2020/12/21(月) - 13:13
ベルギーのナミュール城塞を舞台にしたUCIシクロクロスワールドカップ第2戦は、新旧世界王者とイギリス王者の戦いに。ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)と共にトーマス・ピドコック(イギリス、トリニティレーシング)を捉えたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)が接戦を制した。
シクロクロス3大シリーズの中枢であるUCIシクロクロスワールドカップは、新型コロナウイルスによる縮小、遅延開幕を取り戻すべくフルスロットルでスケジュールを進行中。チェコ、タボールでの開幕戦に続く第2戦の舞台はベルギーのナミュール要塞だ。
2015年のツール・ド・フランスを筆頭に、数々のロードレースでも使用されている「シタデル・ド・ナミュール」は、4級山岳に設定されるほどの高低差を持つことが特徴。丘の上に位置する城塞を縫うように走るコースは常に厳しいアップダウンを繰り返す。長い上りの舗装路、轍が刻まれたドロップオフ、僅か1本のラインしかない下りキャンバーなど、パワーとテクニック、そして思い切りの良さが問われる屈指の難コースだ。
今年の注目は何と言っても新旧世界王者であるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が今季初めて顔を合わせたこと。これまでファンデルプールはX2Oトロフェー第3戦とスーパープレスティージュ(SP)第6戦で1位と2位、そしてファンアールトはW杯初戦とSP第5戦で3位と4位。SP第6戦でファンデルプールを打ち破ったトーマス・ピドコック(イギリス、トリニティレーシング)も含め、シクロクロス界のトップ選手が一堂に顔を揃えることとなった。
毎年オフシーズン活動でシクロクロスに取り組むハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、バーレーン・マクラーレン)も出場したレースは、W杯初戦で優勝し、シリーズリーダージャージを着用するマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)のホールショットで動き出す。その中ゼッケン13を付ける欧州王者エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)はスタートダッシュ中のメカトラブルによりランニングを強いられ、早々に戦線離脱。ランキング2位につけていたイゼルビッドは、この日最終的に31位で未完走に終わっている。
来日&優勝経験のあるスティーブ・シェネル(フランス、レジェンドル・シャザル)が転倒する難コースで、2列目スタートから先頭を奪ったのは好調ピドコックだった。スタートループを終える頃にはピドコック、ファンアールト、ファントーレンハウト、そしてスタートで埋もれていたファンデルプールが先頭グループを組み上げた。
前輪を滑らせての転倒や、キャンバー区間でラインを外すなど、今ひとつキレの無い走りを見せるファンデルプールを尻目に、ピドコックはスムーズな走りで常にレース先頭を維持。最速ラインで駆け抜けるピドコックに対し、新旧世界王者二人とファントーレンハウトが登り区間で追いつく展開が続いた。
全9周回中の4周目に入るとピドコックが猛然とアタックして10秒ほどのリードを稼ぎ出した。バイク交換をせずリード拡大に努めたイギリスチャンピオンは独走勝利の気配も漂わせたが、ファンデルプールは5周目にファンアールトとファントーレンハウトを切り離して徐々に差を詰めていく。「限界にチャレンジし続けるレースだった」と言う世界王者は、追いついてきたファンアールトと共にペースを維持した。
5,6秒という微妙な差をやり取りするピドコックと追う新旧世界王者。レース時間が50分を過ぎ、8周目に入るとファンアールトの牽引によって急速に差が詰まり始め、約3周を要した追走劇は終幕。すると間髪入れずにファンデルプールが猛然と踏み込んだ。
ピドコックに敗れた先週の借りを返すべくアタックしたファンデルプール。これまで逃げ続けてきたピドコックとファンアールトは遅れをとった。ファンアールトはレース後のインタビューで「自分の勝利を考えるよりもピドコック追いつくことを優先して力を使いすぎてしまった。マチューを先頭に復帰させたし、最終周回ではマチューが最も強かった」と白旗。苦しみ抜きながら、二人の追走を払いのけたファンデルプールがフィニッシュラインにたどり着いた。
12月12日にX2Oトロフェー第3戦でシクロクロス参戦を果たして以降、1位、2位、1位と勝率を66.6%に乗せたファンデルプールにとって、このナミュールでの勝利は6年で5回目。「本当にタフなレースだった。ナミュールのレースがイージーだと思ったことは一度もないけれど、今日はレース中ずっと限界で走っていたんだ」と話す。追走時ワウトに前を引かせたのかという質問に対しては「そんなことは決してなく、一人ではピドコックに追いつけなかった。二人で追いつくためのペースメイクをしなければならなかった」と答えている。
2位には「最終周回で勝つ可能背があるとも思ったけれど、マチューが少し僕よりも強かった。ただし自分のパフォーマンスは満足できるものだった。次の勝負が楽しみだ」と3秒差で粘ったファンアールト。3月1日からのイネオス・グレナディアーズ入りを決めているピドコックは「最終周回でもう少し脚に余裕があれば2位にはなれていたと思うけれど、勝ててはいなかった。シクロクロスにおける二人のチャンピオンと共に表彰台に上がることができたのは十分に満足できる」と、互角に渡り合った2人のチャンピオンを称えている。
女子レースでホールショットを決めたのはU23カテゴリー2年目、19歳のハンガリーチャンピオン、カータ・ヴァス(ハンガリー、ドルチーニ・ファンアイクスポーツ)。パワフルな走りで序盤から飛ばすヴァスには好調デニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)とルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)が続いた。
スタートループを終えると泥を上手くこなすベッツィマが先頭を奪うと、斜めに駆け下りるドロップオフでヴァスが激しく落車してしまう。こうしてベッツィマが独走態勢を築き、ブラントや世界王者セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)といった強者たちがそれぞれ追走。ブラントは2周目にベッツィマを捉え、そのままアタックを継続。力強いシッティングで登坂をこなしたブラントが、ライバルたちを引き離して独走態勢に持ち込んだ。
「脚の調子も良かったし、コースも素晴らしかった。(ベッツィマのリードで)スタートはかなりハイペースを強いられたけれど、自信を持ってさえいれば大丈夫と言い聞かせて走った」という、ワールドカップリーダーの走りは誰よりも強力だった。30秒以上のリードを稼ぎ出すと巡航態勢に切り替え、リスクを背負わずに距離を消化していく。すると後方では、アメリカチャンピオンのクララ・ホンシンガー(アメリカ、キャノンデール・シクロクロスワールド.com)がアルバラードを捉えた。
先週のガーフェレで4位に食い込み、ブレイクしたホンシンガーはベッツィマとアルバラードに劣らない走りを披露し、ここ最近トップコンディションに無いアルバラードが脱落。世界王者を置き去りにした2人が激しい一騎打ちを繰り広げるその30秒前で、安定した走りを続けたブラントが勝利。悲願の世界選手権優勝を目指す31歳がW杯2連勝を飾った。
注目の2位争いを制したのは、長い舗装路登りでベッツィマを退けたホンシンガー。そこから1分近く遅れたアルバラードが4位に入り、1周目に大落車したヴァスがダメージを負いながらも5位。3年前のナミュールで突如優勝し注目を浴びたエヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシングCX)は今季シクロクロス3戦目で6位に食い込んでいる。
シクロクロス3大シリーズの中枢であるUCIシクロクロスワールドカップは、新型コロナウイルスによる縮小、遅延開幕を取り戻すべくフルスロットルでスケジュールを進行中。チェコ、タボールでの開幕戦に続く第2戦の舞台はベルギーのナミュール要塞だ。
2015年のツール・ド・フランスを筆頭に、数々のロードレースでも使用されている「シタデル・ド・ナミュール」は、4級山岳に設定されるほどの高低差を持つことが特徴。丘の上に位置する城塞を縫うように走るコースは常に厳しいアップダウンを繰り返す。長い上りの舗装路、轍が刻まれたドロップオフ、僅か1本のラインしかない下りキャンバーなど、パワーとテクニック、そして思い切りの良さが問われる屈指の難コースだ。
今年の注目は何と言っても新旧世界王者であるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が今季初めて顔を合わせたこと。これまでファンデルプールはX2Oトロフェー第3戦とスーパープレスティージュ(SP)第6戦で1位と2位、そしてファンアールトはW杯初戦とSP第5戦で3位と4位。SP第6戦でファンデルプールを打ち破ったトーマス・ピドコック(イギリス、トリニティレーシング)も含め、シクロクロス界のトップ選手が一堂に顔を揃えることとなった。
毎年オフシーズン活動でシクロクロスに取り組むハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、バーレーン・マクラーレン)も出場したレースは、W杯初戦で優勝し、シリーズリーダージャージを着用するマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)のホールショットで動き出す。その中ゼッケン13を付ける欧州王者エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)はスタートダッシュ中のメカトラブルによりランニングを強いられ、早々に戦線離脱。ランキング2位につけていたイゼルビッドは、この日最終的に31位で未完走に終わっている。
来日&優勝経験のあるスティーブ・シェネル(フランス、レジェンドル・シャザル)が転倒する難コースで、2列目スタートから先頭を奪ったのは好調ピドコックだった。スタートループを終える頃にはピドコック、ファンアールト、ファントーレンハウト、そしてスタートで埋もれていたファンデルプールが先頭グループを組み上げた。
前輪を滑らせての転倒や、キャンバー区間でラインを外すなど、今ひとつキレの無い走りを見せるファンデルプールを尻目に、ピドコックはスムーズな走りで常にレース先頭を維持。最速ラインで駆け抜けるピドコックに対し、新旧世界王者二人とファントーレンハウトが登り区間で追いつく展開が続いた。
全9周回中の4周目に入るとピドコックが猛然とアタックして10秒ほどのリードを稼ぎ出した。バイク交換をせずリード拡大に努めたイギリスチャンピオンは独走勝利の気配も漂わせたが、ファンデルプールは5周目にファンアールトとファントーレンハウトを切り離して徐々に差を詰めていく。「限界にチャレンジし続けるレースだった」と言う世界王者は、追いついてきたファンアールトと共にペースを維持した。
5,6秒という微妙な差をやり取りするピドコックと追う新旧世界王者。レース時間が50分を過ぎ、8周目に入るとファンアールトの牽引によって急速に差が詰まり始め、約3周を要した追走劇は終幕。すると間髪入れずにファンデルプールが猛然と踏み込んだ。
ピドコックに敗れた先週の借りを返すべくアタックしたファンデルプール。これまで逃げ続けてきたピドコックとファンアールトは遅れをとった。ファンアールトはレース後のインタビューで「自分の勝利を考えるよりもピドコック追いつくことを優先して力を使いすぎてしまった。マチューを先頭に復帰させたし、最終周回ではマチューが最も強かった」と白旗。苦しみ抜きながら、二人の追走を払いのけたファンデルプールがフィニッシュラインにたどり着いた。
12月12日にX2Oトロフェー第3戦でシクロクロス参戦を果たして以降、1位、2位、1位と勝率を66.6%に乗せたファンデルプールにとって、このナミュールでの勝利は6年で5回目。「本当にタフなレースだった。ナミュールのレースがイージーだと思ったことは一度もないけれど、今日はレース中ずっと限界で走っていたんだ」と話す。追走時ワウトに前を引かせたのかという質問に対しては「そんなことは決してなく、一人ではピドコックに追いつけなかった。二人で追いつくためのペースメイクをしなければならなかった」と答えている。
2位には「最終周回で勝つ可能背があるとも思ったけれど、マチューが少し僕よりも強かった。ただし自分のパフォーマンスは満足できるものだった。次の勝負が楽しみだ」と3秒差で粘ったファンアールト。3月1日からのイネオス・グレナディアーズ入りを決めているピドコックは「最終周回でもう少し脚に余裕があれば2位にはなれていたと思うけれど、勝ててはいなかった。シクロクロスにおける二人のチャンピオンと共に表彰台に上がることができたのは十分に満足できる」と、互角に渡り合った2人のチャンピオンを称えている。
女子レースでホールショットを決めたのはU23カテゴリー2年目、19歳のハンガリーチャンピオン、カータ・ヴァス(ハンガリー、ドルチーニ・ファンアイクスポーツ)。パワフルな走りで序盤から飛ばすヴァスには好調デニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)とルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)が続いた。
スタートループを終えると泥を上手くこなすベッツィマが先頭を奪うと、斜めに駆け下りるドロップオフでヴァスが激しく落車してしまう。こうしてベッツィマが独走態勢を築き、ブラントや世界王者セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)といった強者たちがそれぞれ追走。ブラントは2周目にベッツィマを捉え、そのままアタックを継続。力強いシッティングで登坂をこなしたブラントが、ライバルたちを引き離して独走態勢に持ち込んだ。
「脚の調子も良かったし、コースも素晴らしかった。(ベッツィマのリードで)スタートはかなりハイペースを強いられたけれど、自信を持ってさえいれば大丈夫と言い聞かせて走った」という、ワールドカップリーダーの走りは誰よりも強力だった。30秒以上のリードを稼ぎ出すと巡航態勢に切り替え、リスクを背負わずに距離を消化していく。すると後方では、アメリカチャンピオンのクララ・ホンシンガー(アメリカ、キャノンデール・シクロクロスワールド.com)がアルバラードを捉えた。
先週のガーフェレで4位に食い込み、ブレイクしたホンシンガーはベッツィマとアルバラードに劣らない走りを披露し、ここ最近トップコンディションに無いアルバラードが脱落。世界王者を置き去りにした2人が激しい一騎打ちを繰り広げるその30秒前で、安定した走りを続けたブラントが勝利。悲願の世界選手権優勝を目指す31歳がW杯2連勝を飾った。
注目の2位争いを制したのは、長い舗装路登りでベッツィマを退けたホンシンガー。そこから1分近く遅れたアルバラードが4位に入り、1周目に大落車したヴァスがダメージを負いながらも5位。3年前のナミュールで突如優勝し注目を浴びたエヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシングCX)は今季シクロクロス3戦目で6位に食い込んでいる。
UCIシクロクロスワールドカップ2020-2021第2戦 男子エリート結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 1:03:59 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | 0:03 |
3位 | トーマス・ピドコック(イギリス、トリニティレーシング) | 0:11 |
4位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 1:07 |
5位 | クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム) | 2:09 |
6位 | ラース・ファンデルハール(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ) | 2:17 |
7位 | トーン・アールツ(ベルギー、テレネットバロワーズ・ライオンズ) | 2:53 |
8位 | ダーン・ソエト(ベルギー、グループヘンス・マースコンテナーズ) | 2:57 |
9位 | コルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンスシクロクロスチーム) | 3:25 |
10位 | ライアン・カンプ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 3:31 |
UCIシクロクロスワールドカップ2020-2021第2戦 女子エリート結果
1位 | ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ) | 52:47 |
2位 | クララ・ホンシンガー(アメリカ、キャノンデール・シクロクロスワールド.com) | 0:29 |
3位 | デニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 0:38 |
4位 | セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 1:21 |
5位 | カータ・ヴァス(ハンガリー、ドルチーニ・ファンアイクスポーツ) | 1:38 |
6位 | エヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシングCX) | 1:45 |
7位 | アンナ・カイ(イギリス、スターカジノCXチーム) | 2:14 |
8位 | アニック・ファンアルフェン(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ) | 2:26 |
9位 | ペリーヌ・クラウツェル(フランス、A.S.バイククロスチーム) | 2:33 |
10位 | エヴァ・リヒナー(イタリア、スターカジノCXチーム) | 2:42 |
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