2020/10/23(金) - 10:53
大会最初の1級山頂フィニッシュが登場したブエルタ3日目に、総合2位ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)が涙の勝利。パンクでエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)が遅れた一方、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)は安定した走りでステージ2位に入っている。
余裕を見せるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
山、山、そして山。スペイン北部を駆け巡るブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)には大会3日目にして最初の山頂フィニッシュが登場した。スタート直後からダラダラと標高を上げ、160km先の1級山岳ラ・ラグナ・ネグラ=ビヌエサでは期待通り、今大会3日目にして3度目の総合バトルが繰り広げられることとなる。
10月22日(木)第3ステージ ロドサ〜ラ・ラグナ・ネグラ=ビヌエサ 166.1km photo:Unipublic
10月22日(木)第3ステージ ロドサ〜ラ・ラグナ・ネグラ=ビヌエサ 166.1km photo:Unipublic
この日の未出走は前日に落車し、肩甲骨骨折で苦しみながらもフィニッシュまで走りきったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)と、クリテリウム・デュ・ドーフィネの落車で背中を痛め、更にツール・ド・フランスでも落車したティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)というビッグネーム2名だった。モホリッチは「気分は良いけれどレース続行が不可能になってしまった。第2ステージや、この先の数ステージにチャンスを感じていたのでとても悲しい」とチームニュースの中でコメントを残している。
気温17度のロドサをスタートすると、2018年ロンド・ファン・フラーンデレン覇者であり、そこから勝利が無いニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)を含む5名がエスケープ。プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)擁するユンボ・ヴィスマがコントロールする集団から最大4分半の差を得て巡航体制に入った。
エスケープするニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)ら photo:CorVos
逃げた5名
マーク・ドノヴァン(イギリス、サンウェブ)
トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)
ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)
アリツ・バグエス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ウィリー・スミット(南アフリカ、ブルゴスBH)
強い向かい風に抗うように進んだこの日、レース開始直後の平均速度は35km/h台というスローペースで進行する。平均勾配2.7%で17kmを登る3級山岳アルト・デ・オンカラはトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)が先頭通過したが、メイン集団でEFプロサイクリングやミッチェルトン・スコットの牽引がスタートしたためタイム差は一気に縮小した。
メイン集団を牽引するユンボ・ヴィスマとイスラエル・スタートアップネイション photo:CorVos
2番目の逃げグループを組むエクトル・サエス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) photo:CorVos
残り58kmという早いタイミングで5名は引き戻され、モビスターがペースメイクする状態から再度アタック合戦が掛かり、ポール・ウルスラン&ヴァランタン・フェロン(共にフランス、トタル・ディレクトエネルジー)、エクトル・サエス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)、そして昨年ブエルタで区間1勝を挙げたアンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)が逃げを打つ。しかし山岳勝負に意気込む各チームが争うようにメイン集団のコントロールを担ったため、逃げ切りへの青信号が灯ることはなかった。
黄色いリーダーチームを後方に押しやって、青色ジャージのモビスターとアスタナが列車を並べた状態でブエルタ初登場となる標高1,735mの1級山岳にアタックする。この日2番目の逃げグループは6%前後の勾配を刻む残り9.5km地点で捉えられ、今度はイネオス・グレナディアーズの牽引がスタートする。ここまでの2日間、山岳を前に遅れていたクリストファー・フルーム(イギリス)が初めてペースメイクに加わりコンディションの上向きぶりを印象づけている。
パンクで遅れを喫したエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos
勝負の時に向けてハイペースを刻んでいた先頭グループ内では、ラスト5km地点で17秒差の総合4位エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)がパンクストップ。最悪のタイミングで遅れたチャベスは11cmも身長が違うスガブ・グルマイ(エチオピア、ミッチェルトン・スコット)のバイクに乗り換え、更にチームカーからスペアバイクを受け取って先頭を追い続けたものの、結局復帰は叶わない。序盤2日間を好発進した”チャビート”は最終的に1分6秒遅れ、総合8位まで落としてしまうこととなる。
雨に濡れ、霧にむせぶ1級山岳を登る先頭グループ内でファーストアタックを繰り出したケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード)は残り2kmで捉えられ、勾配が10%前後まで上がる残り1km地点を前に仕掛けたクレモン・シャンプッサン(フランス、アージェードゥーゼル)のアタックも失敗。ユンボ・ヴィズマの2人(クス&ログリッチ)やリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)がライバルの動きを目を光らせながら、無観客のフェンス設置ゾーンを駆け上がっていく。総合上位勢が横並びで進む均衡を突き破って加速したのは総合2位ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)だった。
ログリッチとカラパスを抑えてスパートするダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) photo:CorVos
リードを守り抜いたダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) photo:CorVos
ログリッチの、そしてカラパスの繰り下がりでマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るマーティンが、ギアを一段、また一段と上げながらスプリント。ブラケットを握るダンシングで加速を続け、ログリッチとカラパスの追い抜きを許さなかったマーティンが勝利した。
「総合順位でタイムを失わないことが最優先だったけれど、ライバルたちの走りを見て自分の勝負ができると思った。まだ前に逃げている選手がいたと思っていたので勝ったとは思っていなかったんだ」と、フィニッシュ後にステージ優勝を告げられたマーティンは言う。マーティンの勝利は2018年7月12日のツール・ド・フランス第6ステージ以来2年3ヶ月ぶり。レース直後のインタビューでは「子供が生まれてから初めての勝利だった」と感極まり、涙を流した。
2年3ヶ月ぶりの勝利を挙げたダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) photo:CorVos
マイヨロホを着用し続けるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
スプリントするマーティンの背後でカラパスの動きをチェックし、ステージ2位に入ったログリッチがボーナスタイム6秒を獲得。4秒遅れの4位にワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)が、7秒遅れの5位にアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)が入るなど、ここまでの2日間で遅れていたメンバーがステージ上位に。総合トップスリーに変動はないものの、不運で遅れたチャベスが遅れた代わりにエンリク・マス(スペイン、モビスター)、ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)たちが総合順位を上げている。
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山、山、そして山。スペイン北部を駆け巡るブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)には大会3日目にして最初の山頂フィニッシュが登場した。スタート直後からダラダラと標高を上げ、160km先の1級山岳ラ・ラグナ・ネグラ=ビヌエサでは期待通り、今大会3日目にして3度目の総合バトルが繰り広げられることとなる。
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この日の未出走は前日に落車し、肩甲骨骨折で苦しみながらもフィニッシュまで走りきったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)と、クリテリウム・デュ・ドーフィネの落車で背中を痛め、更にツール・ド・フランスでも落車したティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)というビッグネーム2名だった。モホリッチは「気分は良いけれどレース続行が不可能になってしまった。第2ステージや、この先の数ステージにチャンスを感じていたのでとても悲しい」とチームニュースの中でコメントを残している。
気温17度のロドサをスタートすると、2018年ロンド・ファン・フラーンデレン覇者であり、そこから勝利が無いニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)を含む5名がエスケープ。プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)擁するユンボ・ヴィスマがコントロールする集団から最大4分半の差を得て巡航体制に入った。
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逃げた5名
マーク・ドノヴァン(イギリス、サンウェブ)
トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)
ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)
アリツ・バグエス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ウィリー・スミット(南アフリカ、ブルゴスBH)
強い向かい風に抗うように進んだこの日、レース開始直後の平均速度は35km/h台というスローペースで進行する。平均勾配2.7%で17kmを登る3級山岳アルト・デ・オンカラはトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)が先頭通過したが、メイン集団でEFプロサイクリングやミッチェルトン・スコットの牽引がスタートしたためタイム差は一気に縮小した。
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残り58kmという早いタイミングで5名は引き戻され、モビスターがペースメイクする状態から再度アタック合戦が掛かり、ポール・ウルスラン&ヴァランタン・フェロン(共にフランス、トタル・ディレクトエネルジー)、エクトル・サエス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)、そして昨年ブエルタで区間1勝を挙げたアンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)が逃げを打つ。しかし山岳勝負に意気込む各チームが争うようにメイン集団のコントロールを担ったため、逃げ切りへの青信号が灯ることはなかった。
黄色いリーダーチームを後方に押しやって、青色ジャージのモビスターとアスタナが列車を並べた状態でブエルタ初登場となる標高1,735mの1級山岳にアタックする。この日2番目の逃げグループは6%前後の勾配を刻む残り9.5km地点で捉えられ、今度はイネオス・グレナディアーズの牽引がスタートする。ここまでの2日間、山岳を前に遅れていたクリストファー・フルーム(イギリス)が初めてペースメイクに加わりコンディションの上向きぶりを印象づけている。
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勝負の時に向けてハイペースを刻んでいた先頭グループ内では、ラスト5km地点で17秒差の総合4位エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)がパンクストップ。最悪のタイミングで遅れたチャベスは11cmも身長が違うスガブ・グルマイ(エチオピア、ミッチェルトン・スコット)のバイクに乗り換え、更にチームカーからスペアバイクを受け取って先頭を追い続けたものの、結局復帰は叶わない。序盤2日間を好発進した”チャビート”は最終的に1分6秒遅れ、総合8位まで落としてしまうこととなる。
雨に濡れ、霧にむせぶ1級山岳を登る先頭グループ内でファーストアタックを繰り出したケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード)は残り2kmで捉えられ、勾配が10%前後まで上がる残り1km地点を前に仕掛けたクレモン・シャンプッサン(フランス、アージェードゥーゼル)のアタックも失敗。ユンボ・ヴィズマの2人(クス&ログリッチ)やリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)がライバルの動きを目を光らせながら、無観客のフェンス設置ゾーンを駆け上がっていく。総合上位勢が横並びで進む均衡を突き破って加速したのは総合2位ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)だった。
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ログリッチの、そしてカラパスの繰り下がりでマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るマーティンが、ギアを一段、また一段と上げながらスプリント。ブラケットを握るダンシングで加速を続け、ログリッチとカラパスの追い抜きを許さなかったマーティンが勝利した。
「総合順位でタイムを失わないことが最優先だったけれど、ライバルたちの走りを見て自分の勝負ができると思った。まだ前に逃げている選手がいたと思っていたので勝ったとは思っていなかったんだ」と、フィニッシュ後にステージ優勝を告げられたマーティンは言う。マーティンの勝利は2018年7月12日のツール・ド・フランス第6ステージ以来2年3ヶ月ぶり。レース直後のインタビューでは「子供が生まれてから初めての勝利だった」と感極まり、涙を流した。
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スプリントするマーティンの背後でカラパスの動きをチェックし、ステージ2位に入ったログリッチがボーナスタイム6秒を獲得。4秒遅れの4位にワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)が、7秒遅れの5位にアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)が入るなど、ここまでの2日間で遅れていたメンバーがステージ上位に。総合トップスリーに変動はないものの、不運で遅れたチャベスが遅れた代わりにエンリク・マス(スペイン、モビスター)、ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)たちが総合順位を上げている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020第3ステージ結果
1位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 4:27:49 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
4位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン) | 0:04 |
5位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) | 0:07 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:09 |
7位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:12 |
8位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | |
9位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | |
10位 | クレモン・シャンプッサン(フランス、アージェードゥーゼル) | 0:24 |
24位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | 1:06 |
DNS | マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・マクラーレン) | |
DNS | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 12:37:24 |
2位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 0:05 |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:13 |
4位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:32 |
5位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:38 |
6位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:44 |
7位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 1:17 |
8位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | 1:29 |
9位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | 1:55 |
10位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | 1:57 |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 18pts |
2位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 16pts |
3位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 14pts |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 65pts |
2位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 57pts |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 50pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 12:37:56 |
2位 | アンドレア・バジオーリ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 2:26 |
3位 | ジーノ・マーダー(スイス、NTTプロサイクリング) | 2:59 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィズマ | 37:55:15 |
2位 | モビスター | 1:42 |
3位 | UAEチームエミレーツ | 7:14 |
text:So Isobe
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