2020/12/13(日) - 06:30
マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)がシクロクロス復帰戦として注目されたX2Oトロフェー第3戦「シュヘルデクロス」で貫禄の勝利。女子レースは好調デニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が制している。
世界王者、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)の復帰戦として注目されたX2Oトロフェー(昨年まではDVVファルゼクリンゲントロフェー)第3戦の舞台はベルギーの古都アントワープ。
シュヘルデ川が運んだ河川敷の砂地と草地を組み合わせた「シュヘルデクロス」は、2016年にファンデルプールとワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)がシクロクロス史に残る激戦を繰り広げた場所。男子エリートレースは、このレースと翌日のスーパープレスティージュのダブルヘッダーを皮切りに、1月31日の世界選手権まで今季10レースを予定しているファンデルプールの好スタートで幕開けた。
ロンド・ファン・フラーンデレンを制し、3日後のAGドリダーフス・ブルージュ〜デパンヌで落車を喫してロードシーズンを終え、短いオフシーズンと、毎年恒例のスペイン合宿を経てシクロクロスに復帰したファンデルプールは、序盤独走したラース・ファンデルハール(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)が砂浜区間で失速したタイミングを突いて先頭に浮上する。後続を置き去りにした世界王者が、復帰戦の1周目から早くもリードを奪った。
シクロクロスサーキットを席巻した昨年を思わせる力強さで突き進んだファンデルプールだったが、唯一食い下がったのが欧州王者のエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)だった。
イゼルビッドは砂浜区間のランニングでファンデルプールを捉え、全8周回中の4周目には砂を得意とするベルギー王者ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)やマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム)も合流。しかし、砂浜がキーポイントとなるこのレースで、すぐさま特別ジャージを着る2人が再び抜け出すこととなった。
悠然とレースを進めるファンデルプールの背後ではイゼルビッドがミスを出して遅れるものの、全開走行で食らいつくシーンが繰り返される。しかし追走を強いられるイゼルビッドの走りからは次第にスムーズさが消え、苦しい状況に陥っていることは誰の目にも明らかだった。
ファンデルプールは残り2周回の終盤から猛烈なペースアップを行い、それまで自らも、そして誰もが降車を選んだ激坂を乗車で登りきるなどイゼルビッドのギャップを広げていく。ワンミスで大きくタイムを失う砂浜区間もそつなくこなした世界王者が、イゼルビッドを6秒引き離し復帰初戦で勝利した。
「自分が思っていたよりもずっと調子良く走れたんだ。スタート直後からすごくフィーリングが良かった。砂区間では上手く乗れなかったけれど、それでも限界を感じることがないほどコンディションは上々。コースも自分向きだった」と語るフィニッシュ直後のインタビューに応えたファンデルプール。インタビューによれば、フランドル時よりも3kg落とした「レースコンディション」にあるという。
「マチューのランニングはいつもより遅かったし、コーナー後の加速もいつもよりキレがなかった。きっとレースを走るたびにより調子が上がっていくと思う」と、マチューの走りを誰よりも近くで見ていたイゼルビッドは言う。「最終周回はマチューが速いペースを刻み、僕は明日(スーパープレスティージュ)のことを考えてしまった。何度か彼に追いつけたことも良かったし、自分的にもいい走りだった。良い戦いだったと思う」と振り返っている。
55名が出走した女子レースは今季好調を維持しているルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)のホールショットで動き出す。
ブラントは世界王者のセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)やアンナ・カイ(イギリス、スターカジノCXチーム)を置き去りにして独創態勢を組もうとしたものの。3周目にはアルバラードやアンマリー・ワースト(オランダ、777)、デニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、ヤラ・カステリン(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ)たちが追いつきレースは振り出しに。すると突然アルカンシエルがストップを強いられた。
アルバラードの駆動系には路面に埋まっていた針金が絡まり、後輪ロック状態に。暫く修理を試みていたアルバラードだったが、ランニングでピットに戻ることを選択。不運に見舞われた世界王者はこうしてレース最前線から姿を消すこととなった。
今季何度も好勝負を繰り広げてきたライバルの脱落を活かしたかったブラントだったが、この日はベッツィマの砂区間の乗車技術が光った。トップグループの誰よりも砂区間を乗車でこなすベッツィマは「特にランニング区間でルシンダの苦しそうな呼吸を聞いていた」とリードを稼ぎ、そのままブラントやワーストを置き去りにして独走態勢を築き上げる。最終周回にはブラントが強烈なペースで追い上げたものの、その勢いはベッツィマを捉えるには至らなかった。
「今日はミスしないことだけに集中していた。勝つことができて本当に嬉しい」とは、今シーズン徐々に成績を上げ、今年の三大シリーズで初勝利を射止めたベッツィマ。2位には「彼女に抜かれてからはリズムが崩れ、砂区間でミスしてしまった」と言うブラント。低迷していたサンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン)が4位に入り、バニーホッパーのアンナ・カイ(イギリス、スターカジノCXチーム)が6位。18歳のフェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が8位に入っている。
世界王者、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)の復帰戦として注目されたX2Oトロフェー(昨年まではDVVファルゼクリンゲントロフェー)第3戦の舞台はベルギーの古都アントワープ。
シュヘルデ川が運んだ河川敷の砂地と草地を組み合わせた「シュヘルデクロス」は、2016年にファンデルプールとワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)がシクロクロス史に残る激戦を繰り広げた場所。男子エリートレースは、このレースと翌日のスーパープレスティージュのダブルヘッダーを皮切りに、1月31日の世界選手権まで今季10レースを予定しているファンデルプールの好スタートで幕開けた。
ロンド・ファン・フラーンデレンを制し、3日後のAGドリダーフス・ブルージュ〜デパンヌで落車を喫してロードシーズンを終え、短いオフシーズンと、毎年恒例のスペイン合宿を経てシクロクロスに復帰したファンデルプールは、序盤独走したラース・ファンデルハール(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)が砂浜区間で失速したタイミングを突いて先頭に浮上する。後続を置き去りにした世界王者が、復帰戦の1周目から早くもリードを奪った。
シクロクロスサーキットを席巻した昨年を思わせる力強さで突き進んだファンデルプールだったが、唯一食い下がったのが欧州王者のエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)だった。
イゼルビッドは砂浜区間のランニングでファンデルプールを捉え、全8周回中の4周目には砂を得意とするベルギー王者ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)やマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム)も合流。しかし、砂浜がキーポイントとなるこのレースで、すぐさま特別ジャージを着る2人が再び抜け出すこととなった。
悠然とレースを進めるファンデルプールの背後ではイゼルビッドがミスを出して遅れるものの、全開走行で食らいつくシーンが繰り返される。しかし追走を強いられるイゼルビッドの走りからは次第にスムーズさが消え、苦しい状況に陥っていることは誰の目にも明らかだった。
ファンデルプールは残り2周回の終盤から猛烈なペースアップを行い、それまで自らも、そして誰もが降車を選んだ激坂を乗車で登りきるなどイゼルビッドのギャップを広げていく。ワンミスで大きくタイムを失う砂浜区間もそつなくこなした世界王者が、イゼルビッドを6秒引き離し復帰初戦で勝利した。
「自分が思っていたよりもずっと調子良く走れたんだ。スタート直後からすごくフィーリングが良かった。砂区間では上手く乗れなかったけれど、それでも限界を感じることがないほどコンディションは上々。コースも自分向きだった」と語るフィニッシュ直後のインタビューに応えたファンデルプール。インタビューによれば、フランドル時よりも3kg落とした「レースコンディション」にあるという。
「マチューのランニングはいつもより遅かったし、コーナー後の加速もいつもよりキレがなかった。きっとレースを走るたびにより調子が上がっていくと思う」と、マチューの走りを誰よりも近くで見ていたイゼルビッドは言う。「最終周回はマチューが速いペースを刻み、僕は明日(スーパープレスティージュ)のことを考えてしまった。何度か彼に追いつけたことも良かったし、自分的にもいい走りだった。良い戦いだったと思う」と振り返っている。
55名が出走した女子レースは今季好調を維持しているルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)のホールショットで動き出す。
ブラントは世界王者のセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)やアンナ・カイ(イギリス、スターカジノCXチーム)を置き去りにして独創態勢を組もうとしたものの。3周目にはアルバラードやアンマリー・ワースト(オランダ、777)、デニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、ヤラ・カステリン(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ)たちが追いつきレースは振り出しに。すると突然アルカンシエルがストップを強いられた。
アルバラードの駆動系には路面に埋まっていた針金が絡まり、後輪ロック状態に。暫く修理を試みていたアルバラードだったが、ランニングでピットに戻ることを選択。不運に見舞われた世界王者はこうしてレース最前線から姿を消すこととなった。
今季何度も好勝負を繰り広げてきたライバルの脱落を活かしたかったブラントだったが、この日はベッツィマの砂区間の乗車技術が光った。トップグループの誰よりも砂区間を乗車でこなすベッツィマは「特にランニング区間でルシンダの苦しそうな呼吸を聞いていた」とリードを稼ぎ、そのままブラントやワーストを置き去りにして独走態勢を築き上げる。最終周回にはブラントが強烈なペースで追い上げたものの、その勢いはベッツィマを捉えるには至らなかった。
「今日はミスしないことだけに集中していた。勝つことができて本当に嬉しい」とは、今シーズン徐々に成績を上げ、今年の三大シリーズで初勝利を射止めたベッツィマ。2位には「彼女に抜かれてからはリズムが崩れ、砂区間でミスしてしまった」と言うブラント。低迷していたサンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン)が4位に入り、バニーホッパーのアンナ・カイ(イギリス、スターカジノCXチーム)が6位。18歳のフェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が8位に入っている。
男子エリートレース結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 58:10 |
2位 | エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 0:06 |
3位 | トーマス・ピドコック(イギリス、トリニティレーシング) | 0:27 |
4位 | トーン・アールツ(ベルギー、テレネットバロワーズ・ライオンズ) | 0:30 |
5位 | ラース・ファンデルハール(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ) | 0:43 |
6位 | ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 0:51 |
7位 | クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム) | 1:00 |
8位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 1:09 |
9位 | コルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンスシクロクロスチーム) | 1:22 |
10位 | ダーン・ソエテ(ベルギー、グループヘンス・マースコンテナーズ) | 1:26 |
男子エリートレース結果
1位 | デニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 42:16 |
2位 | ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ) | 0:05 |
3位 | アンマリー・ワースト(オランダ、777) | 0:28 |
4位 | サンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン) | 0:43 |
5位 | マノン・バッカー(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ) | 0:48 |
6位 | アンナ・カイ(イギリス、スターカジノCXチーム) | 0:50 |
7位 | ヤラ・カステリン(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ) | 0:53 |
8位 | フェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 1:09 |
9位 | ラウラ・フェルドンショット(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) | 1:31 |
10位 | アニック・ファンアルフェン(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ) | 1:49 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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