2020/11/05(木) - 10:23
互いに1勝ずつ挙げているマイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)とティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)の登りスプリントは、最終コーナーのインを突いたウェレンスに軍配。逃げ向けステージで生粋の逃げ屋が大会2勝目を挙げた。
旧市街の城壁が世界遺産に認定されている街ルーゴを出発 photo:Unipublic
1級、超級、休息日そして個人タイムトライアルを経て、ようやく生粋の"逃げ屋"向けステージがやってきた。内陸のガリシア州を走るブエルタ・ア・エスパーニャ第14ステージのコースは、ルーゴからオーレンセを目指して南下する204.7kmの丘陵ステージだ。
11月4日(水)第14ステージ ルーゴ〜オーレンセ 204.7km photo:Unipublic
11月4日(水)第14ステージ ルーゴ〜オーレンセ 204.7km photo:Unipublic
コース断面図だけで見ればイージーだが、その実200kmオーバーのコースに3級山岳が3つ組み込まれ、そしてフィニッシュラインは2kmから始まる勾配6%の、かなり道幅が細く蛇のように曲がりくねった登坂の先にある。スプリンターではなく、逃げ切りを狙うアタッカーや、総合成績で遅れを喫した上位勢が鼻息荒く、世界遺産に登録されている美しい街ルーゴを出発した。
この日、総合上位勢による戦いがあるとすればフィニッシュラインが引かれた短い丘。そこまでに大きなリードを稼げれば逃げ切りの可能性が高いとして、リアルスタート直後からアタック合戦が長期化した。まずは8名が抜け出して引き戻され、続いて20km地点で10名が抜け出して引き戻され、さらに30km地点で26名が抜け出して引き戻され、最終的に7名が逃げを決めるという超活発な展開に。アップダウンコースながら、レース開始後1時間の平均速度は49km/hに達するという超高速レースが展開された。
逃げた7名
ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)
テイメン・アレンスマン(オランダ、サンウェブ)
ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)
マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス)
マルク・ソレル(スペイン、モビスター)
この日はアタック合戦が長期化。いくつもの集団ができては引き戻された photo:Unipublic
2度目の逃げ切りを目指してヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)もアタックに加わる photo:CorVos
ハイペースを維持して逃げるティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)やマイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング) photo:Unipublic
第2ステージ勝者で総合15位のマルク・ソレル(スペイン、モビスター)、第5ステージ勝者ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、第7ステージ勝者マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)に、連日集団先頭を牽き続けたディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)、そして逃げ巧者ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)など、超豪華なメンバーが逃げを打った。
一度逃げを見送ったメイン集団内ではアレクサンダー・カンプ(デンマーク、トレック・セガフレード)とマーティン・セルモン(ドイツ、サンウェブ)、そしてアレクシー・ルナール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)の3名が途中棄権。ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)を含む落車が発生したものの、幸い大きな怪我なくレースに復帰している。
逃げグループを牽引するゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
メイン集団のコントロールを行うロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Unipublic
集団内で落車したニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー) photo:CorVos
逃げグループを引き戻すべくトタル・ディレクトエネルジーが牽引するも、届かず photo:CorVos
レース後半戦に入ると、横風と追い風基調の中を逃げにメンバーを送り損ねたトタル・ディレクトエネルジーのメイン集団牽引がスタートする。一人の脱落者も出していないフランスチームがペースアップするも、この報せを受けた先頭グループも呼応するようにギアを切り替える。
タイム差が2分を切る段階まではトタルの思惑通りだったが、174km地点から始まる3級山岳アベライラ峠(全長7.6km・平均3.8%)に入るとタイム差縮小はストップ。アタックを封じるべくプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)擁するユンボ・ヴィスマや、ウッズの逃げ切りを狙うEFプロサイクリングが集団に蓋をしたことで、タイム差は一気に4分弱まで拡大する。各チームの思惑によって、先頭グループの逃げ切りは決定的になった。
先頭グループ内では3級山岳アベライラ峠頂上通過をきっかけに激しいアタック合戦がスタート。スティバルがダウンヒルで加速し、まずソレルが、そして下り切ったあたりで2勝目を目指すウェレンスが合流を果たす。3(スティバル、ソレル、ウェレンス)+3(アレンスマン、ファンバーレ、ウッズ)に別れた2グループが、10秒+αの差で追走劇を繰り広げながらフィニッシュまでの距離を減らしていった。
追い風吹く中逃げたマルク・ソレル(スペイン、モビスター)たち photo:Unipublic
先頭2グループの差は12秒から1秒、また1秒と開いていったものの、残り4kmを切ったあたりから縮小傾向に転じる。10秒を切ったあたりから先頭グループのローテーションにヒビが入り、リズムが崩れ始めると一気にタイム差が詰まり残り1.2kmで合流。レースが振り出しに戻された状態で、最後の登坂区間へと突入した。
6名中3名、実に半数が今大会既にステージ優勝を挙げているという豪華布陣が、互いの様子を伺いながら曲がりくねった最終勾配を駆け上がっていく。ウッズ先行でラスト500mを抜け、続いてウェレンスが先頭に。アレンスマンが遅れていく一方、最後尾から加速したソレルに ウェレンスが合わせる形でスパートした。
「最後のコーナーに入るまでに先頭にいる必要があると分かっていた」と言うウェレンスが残り200m手前からアタック。ワンテンポ遅れてウッズが追撃し、スティバルやファンバーレは脱落。互いに2勝目を狙うウェレンスとウッズが並びかけながらラスト25mを通過したが、急角度で曲がり込む最終コーナーのイン側を確保したのはウェレンスだった。
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)がステージ2勝目を達成 photo:CorVos
アウト側に膨らんだウッズを退け、ウェレンスが第5ステージに続く大会2回目の逃げ切り優勝を達成。ツール・ド・フランス出場直前の事故でツール出場を棒に振った29歳にとっては記念すべきキャリア通算30勝目。今大会複数ステージで勝利した2人目(ログリッチがステージ4勝)の選手となっている。
「最後の登りでは最終コーナーを先頭で通過しなければ勝利はないと思っていた。マイケル・ウッズが来るのは分かっていたが、フィニッシュラインが突然目の前にやってきて、1位でそのラインを越えた。一日を通して、逃げ集団の中ではディラン・ファンバーレが最も強かった。非常に良いルーラーだ。でも登りでスピードが上がると、ウッズと(マルク)ソレルも良い脚を残していることが分かった。登りスプリントなのでウッズが少し怖かった。だから最終コーナーでインを取れるよう最初に仕掛けたんだ」と、ウェレンスはスピーディーに進行した1日の終わりにコメントを残している。
UCIレース通算30勝目を挙げたティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
また、3分半遅れで最後の登坂区間になだれ込んだメイン集団では、ロングスパートしたゴンサロ・セラノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)に続く形で総合上位陣がひしめきながらフィニッシュ。19名に絞り込まれたものの、ログリッチやリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)、ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)といったメンバーがひと塊りでゴールしたためタイム差は付かなかった。
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1級、超級、休息日そして個人タイムトライアルを経て、ようやく生粋の"逃げ屋"向けステージがやってきた。内陸のガリシア州を走るブエルタ・ア・エスパーニャ第14ステージのコースは、ルーゴからオーレンセを目指して南下する204.7kmの丘陵ステージだ。
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コース断面図だけで見ればイージーだが、その実200kmオーバーのコースに3級山岳が3つ組み込まれ、そしてフィニッシュラインは2kmから始まる勾配6%の、かなり道幅が細く蛇のように曲がりくねった登坂の先にある。スプリンターではなく、逃げ切りを狙うアタッカーや、総合成績で遅れを喫した上位勢が鼻息荒く、世界遺産に登録されている美しい街ルーゴを出発した。
この日、総合上位勢による戦いがあるとすればフィニッシュラインが引かれた短い丘。そこまでに大きなリードを稼げれば逃げ切りの可能性が高いとして、リアルスタート直後からアタック合戦が長期化した。まずは8名が抜け出して引き戻され、続いて20km地点で10名が抜け出して引き戻され、さらに30km地点で26名が抜け出して引き戻され、最終的に7名が逃げを決めるという超活発な展開に。アップダウンコースながら、レース開始後1時間の平均速度は49km/hに達するという超高速レースが展開された。
逃げた7名
ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)
テイメン・アレンスマン(オランダ、サンウェブ)
ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)
マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス)
マルク・ソレル(スペイン、モビスター)
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第2ステージ勝者で総合15位のマルク・ソレル(スペイン、モビスター)、第5ステージ勝者ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、第7ステージ勝者マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)に、連日集団先頭を牽き続けたディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)、そして逃げ巧者ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)など、超豪華なメンバーが逃げを打った。
一度逃げを見送ったメイン集団内ではアレクサンダー・カンプ(デンマーク、トレック・セガフレード)とマーティン・セルモン(ドイツ、サンウェブ)、そしてアレクシー・ルナール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)の3名が途中棄権。ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)を含む落車が発生したものの、幸い大きな怪我なくレースに復帰している。
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レース後半戦に入ると、横風と追い風基調の中を逃げにメンバーを送り損ねたトタル・ディレクトエネルジーのメイン集団牽引がスタートする。一人の脱落者も出していないフランスチームがペースアップするも、この報せを受けた先頭グループも呼応するようにギアを切り替える。
タイム差が2分を切る段階まではトタルの思惑通りだったが、174km地点から始まる3級山岳アベライラ峠(全長7.6km・平均3.8%)に入るとタイム差縮小はストップ。アタックを封じるべくプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)擁するユンボ・ヴィスマや、ウッズの逃げ切りを狙うEFプロサイクリングが集団に蓋をしたことで、タイム差は一気に4分弱まで拡大する。各チームの思惑によって、先頭グループの逃げ切りは決定的になった。
先頭グループ内では3級山岳アベライラ峠頂上通過をきっかけに激しいアタック合戦がスタート。スティバルがダウンヒルで加速し、まずソレルが、そして下り切ったあたりで2勝目を目指すウェレンスが合流を果たす。3(スティバル、ソレル、ウェレンス)+3(アレンスマン、ファンバーレ、ウッズ)に別れた2グループが、10秒+αの差で追走劇を繰り広げながらフィニッシュまでの距離を減らしていった。
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先頭2グループの差は12秒から1秒、また1秒と開いていったものの、残り4kmを切ったあたりから縮小傾向に転じる。10秒を切ったあたりから先頭グループのローテーションにヒビが入り、リズムが崩れ始めると一気にタイム差が詰まり残り1.2kmで合流。レースが振り出しに戻された状態で、最後の登坂区間へと突入した。
6名中3名、実に半数が今大会既にステージ優勝を挙げているという豪華布陣が、互いの様子を伺いながら曲がりくねった最終勾配を駆け上がっていく。ウッズ先行でラスト500mを抜け、続いてウェレンスが先頭に。アレンスマンが遅れていく一方、最後尾から加速したソレルに ウェレンスが合わせる形でスパートした。
「最後のコーナーに入るまでに先頭にいる必要があると分かっていた」と言うウェレンスが残り200m手前からアタック。ワンテンポ遅れてウッズが追撃し、スティバルやファンバーレは脱落。互いに2勝目を狙うウェレンスとウッズが並びかけながらラスト25mを通過したが、急角度で曲がり込む最終コーナーのイン側を確保したのはウェレンスだった。
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アウト側に膨らんだウッズを退け、ウェレンスが第5ステージに続く大会2回目の逃げ切り優勝を達成。ツール・ド・フランス出場直前の事故でツール出場を棒に振った29歳にとっては記念すべきキャリア通算30勝目。今大会複数ステージで勝利した2人目(ログリッチがステージ4勝)の選手となっている。
「最後の登りでは最終コーナーを先頭で通過しなければ勝利はないと思っていた。マイケル・ウッズが来るのは分かっていたが、フィニッシュラインが突然目の前にやってきて、1位でそのラインを越えた。一日を通して、逃げ集団の中ではディラン・ファンバーレが最も強かった。非常に良いルーラーだ。でも登りでスピードが上がると、ウッズと(マルク)ソレルも良い脚を残していることが分かった。登りスプリントなのでウッズが少し怖かった。だから最終コーナーでインを取れるよう最初に仕掛けたんだ」と、ウェレンスはスピーディーに進行した1日の終わりにコメントを残している。
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また、3分半遅れで最後の登坂区間になだれ込んだメイン集団では、ロングスパートしたゴンサロ・セラノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)に続く形で総合上位陣がひしめきながらフィニッシュ。19名に絞り込まれたものの、ログリッチやリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)、ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)といったメンバーがひと塊りでゴールしたためタイム差は付かなかった。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020第14ステージ結果
1位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 4:37:05 |
2位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング) | |
3位 | ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
4位 | ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | |
5位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | 0:11 |
6位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、サンウェブ) | 0:13 |
7位 | ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス) | 3:11 |
8位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 3:44 |
9位 | ゴンサロ・セラノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) | |
10位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 53:57:05 |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:39 |
3位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:47 |
4位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 1:42 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 3:23 |
6位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン) | 6:15 |
7位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 7:14 |
8位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 8:39 |
9位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 8:48 |
10位 | ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 9:23 |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 76pts |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 30pts |
3位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 28pts |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 178pts |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 113pts |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 111pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 54:00:28 |
2位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 5:25 |
3位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 7:22 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 162:08:09 |
2位 | ユンボ・ヴィズマ | 8:05 |
3位 | アスタナ | 39:49 |
text:So Isobe
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