2010/06/06(日) - 08:43
インドネシアには懐かしの蒸気機関車が走っている。この日のスタートへはその蒸気機関車に乗ってシュポシュポ向かうという、面白体験ができた。観光も楽しませてくれるレースは、レース前後でいろんなところへ連れて行って楽しませてくれる。
6日間の暑い暑いステージレースも折り返しをすぎ、今日を含めて2ステージを残すのみ。選手やチームスタッフだけでなく、関係者たちの顔にも疲れが見えはじめ、「疲れているかい?」なんて言葉が挨拶かわりになってきた。
でも、ステージレースは前に進むのみ。疲れても休んでいる時間はなく、朝が来れば新しい1日とともに新しいレースが始まる。
蒸気機関車でレースへ出発進行~!
今日は“蒸気機関車でスタート地点に移動する”というイベントがあり、関係者たちは朝から忙しい。週に1度だけ動いているという、ちょっとレトロな機関車にジャージ姿で乗車した選手たち。そして車窓には、線路のすぐ近くまで家が寄り添い、駅が近づくにつれ線路脇に大勢の人が集まり、笑顔で手を振っている。
というのも、このツール・ド・シンカラは、ツーリズム(観光)の要素が大きい。レースを招致することで各自治体がインドネシア全土や、参加している多くの国に向けて、自分たちの土地を宣伝する意味あいが強い。なので、毎日レース後に食事会に合わせ民族舞踊や歌謡ショーなど自治体主催のイベントが開催され、その土地の市長や有権者が参加者たちに熱弁を振るっている。昨年9月の地震で大きな被害を被ったエリアだけに、一生懸命もてなしてくれる地元の人たちの笑顔が心に染みる。
アジア最強のイラン 強さの秘密とは?
そして山岳ステージを終えてから、イラン勢の圧倒的な強さが浮き彫りになっている。第5ステージ終了時点で、総合1位から4位をイラン人選手が独占し、10位以内にイラン7選手が入る。5位につけるのは韓国人のパクだが、トップから4分41秒遅れ。愛三工業レーシングチームの総合トップである別府匠は5分58秒遅れの11位につけているが、ここから先はほぼフラットのコースレイアウト。つまり他チームの逆転総合優勝は残念ながら、不可能と言ってもいい。
イランという国の自転車ロードレース環境がどのようなものか、想像できる人はどのくらいいるのだろう? 少なくとも私はよく知らないでいた。強い、強いと言われていても、実際に彼らのレースを見たことはなかったが、ここにきて桁違いの強さを目の当たりにした。日本の愛三チームは国内トップクラスの強さを誇るが、現在の彼らが真っ向勝負を挑んで勝てるレベルではないと惜しくも感じてしまう。
2010年5月末の時点で、イランのUCIアジアツアー国別ランキングは1位。2位は日本だが、イランの1,269ポイントに対して、日本は半分以下の541ポイントとその差は大きい。同じくチームランキングを見ると、1位、2位とイランチームが占めている。もちろん個人ポイントリーダーもイラン人選手だ。
その強さの秘訣は何だろう? そんな素朴な質問をイラン人選手にすると、彼の答えは2つ。1つはレース数が多いこと。ツアー・オブ・ジャパンと同じクラスのステージレースが年間6レース開催され、それ以外にもレベルの高いレースが、年間100レース以上も開催されていると言う。
そしてもう1つは国土のほとんどが山岳地帯だと言うこと。さらに標高の高い街が多く、イランに住んでいるだけで、高地トレーニングと同様の効果が得られ、イラン人は生まれながらにして心肺機能が高いのだとか……。
そんなイランチームに徹底マークされ、アタックをかけてもすぐに潰されてしまうと嘆く愛三チーム。第4ステージに引き続き、第5ステージでも、序盤から愛三チームは積極的に動き、何度も集団から飛び出したが、集団をコントロールするイランチームは決して許してくれなかった。今日はアタックをかけた選手に総合上位に位置する選手がいないのをイランチームが確認したところで、この日の逃げは決まり、開催国インドネシアのジャヤ・ヘルウィンが勝利した。
逃げ切りを狙っていた愛三チームは思いどおりに動けない悔しさを抱えながらの集団ゴールとなった。明日が最後のステージ。スタート後、一気に下り、シンカラ湖の周りを走るフラットステージ。「マークが厳しい中でも、一瞬のスキをついて逃げに乗りたい」と田中監督は話す。沿道のたくさんの声援を力に、最後まで諦めない走りを期待したい。
text&photo:Sonoko Tanaka
6日間の暑い暑いステージレースも折り返しをすぎ、今日を含めて2ステージを残すのみ。選手やチームスタッフだけでなく、関係者たちの顔にも疲れが見えはじめ、「疲れているかい?」なんて言葉が挨拶かわりになってきた。
でも、ステージレースは前に進むのみ。疲れても休んでいる時間はなく、朝が来れば新しい1日とともに新しいレースが始まる。
蒸気機関車でレースへ出発進行~!
今日は“蒸気機関車でスタート地点に移動する”というイベントがあり、関係者たちは朝から忙しい。週に1度だけ動いているという、ちょっとレトロな機関車にジャージ姿で乗車した選手たち。そして車窓には、線路のすぐ近くまで家が寄り添い、駅が近づくにつれ線路脇に大勢の人が集まり、笑顔で手を振っている。
というのも、このツール・ド・シンカラは、ツーリズム(観光)の要素が大きい。レースを招致することで各自治体がインドネシア全土や、参加している多くの国に向けて、自分たちの土地を宣伝する意味あいが強い。なので、毎日レース後に食事会に合わせ民族舞踊や歌謡ショーなど自治体主催のイベントが開催され、その土地の市長や有権者が参加者たちに熱弁を振るっている。昨年9月の地震で大きな被害を被ったエリアだけに、一生懸命もてなしてくれる地元の人たちの笑顔が心に染みる。
アジア最強のイラン 強さの秘密とは?
そして山岳ステージを終えてから、イラン勢の圧倒的な強さが浮き彫りになっている。第5ステージ終了時点で、総合1位から4位をイラン人選手が独占し、10位以内にイラン7選手が入る。5位につけるのは韓国人のパクだが、トップから4分41秒遅れ。愛三工業レーシングチームの総合トップである別府匠は5分58秒遅れの11位につけているが、ここから先はほぼフラットのコースレイアウト。つまり他チームの逆転総合優勝は残念ながら、不可能と言ってもいい。
イランという国の自転車ロードレース環境がどのようなものか、想像できる人はどのくらいいるのだろう? 少なくとも私はよく知らないでいた。強い、強いと言われていても、実際に彼らのレースを見たことはなかったが、ここにきて桁違いの強さを目の当たりにした。日本の愛三チームは国内トップクラスの強さを誇るが、現在の彼らが真っ向勝負を挑んで勝てるレベルではないと惜しくも感じてしまう。
2010年5月末の時点で、イランのUCIアジアツアー国別ランキングは1位。2位は日本だが、イランの1,269ポイントに対して、日本は半分以下の541ポイントとその差は大きい。同じくチームランキングを見ると、1位、2位とイランチームが占めている。もちろん個人ポイントリーダーもイラン人選手だ。
その強さの秘訣は何だろう? そんな素朴な質問をイラン人選手にすると、彼の答えは2つ。1つはレース数が多いこと。ツアー・オブ・ジャパンと同じクラスのステージレースが年間6レース開催され、それ以外にもレベルの高いレースが、年間100レース以上も開催されていると言う。
そしてもう1つは国土のほとんどが山岳地帯だと言うこと。さらに標高の高い街が多く、イランに住んでいるだけで、高地トレーニングと同様の効果が得られ、イラン人は生まれながらにして心肺機能が高いのだとか……。
そんなイランチームに徹底マークされ、アタックをかけてもすぐに潰されてしまうと嘆く愛三チーム。第4ステージに引き続き、第5ステージでも、序盤から愛三チームは積極的に動き、何度も集団から飛び出したが、集団をコントロールするイランチームは決して許してくれなかった。今日はアタックをかけた選手に総合上位に位置する選手がいないのをイランチームが確認したところで、この日の逃げは決まり、開催国インドネシアのジャヤ・ヘルウィンが勝利した。
逃げ切りを狙っていた愛三チームは思いどおりに動けない悔しさを抱えながらの集団ゴールとなった。明日が最後のステージ。スタート後、一気に下り、シンカラ湖の周りを走るフラットステージ。「マークが厳しい中でも、一瞬のスキをついて逃げに乗りたい」と田中監督は話す。沿道のたくさんの声援を力に、最後まで諦めない走りを期待したい。
text&photo:Sonoko Tanaka