2021/05/29(土) - 08:39
ジロ・デ・イタリアの総合優勝者を決める最後の3日間が始まった。初登場の1級山岳アルペ・ディ・メーラにフィニッシュする第19ステージで総合3位サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)が自身通算4勝目を飾り、エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)がボーナスタイムと合わせて合計34秒を失いながらも総合首位を守った。
5月28日(金)第19ステージ
アッビアーテグラッソ〜アルペ・ディ・メーラ(ヴァルセズィア)166km ★★★★
3週間前にスタートしたジロが開幕地トリノを含むピエモンテ州に帰ってきた。マリアローザ争いを決定づける3日間の初日は難易度4つ星のアルプス山岳ステージ。当初は獲得標高差3,400mの全長176kmコースが予定されていたが、最初に通過する予定だった1級山岳モッタローネ(登坂距離15.4km・平均6.7%)で5月23日に14名が犠牲になるロープウェイ事故が発生したことから急遽コースを変更。4級山岳ジニェーゼを代わりに入れることで1級山岳モッタローネを回避する措置が取られた。また、CPA(プロサイクリスト協会)は第19ステージの獲得賞金全額を事故の犠牲者家族に贈ることを決めている。
3級山岳コルマ峠を経て向かう先はジロ初登場となる1級山岳アルペ・ディ・メーラ(登坂距離9.7km・平均勾配9.0%)の山頂フィニッシュ。標高1,531mのこじんまりとしたスキーリゾート地に向かう登りは、ヘアピンが連続し、進めば進むほど勾配が増していくタイプ。コース変更によって獲得標高差は3,400mから2,700mにダウンしたものの、総合順位に変動を起こすチャンスが残り少なくなっていることから活発なレースが展開された。
ロンバルディア州の平原で1時間にわたって繰り広げられたアタック合戦の末に、総合争い/ポイント賞争い/山岳賞争いに関係のない6名が飛び出すとメイン集団はスローダウン。しかし総合逆転を狙うバイクエクスチェンジがメイン集団の牽引にメンバーを送り込んだため、タイム差は3分台に押さえ込まれた。
逃げグループを形成した6名
ラリー・ワーバス(アメリカ、アージェードゥーゼール・シトロエン)
ジョヴァンニ・アレオッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マーク・クリスティアン(イギリス、エオーロ・コメタ)
ニコラ・ヴェンキアルッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
クイントン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
アンドレア・パスクアロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
4級山岳ジニェーゼの下りでドゥクーニンク・クイックステップがペースを上げるとメイン集団が割れ、5日前に事故を起こしたロープウェイの麓駅があるストレーザの街を通過する頃には総合7位のダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が第2集団に取り残されるシーンも。マリアローザを心身ともに支える存在であるマルティネスはフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)のサポートによりメイン集団に戻っている。
引き続きバイクエクスチェンジとドゥクーニンク・クイックステップがメイン集団の牽引を担い、3級山岳コルマ峠通過時点で逃げグループとメイン集団のタイム差は1分。総合2位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)のためのボトル運びとポジション取りを担った新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らを先頭にメイン集団は最後の1級山岳アルペ・ディ・メーラの麓に到着した。
わずか18秒のリードで1級山岳アルペ・ディ・メーラに突入した逃げグループは、最後まで抵抗を見せたクリスティアンを含めてすぐさま吸収。ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がハイペースを刻むと、フィニッシュまで7kmを残したまだ登り序盤のタイミングで総合8位/8分45秒差のジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)が仕掛けた。
続いて残り6kmで動いたのは総合3位/3分23秒差のサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)。メイン集団を抜け出したイェーツには総合2位/2分21秒差のダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)や総合4位/6分03秒差のアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)らが反応した一方で、マリアローザのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)は動かなかった。
ジョナタン・カストロビエホ(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)とマルティネスにペーシングされながら淡々と登りをこなしたベルナルを、先頭アルメイダに追いつくとともに独走に持ち込んだイェーツが引き離す。イェーツを除く先行者たち(カルーゾやウラソフ)はマルティネスの牽引によって吸収。残り2.5kmまで身を粉にする走りを見せたマルティネスのペーシングが終わると、マリアローザのベルナルが自らイェーツ追撃を開始した。
逃げるイェーツと、追うベルナルとアルメイダ、その後ろにカルーゾとウラソフ。一旦は30秒まで広がったイェーツのリードは終盤の急勾配区間で詰まったものの、数字が0になることはなかった。ベルナルを置き去りにして単独追走モードに入ったアルメイダを振り切って、先頭イェーツが何度も後方を確認してから勝利を確信。しっかりとジャージのジッパーを首元まで上げて、イェーツが1級山岳アルペ・ディ・メーラの山頂で両手を振り上げた。
イェーツ(ボーナスタイム10秒獲得)から遅れること11秒でアルメイダ(6秒獲得)、28秒でベルナル(4秒獲得)、32秒でカルーゾとウラソフがフィニッシュ。ボーナスタイムと合わせてイェーツはベルナルとの総合タイム差を34秒、カルーゾとの総合タイム差を42秒詰めることに成功した。
2018年ジロでステージ3勝を飾るとともに13日間マリアローザを着用しながら、第19ステージの大崩れにより総合21位に沈んだイェーツ。今大会は1週目から2週目にかけて精彩を欠いたため出遅れたが、3週目に入って大きく盛り返してきた。「(アルメイダがアタックした時)イネオスはテンポを刻んで走ることを選び、逃してもらえるんじゃないかと感じてアタックした。チームメイトたちの走りに報いることができて良かったよ」と久々のジロステージ表彰台を喜ぶ。
第19ステージを終えて総合首位ベルナルと総合2位カルーゾのタイム差は2分29秒に、総合3位イェーツのタイム差は2分49秒に詰まった。総合逆転の可能性について問われたイェーツは「マリアローザとのタイム差はまだまだ大きい。でも総合2位のカルーゾとのタイム差を詰めることができた。明日は標高のある峠が続くのでまた違った戦いになる」とコメントしている。
「最も重要なのはミラノの表彰台でマリアローザを着ること」と語るのはベルナル。「総合優勝に一歩ずつ近づいている。今日は調子が良かったし、自信を持って明日のステージに挑みたい。そしてこのままのタイム差で最後の個人TTに臨むことができれば」と、イェーツに34秒挽回されながらも2分49秒ある総合リードに満足している様子。翌日は1級山岳サンベルナルディーノ峠と1級山岳シュプリューゲンパス=スプルガ峠を経て1級山岳アルペ・モッタにフィニッシュする難易度5つ星コースが用意されている。
5月28日(金)第19ステージ
アッビアーテグラッソ〜アルペ・ディ・メーラ(ヴァルセズィア)166km ★★★★
3週間前にスタートしたジロが開幕地トリノを含むピエモンテ州に帰ってきた。マリアローザ争いを決定づける3日間の初日は難易度4つ星のアルプス山岳ステージ。当初は獲得標高差3,400mの全長176kmコースが予定されていたが、最初に通過する予定だった1級山岳モッタローネ(登坂距離15.4km・平均6.7%)で5月23日に14名が犠牲になるロープウェイ事故が発生したことから急遽コースを変更。4級山岳ジニェーゼを代わりに入れることで1級山岳モッタローネを回避する措置が取られた。また、CPA(プロサイクリスト協会)は第19ステージの獲得賞金全額を事故の犠牲者家族に贈ることを決めている。
3級山岳コルマ峠を経て向かう先はジロ初登場となる1級山岳アルペ・ディ・メーラ(登坂距離9.7km・平均勾配9.0%)の山頂フィニッシュ。標高1,531mのこじんまりとしたスキーリゾート地に向かう登りは、ヘアピンが連続し、進めば進むほど勾配が増していくタイプ。コース変更によって獲得標高差は3,400mから2,700mにダウンしたものの、総合順位に変動を起こすチャンスが残り少なくなっていることから活発なレースが展開された。
ロンバルディア州の平原で1時間にわたって繰り広げられたアタック合戦の末に、総合争い/ポイント賞争い/山岳賞争いに関係のない6名が飛び出すとメイン集団はスローダウン。しかし総合逆転を狙うバイクエクスチェンジがメイン集団の牽引にメンバーを送り込んだため、タイム差は3分台に押さえ込まれた。
逃げグループを形成した6名
ラリー・ワーバス(アメリカ、アージェードゥーゼール・シトロエン)
ジョヴァンニ・アレオッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マーク・クリスティアン(イギリス、エオーロ・コメタ)
ニコラ・ヴェンキアルッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
クイントン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
アンドレア・パスクアロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
4級山岳ジニェーゼの下りでドゥクーニンク・クイックステップがペースを上げるとメイン集団が割れ、5日前に事故を起こしたロープウェイの麓駅があるストレーザの街を通過する頃には総合7位のダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が第2集団に取り残されるシーンも。マリアローザを心身ともに支える存在であるマルティネスはフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)のサポートによりメイン集団に戻っている。
引き続きバイクエクスチェンジとドゥクーニンク・クイックステップがメイン集団の牽引を担い、3級山岳コルマ峠通過時点で逃げグループとメイン集団のタイム差は1分。総合2位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)のためのボトル運びとポジション取りを担った新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らを先頭にメイン集団は最後の1級山岳アルペ・ディ・メーラの麓に到着した。
わずか18秒のリードで1級山岳アルペ・ディ・メーラに突入した逃げグループは、最後まで抵抗を見せたクリスティアンを含めてすぐさま吸収。ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がハイペースを刻むと、フィニッシュまで7kmを残したまだ登り序盤のタイミングで総合8位/8分45秒差のジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)が仕掛けた。
続いて残り6kmで動いたのは総合3位/3分23秒差のサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)。メイン集団を抜け出したイェーツには総合2位/2分21秒差のダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)や総合4位/6分03秒差のアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)らが反応した一方で、マリアローザのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)は動かなかった。
ジョナタン・カストロビエホ(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)とマルティネスにペーシングされながら淡々と登りをこなしたベルナルを、先頭アルメイダに追いつくとともに独走に持ち込んだイェーツが引き離す。イェーツを除く先行者たち(カルーゾやウラソフ)はマルティネスの牽引によって吸収。残り2.5kmまで身を粉にする走りを見せたマルティネスのペーシングが終わると、マリアローザのベルナルが自らイェーツ追撃を開始した。
逃げるイェーツと、追うベルナルとアルメイダ、その後ろにカルーゾとウラソフ。一旦は30秒まで広がったイェーツのリードは終盤の急勾配区間で詰まったものの、数字が0になることはなかった。ベルナルを置き去りにして単独追走モードに入ったアルメイダを振り切って、先頭イェーツが何度も後方を確認してから勝利を確信。しっかりとジャージのジッパーを首元まで上げて、イェーツが1級山岳アルペ・ディ・メーラの山頂で両手を振り上げた。
イェーツ(ボーナスタイム10秒獲得)から遅れること11秒でアルメイダ(6秒獲得)、28秒でベルナル(4秒獲得)、32秒でカルーゾとウラソフがフィニッシュ。ボーナスタイムと合わせてイェーツはベルナルとの総合タイム差を34秒、カルーゾとの総合タイム差を42秒詰めることに成功した。
2018年ジロでステージ3勝を飾るとともに13日間マリアローザを着用しながら、第19ステージの大崩れにより総合21位に沈んだイェーツ。今大会は1週目から2週目にかけて精彩を欠いたため出遅れたが、3週目に入って大きく盛り返してきた。「(アルメイダがアタックした時)イネオスはテンポを刻んで走ることを選び、逃してもらえるんじゃないかと感じてアタックした。チームメイトたちの走りに報いることができて良かったよ」と久々のジロステージ表彰台を喜ぶ。
第19ステージを終えて総合首位ベルナルと総合2位カルーゾのタイム差は2分29秒に、総合3位イェーツのタイム差は2分49秒に詰まった。総合逆転の可能性について問われたイェーツは「マリアローザとのタイム差はまだまだ大きい。でも総合2位のカルーゾとのタイム差を詰めることができた。明日は標高のある峠が続くのでまた違った戦いになる」とコメントしている。
「最も重要なのはミラノの表彰台でマリアローザを着ること」と語るのはベルナル。「総合優勝に一歩ずつ近づいている。今日は調子が良かったし、自信を持って明日のステージに挑みたい。そしてこのままのタイム差で最後の個人TTに臨むことができれば」と、イェーツに34秒挽回されながらも2分49秒ある総合リードに満足している様子。翌日は1級山岳サンベルナルディーノ峠と1級山岳シュプリューゲンパス=スプルガ峠を経て1級山岳アルペ・モッタにフィニッシュする難易度5つ星コースが用意されている。
ジロ・デ・イタリア2021第19ステージ結果
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 135pts |
2位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | 113pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 110pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 180pts |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 121pts |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 83pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 244:14:06 |
2位 | チームDSM | 0:02:20 |
3位 | ユンボ・ヴィスマ | 0:26:22 |
text:Kei Tsuji
photo:CorVos, LaPresse
photo:CorVos, LaPresse
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