2021/05/23(日) - 06:35
ジロ・デ・イタリア第14ステージを締めくくる、18年ぶりの登場となるモンテゾンコラン東側登坂。逃げの展開から独走したロレンツォ・フォルトゥナート(エオーロ・コメタ)がバッソとコンタドール率いるチームにステージ初優勝をもたらし、総合ではエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)とサイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ)が好調ぶりを結果につなげた。
5月22日(土)第14ステージ
チッタデッラ〜モンテ・ゾンコラン 205km ★★★★★
難易度5つ星のジロ第14ステージ。アルプス&ドロミテ決戦がいよいよ始まった。
スタートからしばらく平坦路を走ったプロトンは、120km地点のスプリントポイント通過後にフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の山岳地帯に突入する。前菜扱いの2級山岳フォルチェッタ・モンテレスト(登坂距離10.5km・平均勾配5.9%)の先に待つのはメインディッシュの1級山岳モンテゾンコラン(登坂距離14.1km・平均勾配8.5%・最大勾配27%)。直近の5回(2007年、2010年、2011年、2014年、2018年)は西側オヴァーロからのモンテゾンコラン登坂(登坂距離10.1km・平均勾配11.9%・最大勾配22%)だったのに対し、2021年は2003年のジロ初登場時と同じ東側ストゥリオから標高1,730mの峠を目指す。
平均勾配だけを見ると11.9%から8.5%にダウンしているものの、頂上手前の勾配は強烈で、最大勾配は東側に軍配が上がる。残り3kmから1kmごとに平均勾配が11.2%→13.1%→14.7%と厳しさを増していくレイアウトで、最大勾配も22%→25%→27%と右肩上がり。深い霧が立ち込める気温5度のモンテゾンコランで、ステージ優勝争いとマリアローザ争いが同時並行して繰り広げれらた。
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)やトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)も加わった逃げアタック合戦を経て、最初の1時間を平均スピード50.5km/hで駆け抜けた11名がメイン集団を引き離しにかかる。総合で11分しか遅れていないジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)が逃げに乗ったが、最大タイム差は9分を超えた。
逃げグループを形成した11名
ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)総合11分21秒遅れ
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)総合28分17秒遅れ
ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、エオーロ・コメタ)総合30分26秒遅れ
バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)総合41分38秒遅れ
ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)総合42分47秒遅れ
アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツ)総合45分02秒遅れ
アンドリー・ポノマル(ウクライナ、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
レミ・ロシャス(フランス、コフィディス)
ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ)
エドアルド・アッフィニ(イタリア、ユンボ・ヴィスマ)
集団牽引を担当したのは、総合1位チームのイネオス・グレナディアーズではなく、総合2位チームのアスタナ・プレミアテックだった。2級山岳フォルチェッタ・モンテレストを6分遅れで通過したメイン集団は、アスタナ勢のハイペースによって分裂。ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック)率いるメイン集団からレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)らが遅れるシーンも見られたが、その後の平坦区間で集団は一つに戻っている。
アスタナ・プレミアテックがアレクサンドル・ウラソフ(ロシア)のステージ優勝と総合ジャンプアップに意欲を見せたが、前日ステージ2位のアッフィニとモスカがアシストとして献身的に逃げグループを率いたためタイム差は縮まらない。最後の1級山岳モンテゾンコランの麓に到着した時点で逃げグループとメイン集団のタイム差は6分20秒。力を尽くしたアッフィニとモスカが脱落すると、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のお隣スロベニア出身のトラトニクが逃げグループの中から最初に加速した。
淡々と前半の一定勾配区間を先行したトラトニクには唯一フォルトゥナートだけが合流に成功する。メイン集団では、残り10kmアーチ通過とともにアスタナ・プレミアテックに代わってイネオス・グレナディアーズがペースアップを開始。しかし距離にしてモンテゾンコラン前半の登坂をこなした時点でタイム差は1分しか縮まっておらず、逃げグループ内でステージ優勝が争われることが濃厚になった。
追走グループを形成したベネット、オリヴェイラ、モレマ、コーヴィという実績のあるベテランに対して、45秒のリードで残り3kmからの激坂区間に突入したトラトニクとフォルトゥナート。道幅が狭まり、徐々に勾配が増す登りでやがてフォルトゥナートの独走となる。あまりの勾配に蛇行しながら失速したトラトニクを引き離し、フォルトゥナートが先頭で霧立ち込める1級山岳モンテゾンコランを登り切った。
イネオス・グレナディアーズが総勢5名(モスコン、ナルバエス、カストロビエホ、マルティネス、ベルナル)で牽引したメイン集団は激坂区間で崩壊。総合7位エヴェネプールらが脱落する中、マリアローザ候補の中で最初に動いたのは総合5位サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)だった。
「大会前半は調子が優れなかったけど、今はずっと感触が良くなった」という2018年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者のイェーツの攻撃的な走りに対応できたのはマリアローザのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)だけ。逃げグループから遅れた選手たちを勢いよく追い抜きながら突き進んだイェーツとベルナル。最終的にライバルたちを全員ふるい落としたベルナルが1分43秒遅れ、イェーツが1分54秒遅れ、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らが2分22秒遅れ、そしてウラソフが2分55秒遅れでフィニッシュした。
チームオーナーを務めるアルベルト・コンタドールは自身のインスタグラムライブで「ミラノまで自転車で行く!!」と興奮気味に語る中、最後まで落ち着いて勝負したフォルトゥナート。ボローニャ出身の25歳で、今季ヴィーニザブKTMからエオーロ・コメタに移籍したフォルトゥナートがキャリア最大の勝利を掴んだ。
グランツール初出場のエオーロ・コメタにとっても今シーズン初勝利。「エオーロ・コメタの関係者全員に感謝したい。このモンテゾンコランで(2010年に)勝利しているイヴァン・バッソに『逃げに乗って、アタックして、ステージ優勝するんだ』という指示を受け、その通りの走りをしたんだ。初めてのモンテゾンコラン登坂だったけど、いつもテレビで見ていたこの象徴的な登りで勝利するなんてワンダフルだ」と歴史に名前を刻んだフォルトゥナートは語る。
登坂タイムだけを比較すると、フォルトゥナートは48分50秒(VAM1,462)、ベルナルは44分10秒(VAM1,616)。再びライバルたちを一蹴し、総合リードを広げたベルナルは「常々言ってるけど、ライバルは総合2位の選手だけではない。今日はサイモン・イェーツがアタックすると予想していた。とても力強い走りだったし、これからは彼が一番のライバルになると思う」とコメント。イェーツは1分33秒差の総合2位に浮上している。
カルーゾが総合3位をキープし、ウラソフが総合2位から4位にダウン。2020年大会総合2位のジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、チームDSM)が股擦れによりリタイアしたことに伴い単独エースとなったロマン・バルデ(フランス、チームDSM)が総合トップ10に返り咲いている。
5月22日(土)第14ステージ
チッタデッラ〜モンテ・ゾンコラン 205km ★★★★★
難易度5つ星のジロ第14ステージ。アルプス&ドロミテ決戦がいよいよ始まった。
スタートからしばらく平坦路を走ったプロトンは、120km地点のスプリントポイント通過後にフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の山岳地帯に突入する。前菜扱いの2級山岳フォルチェッタ・モンテレスト(登坂距離10.5km・平均勾配5.9%)の先に待つのはメインディッシュの1級山岳モンテゾンコラン(登坂距離14.1km・平均勾配8.5%・最大勾配27%)。直近の5回(2007年、2010年、2011年、2014年、2018年)は西側オヴァーロからのモンテゾンコラン登坂(登坂距離10.1km・平均勾配11.9%・最大勾配22%)だったのに対し、2021年は2003年のジロ初登場時と同じ東側ストゥリオから標高1,730mの峠を目指す。
平均勾配だけを見ると11.9%から8.5%にダウンしているものの、頂上手前の勾配は強烈で、最大勾配は東側に軍配が上がる。残り3kmから1kmごとに平均勾配が11.2%→13.1%→14.7%と厳しさを増していくレイアウトで、最大勾配も22%→25%→27%と右肩上がり。深い霧が立ち込める気温5度のモンテゾンコランで、ステージ優勝争いとマリアローザ争いが同時並行して繰り広げれらた。
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、クベカ・アソス)やトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)も加わった逃げアタック合戦を経て、最初の1時間を平均スピード50.5km/hで駆け抜けた11名がメイン集団を引き離しにかかる。総合で11分しか遅れていないジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)が逃げに乗ったが、最大タイム差は9分を超えた。
逃げグループを形成した11名
ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)総合11分21秒遅れ
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)総合28分17秒遅れ
ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、エオーロ・コメタ)総合30分26秒遅れ
バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)総合41分38秒遅れ
ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)総合42分47秒遅れ
アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツ)総合45分02秒遅れ
アンドリー・ポノマル(ウクライナ、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
レミ・ロシャス(フランス、コフィディス)
ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ)
エドアルド・アッフィニ(イタリア、ユンボ・ヴィスマ)
集団牽引を担当したのは、総合1位チームのイネオス・グレナディアーズではなく、総合2位チームのアスタナ・プレミアテックだった。2級山岳フォルチェッタ・モンテレストを6分遅れで通過したメイン集団は、アスタナ勢のハイペースによって分裂。ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック)率いるメイン集団からレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)らが遅れるシーンも見られたが、その後の平坦区間で集団は一つに戻っている。
アスタナ・プレミアテックがアレクサンドル・ウラソフ(ロシア)のステージ優勝と総合ジャンプアップに意欲を見せたが、前日ステージ2位のアッフィニとモスカがアシストとして献身的に逃げグループを率いたためタイム差は縮まらない。最後の1級山岳モンテゾンコランの麓に到着した時点で逃げグループとメイン集団のタイム差は6分20秒。力を尽くしたアッフィニとモスカが脱落すると、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のお隣スロベニア出身のトラトニクが逃げグループの中から最初に加速した。
淡々と前半の一定勾配区間を先行したトラトニクには唯一フォルトゥナートだけが合流に成功する。メイン集団では、残り10kmアーチ通過とともにアスタナ・プレミアテックに代わってイネオス・グレナディアーズがペースアップを開始。しかし距離にしてモンテゾンコラン前半の登坂をこなした時点でタイム差は1分しか縮まっておらず、逃げグループ内でステージ優勝が争われることが濃厚になった。
追走グループを形成したベネット、オリヴェイラ、モレマ、コーヴィという実績のあるベテランに対して、45秒のリードで残り3kmからの激坂区間に突入したトラトニクとフォルトゥナート。道幅が狭まり、徐々に勾配が増す登りでやがてフォルトゥナートの独走となる。あまりの勾配に蛇行しながら失速したトラトニクを引き離し、フォルトゥナートが先頭で霧立ち込める1級山岳モンテゾンコランを登り切った。
イネオス・グレナディアーズが総勢5名(モスコン、ナルバエス、カストロビエホ、マルティネス、ベルナル)で牽引したメイン集団は激坂区間で崩壊。総合7位エヴェネプールらが脱落する中、マリアローザ候補の中で最初に動いたのは総合5位サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)だった。
「大会前半は調子が優れなかったけど、今はずっと感触が良くなった」という2018年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者のイェーツの攻撃的な走りに対応できたのはマリアローザのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)だけ。逃げグループから遅れた選手たちを勢いよく追い抜きながら突き進んだイェーツとベルナル。最終的にライバルたちを全員ふるい落としたベルナルが1分43秒遅れ、イェーツが1分54秒遅れ、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らが2分22秒遅れ、そしてウラソフが2分55秒遅れでフィニッシュした。
チームオーナーを務めるアルベルト・コンタドールは自身のインスタグラムライブで「ミラノまで自転車で行く!!」と興奮気味に語る中、最後まで落ち着いて勝負したフォルトゥナート。ボローニャ出身の25歳で、今季ヴィーニザブKTMからエオーロ・コメタに移籍したフォルトゥナートがキャリア最大の勝利を掴んだ。
グランツール初出場のエオーロ・コメタにとっても今シーズン初勝利。「エオーロ・コメタの関係者全員に感謝したい。このモンテゾンコランで(2010年に)勝利しているイヴァン・バッソに『逃げに乗って、アタックして、ステージ優勝するんだ』という指示を受け、その通りの走りをしたんだ。初めてのモンテゾンコラン登坂だったけど、いつもテレビで見ていたこの象徴的な登りで勝利するなんてワンダフルだ」と歴史に名前を刻んだフォルトゥナートは語る。
登坂タイムだけを比較すると、フォルトゥナートは48分50秒(VAM1,462)、ベルナルは44分10秒(VAM1,616)。再びライバルたちを一蹴し、総合リードを広げたベルナルは「常々言ってるけど、ライバルは総合2位の選手だけではない。今日はサイモン・イェーツがアタックすると予想していた。とても力強い走りだったし、これからは彼が一番のライバルになると思う」とコメント。イェーツは1分33秒差の総合2位に浮上している。
カルーゾが総合3位をキープし、ウラソフが総合2位から4位にダウン。2020年大会総合2位のジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、チームDSM)が股擦れによりリタイアしたことに伴い単独エースとなったロマン・バルデ(フランス、チームDSM)が総合トップ10に返り咲いている。
ジロ・デ・イタリア2021第14ステージ結果
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 135pts |
2位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス) | 126pts |
3位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | 113pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 96pts |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 57pts |
3位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 50pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
text:Kei Tsuji
photo:CorVos
photo:CorVos
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