2021/01/31(日) - 10:29
絶好調のまま臨んだ世界選手権で、31歳ルシンダ・ブラント(オランダ)が悲願のアルカンシエル獲得。レースを支配したオランダ勢が2年連続で表彰台独占に成功した。
スタートを待つセイリン・アルバラード(オランダ) photo:Nobuhiko Tanabe
笑顔を見せるルシンダ・ブラント(オランダ) photo:Nobuhiko Tanabe
女子エリートレースがスタート。ホールショットを奪ったセイリン・アルバラード(オランダ)は直後落車してしまう photo:Nobuhiko Tanabe
ベルギー最西部の北海沿いの街オステンドの空は、ベルギーらしい雨模様。男子U23ほどの本降りではないにせよ、シクロクロスの女子世界王者を決めるエリートレースは、雨と低温、重たい砂、そしてスリッピーな泥を組み合わせた過酷なコンディションの中で催された。
45分前後で争われる女子エリートレースにエントリーしたのは14カ国から40名。号砲と共に現在女子シクロクロス界を席巻しているオランダ勢がダッシュを決めたものの、真っ先に第一コーナーに飛び込んだ昨年覇者セイリン・アルバラード(オランダ)がスリップダウンを喫した。
オーバースピードによって、2017年から3年連続でアルカンシエルを着用したサンヌ・カント(ベルギー)を巻き込みながら転倒したアルバラード。すぐさま立ち上がってレース復帰したものの、崩れたリズムを取り戻すには至らず、先頭争いへの復帰は叶わなかった。ブラントとの一騎打ちが期待されたディフェンディングチャンピオンは、この日最終的に6位でレースを終えることとなる。
軽やかな走りで先頭を行くデニセ・ベッツィマ(オランダ) photo:Nobuhiko Tanabe
ベッツィマを追うルシンダ・ブラントとアンマリー・ワースト(オランダ) photo:Nobuhiko Tanabe
ペースが上がらないセイリン・アルバラード(オランダ) photo:Nobuhiko Tanabe
試走日に入念な下見を繰り返していたデニセ・ベッツィマ(オランダ)がサンドセクションで抜群の乗車率を見せてリードを奪い、ルシンダ・ブラントとアンマリー・ワースト(オランダ)が距離を開けて2番手と3番手。以降アルバラードと元欧州王者ヤラ・カステリン(オランダ)が、そして非オランダ勢として元U23世界王者イヴィ・リチャーズ(イギリス)や、普段SDワークスの一員として走るクリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク)といった面々が続いた。
砂浜と20%勾配の巨大フライオーバーで軽やかな走りを披露するベッツィマ。2番手グループから10〜15秒リードを維持して3周回目に突入したものの、ランニング必須の登りサンドセクションで急速にリードを失ってしまう。「ラン区間では彼女たちの方が速く、最終盤に入って先週故障した膝に痛みが出てしまった」と悔やむベッツィマを、ブラントとワーストが捉えた。
直後ワーストが砂浜で転倒して遅れるも、ほぼ1周回を要して合流に成功。こうして全5周回中の4周目に、オランダ勢が1-2-3態勢を築き上げた。
後半にかけて失速したサンヌ・カント(ベルギー) photo:Nobuhiko Tanabe
元世界王者マリアンヌ・フォス(オランダ)はトップ10入りならず photo:Nobuhiko Tanabe
先頭グループを組むアンマリー・ワーストとルシンダ・ブラント、デニセ・ベッツィマ photo:Nobuhiko Tanabe
80%(遅れた選手たちを排除していく)ルールを上回るハイペースで周回を重ねる3選手の戦いは、最終周回に入ってから急加熱。ワーストが、そしてブラントが互い仕掛け合う中ベッツィマが遅れ、二人が横並びでスリッピーな右コーナーに進入。肩が接触する接近戦の中、外側ラインを選んだワーストが前輪を滑らせ転倒を喫した。
優勝への道筋を切り開いたブラントは、ミスを出しながら猛然と迫るワーストを振り切って最終ストレートへ。何度も何度も後方を振り返り、優勝を確信したブラントが力強く右拳を築き上げる。今季11勝を収め、シクロクロス三大シリーズの総合ランキングを総なめした31歳が、2018年から3位2位、3位と3年連続で世界選手権表彰台獲得を続けた末に、シクロクロス世界王者に輝いた。
世界選手権初制覇を遂げたルシンダ・ブラント(オランダ) photo:Nobuhiko Tanabe
表彰台をオランダが独占。2位ワースト、1位ブラント、3位ベッツィマ photo:Nobuhiko Tanabe
「デニセがスタート直後から大きなリードを得たけれど。絶対に諦めちゃダメだと言い聞かせて走り続けていた。最終周回のバトルはまさにエキサイティング。アンマリーと私は違うラインを選んだことでラインが交錯し、彼女の肘に接触して彼女が転んでしまったけれど、できればその状況を避けたかった」とレースを振り返るブラント。「世界タイトルは自分にとって大きな意味を持つもの。数年勝利を取りこぼし続けた末の獲得は最高にクール」と、笑顔と共にアルカンシエルと金メダルを手にした新チャンピオンは語っている。
「(転倒したコーナーの)外側ラインはとてもスリッピーだった。ルシンダが現れて転んでしまったけれど、あの落車は誰も悪くない。とても順調にトレーニングを重ねてこれたけれど、あれほど上手く砂を走れるとは思いもしなかった」と話すワーストが2位銀メダル。調子が上がらない状態が続いていたワーストが、今季初めてブラントらと対等に渡り合い、昨年に続く表彰台を収めている。
また、今年ブレイクしたクララ・ホンシンガー(アメリカ)は、後半にアルバラードやカステリンをパスして4位を獲得。以降5位にカステリン、6位にアルバラード、7位リチャーズ。低体温症による遅れか、後半にかけて失速したカントは8位でレースを終えている。
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ベルギー最西部の北海沿いの街オステンドの空は、ベルギーらしい雨模様。男子U23ほどの本降りではないにせよ、シクロクロスの女子世界王者を決めるエリートレースは、雨と低温、重たい砂、そしてスリッピーな泥を組み合わせた過酷なコンディションの中で催された。
45分前後で争われる女子エリートレースにエントリーしたのは14カ国から40名。号砲と共に現在女子シクロクロス界を席巻しているオランダ勢がダッシュを決めたものの、真っ先に第一コーナーに飛び込んだ昨年覇者セイリン・アルバラード(オランダ)がスリップダウンを喫した。
オーバースピードによって、2017年から3年連続でアルカンシエルを着用したサンヌ・カント(ベルギー)を巻き込みながら転倒したアルバラード。すぐさま立ち上がってレース復帰したものの、崩れたリズムを取り戻すには至らず、先頭争いへの復帰は叶わなかった。ブラントとの一騎打ちが期待されたディフェンディングチャンピオンは、この日最終的に6位でレースを終えることとなる。
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試走日に入念な下見を繰り返していたデニセ・ベッツィマ(オランダ)がサンドセクションで抜群の乗車率を見せてリードを奪い、ルシンダ・ブラントとアンマリー・ワースト(オランダ)が距離を開けて2番手と3番手。以降アルバラードと元欧州王者ヤラ・カステリン(オランダ)が、そして非オランダ勢として元U23世界王者イヴィ・リチャーズ(イギリス)や、普段SDワークスの一員として走るクリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク)といった面々が続いた。
砂浜と20%勾配の巨大フライオーバーで軽やかな走りを披露するベッツィマ。2番手グループから10〜15秒リードを維持して3周回目に突入したものの、ランニング必須の登りサンドセクションで急速にリードを失ってしまう。「ラン区間では彼女たちの方が速く、最終盤に入って先週故障した膝に痛みが出てしまった」と悔やむベッツィマを、ブラントとワーストが捉えた。
直後ワーストが砂浜で転倒して遅れるも、ほぼ1周回を要して合流に成功。こうして全5周回中の4周目に、オランダ勢が1-2-3態勢を築き上げた。
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優勝への道筋を切り開いたブラントは、ミスを出しながら猛然と迫るワーストを振り切って最終ストレートへ。何度も何度も後方を振り返り、優勝を確信したブラントが力強く右拳を築き上げる。今季11勝を収め、シクロクロス三大シリーズの総合ランキングを総なめした31歳が、2018年から3位2位、3位と3年連続で世界選手権表彰台獲得を続けた末に、シクロクロス世界王者に輝いた。
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「デニセがスタート直後から大きなリードを得たけれど。絶対に諦めちゃダメだと言い聞かせて走り続けていた。最終周回のバトルはまさにエキサイティング。アンマリーと私は違うラインを選んだことでラインが交錯し、彼女の肘に接触して彼女が転んでしまったけれど、できればその状況を避けたかった」とレースを振り返るブラント。「世界タイトルは自分にとって大きな意味を持つもの。数年勝利を取りこぼし続けた末の獲得は最高にクール」と、笑顔と共にアルカンシエルと金メダルを手にした新チャンピオンは語っている。
「(転倒したコーナーの)外側ラインはとてもスリッピーだった。ルシンダが現れて転んでしまったけれど、あの落車は誰も悪くない。とても順調にトレーニングを重ねてこれたけれど、あれほど上手く砂を走れるとは思いもしなかった」と話すワーストが2位銀メダル。調子が上がらない状態が続いていたワーストが、今季初めてブラントらと対等に渡り合い、昨年に続く表彰台を収めている。
また、今年ブレイクしたクララ・ホンシンガー(アメリカ)は、後半にアルバラードやカステリンをパスして4位を獲得。以降5位にカステリン、6位にアルバラード、7位リチャーズ。低体温症による遅れか、後半にかけて失速したカントは8位でレースを終えている。
シクロクロス世界選手権2021 女子エリート結果
1位 | ルシンダ・ブラント(オランダ) | 46:53 |
2位 | アンマリー・ワースト(オランダ) | 0:08 |
3位 | デニセ・ベッツィマ(オランダ) | 0:19 |
4位 | クララ・ホンシンガー(アメリカ) | 0:52 |
5位 | ヤラ・カステリン(オランダ) | 1:04 |
6位 | セイリン・アルバラード(オランダ) | 1:12 |
7位 | イヴィ・リチャーズ(イギリス) | 1:13 |
8位 | サンヌ・カント(ベルギー) | 1:43 |
9位 | エリザベス・ブランダウ(ドイツ) | 2:07 |
10位 | クリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク) | 2:08 |
text:So Isobe
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