2021/04/26(月) - 08:12
精鋭5名によるスプリント勝負に持ち込まれた第107回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。チームメイトとスタッフの新型コロナウイルス陽性によってラ・フレーシュ・ワロンヌを欠場したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がモニュメント初制覇を果たした。
「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」という愛称で呼ばれるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが初開催されたのは今から119年前の1892年。ツール・ド・フランス(1903年〜)はもちろんのこと近代オリンピック(1896年〜)や日本の箱根駅伝(1920年〜)よりも歴史が長く、「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の1つに数えられている。
ベルギー西部のフランデレン地域を代表するのがロンド・ファン・フラーンデレンであれば、東部ワロン地域を代表するのがこのリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南方に広がる丘陵地帯だ。コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復で、259kmコースには11箇所の山岳が組み込まれている。同じアルデンヌクラシックのアムステルゴールドレースとラ・フレーシュ・ワロンヌが「丘のレース」であれば、このリエージュは「山のレース」。獲得標高差4,300mという「モニュメント」随一の難易度を誇る。
気温10度のリエージュ市内をスタートしたのは25チーム。中根英登(EFエデュケーション・NIPPO)はフレーシュに続く連戦出場で、新型コロナウイルス偽陽性によってフレーシュを欠場したUAEチームエミレーツは一軍を揃えてリエージュ往復レースに挑んだ。
アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオやビンゴール・パウエルスソース・WBが複数の選手を送り込んだ合計7名の「蛍光イエロー率の高い逃げ」は8分のリードを持って折り返し地点のバストーニュまでの南下を完了し、リエージュに向かう険しい北上を開始する。メイン集団はドゥクーニンク・クイックステップ、ユンボ・ヴィスマ、UAEチームエミレーツの3チームが主にコントロール。ここにイスラエル・スタートアップネイションやモビスターも加わり、後半の連続アップダウン区間へと入っていく。
残り83km地点でのルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック)のアタックをきっかけにメイン集団の均衡が崩れ、2011年大会の優勝者でワロン地域の英雄フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)や、「モニュメント」出場50回目(リエージュは6回目)のグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)らが飛び出すも、ドゥクーニンク・クイックステップがこれら危険な選手たちの先行を許さなかった。
続いて、残り60km地点でマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・ヴィクトリアス)、ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)、マーク・ドノヴァン(イギリス、チームDSM)が追走グループを形成して3分先を行く逃げを追いかけたが、毎年レースが大きく動く「コート・ド・ラ・ルドゥット(残り35km地点・平均8.9%)」までにメイン集団に引き戻される。
逃げグループとタイム差2分で「コート・ド・ラ・ルドゥット」に突入すると、テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がメイン集団を絞り込みにかかった。強力なペースによってジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が後方集団に取り残されるシーンも見られたが、残り30km地点でメイン集団は一つに戻る。アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)率いるメイン集団は、最後から2つ目の「コート・ド・フォルジュ(残り23km地点・平均7.8%)」で序盤からの逃げを吸収した。
アグレッシブなレースを展開したイネオス・グレナディアーズは続いてリチャル・カラパス(エクアドル)を先行させる。コントロールを失ったメイン集団に対して一気に20秒のリードを得たカラパスだったが、4月1日以降禁止されている「スーパータック(トップチューブに座る)」ポーズで下り区間を走ったためその後に失格処分が与えられている。
カラパスから20秒遅れで最後の「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(残り13.5km地点・平均11%)」に突入したメイン集団はダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)のペースアップによって縦に伸び、中切れで縮小し、そこからマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)がアタック。
今大会最大の勝負どころのウッズのアタックに反応できたのは、ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)だけ。それまでも出遅れがちだった前年度覇者プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)はこの決定的な動きに反応できなかった。
ログリッチとヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ・プレミアテック)という過去2年の優勝者を含む追走グループは、ローテーションを回す精鋭5名に追いつくことができない。今年も「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン」で形成された精鋭グループがリエージュの街中でスプリントバトルを繰り広げられることに。
この日41歳の誕生日を迎えたバルベルデを先頭に、ウッズ、ゴデュ、アラフィリップ、ポガチャルの順で最終ストレート。タイミングよく仕掛けたアラフィリップが先頭に立つも、最高スピード68km/hでポガチャルが最後尾からまくり上げる。精鋭5名によるサバイバルスプリントでポガチャルが先着した。
「言葉が出てこない。大好きなレースで、偉大な選手たちを相手に勝てたのは信じられない」と、3度目の出場でリエージュ初制覇を果たしたポガチャルは語る。22歳と217日でのリエージュ制覇は歴代11番目の若さ。
モニュメント初制覇を果たした2020年ツール・ド・フランス覇者は「アラフィリップがロングスプリントを仕掛けてくると予想して、彼の番手につけていた。正しい判断だったと思う。(フレーシュ欠場が)とにかく残念だったので、チームとして高いモチベーションで挑んでいたんだ」とコメント。アルデンヌクラシックを勝利で締めくくったポガチャルはしばらくの休養期間に入り、連覇のかかったツール・ド・フランスに向けて調整を行う。次戦は地元スロベニアで開催されるツアー・オブ・スロベニアの予定だ。
「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」という愛称で呼ばれるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが初開催されたのは今から119年前の1892年。ツール・ド・フランス(1903年〜)はもちろんのこと近代オリンピック(1896年〜)や日本の箱根駅伝(1920年〜)よりも歴史が長く、「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の1つに数えられている。
ベルギー西部のフランデレン地域を代表するのがロンド・ファン・フラーンデレンであれば、東部ワロン地域を代表するのがこのリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南方に広がる丘陵地帯だ。コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復で、259kmコースには11箇所の山岳が組み込まれている。同じアルデンヌクラシックのアムステルゴールドレースとラ・フレーシュ・ワロンヌが「丘のレース」であれば、このリエージュは「山のレース」。獲得標高差4,300mという「モニュメント」随一の難易度を誇る。
気温10度のリエージュ市内をスタートしたのは25チーム。中根英登(EFエデュケーション・NIPPO)はフレーシュに続く連戦出場で、新型コロナウイルス偽陽性によってフレーシュを欠場したUAEチームエミレーツは一軍を揃えてリエージュ往復レースに挑んだ。
アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオやビンゴール・パウエルスソース・WBが複数の選手を送り込んだ合計7名の「蛍光イエロー率の高い逃げ」は8分のリードを持って折り返し地点のバストーニュまでの南下を完了し、リエージュに向かう険しい北上を開始する。メイン集団はドゥクーニンク・クイックステップ、ユンボ・ヴィスマ、UAEチームエミレーツの3チームが主にコントロール。ここにイスラエル・スタートアップネイションやモビスターも加わり、後半の連続アップダウン区間へと入っていく。
残り83km地点でのルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・プレミアテック)のアタックをきっかけにメイン集団の均衡が崩れ、2011年大会の優勝者でワロン地域の英雄フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)や、「モニュメント」出場50回目(リエージュは6回目)のグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)らが飛び出すも、ドゥクーニンク・クイックステップがこれら危険な選手たちの先行を許さなかった。
続いて、残り60km地点でマーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・ヴィクトリアス)、ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)、マーク・ドノヴァン(イギリス、チームDSM)が追走グループを形成して3分先を行く逃げを追いかけたが、毎年レースが大きく動く「コート・ド・ラ・ルドゥット(残り35km地点・平均8.9%)」までにメイン集団に引き戻される。
逃げグループとタイム差2分で「コート・ド・ラ・ルドゥット」に突入すると、テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がメイン集団を絞り込みにかかった。強力なペースによってジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が後方集団に取り残されるシーンも見られたが、残り30km地点でメイン集団は一つに戻る。アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)率いるメイン集団は、最後から2つ目の「コート・ド・フォルジュ(残り23km地点・平均7.8%)」で序盤からの逃げを吸収した。
アグレッシブなレースを展開したイネオス・グレナディアーズは続いてリチャル・カラパス(エクアドル)を先行させる。コントロールを失ったメイン集団に対して一気に20秒のリードを得たカラパスだったが、4月1日以降禁止されている「スーパータック(トップチューブに座る)」ポーズで下り区間を走ったためその後に失格処分が与えられている。
カラパスから20秒遅れで最後の「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(残り13.5km地点・平均11%)」に突入したメイン集団はダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)のペースアップによって縦に伸び、中切れで縮小し、そこからマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)がアタック。
今大会最大の勝負どころのウッズのアタックに反応できたのは、ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)だけ。それまでも出遅れがちだった前年度覇者プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)はこの決定的な動きに反応できなかった。
ログリッチとヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ・プレミアテック)という過去2年の優勝者を含む追走グループは、ローテーションを回す精鋭5名に追いつくことができない。今年も「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン」で形成された精鋭グループがリエージュの街中でスプリントバトルを繰り広げられることに。
この日41歳の誕生日を迎えたバルベルデを先頭に、ウッズ、ゴデュ、アラフィリップ、ポガチャルの順で最終ストレート。タイミングよく仕掛けたアラフィリップが先頭に立つも、最高スピード68km/hでポガチャルが最後尾からまくり上げる。精鋭5名によるサバイバルスプリントでポガチャルが先着した。
「言葉が出てこない。大好きなレースで、偉大な選手たちを相手に勝てたのは信じられない」と、3度目の出場でリエージュ初制覇を果たしたポガチャルは語る。22歳と217日でのリエージュ制覇は歴代11番目の若さ。
モニュメント初制覇を果たした2020年ツール・ド・フランス覇者は「アラフィリップがロングスプリントを仕掛けてくると予想して、彼の番手につけていた。正しい判断だったと思う。(フレーシュ欠場が)とにかく残念だったので、チームとして高いモチベーションで挑んでいたんだ」とコメント。アルデンヌクラシックを勝利で締めくくったポガチャルはしばらくの休養期間に入り、連覇のかかったツール・ド・フランスに向けて調整を行う。次戦は地元スロベニアで開催されるツアー・オブ・スロベニアの予定だ。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2021結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 6:39:26 |
2位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
3位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | |
4位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | |
5位 | マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション) | |
6位 | マルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ) | 0:00:07 |
7位 | ティシュ・ベノート (ベルギー、チームDSM) | |
8位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | |
9位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:09 |
10位 | マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
DNF | 中根英登(日本、EFエデュケーション・NIPPO) | |
DSQ | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) |
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