2021/06/24(木) - 13:47
Jプロツアーを主催するJBCF(一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟)は、6月21日夜「2021年の活動方針発表会」をオンラインで開催。JBCFの現状と今シーズンの方針についての説明がなされた。
ZOOM上で行われた発表会には、JBCFの安原昌弘理事長と加地邦彦理事が東京都内のJBCF事務所から出席したほか、浅田顕理事らもオンラインで出席した。
JBCFは「原点回帰」を掲げ、参加者本位の大会運営を主軸としていくことを昨年末に発表した。今回はその方針を確認する内容で、今シーズンこれまで行ってきたことと今後についての説明がなされた。
本来であれば、Jプロツアーを本格的なプロスポーツリーグとする「新リーグ」が今年からスタートする予定だったが、その計画もふくめ、Jプロツアーをメインとした興行としてのレース開催は一旦とりやめ、Jエリートツアー(JET)、Jフェミニンツアー(JFT、女子)、Jユースツアー(JYT)全てのカテゴリーに力を入れるとしている。
その上で、JBCFがやるべきこととして、以下の3つを挙げた。
・世界への挑戦 欧州で活躍できる選手の輩出
・競技力の向上 強度の高いレースのデザイン
・満足度の向上 スポンサー、参加者、チーム、その家族も含めて
競技力の向上について、具体的にはJプロツアーのロードレースは3時間から4時間の長さで行い、最初と最後の強度が高くなるような工夫や、逃げグループのペースアップの時間が長くなるよう展開を誘導する。先日行われた群馬サイクルスポーツセンターの逆周回レースはその一例であり、短距離レースでは播磨中央公園での開幕戦のような1日2レース制とすることも今後検討される。
また、全日本選手権前には高強度で距離を走れるレースを開催し、ジュニアやU23の選手がネイションズカップに向けて準備出来るようなスケジュールとするなど、UCIカレンダーの傾向に合わせたスケジュール設定をしていく意向という。
一方で、2017年をピークに大幅に減少したJBCF加盟登録者数を取り戻すため、参加者とサポートする選手、さらにはその家族も含め満足度を上げることを目指すとしている。
そのための施策として、忘れ物を補充できるショップや、飲食を提供するキッチンカーの展開、地域物産の販売、ラジオツールやライブ配信による情報提供、安全講習等による事故の抑制などを挙げている。
収益改善が第一 そのための「参加者本位の大会運営」
JBCFがJプロツアー以外のカテゴリーにも注力するという方針転換の背景には、2019年と2020年の2期連続で赤字決算となってしまったことと、加盟登録者数の大幅な減少がある。
発表会での説明の通り、JBCFの登録者数は2017年の2932人をピークに減少が止まらず、今年5月31日時点では1857人にとどまる。昨年以降のコロナ禍も影響していると思われるが、「新リーグ構想」が発表された2019年の登録者数は、前年比で300人以上減らしている。新リーグ構想がJプロツアー以外の参加者にとって無関係な話と思われたことが登録者減少につながったと取れる数字だ。
JBCFは、離れてしまった登録者を呼び戻すことを当面の目標とし、ニーズにに合致していない部分を修正して「参加者本位の大会運営」を目指す。それにより収益の改善に繋げたいとしている。
対して、これまで力を入れてきた観客に対する施策は保留とされている。
今年は開幕戦から現地観戦が可能とされているが、2019年に行われていたような有料観戦席の設定はない。ライブ動画配信は行われているものの、観客のためでなく、Jプロツアー以外の参加者のための情報提供と記録としての配信を目的とする「参加者本位」の施策として進められている。
特に動画の配信は、質の高さに比例してコストも上がるが、コストをかけたからといって収益にプラスに作用するとは限らない。
例えば、2019年のJプロツアー開幕戦で行われたライブ動画配信は百万円単位のコストをかけたが、視聴数は1500人足らずだったという。累計視聴数は、6月22日時点で初日が約1万6千、2日目が約2万1千ほどだ。
それでも動画配信サイトから視聴数に連動して支払われる金額は数千円から数万円で、赤字を垂れ流すだけになってしまうという。動画配信のためのスポンサーを呼び込むにも、累計で2万前後の視聴数にメリットを感じる企業は少ないだろう。
それゆえ、現在は「よりコストをかけない方法を模索してテストしている段階」としており、その効果を参加者に還元することで、登録者の増加に繋げたいとしている。
気になるのは、「参加者本位」という方針は内向きな方向性であり、外向きなPRが必要となるJプロツアーチームとは相反する点があることだ。発表会の後に行われたメディア向け質疑応答でも観客に対する施策が無いことについての指摘があったが、現時点ではそのために人手や予算を割ける状態ではなく、収益が改善したのち再開するとしている。「無い袖は振れない」から、今は振れる袖を作る時期ということだ。
ネガティブな話題が多い中で救いなのは、Jプロツアーのチーム数が減ってもレースの強度は下がっていないという選手の証言があることだろう。ナショナルチーム(JCF強化指定選抜チーム)の若手選手が参加してレースが活性化していることもあるが、昨年より高強度なレースもあるという。JBCFの掲げる「競技力の向上」に繋がるレースを、今後の大会にも期待したい。
text:Satoru Kato
ZOOM上で行われた発表会には、JBCFの安原昌弘理事長と加地邦彦理事が東京都内のJBCF事務所から出席したほか、浅田顕理事らもオンラインで出席した。
JBCFは「原点回帰」を掲げ、参加者本位の大会運営を主軸としていくことを昨年末に発表した。今回はその方針を確認する内容で、今シーズンこれまで行ってきたことと今後についての説明がなされた。
本来であれば、Jプロツアーを本格的なプロスポーツリーグとする「新リーグ」が今年からスタートする予定だったが、その計画もふくめ、Jプロツアーをメインとした興行としてのレース開催は一旦とりやめ、Jエリートツアー(JET)、Jフェミニンツアー(JFT、女子)、Jユースツアー(JYT)全てのカテゴリーに力を入れるとしている。
その上で、JBCFがやるべきこととして、以下の3つを挙げた。
・世界への挑戦 欧州で活躍できる選手の輩出
・競技力の向上 強度の高いレースのデザイン
・満足度の向上 スポンサー、参加者、チーム、その家族も含めて
競技力の向上について、具体的にはJプロツアーのロードレースは3時間から4時間の長さで行い、最初と最後の強度が高くなるような工夫や、逃げグループのペースアップの時間が長くなるよう展開を誘導する。先日行われた群馬サイクルスポーツセンターの逆周回レースはその一例であり、短距離レースでは播磨中央公園での開幕戦のような1日2レース制とすることも今後検討される。
また、全日本選手権前には高強度で距離を走れるレースを開催し、ジュニアやU23の選手がネイションズカップに向けて準備出来るようなスケジュールとするなど、UCIカレンダーの傾向に合わせたスケジュール設定をしていく意向という。
一方で、2017年をピークに大幅に減少したJBCF加盟登録者数を取り戻すため、参加者とサポートする選手、さらにはその家族も含め満足度を上げることを目指すとしている。
そのための施策として、忘れ物を補充できるショップや、飲食を提供するキッチンカーの展開、地域物産の販売、ラジオツールやライブ配信による情報提供、安全講習等による事故の抑制などを挙げている。
収益改善が第一 そのための「参加者本位の大会運営」
JBCFがJプロツアー以外のカテゴリーにも注力するという方針転換の背景には、2019年と2020年の2期連続で赤字決算となってしまったことと、加盟登録者数の大幅な減少がある。
発表会での説明の通り、JBCFの登録者数は2017年の2932人をピークに減少が止まらず、今年5月31日時点では1857人にとどまる。昨年以降のコロナ禍も影響していると思われるが、「新リーグ構想」が発表された2019年の登録者数は、前年比で300人以上減らしている。新リーグ構想がJプロツアー以外の参加者にとって無関係な話と思われたことが登録者減少につながったと取れる数字だ。
JBCFは、離れてしまった登録者を呼び戻すことを当面の目標とし、ニーズにに合致していない部分を修正して「参加者本位の大会運営」を目指す。それにより収益の改善に繋げたいとしている。
対して、これまで力を入れてきた観客に対する施策は保留とされている。
今年は開幕戦から現地観戦が可能とされているが、2019年に行われていたような有料観戦席の設定はない。ライブ動画配信は行われているものの、観客のためでなく、Jプロツアー以外の参加者のための情報提供と記録としての配信を目的とする「参加者本位」の施策として進められている。
特に動画の配信は、質の高さに比例してコストも上がるが、コストをかけたからといって収益にプラスに作用するとは限らない。
例えば、2019年のJプロツアー開幕戦で行われたライブ動画配信は百万円単位のコストをかけたが、視聴数は1500人足らずだったという。累計視聴数は、6月22日時点で初日が約1万6千、2日目が約2万1千ほどだ。
それでも動画配信サイトから視聴数に連動して支払われる金額は数千円から数万円で、赤字を垂れ流すだけになってしまうという。動画配信のためのスポンサーを呼び込むにも、累計で2万前後の視聴数にメリットを感じる企業は少ないだろう。
それゆえ、現在は「よりコストをかけない方法を模索してテストしている段階」としており、その効果を参加者に還元することで、登録者の増加に繋げたいとしている。
気になるのは、「参加者本位」という方針は内向きな方向性であり、外向きなPRが必要となるJプロツアーチームとは相反する点があることだ。発表会の後に行われたメディア向け質疑応答でも観客に対する施策が無いことについての指摘があったが、現時点ではそのために人手や予算を割ける状態ではなく、収益が改善したのち再開するとしている。「無い袖は振れない」から、今は振れる袖を作る時期ということだ。
ネガティブな話題が多い中で救いなのは、Jプロツアーのチーム数が減ってもレースの強度は下がっていないという選手の証言があることだろう。ナショナルチーム(JCF強化指定選抜チーム)の若手選手が参加してレースが活性化していることもあるが、昨年より高強度なレースもあるという。JBCFの掲げる「競技力の向上」に繋がるレースを、今後の大会にも期待したい。
text:Satoru Kato
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