2021/05/24(月) - 08:18
チームメイト2人と共に逃げに乗り、オスカル・リースビーク(オランダ、アルペシン・フェニックス)との一騎打ちを制したヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)が念願のグランツール初区間優勝。長年に渡るチャレンジを遂に成功させている。
5月23日(日)第15ステージ
グラード〜ゴリツィア 147km ★★★
前日にモンテ・ゾンコランを登りきり、翌日に獲得標高差5,700mという恐ろしいタッポーネ(=クイーンステージ)を控える中で迎えたジロ・デ・イタリア第14ステージ。中盤からスロベニアとイタリアにまたがる周回コースを2.5周(4級山岳ゴルニェ・セロボを3回通過)するコースプロフィール図を見るかぎり平坦なスプリントステージと思いきや、この日は(この日も)鼻息を荒くした逃げ屋がスタートから猛烈な勢いでアタックした。
アドリア海に浮かぶ島グラードをパレードラン。フラッグが振られると共に先導車を追い抜かさんばかりの勢いでクベカ・アソスのヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)とマキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ)が加速し、逃げ切りを狙う選手たちが後に続く。しかしすぐさま、本土と繋がる海上の一直線路を塞ぐ大落車が発生した。
追い風に押され、70km/hに達する超高速状態でのクラッシュ。路面に叩きつけられた選手たちの中には総合6位エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)の姿もあった。激しく傷ついたヨス・ファンエムデン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)やナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)たちがリタイアを強いられ、頭を打ち付けたブッフマンも医師判断によってレースを降りることに。ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーションNIPPO)もその後レースを降りている。
一旦ストップが掛けられたレースが再始動すると、再びカンペナールツとワルシャイドを先頭に選手たちが次々と飛び出していく。すぐさま15名が先行し、4名が追走。合計19名を見送ったメイン集団はイネオス・グレナディアーズのコントロールの下、翌日を見据えてイージーモードに切り替えた。
逃げグループを形成した15名
ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
オスカル・リースビーク(オランダ、アルペシン・フェニックス)
シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)
ラルス・ファンデンベルフ(オランダ、グルパマFDJ)
クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル)
ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)
ダリオ・カタルド(イタリア、モビスター)
アルベルト・トーレス(スペイン、モビスター)
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)
マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、クベカ・アソス)
ルーカス・ヴィシニオウスキー(ポーランド、クベカ・アソス)
バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
アンドレア・パスクァロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)やマッテーオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)を含む第2グループはしばらく追走を続けていたものの、逃げる第1グループを捉えることなく徐々に失速。フィリッポ・ガンナとサルヴァトーレ・プッチョ(共にイタリア、イネオス・グレナディアーズ)が淡々とペースを刻むメイン集団に引き戻されている。
もう残り3名となってしまったロット・スーダルやモビスター、クベカ・アソス、アルペシン・フェニックスがそれぞれ2名ずつ送り込んだ逃げグループ。スロベニア国旗が翻る周回コースをこなし、12分ものリードを得て残り30km地点を通過すると、いよいよステージ優勝に向けての絞り込みがスタートした。
緊張感溢れるアタックと吸収が行われる中、残り22km地点で先行したのはカンペナールツとオスカル・リースビーク(オランダ、アルペシン・フェニックス)、そしてアルベルト・トーレス(スペイン、モビスター)の3名。フィニッシュまで距離を残していたことで追走グループ(12名)は先行を許した。
3度目の4級山岳ゴルニェ・セロボでは先頭グループからトーレスが遅れ、カンペナールツとリースビークが大雨の中30秒リードのまま残り10km地点をクリア。カンペナールツはバイクコントロールを失う寸前までダウンヒルを攻めたものの、怖がりながらもチャンスを失いたくないリースビークは千切れない。牽制を繰り返す追走グループとの差を維持しながら、残り4km地点に設定された登坂距離1km・平均勾配5.9%・最大勾配14%の登りに突入した。
緩斜面区間でリースビークが先行するも、急勾配区間で飛び出したカンペナールツがリードを得て得意のダウンヒルへ。すぐ後ろまで迫った後続グループではクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が仕掛けるも、モレマが濡れた下りで落車しかけるなど今ひとつリズムを維持することができなかった。
平坦で仕掛け続けたリースビークと、リースビークが不得意にするコーナーと下りで仕掛け続けたカンペナールツは、結局二人のままフィニッシュ地ゴリツィアへ。大歓声に包まれた最終ストレートに入り、リースベーク先行によるスプリント勝負が幕開けた。
残り150mから先行したリースビークだったが、石畳の最終区間で伸びたのはカンペナールツだった。再び踏み直して食い下がるリースビークを退けて、カンペナールツが「クベカの手」をアピールしながら先着。ここまで何度も何度もチャンスを狙っては失敗を繰り返してきたカンペナールツが遂にグランツール初の区間優勝を掴んだ。
「長いことワールドツアー、特にグランツールのステージ優勝に挑み続けてきた。ここまで2位が4回、3位が2回、5位が1回。勝利にに近づいてきていたけれど、レースの走り方を変えて、TTよりもロードステージに重きを置くようにしたんだ。新しい目標に切り替えて初めてのグランツールで、チームは既に2度の勝利。(第11ステージ)でマウロ(シュミット)を助けたとは言えないけれど、(第13ステージで)のニッツォーロの勝利には貢献することができた。そして今日は自分自身で勝利を狙い、掴んだんだ。なんという一日なんだろう!」と話すカンペナールツ。アワーレコード獲得や個人TT世界選手権3位など目立つ成績を残してきたものの、8度目のグランツール参戦でついに勝利。逃げ切りからの一騎打ちという、決して得意としていないシナリオでチャンスを掴み取った。
7秒届かなかった追走グループはアルントが先着し、17分遅れのメイン集団はイネオス・グレナディアーズ先頭のままゆったりとフィニッシュ。クールダウンの一日を過ごした総合勢は、いよいよ明日に迫った「タッポーネ」に挑む。
5月23日(日)第15ステージ
グラード〜ゴリツィア 147km ★★★
前日にモンテ・ゾンコランを登りきり、翌日に獲得標高差5,700mという恐ろしいタッポーネ(=クイーンステージ)を控える中で迎えたジロ・デ・イタリア第14ステージ。中盤からスロベニアとイタリアにまたがる周回コースを2.5周(4級山岳ゴルニェ・セロボを3回通過)するコースプロフィール図を見るかぎり平坦なスプリントステージと思いきや、この日は(この日も)鼻息を荒くした逃げ屋がスタートから猛烈な勢いでアタックした。
アドリア海に浮かぶ島グラードをパレードラン。フラッグが振られると共に先導車を追い抜かさんばかりの勢いでクベカ・アソスのヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)とマキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ)が加速し、逃げ切りを狙う選手たちが後に続く。しかしすぐさま、本土と繋がる海上の一直線路を塞ぐ大落車が発生した。
追い風に押され、70km/hに達する超高速状態でのクラッシュ。路面に叩きつけられた選手たちの中には総合6位エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)の姿もあった。激しく傷ついたヨス・ファンエムデン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)やナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)たちがリタイアを強いられ、頭を打ち付けたブッフマンも医師判断によってレースを降りることに。ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーションNIPPO)もその後レースを降りている。
一旦ストップが掛けられたレースが再始動すると、再びカンペナールツとワルシャイドを先頭に選手たちが次々と飛び出していく。すぐさま15名が先行し、4名が追走。合計19名を見送ったメイン集団はイネオス・グレナディアーズのコントロールの下、翌日を見据えてイージーモードに切り替えた。
逃げグループを形成した15名
ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
オスカル・リースビーク(オランダ、アルペシン・フェニックス)
シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)
ラルス・ファンデンベルフ(オランダ、グルパマFDJ)
クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル)
ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)
ダリオ・カタルド(イタリア、モビスター)
アルベルト・トーレス(スペイン、モビスター)
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)
マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、クベカ・アソス)
ルーカス・ヴィシニオウスキー(ポーランド、クベカ・アソス)
バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
アンドレア・パスクァロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)やマッテーオ・ヨルゲンソン(アメリカ、モビスター)を含む第2グループはしばらく追走を続けていたものの、逃げる第1グループを捉えることなく徐々に失速。フィリッポ・ガンナとサルヴァトーレ・プッチョ(共にイタリア、イネオス・グレナディアーズ)が淡々とペースを刻むメイン集団に引き戻されている。
もう残り3名となってしまったロット・スーダルやモビスター、クベカ・アソス、アルペシン・フェニックスがそれぞれ2名ずつ送り込んだ逃げグループ。スロベニア国旗が翻る周回コースをこなし、12分ものリードを得て残り30km地点を通過すると、いよいよステージ優勝に向けての絞り込みがスタートした。
緊張感溢れるアタックと吸収が行われる中、残り22km地点で先行したのはカンペナールツとオスカル・リースビーク(オランダ、アルペシン・フェニックス)、そしてアルベルト・トーレス(スペイン、モビスター)の3名。フィニッシュまで距離を残していたことで追走グループ(12名)は先行を許した。
3度目の4級山岳ゴルニェ・セロボでは先頭グループからトーレスが遅れ、カンペナールツとリースビークが大雨の中30秒リードのまま残り10km地点をクリア。カンペナールツはバイクコントロールを失う寸前までダウンヒルを攻めたものの、怖がりながらもチャンスを失いたくないリースビークは千切れない。牽制を繰り返す追走グループとの差を維持しながら、残り4km地点に設定された登坂距離1km・平均勾配5.9%・最大勾配14%の登りに突入した。
緩斜面区間でリースビークが先行するも、急勾配区間で飛び出したカンペナールツがリードを得て得意のダウンヒルへ。すぐ後ろまで迫った後続グループではクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が仕掛けるも、モレマが濡れた下りで落車しかけるなど今ひとつリズムを維持することができなかった。
平坦で仕掛け続けたリースビークと、リースビークが不得意にするコーナーと下りで仕掛け続けたカンペナールツは、結局二人のままフィニッシュ地ゴリツィアへ。大歓声に包まれた最終ストレートに入り、リースベーク先行によるスプリント勝負が幕開けた。
残り150mから先行したリースビークだったが、石畳の最終区間で伸びたのはカンペナールツだった。再び踏み直して食い下がるリースビークを退けて、カンペナールツが「クベカの手」をアピールしながら先着。ここまで何度も何度もチャンスを狙っては失敗を繰り返してきたカンペナールツが遂にグランツール初の区間優勝を掴んだ。
「長いことワールドツアー、特にグランツールのステージ優勝に挑み続けてきた。ここまで2位が4回、3位が2回、5位が1回。勝利にに近づいてきていたけれど、レースの走り方を変えて、TTよりもロードステージに重きを置くようにしたんだ。新しい目標に切り替えて初めてのグランツールで、チームは既に2度の勝利。(第11ステージ)でマウロ(シュミット)を助けたとは言えないけれど、(第13ステージで)のニッツォーロの勝利には貢献することができた。そして今日は自分自身で勝利を狙い、掴んだんだ。なんという一日なんだろう!」と話すカンペナールツ。アワーレコード獲得や個人TT世界選手権3位など目立つ成績を残してきたものの、8度目のグランツール参戦でついに勝利。逃げ切りからの一騎打ちという、決して得意としていないシナリオでチャンスを掴み取った。
7秒届かなかった追走グループはアルントが先着し、17分遅れのメイン集団はイネオス・グレナディアーズ先頭のままゆったりとフィニッシュ。クールダウンの一日を過ごした総合勢は、いよいよ明日に迫った「タッポーネ」に挑む。
ジロ・デ・イタリア2021第15ステージ結果
1位 | ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス) | 3:25:25 |
2位 | オスカル・リースビーク(オランダ、アルペシン・フェニックス) | |
3位 | ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM) | 0:07 |
4位 | シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス) | |
5位 | クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
6位 | ダリオ・カタルド(イタリア、モビスター) | |
7位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 0:09 |
8位 | アルベルト・トーレス(スペイン、モビスター) | 0:44 |
9位 | フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 1:02 |
10位 | マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、クベカ・アソス) | |
DNF | ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス) | |
DNF | ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーションNIPPO) | |
DNF | ヨス・ファンエムデン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | |
DNF | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
DNS | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス) |
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 135pts |
2位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | 113pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 110pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 96pts |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 57pts |
3位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 50pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 | トレック・セガフレード | 186:43:31 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:10:02 |
3位 | モビスター | 0:14:53 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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