シュレク(ルクセンブルク)※コンタドール失格による繰り上げ |
2009年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2008年 | カルロス・サストレ(スペイン) |
2007年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2006年 | オスカル・ペレイロ(スペイン)※ランディス失格による繰り上げ |
2005年 | |
2004年 | |
2003年 | |
2002年 | |
2001年 | |
2000年 | |
1999年 | |
1998年 | マルコ・パンターニ(イタリア) |
1997年 | ヤン・ウルリッヒ(ドイツ) |
1996年 | ビャルヌ・リース(デンマーク) |
1995年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1994年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1993年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1992年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1991年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1990年 | グレッグ・レモン(アメリカ) |
text: So Isobe
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